プリティかつ怠惰に生きる

プリティかつ怠惰に生きる

Oct 8, 2007
XML
カテゴリ: その他
 その日僕は、普通に部活を終えて、普通に帰ろうとしていました。

 授業が終わった後は、皆で部活をして、9時ごろに学校を出る。これが、いつものパターンです。その日も例外ではありませんでした。倉庫を閉め、電気を消し、ゴミ掃除をして帰路につく。代わり映えのないルーチンワーク。しかし、そんな時、事件は起きたのです。
 携帯電話を取り出そうとポケットを探る。しかし、あるべきものがない。携帯電話はある。だが、何かが足りない。背筋は冷え、脂汗が出てきます。何がないのかすら分からない。しかし、確実に何かがない。得体の知れない焦りが、僕を混乱に陥れます。落ち着け、冷静になれ。何が足りないんだ。いつも持っているものは何だ? 今もっていないものは何だ? かばん、携帯、財布。そして……。その存在に気づいたとき、血の気が引きました。
 自転車の鍵が、ない。
 そう、いつも愛用しているマイ自転車の鍵が、煙のごとく消失してしまったのです! あああ、あれがなければ徒歩20分の距離をえっちらおっちら歩かなくてはならないではないか! それだけではない! 明日の朝は兄か母に頼み込んで車で送ってもらわなくてはならないではないか! そんな負担をかけさせるなんて、なんて心苦しい! そんなことはさせないぞ!
 僕は走りました。行く先は部室です。実は、自転車の鍵が見付からないのは、珍しいことではありません。いつも部室でごろ寝してから練習場へ行くので、たまに財布携帯などを置きっぱなしにしてしまうのです。しかし、その日は何か嫌な予感がしていました。いつものことじゃないか。なのに、どうしてこれほどまでに僕は不安なんだ? 答えられることのない問いは、虚空へと消えていきます。胸を締め付けるような焦り。いつものことだ。何度自分に言い聞かせても、心臓の鼓動は鳴り止みません。気がつけば、息が切れるほどの疾走。空気を切って走りました。
 部室にたどり着き、震える手で鍵を開けます。扉横のスイッチを押して、暗い室内が明るくなりました。まず、いつも僕が寝るときに小物を置くテーブルに目をやります。しかし、ない。そんな馬鹿な! じゃあ、座ったとき横においたのか? イスの横を探します。ない! そ、そんな! じゃあ、寝たときにポケットから滑り落ちたのか? 荒々しくベッドを探ります。あった!

こうして僕は何の心配もなく帰路に着いたのでした。めでたしめでたし。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Oct 9, 2007 01:22:46 AM
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Calendar

Profile

無知園児

無知園児

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

ペット総合サイト @ アクセス記録ソフト 無料 楽天 アクセス記録ソフト! <smal…
ペット総合サイト @ アクセス記録ソフト 無料 楽天 アクセス記録ソフト! <smal…
王様@ 潮 吹 きジェットw サチにバ イ ブ突っ込んだ状態でジェット…
ドライブ好き@ 風呂入るのメンドクサイ! <small> <a href="http://feti.findeath…
チリチリ@ 次は庭で全裸予定w <small> <a href="http://kuri.backblac…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: