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サンガンピュールの物語(お菓子の国)16話



 何はともあれ、「お菓子の国」を脅かし続けた犯罪組織・チクロンBは消滅した。当然、借金の証文も意味を成さなくなった。決戦の最中、熊田がサンガンピュールに対して放った言葉の中に「俺達を裏切った連中」とあったが、これは何を意味していたのか。実は警察への取材で判明したことだが、チクロンBはさらに多くの債務者を殺害していた。その数は二十数人。貸金業者どころか、とんでもない犯罪組織であったことをサンガンピュールは後から知った。熊田のあの悲惨な死に方は、あの恐ろしい組織のリーダーにふさわしい死に方だったろう。
 一方、チクロンBの恐怖から解放されたお菓子の国では、メンバー全員が必死になって作業していた。休日返上、いや平日の間、店を臨時休業してまで作業に没頭した。世良田も急ピッチで会場設営の準備に追われた。これまで権力争いに身を投じてきたことのツケがこんな形で周ってしまったが、背に腹は代えられなかった。「お菓子の国」を大勢の人々に認めてもらいたい。職人全員がその一心で準備に集中したのだ。だがサンガンピュール、Kともその途中経過をチェックする暇は無かった。完成形はどんな形なのか、「ぶっつけ本番」で見るしかなかった。

 月曜日、サンガンピュールは朝から妙に身体がだるいのを感じた。起き上がろうとしても身体が言うことを聞いてくれないように感じた。チクロンBとの戦闘が激しかったのが祟ったせいだろうか。
 「この週末、大変だったからなあ・・・」
 Kは大事をとって、学校に欠席の連絡を入れた。過労で学校を休むという情けない結果になった。ひかり中学校で塩崎ゆうことして在籍する1年1組教室では担任の森先生からゆうこ欠席の情報が伝えられた。これに驚いたのが、他でもないあずみだった。
 「ゆうこちゃんに何があったんですか?」
 彼女は質問したが、森先生は
 「『身体がだるいから』らしい」
 としか答えなかった。
 親友として見過ごせなかった。あずみは放課後、サンガンピュールの家を訪ねることにした。学校の連絡網から電話番号を割り出し、電話した。
 「もしもし、ゆうこちゃん、いる?」
 「うん、いるよ」
 「ねえ、大丈夫?先生は『身体がだるいから休み』って言ってたけど、そんなのゆうこちゃんらしくないよ」
 「でも・・・、あたしだってそういう時があるから」
 「ねえ、ゆうこちゃんのことが本当に心配だからお家に寄っていい?」
 「・・・いいよ」
 こうしてあずみはサンガンピュールの家を無理矢理訪問した。その時、彼女は自分のベッドでおとなしく寝ていたが、ドアチャイムが鳴り、しょうがなく起きた。
 「あっ、あずみだ!」
 パジャマ姿であずみと対面した。
 「あっ、よかった~!ゆうこちゃん、心配したんだよ!」
 「ごめん、何も言わなくて。実はさ、体中が痛いんだよ」
 「えっ、どうしたの!?体中が痛いって!何かあったの?」
 「いや、大したことじゃないよ」
 「大したことだよ、それは!ゆうこちゃん、ひょっとしてあたし達に隠し事してんじゃないの?」
 図星を言われたサンガンピュール。とりあえず玄関から自室に移動した2人。そこで真相が明かされようとした。
 「ねえ、前々から思ってたんだけど、ゆうこちゃんって授業中に抜け出したり、日によっては急にテンションが低くなったりしてたよ」
 「いや、そんな、気にすることじゃないよ・・・」
 「気になる!友達としてすんごい気になる!」
 「・・・・・・」
 サンガンピュールはあずみの言葉に対し、どう答えていいか分からなくなった。
 「この前もそうだったじゃん。明らかに疲れているのに『何でもない』って答えたりさあ!・・・ひょっとして、ゆうこちゃんって・・・」
 「嫌だ、それは言わないで!」
 「いいや!どうしても言わせて!」
 「言わないで!あたしの秘密なんだからぁ!」
 サンガンピュールは市長から言いつけられた秘密を必死になって守ろうとした。
 「ねえ、ゆうこちゃん、あたしの顔を見て。バカにしてるように見える?」
 「・・・見えない。逆に真剣に見えるっていうか・・・」
 「少なくともかれんやさゆりとは違うよね?」
 「・・・うん、違う」
 「でしょ?友達として確認させてほしいの!」
 サンガンピュールは固唾を飲んで聞いた。

 「ゆうこちゃんって、本当はサンガンピュールなんでしょ?」

 学校や友人関係において絶対に認めたくない真実を突き付けられた。

 ( 第17話 に続く)

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