ホンコンスターオーの香港日記

ホンコンスターオーの香港日記

第22回 和僑会



テーマ:「中国にある日本中小企業の生態」
講師:珠海日本語学校校長/周 文匯先生
日時:2007年2月16日 19:00~

I.日系企業の歴史的考察
◎日中合作は15世紀の倭寇にまで遡るのではなかろうか。
初期の中心人物は王直という人物と言う事まで分かっているので、
倭寇をは言っても日本人単独ではなく合作であったと推論する。
◎1930年代:上海の紡績工場。
日中交流の立役者内山鑑三が上海四川路に住居していた。
この辺りは日本租界であったが、私(周先生)はここの出身だったので
子供の頃よく当時の話を聞かされた。
◎戦時中:満鉄、満州開拓団

II.改革開放経済政策以降の日系企業に対するキーワード
◎1980年代~『無敵の時代』~
日系企業はどこでも歓迎され優遇されていた。
進出企業のほとんどは成功していた、日中友好時代と言える。
日系企業の賃金は他よりも若干であるが高かった。
事例:ナプキンメーカー
当時中国には女性用のナプキンがなかったので画期的商品だった、
そのため夜まで出荷を待つトラックが並び、利益もよかった。
ただ、パートナーが日系企業の直ぐ隣に商品のロゴまで酷似させた
全く同じ製品を独自で立ち上げるような事件もあった。
◎1990年代~『実利の時代』~
中国の国営企業は崩壊し、人材は豊富だった。
差別的な扱いがあっても疑問を感じる風潮はなかった。
事例:通勤
日本人はバスで通勤するが、中国人ワーカーはそうではない。
にも拘らず、遅刻をすると罰金が課せられるようなケースもあった。
だが、当時の中国人ワーカーは疑問にも思っていなかった。
◎2000年代~『乱闘の時代』~
日中関係に感情が入り込むようになった。
政策も日系企業(外資)に対して優遇政策から
内国民待遇政策に転換しつつある。
最低賃金も導入され、標準的な賃金レベルとして浸透した感がある。
最初は300元/月だった。(筆者注:現在はシンセン特区で700元/月)
賃金も“日系企業だから高い“と言う事はなくなった。
雇用形態が1年契約となり、25歳で退職する慣例が定着した感がある。
勤務形態:8時間労働3交代制→12時間労働2交代制。
起業は労働単価が安くなり、ワーカーは手取りが増える。

III.日系企業(主に中小企業)の企業文化に見られる変化
◎日本人の中国人化と中国人の日本人化
・靴の置き方:つま先を玄関かかとを座敷に向け靴を揃えて並べるのが
日本人の置き方だったが、日中が逆転している。(筆者注:2次会でよくわかりました。ご指摘の通り、入船になった靴がたくさんありました。)
・品質管理の要求度合い:出荷が緊急になると“昇級“と称して
出荷させようとするのが日本人で、「何のための品管基準だ」と抵抗するのが
中国人の品管課長。
・5Sの浸透:中国人社員の家まで清潔に保たれるようになってきた。
・言葉(日本語が中国語に):打ち合わせ、金型、図面
・言葉(中国語が日本語に):安排、埋単
・言葉(通関専門用語):来料加工、進料加工、転厰
◎中国人学生の就職浪人:全国で100万人。
・日系企業には大卒者は少なくなった。
・1年続くのは長い方、2~3ヶ月しかもたないケースもある。
・学生の側に由来する原因として考えられるのは、
1.現実世界を直視する認識が足ない。
2.我慢が出来ていない。
3.自分の能力が要求に及んでいないことに気付いていない。
◎本社の派閥が中国にまで持ち込まれるようになっている。
中国人同士の中にまで派閥まで出来るようになった。
◎日本から派遣される駐在員の質の低下:
ベテラン→若手
技術/考え方のしっかりした人→職安で採用/中国で直接採用
(本社で実績を積んでいない)

IV.中国人から見た日本人
◎好感度:1)日本から直接投資した企業2)香港経由で進出した企業3)台湾経由で進出した企業
従業員に対する接し方に差異があると感じている。
金銭的な側面からだけでは表現しきれないが、例えばボーナスについて、
1)の企業は6月と12月にボーナスが出る。(従業員の事を考えている)
2)の企業は年末にダブルペイがある。(現地事情を理解している)
3)の企業はボーナスはない。(日本流の厳しさを知っているが
その反面に暖かさを持っていることを知らない)
◎日本人の金銭感覚がわからない:マーボ豆腐とXOではどっちが高い?
事例1:ある日系企業で会社主催の食事会があった。
中国人社員が習慣として人数よりも多目に料理を注文した。
余ったマーボ豆腐を見て
総経理が食べ物を残すのはもったいない、倹約の大切さについて社員教育した。
ところが、2次会では総経理は社員に対する慰労と称してXOを注文している。
口では“倹約の大切さ”を説きながら“豪勢にXOを注文する”行為に疑問を
感じている。
事例2:ある日本人がりんごを買いに行った。
店のおばさんは普通だったら3元で売るところを5元でオファした。さんざん
値段交渉をした結果、3元で纏まった。
日本人は5元札しか持っていなかったので2元おつりを貰うはずだが、
「おつりが汚い」と言う理由でおつりを受け取らなかった。
おばさん曰く「日本人は面白い」(筆者注:きっと関西人ではない)
◎日系企業に抱く好感
安定感がある。
・給料の遅配がない。
・社内教育が充実している。
◎日系企業に抱く反感
・献策しても上司が受け入れず無力感を感じる。
・日本人社員との待遇の差を劣等感と感じる。
・一時的な仕事場。
事例:半年で日系企業を辞めた人からの手紙
給与面では申し分はなかった。残業代込みで6,000元/月の収入。
日本人は中国人と区別して扱うと感じ、自尊心を優先させている。
付き合い残業が理解できない。処理しなければならない仕事があれば残業する
が上司が残っているからと言う理由だけで退社できないのは理不尽だと感じ
ている。(筆者注:ごもっとも)
◎ショックだった事件:日本人のホームレスが珠海にいる。
競争力のない人を珠海に派遣し、珠海で解雇、本人はアル中になり警察に
保護されていた。
これは極端な事例だが、5,000元/月で日本人を雇用できる時代になって
いる。

