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サンガンピュールの物語(成長編)7話

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 あの事件から1ヶ月経った、6月のある日のこと。初夏の陽気で冷たいものが欲しい季節になった。ゆうこ(サンガンピュール)も例外ではなかった。彼女も学校での授業中に下敷きをうちわ代わりにしたりしていた。
 そんな暑い環境の中でも勉強し、人間関係を深くしていった。しかし学校の授業中に、彼女の携帯電話に出動要請が来た。郵便局強盗事件が発生したのである。彼女が隠し持っていた携帯電話がブルブルと震えた。市長からの連絡である。授業中の彼女は、
 「先生!急に頭が痛くなってきて…。このままだと変になりそうです」
 と仮病を使った。先生は
 「それは大変だ。塩崎さん、すぐ保健室に行きなさい」
 と言って退室を許可したため、彼女は授業を抜け出すことに成功した。学校の女子トイレに隠れた彼女は携帯のテレビ電話機能を使って、市長から状況の説明を受けた。そして戦闘服に着替え、女子トイレの窓から学校の外に飛び出し、現場に急行した。事件現場は学校から1キロ離れた駅前郵便局だ。

 しかし彼女の置かれた状況が悪かった。まず学校から現場まで1キロも離れていた。第二に彼女は空を飛ぶことができないので、走っても体力に限界があり、着いたときにはヘトヘトになってしまった。そして挙句の果てには、郵便局強盗はすでにバイクで逃走していたのである。

 携帯で市長にそのことを報告すると、市長は大変に怒り、
 「何やってるんですか、あなたは!強盗を逃がすとは、一体どういうことですか!
本当にあなたには愛想がつきそうになりますよ…」
 とマジキレ状態であった。これに対してサンガンピュールは逆ギレした。
 「ちょっと市長さん、そりゃないでしょう!あたしの事情も知らないくせに!あたしだってね、大変だったんだよ!わざわざ授業抜け出して、現場にかけつけようと全力で走ってきたけど、結局逃げられた。無駄足だったよ!あたしもね、空飛べたらそれに越したことはないんだけど。もう踏んだり蹴ったりだよ!ふんっ!!」
 と一方的に電話を打ち切ってしまった。
 それに仮病を使って抜け出したから、もしこの事実が学校に知れ渡った場合、先生から大目玉を食らうのは確実だ。まさに泣きっ面に蜂である。

 幸い、戻って来れたのが授業時間の最中だった。そのため彼女は他のクラスメイトから怪しまれずに、こっそりと学校の女子トイレの窓から建物の中に入ることができた。そして戦闘服から学校の制服に着替えて授業に復帰した。授業中の教室のドアをガラガラと開き、クラスメイト数人が「おおっ」と声をあげる。逃げ出したときとは別の教師が聞いた。
 「あっ、塩崎さんだったね。担任の先生から聞いたけど、頭は大丈夫かな?」
 「…はい、何とか大丈夫です、はい」
 ゆうこ(サンガンピュール)はぎこちなく質問に答えた。


 その日の夜のこと。仕事から帰ってきたKとの会話である。
 K「何か変わったことはなかったかい?」
 サンガンピュール「最悪だったよ!」
 K「どうしたんだよ、今日は」
 サンガンピュール「今日ね、学校の授業中に郵便局強盗事件があったわけ。それであたしは市長さんの依頼を受けて現場に行ったんだよ。・・・(略)」

 Kは彼女から一切の経緯を聞かされた。彼女は未だに怒りが収まらない様子だった。
 K「う~ん、気持ちは分かった。確かに分が悪いような気がするな。
じゃあ今度の土曜日に市長さんのところに行こうか。ついでに市長さんに謝っておこうよ」
 と、2人で市長に直談判することにした。

 ( 第8話 に続く)

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