偽りの平和(LAST)


「ママ!もうあいつらが近くまで来ちゃったよ!それにずっと走ってて疲れたでしょ?僕自分で走るから降ろしてよ」
 グライトは走りっぱなしの母を気にしてそう言った。
「グライトは優しいわね…で、でも大丈夫よ!まだ走れるわ」
 しかし、最悪の事態はすぐに起きた。突然母が咳き込み口に手を当てた。その手は真紅の色で染まっていた。そう誰がどう見ても血であった。そして、母はその場に倒れた。グライトに覆いかぶさるように。母に完全に被さっているせいで周りから見ても分からなかった。
 しばらくして、足音が聞こえてきた。敵兵士だ。手にはカービン銃らしきものがある。何か話しているが異国の言葉のため聞き取れない。しばらくしてどこかに去っていった。その後も敵兵士は尽きることがないかのごとく、母とグライトの横を歩き去っていった。
 この時、なぜ敵兵士が母を蹴り生死を確認しなかったのか。それは簡単な理由だった。母の吐血があまりにも多量だったせいで、銃で撃たれたかのように血の海ができあがっていた。無論、母は生きているわけも無くその場で死んでいた。最愛の息子を守るために…

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