yutaさんへ

う~ん、こういう時のこういうことば、胸に沁みます。ありがとうございます。こういうことばをいただけるほどの文章をこれまで書いてきたかどうか、まったく自信はありませんが、このコメントに値するような文章を書けるようこれからも精進していきたいと思います。

しかし、私の拙いブログを読んでいただいている方々の知的で、かつ人間性あふれるコメントにはほんとうになんと言ったらいいか、ことばを失ってしまいます。

せめて、読者の方々にふさわしい書き手に一歩でも近づけるよう、がんばりたいと思います。ありがとうございました。感謝の気持ちでいっぱいです。 (2006.08.25 20:16:56)

M17星雲の光と影

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2006.08.24
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カテゴリ: その他
どうにも文章を書く気分になれなかったので、しばらく更新をさぼってしまった。

でも、そういう気分になる時はある。多忙や、体調不良や、上からの無理難題や、内部連絡の悪さからくる問題の発生などに対しては、ある程度の免疫ができている。しかし、人間の卑劣さと正面から向きあうことに対しては免疫はできていないし、そんなものを作ろうとも思わない。口の中にむりやり砂を押し込まれたような気分に慣れることなどできないし、そういう状態で文章を書くこともできない。なんとか砂を吐き出す努力を続けたが、まだ砂粒が口の中に残っている感触がある。

詳細は伏す。月曜の午前、公的な機関の要請によるかなりハードな仕事をこなした後、上の人間からお呼びがかかり、部屋に入った。しばらく世間話をした後、一通の手紙を見せられた。それは組織のトップ宛に届けられた封筒に入っており、そこにはワープロの毛筆書体で私を誹謗中傷する手紙が入っていた。まったくの根も葉もない事実無根の中傷である。要するに私をクビにしようという狙いで出された匿名の手紙だった。

四十何年生きてきて、これほどあからさまに卑劣な敵意に向きあったのははじめてだ。消印は一週間近く前。その席には他に二人の人間がいた。幸い誰一人としてその文面の内容を信じる人間はいない。

「誰か心当たりはあるか」ということを確認するのが呼ばれた理由のようだ。心当たりはない。私は善人ではない。どちらかといえば悪人の部類に入れられても文句はいわない。しかし、卑劣さとは一線を画した生き方をしてきた。いわれのない中傷を浴びる覚えはない。

肌が粟立つとはああいうことをいうのだろう。その手紙を読んでいるうちに気分が悪くなってきた。そして、徐々にその気分の悪さの原因がわかってきた。

この人間の知的レベルはかなり高い。不思議なほど直接的な感情の動きやあからさまな気持ちの暴発が感じられない。しかも、文章はそれなりに整っている。内部事情には詳しく、具体的な名称の記述は正確である。

「誰もその内容を事実と思う者はいない。しかし、その手紙がいま目の前にあるのは事実だ」

まったくその通りだ。私はうなずく。



こんな状況でも職業的な観察眼が半ば自動的に発動されてしまうのか、まったく因果な仕事だ、と私は思った。そして、そう思いながらも頭の中の半ば無意識の分析作業は続いた。

この人間は私との個人的、直接的な接点をほとんどもっていない。

まずそのことが体感としてわかる。個人的に接触した範囲の中にいる人間の文章ならば、私はその文章だけを見て、その人間をほとんど言い当てることができる。別に自慢できるような能力でもないのだが。

そして、ある程度の「頭のよさ」というものが、いかに悲しい能力であることかと私は思う。

頭で考える人間、その考えに忠実にしたがう人間の行動は頭で解けてしまうのである。これが突発的な感情の暴発や、なんの法則性もない、でたらめな気分で行動する人間であるならば、たった一枚の手紙から、それを書いた人間の所在を探りあてることなどできるはずもない。しかし、頭で物事を考える人間、実際以上に自分の「考える能力」を過信している人間の行動は、その考えを逆向きにたどることで、その人間自身にたどりつくことが可能なのである。

私はその場でそのことだけを確認した。

「私はどうすればいいんでしょう」
「いや、もちろん何をする必要もない。ただ身近なところにそういう人間がいるということだけは知っておいたほうがいい。何かわかったことがあったら○○さんに報告してほしい」

それで会合は終わった。部屋を出る時、そういう問題の管轄部署の責任者である○○さんは、私の肩をひとつぽんと叩き、「有名税だよ」といった。
「ぜんぜん有名じゃないんだけどな」。私は苦笑した。

