型をこよなく重んじるも、嵌ることをめっぽう嫌がる作曲家の日記

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2023.01.13
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カテゴリ: 芸術
現代音楽の作曲家・松平頼暁氏が逝去されました。
学生時代には門下として対局にある氏の理工系の作風に、
伝統的な西欧クラシックを学ぶうえで対極に感じていました。
しかし、継続的に作品を発表する姿勢は異才を放っていました。

30歳の頃に自分の語法を模索したところで批判を受け、
反動的に前衛的な作品を発表したことがあり、その時に氏から、
「音楽が整い過ぎていて前衛に向かないね。綺麗すぎる。」と。
その時に自分自身が所謂前衛的な作曲に向かないと悟りました。

松平氏の音楽は作曲するプロセスや方法論に注力を集中し、

思い描いている音を実現させるために構成する作り方は逆であって、
美しい音を紡ぐことを学んできた自分には合っていないのだと。

そんなことを考えながら自分が作るべき音楽に悩みました。
昨年の9月に逝去した野田暉行氏は知人がたくさん師事した、
藝大作曲科の一時代を担ったアカデミック路線の作曲家でした。
直接話したことはありませんが近い存在と意識して尊敬していました。

さまざまな現代作曲家の録音物や演奏会に足繁く通いましたが、
共通しているのはお二人の音楽に一度も傾倒しなかったことです。
どのような音楽か識ることや聴いたことは何度もありました。
また当時の日本の現代音楽界の確固な位置をお持ちの二人でした。


大学教員をしているような音楽理論に長けたアカデミックな作曲家は、

ただ作曲する方法や作風が顕著なこども用の曲であるにも関わらず、
大学で教鞭をとった作曲家の曲はあまり人気がありません。

それは、以前にも書きましたがフリーマーケットでわかりました。
40年前に作曲家のさまざまな作風を勉強するためと所見視奏の練習で、
楽譜屋さんでめぼしい楽譜を買い漁ったことがありました。


大学教員であればピアノレスナーの知り合いもたくさんいるはずで、
そんな内輪の仲間も今は振り向かず使わないようですが、
同じ条件で出品して数分で売れる他の曲集が結構あるにも関わらず、
売れる売れないの違いはどこにあるのか考えてみました。

こどものための曲ですごい名曲とかうっとりするような曲は、
残念ながらあまりなく、個性だけが明確なことがよくあります。
反面、アカデミックな作曲家の出版する曲集は作風が平凡で、
メトードとして合理的にするために音楽がかなり論理的です。

野田暉行氏のピアノ曲集も拘りが見られ作風はよくあるのものですが、
音の扱いは驚くような理論を持っているのではないかと思われます。
次の譜例は曲集の第1曲の冒頭ですが、
嘗ての理論(和声学)では見られないような音の不協和が見られます。


画像クリックで音が聴けるYouTubeにリンクします。

do-mi-sol-siの和音で構成されている中で作られている旋律だと解釈でき、
このような音の扱いはこれ以降の曲にも見られ敢えて書かれた音です。
このスタイルでこの音(不協和)を好むかと言われれば難しいわけですが、
他の部分の端正な書法とのギャップが大きく却って斬新に思えます。

このシュールな音の扱いを主張できた当時は、
日々新しく作られている音楽がヴィヴィッドで楽しかったわけですが、
画一的で新しくない音楽が主流の今では、演奏ミスと判断され兼ねません。
また、こどもでは如実に「綺麗ではない」と拒絶することもあるでしょう。

今は、創作することの個性を重じているようで実際はそうではなく、
単に全てが「こどもファースト」なのでしょう。
そこで音楽の芸術性が保持されるのかどうかはとても気になります。
いろいろな表現に対する感じ方はより柔軟であっていいと思います。

この曲集は半年かかって儲けの出ない最安値でしか売れませんでした。
今の時代ではこの曲集を選択できる余地はないかもしれません。
予想ですが購入された人はピアノレスナーではなく作曲家のようです。
現代の作曲家は何を残し語ったのか、どう引き継がれるのか懸念します。





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最終更新日  2023.01.13 13:00:58
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