サルデーニャの海と風と

サルデーニャの海と風と

一日目



早朝にまた熱が38.2℃まで上がったため、
かかりつけの小児科医ではなく車で一時間ほどの
テンピォの病院に連れて行くことに決めた。

義父が小児科医長と知り合いなのですぐにアポを取ってもらい、
オムツと水だけ持って病院へ。
車嫌いのゆみーなが一言も文句を言わず、眠りそうにさえなっていた。

朝10時半ごろ病院の小児科に着くとすぐに医長が
“着きましたねぇー、じゃ、すぐに検診しましょう”
と言って聴診器で背中から受診すると、
“うーん、肺炎を免れましたねー”と。
“たぶん気管支肺炎だと思うからとりあえずレントゲン撮ってみましょう”
といってとんとん拍子にレントゲンを取り、“何日か入院ですね。”

入院… 私には小学校に通うせにーのがいるし、
しかもまあが水曜日までいないのに。
それに、着替えとかオムツとか、何にも持ってきてないし…
いろんなことを考えて頭がごちゃごちゃになっている私に
“はーい、じゃ、採血してツベルクリンの注射してちょっと鼻をきれいにしましょうねー”

診察室に入ると二人の看護士が
どっちの腕から採血しようかと相談している。
一人が、“だめ。こっちの腕はまったく見えないわ。”
そうするともう一人が“じゃ、こっちからやるか…”
と針を刺してみたが、なんと動脈に刺さらない。
どこだどこだ、という感じで刺さった針を動かして探している。
ゆみーなは気違いのように泣いている。

そこを医長が来て、“腕からなんて無理だ。一日かかるぞ。首だ、首。”
“でももう針刺しちゃったし…もう一箇所あけるのかわいそうだから…”
実際、やっとのことで見つけた動脈からは血液が出てこない。
それを見て看護士はあきらめ、医長が首から採血することになった。
看護士が私に、
“ちょっとつらいかもしれないから部屋から出てもいいですよ”
しかし私はこの人たちが私の娘に何をするのか
しっかりと見ておきたかったため、“大丈夫です”と言って居座った。

ゆみーなを仰向けに寝かせて首から上を寝台の外に出し、ぐっと下げる。
そうすると動脈が良く見え、医長が一気に針を刺した。
先ほどの一件で既に疲れきったらしいゆみーなは泣きもせずに
じっと採血が終わるのを待った。

その次にツベルクリン反応の注射と詰まりきった鼻のお掃除をしてもらい、
部屋に行って食事を取った。

私たちに与えられた部屋は広々とした個室。
ゆみーなのベビーベットとその隣に私のベットがあり、反対側には机、
オムツ替え用の台、そしてロッカーがある。
残念ながらテレビは無く(故障してしまったとの事)、
トイレは部屋を出た向かい側。

食事の後ゆっくりしていると
“はーい、点滴するから診察室に来てくださーい”と呼ばれた。
血液検査で、脱水症状を起こしていることがわかったので
点滴をしなければならないと言う。

診察室に行くと、医者も看護士も朝のスタッフと交代していて、
腕を見ていたので
“今朝採血するのに、はじめ腕に刺してだめだったから
首から採ってました”
と言うと、“じゃ、反対側の首筋に刺すことになるな。”
看護婦が“外で待っててもいいですよ”と言うので
私は“大丈夫です”と答えた。

朝と同じように寝台にゆみーなを寝かせると脅えきってすぐに泣き出した。
針を刺した時には驚愕し泣き叫んだ。

首筋をテープでしっかり止めて、ネットを頭からかぶせ、
部屋に返してもらった。
どれくらいかかるのか聞くと、小さい子供の場合は
ゆっくり点滴しなければならないため、
最低5時間はかかると言われた。

部屋に帰ってゆみーなを胸の上で寝付かせ、親戚や友達にショートメールを送った。
みんな心配してすぐに電話をしてきてくれ、しばらくは電話をしっぱなしだった。
みんな、“なんか必要なことがあったら何でも言ってね”
とは言ってくれたが、遠くに住んでる人たちに何かをお願いできるわけが無い。

そんな中、友達のイヴァーナは
“着替えとか無いんじゃないの、私が持っていってあげるよ”
と、聖人のような一言を差し伸べてくれた。

彼女はこの時期仕事をしてはいないと言うものの、
マッダレーナに住んでいるためフェリーに乗って我が家に寄って
テンピォまで軽く2時間、往復で約4時間を私たちのためだけに
費やしてくれるというのだ。

ラッキーなことに今日はお掃除のガヴィーナが来る日だから、
彼女に荷物をまとめるよう頼めばいい。
せにーのは隣のニーナが預かってくれることになっているし、
イヴァーナが荷物を持ってきてくれれば完璧だ。

緊急事態に手を差し伸べてくれる友達がいるとは、
私はなんて恵まれているんだろうと心から思った。


合計4回も針を刺され、病院の見慣れない部屋に連れてこられたゆみーなは
おびえきって私の腕から離れたがらず、昼寝することすらできなかった。
夜は疲れきったところを抱っこで寝かせ、熟睡したら
やっとベットに寝かせることができた。

点滴は結局夕方18時ごろにやっと一本目の500mlが終わり、
続けてもう500mlを取り付けられた。

夜の面会時間には午前中ずっと私とゆみーなに付き添っていてくれた義父と、
義父のガールフレンドのアンナ、私の友達のガヴィーノ、
そしてイヴァーナが荷物を持って来てくれた。

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