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サンガンピュールの物語(成長編)10話

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 鬼塚の説明によると、ジェットパックの操作は以下の通りだ。両肩にかけた時、右手側にあるハンドルを引っ張ることでブースターが点火し、空に飛び上がることができる。またハンドルを手で加減することによって、炎の勢いを調節することもできる、正に優れ物なのだ。施設の内部で実験するのはさすがに危険なので、サンガンピュールら全員は高ぶる期待を抑えて外に移動した。
 そしていよいよ実験である。サンガンピュールにはトランシーバーが渡された。
 「きちんと動くかなあ…」
 と鬼塚は心配していた。サンガンピュールがジェットパックを両肩にかけ、そしてハンドルを引っ張ってスイッチオン!

 ビュオオオオン…、ゴーーーーーーーーッ!

 ジェットパックをかけたサンガンピュールは大空へと舞い上がることができたのである!彼女はその瞬間、
 「やったあああっ!遂に飛べたあああっ!おじさーん、市長さーん、あたし飛んでるよー!筑波山が大きく見えるよー!」
 と叫んだ。その場にいた全員が感激したのは言うまでもない。
 「遂にやりましたね!」
 市長がトランシーバーを通じて叫んだ。続いてKも呼びかけた。
 「やったなあ、お前!そのまましばらく飛んでみてみろ!」
 「分かったよ!やってみる!」
 サンガンピュールもトランシーバーを通じて、Kに話をしている。
 「使いやすさはどうだ?」
 「大丈夫だよ!」
 「それは良かったな!」
 サンガンピュールはしばらく10分くらいだろうか、大空を飛び続けていた。

 しばらくしてサンガンピュールはジェットパックのパワーを弱めて、地上に降りてきた。試運転は大成功だ。その時、鬼塚が感極まって目が輝いて、涙が溢れそうになっているのを彼女は発見した。長年の研究の成果が遂に現れたからだろう。彼女は鬼塚に対し、お礼を言った。
 「こんなすばらしいものを、ありがとうございました」
 「いえいえ。あなたに満足に使っていただけるだけで、私は十分うれしいです。研究者として、ここまでやってきてよかったよ」
 まだうれし涙が止まらないようだ。Kや市長も駆けつけた。Kは言った。
 「何はともあれ、空を飛べるようになってよかったな」
 市長も言った。
 「これで授業中に逃げ出しても早く現場に駆けつけることができますね。でも先生をどうするかという問題は残っていますが」
 サンガンピュールは2人に対して感謝した。
 「ありがとう、ただ…」
 「ただ?」
 「市長さんが言ってくれたけど、先生に対してどう説明するかが…。まだ分からなくて。正体を隠すのも限界に近づいてきたんじゃないかと思うんですが…」

 そう、精神的にも(語弊があるが)身体的にも「成長」したサンガンピュールはパワーアップして、これからも任務に励むことを心の中で誓った。ただ、根本的未解決のことがあった。それは、彼女の通う学校の先生に対してどう付き合うか、であった。
 事実、これまで彼女はたびたび仮病を使いながらも授業を抜け出しており、クラスメイトは勿論、学校中の教師や校長先生からも不思議がられている。保護者のKの方にも何度か学校から注意がきているのであった。
 「近頃、お宅の娘さん(サンガンピュール/塩崎ゆうこ)は授業中に抜け出すことが多いですが、一体どういう育て方をなさっているんですか。保護者であるあなたの方から叱ってください」
 という彼女の担任教師からの電話が来たこともあった。それはそれで無視できない事柄であった。しかしKは今のところ、自分が多忙であることを言い訳にして注意をかわそうとしているのであったが。
 「新たな問題ができましたね、市長さん」
 と、Kは言った。市長は
 「一難去って、また一難か…」
 と、つぶやくほかなかった。

 ( 第11話 に続く)

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