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サンガンピュールの物語(女科学者)8話

-8-

 取調室には朋美と男性刑事がいた。サンガンピュールも取調べに参加したいと申し出たのだが断られた。公平な取調べが確保できなくなるからだろう。仕方がなく待合室で待つしかなかった。刑事が朋美にウィルスの入った試験管を手渡すよう指示した。しかし朋美はウィルスを渡すそぶりを見せて、渡そうとしないのだった。その時、刑事が強い口調で言った。

 「ねえ、早くしなさい。・・・早く渡しなさい!」

 彼女は刑事の命令を無視し、一向に渡そうとしない。もう埒が明かなくなったと見た刑事は強引にウィルスを奪おうとした。しかしその方法では危険だ。いつ汚染されるか分からないからである。ついに刑事は、待合室で待っていたサンガンピュールを呼んだ。
 取調室へ応援に入ったサンガンピュールは、衝撃の光景を目の当たりにする。

 「もうこうなったらヤケクソよ!」
 朋美はこう言い放った後、警察署の出入り口の前の受付に向かった。なんとその殺人ウィルスをパックから取り出し、試験管ごと警察署の前の床に叩きつけたのである。


 ガシャーン!!

 その瞬間、ウィルスと見られる液体がこぼれ落ちた。
 「きゃああああ」
 「うわああああ!」
 様々な場所から悲鳴が聞こえ、職員が建物から避難する。サンガンピュールも一旦外に逃げた。サンガンピュールは、阻止できなかったことへの悔し顔でたたずんだ。そして思わずこう叫んだ。

 「これ大変なことになったじゃん。どうしてくれるのよ!・・・もう・・・、世界は終わってしまうのかしら・・・」

 直ちに近隣住民に緊急速報が流され、近くの避難所に避難するよう命令が下った。そして職員の通報により、水戸市から化学消防隊、茨城県警察本部の特殊部隊が派遣された。到着は通報から30分後だった。多くの人々が最悪の結果を覚悟した。しかしこの後、意外な事実が判明することになる。
 化学消防隊が警察署の周囲5キロを立ち入り禁止区域に設定し、こぼれたウィルスの回収が行われた。そしてサンガンピュールをはじめ、汚染の疑いがある関係者は水戸市にある総合病院へ移送されることになった。


 その頃、Kは土浦の自宅にいた。しかし臨時ニュースで常陸太田警察署での事件を聞き、そこでサンガンピュールが汚染された疑いがあると聞いて、びっくり仰天した。

 「あああああ・・・、大丈夫だろうか」
 と大いに心配したのは当然である。

 一方、サンガンピュールは総合病院の隔離病棟に入院させられた。
 「けっ、男を殺すウィルスでしょ。なんで女のあたしがこんな物騒な中で生活しなきゃいけないのさ!ああ、退屈だよ!」
 サンガンピュールは病棟でこう言葉をはき捨てた。しかし他の男性関係者にとっては他人事ではない。

 しかし翌日のこと、その久米奈緒美らが開発した殺人ウィルスについて衝撃的な報告が入ってくる。

 ( 第9話 に続く)

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