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サンガンピュールの物語(コーチング)3話



 帰宅後、東京で仕事中のKに携帯メールで質問した。平日だと顔を合わせる機会が滅多に無いからである。「ごめん、今度の日曜は一緒に買い物に行けない」と。サンガンピュールの携帯電話は本来ならば市長から渡された秘密のものだ。しかしスーパーヒロインとしての任務以外には使えないというのは非効率、不便だとサンガンピュールとKが陳情した結果、市長も承諾したのだった。
 Kは彼女からのメールを見て驚き、しばらくして返信を出した。
 「別にいいけど、何か大事なことがあるの?」
 どう返すか迷ったが、理由をそのまま書くことにした。
 「実は少年サッカーチームにいる男の子から、サッカーを教えてほしいと言われたんだ。だから一緒に行けないんだ。ごめん」
 K自身、仏教の題目を唱えるように勉強、勉強と言い続けたように彼女に厳しく接してきたことを「やりすぎたかなぁ・・・」と少し反省していた。たまには気分転換でもしなさいという意味で、
 「いいよ、問題無いよ」
 と、またメールを彼女に寄こしたのだった。彼女は意外に思った。しばらく不機嫌なKをずっと見てきただけにそう感じたのと同時に、うれしくも思ったのは言うまでもない。
 こうしてK公認の下、拓也の練習に付き合うこととなった彼女。しかしここでまた悩みの種が見つかった。それは塩崎ゆうことして、スーパーパワーを使わずにどうやってアドバイスするかであった。少しためらいがあったがKに相談してみた。
 「ねえ、おじさん」
 「どうしたの?」
 「サッカーのことについてなんだけど・・・」
 「そういえばサンガンピュール、少年サッカーのコーチになりたいってメールで書いたな」
 「うん」
 「確かにサッカーってのは技や技術も重要だけど、一番大事なのは作戦だと僕は思うんだよ」
 サンガンピュールはKの意外な答えに少しとまどった。サッカーといえば、技を教えればそれでいいと考えていたフシがあったのかもしれない。
 「作戦?」
 と頭の中がぽかんとした状態のサンガンピュールが言葉を返した。サッカーの話で熱が入ったのか、熱心なアントラーズファンのKは、試合開始時の選手の配置やフリーキックのタイミングなど、作戦というよりは哲学の面を中心に語った。また、Jリーグの録画試合を見る形で観戦してみた彼女は独自にスルーパスのタイミングだとかを、実際の試合をテレビ越しに見ながら調べていった。他にもストライカーの役割だとか、オフサイドトラップ等の戦術も見聞きしていった。その結果、
 「サッカーって難しい・・・」
 で彼女はこう直感的に感じざるを得なかった。

 (第4話に続く)

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