その一日は最低の気分だった。精神的な不快感が直接、肉体的な不快感につながり、そのふたつのものを区別することが困難だった。しかし、その一方で悲しいことに頭は勝手に分析作業を続けていた。



今ここに二人の人間がいたとする。Aは自分のたいせつなものをある部屋のどこかにそっと隠す。Bはその場にはいない。しばらくしてドアが開き、Bが入ってくる。そして、BはAの隠したものを探しはじめる。Aはその時、その部屋にいてもいいし、いなくてもいい。そのいずれかをBは選択することができる。こういう場合、あなたはどちらを選ぶだろうか。私ならばAがその場にいることを望む。Aの視線、Aの立ち位置、息づかい。それらがヒントになるからだ。Aは無意識のうちになんとかそのものを見つけられまいとして、さまざまな反応を示す。それを手がかりに探すことが可能になるからだ。

自然にどこかに姿を消してしまったものを探すのは難しい。しかし、誰かが意図的に隠したものを探すのはそれよりもやさしい。なぜならば、隠した人間は、なんとかそのものを隠し通そうとするからだ。それがさまざまな形で外界に形として、兆しとして表れる。それらを観察すれば、ターゲットにたどりつくためのヒントが得られる。

人は何かを隠そうとすればするほど、実はそのものの露顕に手を貸してしまうのである。そういう目であらためて記憶の中にあるその文章を思いだしてみる。あそこには様々な具体的情報が書かれていた。同席した他の人間はその情報を手がかりにしてなんとか人物を特定しようとやっきになっていた。

しかし、それはちがうと私は思った。むしろ逆だ。この人間は文章を読む限り、頭で考える人間だ。文面に具体的情報があるとしたら、それはあくまでも意識的な行為の結果である。そしてその意識的行為とは「自分の関与したことを隠蔽しよう」ということに違いない。すなわち、ここにある具体的情報はすべて偽装の手段と考えたほうがいい。まずその人間が存在するであろうおおまかなエリアを設定する。次に、そこから手紙や封筒に残された具体的な情報をひとつひとつ慎重に排除していく。そうすると、影絵のように情報を抜き取った後の「地」の部分に特定の人物像が浮かび上がるはずである。私はそう思った。そして、頭の中でその作業を実行した。あれではない、これでもない。そうすると残るのは「これ」か、というふうに。しばらく、その消去作業を続けていくと、意外なほどあっさりとこの手紙の発信源を特定することができた。もちろん確証はなく、物証もない。単なる推測にすぎない。しかし、推測であってもターゲットを特定することができれば検証することは可能だし、再発防止のために手を打つこともできる。

もしも私が探偵ごっこを好むのであれば、こうして発信源にたどりつくことでいくばくかの満足感を得ることもできただろう。しかし、私はそういうことにはまったく興味もないし、関心もない。再発を防止するために最低限のことはやるかもしれないが、卑劣な人間を指さして「オマエは卑劣だ」といってみてもはじまらない。そんなことは最初からわかりきっていることなのである。



そんなことをするために頭は首の上に乗っかっているのではない。

そう考えると、そもそも頭を使って文章を書くという行為がどのような意味をもつのかと思えてくる。

以上がしばらくの間、文章から離れた理由である。

とてもむなしい気分だ。砂粒は確実にまだ口の中に残っている。







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Last updated  2006.08.24 20:25:26
コメント(16) | コメントを書く


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Re:「卑劣」について(08/24)  
もも さん
お気持ちは、察するに余りあります。
無記名の誹謗中傷は卑劣きわまるものです。
ただ、生活上であれ仕事上であれ、それを覆すのは自分のそこからの姿勢でしかないと考えます。
つらいですが、人から嫉まれるほどの実力を持てた、とお考えになってはいかがでしょう。
いつも通り淡々と、生活を続けられることです。
貴方の仕事に破綻をきたし精神をかき乱すことこそ、相手の狙いなのですから。術中にはまってはダメです。
(2006.08.25 10:22:03)

お気の毒です。  
yuta さん
卑劣な人間が書いた文章には、卑劣さがにじみ出てくるものだと思います。そんな文章には、本当は何の力もありません。しばらく砂粒が気分悪いことと思いますが、M17星雲の光と影さんの文章を読むたびに、勇気づけられる人間がいるということを心の片隅にでも思って頂ければ幸甚です。 (2006.08.25 16:27:18)