V.日経中小企業が直面する問題
1)大企業からのCOST削減要求
大企業の中国進出に伴って進出する中小企業のケースが多く、
日本での取引関係が中国に持ち込まれている。
・納入価格は指値
・利益が出ないのに10%COST削減要求を呑まされる。
2)同業者との競争
・技術者がライバル企業に流出
・金型はかつては年季の入った職人技が要求されていたが、
今ではコンピュータで製作する事ができるようになり
若年層でも製作出来るようになった。
3)不透明な政策:
・増値税、環境保護条例、従業員の住宅等
4)中国個人企業との競合
・小ロット多機種生産に対応するようになっている。
・開発力をつけてきた。
・資本力を持ってきた。
事例:浙江省東陽市のモーターメーカー
町全体がモーターの町であったが、
10年前までは学校の課外活動としてモーターの組み立てを行っていた。
今では最新鋭の製造設備を備える近代的な巨大企業に成長していた。
(筆者注:10年前の遼寧省の小学校でも社会教育と称して
先生が子供に栗を剥かせていたのを見た事がある。
中国全国的な風潮だったのだろうか)
VI.中国人社員が起こしている問題
事例1:ワーカーが入社する時に出すワイロ
・工場の守衛に10元払うと順番を先にしてくれる。
・入社前の健康診断で肝炎で引っかかっても300元で書き直してくれる。
・人事部長に1000元ワイロを渡す。
事例2:虚偽の健康診断
・健康診断書に結核と書いてもらい会社から休暇を貰う。
・会社は静養を申し渡し2か月分の給与を与える。
・本人は翌日から別の工場で勤務。
事例3:割り増し賃金
・成形工場では機械を止められず昼食は30分だけしかも交代となる。
・同僚が食事に行っている30分はひとりなので15分の割増賃金を請求。
事例4:ワイロを堂々と請求
・中国人総務課長が建築会社にワイロをいくら出すかどうどうと請求。
VII.日本人社員が起こしている問題
◎日本人社員の質が低下し、中国人社員の質が向上している。
問題なのは後任者の質、特に後任者が若い場合は中国人社員の方が
仕事の面でも考え方の面でも優秀な場合が多く、
コントロールできなくなっている。
◎日本人社員は密告に巻き込まれると周り全部が敵に見えてしまう。
◎女性関係がルーズ:
女性通訳が総経理を使うようになるケース。
1対1で中国語の勉強
カラオケ店の常連になり、“店の宝“と言われるほど通いつめている。
◎社内派閥:日本人vs.通訳(朝鮮族が多く金さん軍団)vs.四川省派閥
◎在職中から天下りしか考えていない:下請けメーカーの副総経理、ホテル
総経理等
◎組織の長の転職に伴ってグループで移籍
◎郷に入れば郷に従う人もいる。

IIX.結語
日本人と中国人は合作しやすいと考えている。
中国は共産主義一辺倒から市場経済のシステムを取り入れるようになっている。
ただし、合作を進める上で注意が必要なのは日本人と中国人では
価値観に違いがあり、そのことを尊重することだ。
象徴的な譬えだが、桜と梅、刀と青龍刀
私(周先生)は中国人よりも日本人に友達が多い。
日本語もしゃべるが正直な話難しい。
発音も正確ではないし適切な表現もできていないと思う。
その意味ではやはりニセモノなのです。
ですが、造花に安っぽいニセモノ、本物そっくりなニセモノ、
ダイヤモンドで作ったニセモノがあるように、
私はダイヤモンドの造花であるように努力を重ねていきたい。

質疑応答:
問1:従業員と食事は分けたほうがいいのか?
答1:同じがいい。少し脂っこいかもしれないが、その辺りは我慢してほしい。
問2:若い日本人について
答2:かつては日中共に優秀な人材を発掘してきた。
最近は中国に留学に来る日本人でも恥ずかしくなるような人もいるし、
日本に留学する中国人の中にも犯罪に走る人もいる。
問3:日本人と中国人の待遇の差をなぜ昔は問題意識がなかったのか?
答3:生活レベルが上がってくると共にこの辺りの意識が芽生えたのだと思う。


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