入院1日目

お産入院のすべて―2人目編


10月21日(火)入院1日目

■飛び出す母乳

 6時半ごろに目が覚めた。とりあえずトイレに向かう。
 歩く時に会陰のキズがつれる感じがして気になるため、動作が緩慢だ。でも激痛が走るわけではなく、あくまでも気になるだけなので、辛くはない。悪露の量はまだ多く、引き続きお産パッドはLとMの2枚重ねにした。

 昨晩眠りについたのは午前1時半ごろだっただろうか? 子宮が収縮しておなかが痛んだり(いわゆる後腹、後陣痛というヤツですね)、暑かったり寒かったりでしょっちゅう目が覚めつつも、まあよく寝たなという感じで、頭はスッキリしている。

 後腹のせいか、目が覚めた時おなかが筋肉痛のような感じだったが、すぐに治まった。授乳すると子宮が収縮するというから、また痛むんだろうか? 産後看護師さんたちに口々に心配されたヘモ(痔)は、いまのところ痛みナシ。昨晩から痰がからんで気になっていたが、咳をするとおなかに力が入るので、怖くてできなかった。今朝やっと咳ができて、すっきり。

 8時、回診。体温は36.8度。やや高めだ。看護師さんが脈をはかる。
 次に、おっぱいの様子をチェック。看護師さんは乳首をさわっては「やわらかーい!」と驚き、つまむとピューピュー飛び出した母乳に「わー、すごーい! 出産翌日からこんなにピューピュー出る人、初めて~! 張らなくても出るっていうけど、本当なんだ」と感心したように言った。「これなら今日は母乳だけでいけそうだから、早めに赤ちゃんをお部屋に連れてきますね」。

 「前回も母乳だけだったんですか?」と聞かれ、陥没乳頭でうまく吸わせられず、混合だったという話をすると、「吸わせていると赤ちゃんの吸いやすい形になるというけど、本当なのね。ちゃーんと直るんだね」とまた感心したように言われた。

 看護師さんが部屋を後にすると、おなかが空いてきたのに気づく。早く朝食来~い!

 …という私の強い願いが聞こえたかのように、やがて朝食が部屋に運ばれてきた。今朝のメニューはご飯(茶わん2杯分)、みそ汁(豆腐、タマネギ、ニンジン)、納豆、ハムエッグ、生野菜(レタス、トマト)、果物(グレープフルーツ2切、薄切オレンジ1枚)、チーズ1個、グレープフルーツジュース、ホットコーヒー、牛乳1本。

 …完食ナリ。

 満腹になってご機嫌だったのも束の間、やがておなかが張ってきた。トイレに行くが、怖くて力を入れられないせいもあって便は出ず。おなかが苦しい。

 10時20分、看護師さんの回診。貧血検査のため血液を採取し、昨日から刺しっぱなしだった左腕内側の点滴針を抜いてもらった。やっと左腕が自由になったぞ。

■ガッツくん(仮)来室

 回診後まもなく、赤ちゃんがやって来た。2人目ということで授乳・オムツ替え指導を受けない分、早く来たようだ。母乳をがんばりたいのであればずっと部屋で見ていてもいいが、そうでなければ今日は20時ごろまで一緒にいていいとのこと。この産院は昼間は母子同室、夜間は母体の回復のため、基本的には新生児室で預かるという方針を取っているのである。

 赤ちゃんは新生児室でミルクをたくさん飲んできたのか、ぐっすり寝ていた。昨日よりは顔のむくみが少し取れたが、まだかなりむくんでいる。特に目のあたりのむくみがすごくて、相変わらずガッツっぽい。正式な名はすでに決めているものの、思わずガッツくんと呼びたくなってしまうようなお顔である。