Re[1]:「卑劣」について(08/24)  
ももさんへ

あたたかく、かつタフなアドバイスありがとうございます。そうですよね、自分でもそのことは承知しているのですが、微妙に気持ちのふんぎりがつかず、みっともない文章を書いてしまったかもしれません。でも、ももさんはいいカウンセラーになれそうですよ。暗い話題だし、こちらも気が滅入っている状態で書いたので、この文章をアップロードしたものかどうか、昨日はずいぶん悩んだんです。でも、なにか気持ちの切り替えのきっかけになればと思ってあえて書いたのですが、ももさんのコメントをもらって、力をもらいました。ありがとうございます。これで気持ちが切り替えられそうです。貴重なコメント、拳拳服膺したいと思います。ほんとうにありがとうございました。 (2006.08.25 20:05:05)

Re:お気の毒です。(08/24)  

世の中には悪意というものがあって  
つっこみの母 さん
大変でしたね。ブログを拝見して「あ、大変!」と思って、何て申し上げようかとずっと考えていました。既に皆さんがおっしゃっている事と同じ事を言うしかないのですが、実は私も数年前に激しく誹謗中傷されたのです。世の中には悪意というものがあるということをその時初めて知りました。私の言動をすべて悪く解釈して、挙句に私が言っていない事まで、「そういうメッセージが出ていた」等といってとにかく私を悪者に仕立てなくてはならない人達がいたのです。その時私が学んだことは、そういう人からは逃げる、そういうい人たちと同じ土俵には立たない、ということです。
私の場合は夫が全面的に支えてくれました。親しい友達たちも私が彼らのいうような人間ではないと言い続けてくれました。どうかあなたも「御自分ひとりの胸に」などと思わずにご家族や親しい方にお話なさって、抱え込まない様にして下さい。しばらくは道を歩いていても夜寝てからも「ギャー」って叫びだしたくなることがあると思います。でもいつか笑い飛ばせる日が来ます。私は一年はかかりましたが。いつか笑い飛ばす日のためにも誰かに詳しく話してお置きになったほうがいいと思います。
卑劣な人、悪意を持っている人はいるのです。そういう人はこちらが思っていないことを思い、言い出すのです。こちらが考えも付かないことを言って攻撃してくるので、本当に対処できません。自分の中にそういう悪いものがなかったことを喜ぶしかありません。どうかめげずに、出来る限りいつも通りに
お過ごし下さい。がんばれ!!
(2006.08.25 22:20:38)

がんばってください  
freedom さん
人から中傷されるのは相手が考えている以上にダメージがありますよね。お気持ち察します。

私の好きなビートルズナンバー「We can work it out」にこんな一節があります。

Think of what you're saying.
You can get it wrong and still you think that it's alright.
Think of what I'm saying,
We can work it out and get it straight, or say good night.
We can work it out,
We can work it out.

現実にこううまくいくか分かりませんが、今回の件をうまく収拾できることを祈っています。
(2006.08.25 23:39:30)

( `ε´)つ生意気~~  
電波青年 さん
私は学生ですが、私もしばしば、悪意に晒されてます。?
しかし、やっぱり、善意も沢山、あるんです…
その分、善意がより光って感じられています…

って、⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡生意気言ってすいません。 (2006.08.26 00:47:39)

Re:世の中には悪意というものがあって(08/24)  
つっこみの母さんへ

ご自身の体験にもとづく貴重なアドバイスありがとうございます。「同じ土俵にのらない」「信頼する人間と気持ちを分かち合う」というご忠告、肝に銘じます。

>自分の中にそういう悪いものがなかったことを喜ぶしかありません。

ほんとうにそうですね。でもこんなにたくさんの親身なコメントがいただけるとは思っていませんでした。そういう意味でも自分の幸せを噛みしめております。

ありがとうございました。 (2006.08.26 06:30:05)

Re:がんばってください(08/24)  
freedomさんへ

この曲、私も大好きです。スティービー・ワンダーも唄っていますよね。前向きに明るく歌いあげるのにふさわしい曲です。この曲をこころのなかに鳴らしながらがんばりたいと思います。励ましのおことば、どうもありがとうございました。
>人から中傷されるのは相手が考えている以上にダメージがありますよね。お気持ち察します。

>私の好きなビートルズナンバー「We can work it out」にこんな一節があります。

>Think of what you're saying.
>You can get it wrong and still you think that it's alright.
>Think of what I'm saying,
>We can work it out and get it straight, or say good night.
>We can work it out,
>We can work it out.

