2006年10月08日
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運動会後、わたしの実家へ泊まりに
行ってしまったので、この日は朝から
慌てることもなく、望実ちゃんを居間に
寝かせておくことができました。

荒れ模様だった、6日とはうってかわって、
翌日からはすっきりとした秋晴れとなりました。

8月29日、焼き肉の日に生まれ、
中秋の名月である10月6日の19時28分に、
お空に還った望実ちゃん。

苦しい状況と闘っている間は、あれほど
他人から聞きたくなかった
「がんばっている」という言葉。

しかし、安らかなお顔で眠る望実ちゃんを
見ていると、自分も今は心から
「よくがんばったね」としか、
かけてあげられる言葉を思いつきません。



火葬場の予約は午後2時からだったため、
午前中は時間の余裕がありました。

ムスメが「あかちゃんにしてあげるの~」と
小さいときにムスメ自身が使っていた
いい音のするガラガラをハハに持ってきて、
鳴らして見せたことがありました。

おもちゃを入れてあげることができるかどうかは
火葬場に行ってみないとわかりませんが、
ガラガラを持っていくことにしました。

人形用の靴、新生児用の靴下(ムスメのお下がり)、
ムスメが小さいとき、気に入ってよく読んであげた
「おつきさま こんばんは」の絵本。

なんだか、望実ちゃんの棺に入れる持ち物は、
すべてお下がりといった状況に
なってしまいました。



臨終を迎え、1日が過ぎたいま、
望実ちゃんの身体はやや乾燥したようで、
目や肌の水分が失われたせいか、

薄く開いた眼もきちんと閉じ、
開いて歪んでいた口元もいくらか
結ばれかっていました。

本当にお地蔵様のお顔そのものです。

おだやかに笑っているように見えます。

病院に持っていくために、わたしが搾って
パッキングして、冷凍してあった母乳を、
実母と義母が望実ちゃんの枕元に
いくつも並べておいてくれていました。

その姿を見たダンナさんが、はじめて
声をあげて泣きました。



早めに自宅にやってきたダンナさんの
ご両親とともに出発しました。
一時間も早く、市営斎場に到着しました。

お葬式では、内部を防水した棺を用意し、
霊柩車でご遺体を運ぶのがふつうです。

大人の身体は大きいため、まず間違いなく、
棺は用意してもらわねばなりません。

ですので、葬儀屋さんを頼むのが
当然のこととなります。

手続きの書類を記入したり、区役所に
提出しに行ったりするのが、
ものすごく面倒、というわけではありませんが、

他人に任せられる雑事ならば、余計に、
慣れた業者に頼んだほうがいいのでしょう。

盛大にご葬儀をされるとなると、喪主は
親類縁者のお相手もせねばなりません。

ただでさえ、悲しみに暮れているなか、
慌ただしい時間を過ごす関係者には、
精神的にも、時間的にも余裕は
ないだろうな、としみじみと思いました。



葬儀屋さんを通さずに、直接、
火葬場に予約を入れたので、骨壺がありません。

訊けば、売店で販売しているということなので、
行ってみると、普通にお菓子や飲み物が
売られている、キオスクのような売店でした。

本当に置いてあるのかしら、と疑問に
思っていたら、戸棚の奥から係の人が
出してきてくれました。

骨壺など購入したことがありませんから、
値段などわかりません。

価格を訊いてみると、最小サイズの
骨壺の価格は、なんと525円でした。

なんだか、思いがけなくお手軽な価格に、
笑ってしまいそうになりました。

望実ちゃんを寝かせた箱を膝に抱きながら、
喫茶フロアで実父の到着を待つ間、
みんなでお茶しました。

箱の上にはタオルを被せてあったのですが、
周囲の人は気にしているように思えました。



実家の父が到着すると、すぐに
火葬してもらえることになりました。

火葬炉のある1階へ降りると、
望実ちゃんの名前がありました。

この斎場は横浜市内では一番新しい施設で、
建物自体もかなり広く、きれいです。

用紙に名前が印刷されて張り出されて
いるのかと思ったら、じつは大きな
モニターに名前を表示してあるのでした。

うーん、近未来的。

妙なところで感動です。

係の男性が移動用の台を運んできました。
金属製の台の上に、望実ちゃんを寝かせた
箱を乗せました。

火葬炉の部屋に我々を案内してくれ、
望実ちゃんとの最期のお別れをしました。

望実ちゃんの足下に、靴を並べました。
靴下も入れました。
母乳のパックを、頭の回りに並べて、
全部入れました。
絵本を頭の上に立てて入れました。

おもちゃは燃え切らなかったり、
ダイオキシンが発生する可能性が
あるため、入れることができませんでした。

買ってきた色とりどりの花を、
身体の回りに並べてあげました。

もう、顔を見ることもできないんだ、
二度と会うことができないんだ、

目に、記憶にしっかりと
焼き付けておかなければ、と思いました。

ものすごく悲しくなって、声を上げて
泣きたくなったけれど、どうしても
人前で号泣することができなくて、
