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サンガンピュールの物語(生い立ち編)2話

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 落雷を受けて以来、絶望ばかり感じていた少女はある日、1人の日本人旅行者と出会った。その男はKという名前だった。彼は世界中を旅している、自他共に認める旅好きだ。年齢は30代半ばに見える。Kは、なぜこんなところに少女がぽつんと1人でいるのか、不思議で仕方がなかった。東南アジアに多いストリートチルドレンではないか、とも思った。思わずKは少女に声を掛けた。

 「どうしてここで生活しているんだい?大丈夫。何も悪いことしないから」
 少女は突然、見知らぬ日本人の男に話しかけられたことで若干戸惑った。しかし彼女は「悪いことしない」という声を信用し、Kに自分の経緯を話そうとした。ところがKは、
 「ここは危険な場所だよ。もう少し安全なところで話をしようか」
 と切り出した。彼女も同感であった。まだ10歳の少女は見知らぬ謎の男、Kと一緒に、彼の宿泊するホテルに向かった。

 心配したKは自分の宿泊するホテルの中で、話をじっくり聞くことにした。パリから来たこと、そして何日か前に落雷を受けたことなど。少女は今まで経験したこと全てを話した。これに対し、Kは
 「そうなんだ。可哀想に。…(沈黙)じゃあ、こうしようか。僕がずっと守ってあげるよ。誰も君を助けないのならば、僕が助けるよ。大丈夫、君は1人じゃない。みんなからのたくさんの期待を抱えて生きている。僕がついているよ。約束するよ」
 と話した。突如表れ、そして救いの手を差し伸べたKの寛大さに感動した少女は、感極まって泣いてしまった。例の落雷を受けて以来、親の愛情を受けずに生活してきた少女にとっては、百万の味方をつけたような感じであった。その時彼女は決心した。

 「こうなったら、もうお父さん、お母さんとは付き合わない。だって、クズって言ったんだもん。あたしは自分を助けてくれたおじさんについていく…!」
 Kはホテルの自分の部屋に少女を泊めてあげた。雨風をしのいで生活することもできない少女が何とも気の毒に見えた。

 Kと出会って数日。少女はKとは仲良しになっていた。日本人であるKは、自分のことなどを少女に話して親睦を深めようとした。当の彼はまだ未婚で、子どもがいない。でも子どもは可愛くて、その笑顔はみんなを明るくする。ある意味、天使のような存在だと信じている。
 そんな中、ロンドンの街中で大規模な落雷があった。ちょうど少女自身が落雷を受けたときのように。その時彼女は雷からの声を聞いた。

 「あなたは自分に有益なスーパーパワーを持っています。この世の役に立つことに使いなさい」

 その雷に打たれて顔が変形した少女の名前は、「サンガンピュール」といった。サンガンピュール(Sangimpur)とは、フランス語で「不浄な血」という意味。愛を叫ぶ、従来の女の子のスーパーヒーローとは違い、生まれ変わった後、両親の愛を失った(というより、知らなかったと言ってもいい)彼女らしい名前だったと言えるかもしれない。その血なまぐさい名前からは、「私は今までのスーパーヒロインとは違う!」という彼女の主張が見える。

 彼女のスーパーパワー(超能力)は、スターウォーズのジェダイ騎士を連想させるものだ。技は主にマジックハンドだ。「天井よ、崩れろ!」と言い聞かせれば、建物の天井が崩れてしまうし、大きな4tトラックでさえも念力(?)で移動させることができる。
 そして武器は拳銃にライトセーバー(赤色)である。さらに黒髪で、目の色は血の色であり、情熱の色でもある赤。服装の色は上下とも茶色がベース。キリスト教の聖職者が着るような服装で、上半身部分はスリーブ、長袖つきのTシャツみたいな感じ。下半身部分はロングスカートというスタイル。

 まさに異色の女の子のスーパーヒーロー、サンガンピュールの誕生であった。

 ( 第3話 へ続く)

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