>現実にこううまくいくか分かりませんが、今回の件をうまく収拾できることを祈っています。
-----
(2006.08.26 06:35:26)

Re:( `ε´)つ生意気~~(08/24)  
電波青年さん

>しかし、やっぱり、善意も沢山、あるんです…
>その分、善意がより光って感じられています…

今回の文章に寄せられたコメントを見て、ほんとにそのことを痛感しました。おかげさまであたたかいひかりがみえてきました。ありがとうございます。
(2006.08.26 06:40:30)

がんばってください  
akiko さん
とんだ災難でしたね。でも周りの方がM17さんを誤解することまでにいかなくてよかったです。自分が持っている時間とエネルギーなんて限られたもののような気がするのに、卑怯なことに使ってしまう人は、悲しいですね。でも、そういうことをする人を気にしてMさんの時間まで奪われたらもったいないことです。これからも頑張ってください!
(2006.08.26 09:04:55)

Re:がんばってください(08/24)  
akikoさんへ

ありがとうございます。なんだかみなさんに励まされっぱなしですね。でもおかげさまでもうだいじょうぶです。これからは自分にとって大事なもの、愛すべきもの、好きで好きでしかたのないもの、そういうものにこころのエネルギーを使っていこうと思っています。akikoさんもこの夏はたいへんですね。くれぐれもおからだに気をつけてください。福岡もけっこう暑いみたいですから。かけがえのない「希望」を大事に育んでくださいね。激励ありがとうございました。 (2006.08.26 20:32:20)

遅ればせながら…  
somewhere else not here さん
事情がありまして、今海外です。数日ぶりに訪問しましたら、なんだか大変そうなエントリーを拝見してしまいました。ご心中お察しします。とは言うものの、おそらくM17様のお気持ちを手に取るように分かる程、人生経験も積んでいませんし、ましてやテレパシーもありませんので、おかけする言葉を探してしまいました。
犯人がある程度特定できたとしても、その行為までがなお一層無意味に感じられて、もう何もかもが虚しくなってしまわれたのではないでしょうか。どうぞ、これまで通りお仕事を続けられてください。 (2006.08.27 12:37:18)

Re:遅ればせながら…(08/24)  
somewhere else not hereさんへ

そうですか、海外におられるんですね。遠くまでご心配をかけて誠に申し訳なく思います。でも、もうだいじょうぶです。所詮、悪意は単数、善意は複数です。多くの方の励ましは「ふだんどおりにやりなさい」ということですね。悪意に対する最も有効な対抗策は「日常些事を大切にすること」であるということを今回学んだ気がします。どうもありがとうございました。 (2006.08.27 19:44:41)

Re:「卑劣」について(08/24)  
ジュン さん
いやあ、大変でしたね。 これは一種のイジメかも。 M17星雲さんが妬ましくって羨ましくって、そして悔しかったのでしょう。 そういう人いますね。 特定出来たというその人は「かなりな人」のようですが、そういう人をして悔しがらせたM17星雲さん。 私は知らなかったのですが有名なんですね、添削の先生として。 機会があったら書店で探してみますよ。

同じ土俵に立たない、悪意は単数善意は複数、っていいですね。 私も肝に銘じます。 (2006.11.25 15:26:22)

Re[1]:「卑劣」について(08/24)  
ジュンさんへ

まあ過去のことですので、コメントは控えましょう。しかしこの時に多数寄せられたコメントには深く励まされました。こころの力になりました。ブログをやっててよかったなあと思いました。 (2006.11.25 21:38:52)

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kuro@ Re:「チャンドラーのある」人生(08/18) 新しいお話をお待ちしております。
あああ@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光2(03/03) 非常に面白かったです。 背筋がぞわぞわし…
クロキ@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光2(03/03) 良いお話しをありがとうございます。 泣き…
М17星雲の光と影@ Re[1]:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01) まずしい感想をありがとうございました。 …
映画見直してみると@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) 伊集院がトイレでは拳銃を腰にさして準備…
いい話ですね@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) 最近たまたま伊丹作品の「マルタイの女」…
山下陽光@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) ブログを読んで、 ワクワクがたまらなくな…
ににに@ Re:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01) 文句を言うだけの人っているもんですね ま…
tanabotaturisan@ Re:WILL YOU STILL LOVE ME TOMORROW(07/01) キャロルキングの訳詩ありがとうございま…
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