とうとう最後までこらえてしまいました。

小さな、紙製の棺。
水色と金色のデザインの包装紙で
くるまれた、小さな小さな棺。

自動で四角い部屋の中へ、
滑るように運ばれていきます。

銀色の金属製の扉が閉まります。
家族は、手を合わせて送りました。

一番小さな炉のなかに、望実ちゃんは消えました。



身体の小さい望実ちゃんは、
焼却時間が短くてすむため、

通常は1時間かかるところが、
半分ほどで終わるだろうと言われました。

ふたたび2階の喫茶フロアに戻り、
終わるのを待ちました。

本当なら、故人を偲んで、思い出を語る
時間なのでしょうが、39日しか
この世に生きられなかった
望実ちゃんの思い出は、あまりにも
少なかったのでした。

自然と、どうしてこの斎場になったのか、と
言う話になりました。

ダンナさんが最初に電話をかけた斎場は、
すでに予定がいっぱいで、10日まで
空きがないと言われたんだそうです。

次にかけたのがここで、すぐにも
予約を入れてもらえると言われ、
決めたのでした。

そして、残りの時間は、なぜかムスメの
話題で盛り上がったのでした。



30分ほどで、アナウンスが入りました。

先ほどの火葬炉から、コンクリート製の
台がせり出してきました。

まだ一部が真っ赤に熱をもっています。
台の上に、ほんのわずかな骨が見えました。

別室に移動を促され、係の方が望実ちゃんの
お骨を運んできてくれました。

正直なところ、赤ちゃんの骨は残らないと
聞いていたので、骨粉だけになって
いるかなぁと思っていました。

ところが、運ばれてきたお骨は、
きちんと形が残っていました。

お箸でつまんでも、壊れないほどに
しっかりとしたお骨でした。

大腿骨、骨盤、腕の骨、頭蓋骨…。
ちゃんと拾えました。

小さいのに、ここに存在していたことを
主張しているようで、嬉しかった。

たしかに生きていたんです。

望実ちゃんは、お骨の量にしては、
最小サイズでも大きすぎる骨壺に
ちんまりと収まりました。



「骨がちゃんと残っていてよかった」と
車中でダンナさんに話しました。

「今は炉のなかにモニターがついていて、
 ちゃんと確認しているのかもしれないね」

ゴミ焼却場にはそういう装置がついて
いることを教えてくれました。
鉄鋼関係の炉も同じだそうです。

4年前に建設された斎場であるだけに、
そういう設備も充実しているのかもしれません。

ちゃんと骨の形が残っていて、本当によかった。
そう思いました。



ダンナさんの実家では、お寺さんの敷地に、
代々が眠るお墓があります。

公園墓地でなかったからこそ、
じつは融通が利いて、葬儀屋さんを頼まなくても、
お寺でお経を読んでもらえたのでした。

午後4時にお寺に到着すると、
ダンナさんと、ダンナさんのお父さんが
住職さんに呼ばれました。

白木でできた、筆書きの位牌をもらいました。
四十九日後の納骨のときに、黒塗りの
ちゃんとした位牌ができあがってくるそうです。

望実ちゃんの戒名は、
「妙実嬰女(みょうみえいにょ)」になりました。

生まれて1ヶ月と少ししかこの世に
いられなかったため、仏様の世界では、
胎児の扱いになるようです。

年齢は数え年になるので、
一歳になっていました。

住職さんにも葬儀屋さんを
通さないのは珍しい、と言われました。

直接、病院から家には連れ帰らず、
葬儀屋さんを呼ぶ人が多いのかもしれません。

住職さんは、赤ちゃんのお葬式が
昔に比べて減ったと言っていました。

医学が進み、亡くなる子供が確実に
減っているのでしょう。

その反面、20年前なら助からないはずの
子供が生き延び、なかには障害を残して、
医療のありかたに悩み苦しむ両親が多いことを、
わたしは今回のことで思い知りました。

お産は喜びの瞬間であるけれど、
それだけに不幸に見舞われた場合、
悲しみが深いのです。

皆の多くの喜びに隠れ、人知れず
涙を枯らしてきたご夫婦の存在は、
決して少なくありません……。

四十九日後、お墓に入る望実ちゃんのために、
お墓参りをして、ご先祖様にかわいがって
いただけるよう、よくお願いしてきました。



それから実家に帰り、ムスメを迎えに行きました。
夕食をとり、お風呂に入ってから、
自宅に帰りました。

ムスメは帰りの道で、すっかり
寝入ってしまいました。

わたしの膝の上で、望実ちゃんは、
さらに小さくなっていました。

でも、もうこれ以上、姿形が変わってしまう
不安を感じることはありません。

ほっとしていました。

ムスメを布団で寝かせ、ダンナさんの実家から
借りてきた仏具を並べ、お線香をあげました。
持ち帰ったガラガラを置いてあげました。

明日、新しい仏具一式を買いに行きます。









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最終更新日  2006年10月10日 13時38分56秒
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