 昨日までこの子がおなかの中にいたんだなあと感慨深く眺めていると、ほどなく昼食。メニューはご飯、唐揚げ、エビフライ、タコとマグロの刺身、がんも煮物、お吸い物、ゴマまんじゅう、スイカ、バナナ、緑茶。おなかが張っているのに、またもやペロリと平らげた食いしん坊な私。

 昼食の途中で廊下からルンバの「ママに会いたいの~!」という声が聞こえてきたと思ったら、ドアからルンバが顔をのぞかせ、にっこり笑って「ママ~!」と飛びついてきた。両親と夫、長男ルンバがお見舞いにやって来たのだ。ちょうどよかったと赤ちゃんを見ていてもらい、その間にトイレへ。キズの痛みに苦しみながらパッドを替えていたら、洗面所からガチャガチャと音が聞こえた。ものすごーくイヤな予感がしてあわてて個室から出ると、ルンバが洗面所にディスプレイされていたガラスのアロマキャンドル入れをいたずらし、看護師さんに「あぶないよ~」と注意されているところだった。な、なんでルンバが一人でついてきてるんだ~! 病室に戻ると両親と夫が悠長に赤ちゃんを見つめていた。赤ちゃん見たいのはわかるけど、ルンバを一人でトイレについて来させるなあ! こっちはキズがあってトイレも時間がかかるんじゃあ! まったくもう。

 その後、両親と夫は昼食をとりに外へ。ルンバは「ママといるの」と私にくっついて離れず、仕方ないので私の昼食を一部あげながら、3人の帰りを病室で待ったのだった。

■元気元気!と思っていたが

 3人が戻ってくると、私はしゃべりまくった。異様なハイテンションがまだ続いているのだ。なかなか陣痛が来なかったこと、本当に痛かったのは破水から出産までの1時間だけだったのでルンバの時に比べずいぶん楽に感じたこと、おかげで産後も前回に比べ体力が残っている感じだし、元気なんだよ~てなことをベラベラと話し続けた。

 15時、回診。体温を測る。パルタ37.5度、私は36.9度。
 おやつも運ばれてきた。ういろう、くりまんじゅう、みかん、グレープフルーツ。

 16時、明日は出社しなければならない夫は今日中に自宅に戻るため、父とルンバが駅まで送っていった。2人が戻ってくると母が「夕食の支度をしに帰らなきゃ」と言いだし、「ルンバくんはまだママといたいんでしょう」とか言いながら、ルンバを一人残して父とともに行ってしまった。

 2人が行った途端、ルンバが「おじいちゃ~ん、おばあちゃ~ん!」と追いかけようとしだした。こちらは授乳しているものだから、部屋の外に出られない。授乳しつつ脱走されないようにルンバをなだめ、あわてて実家に電話をかけて父に迎えに来てもらった。

 後で聞いたところによると、ルンバは帰りの車の中で寝てしまい、すぐに実家に着いて起こされると寝不足のせいで不機嫌きわまりなく、30分の間「ママのところに行くの~!」と泣き叫んで、父と母を困らせたらしい。

 私はといえば、みんなが帰った後、どっと疲れが出た。病室にルンバを一人置いていかれては、場所が病院といいうだけで、私がルンバの面倒を見るのにかわりないものなあ。疲れを感じるとともに、ヘモが痛くなってきた。まずい…。

 18時の夕食、20時の夜食も全部食べたが、おなかが張ってますます苦しい。ヘモも時間を追うごとに痛みを増してきた。

 20時過ぎの回診でパルタを新生児室に預け、ヘモのための座薬をもらい、円座を借りた。さあ寝よう!と思うも、ヘモが痛くて寝られやしない。明け方4時ごろにはおっぱいが張って痛くなってきたので、搾乳するより直接吸わせたほうがいいだろうと、パルタを部屋に連れてきてもらって授乳。ゴクゴク飲んではくれるけど、頻繁におっぱいを求めて泣くので、またまた寝られない。寝不足と疲労でヘロヘロ、体調最悪の朝を迎えることになったのだった。


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