こわれうつわ。

こわれうつわ。 11月14日(金)


ある時代のある国のお話~~~
はじまりはじまり~~~~
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ある時代、ある国がありました。
その国の住人は、みんな器を持って生まれてきました。
大きな器、小さな器、いろんな形の器を持って生まれてきました。
その国の住人は、一生、その器に水を汲み、神の器と言われる大きな器に水を移す仕事をしていました。
神の器は、それは大きな器で、非常に美しいものでしたが、あまりにも大きく、その全貌を見た人はいませんでした。
そして神の器に多くの水を汲み入れたものが天国に行けるとしんじられていました。
不思議な事に、その国の住人が死ぬ時、その人が持っている器が自然と壊れるのです。だから、その国の人々にとって、器が壊れることは死を意味していました。


その国にパノプティコンという人がいました。
彼の器は、生まれた時から割れかけの器でした。
なので、いろんな人が彼のことをバカにします。
こわれうつわのパノプティコン!、こわれうつわのパノプティコン。!
でも、そんな言葉にめげることもなく、彼は毎日、誰よりも熱心に水を汲み入れていました。
ある日、小さな器の人が道に座り込んでいました。
「なぜ、すわりこんでるんだい?」とパノプティコンが聞きました。
「見てくれよ、僕の器、こんなに小さいんだ。こんなんじゃ、まったく水を汲めないよ。」と小さな器の男がいいました。
「僕の器をみてくれよ。最初っから割れているんだ。それでも、毎日水汲みはかかさないよ。でも、すぐ水が漏ってしまって、ほとんどなくなっちゃうんだ。」とパノプティコンが言いました。
それを聞いて、小さな器の男は元気がでました。
「器の壊れた人でもがんばっているんだから、僕もがんばらなくっていゃいけないね。」
そして元気いっぱいに水を汲みにいきました。
別の日、別の場所で、大きな器を持った男が道に座り込んでいました。
「なぜ、すわりこんでるんだい?」とパノプティコンが聞きました。
「僕の器をみてくれよ。こんなに大きいんだ。みんないいなーていうけど、水をいっぱいに入れたら重くて動けないんだ。」と大きな器の男がいいました。
「僕の器をみてくれよ。最初っから割れているんだ。それでも、毎日水汲みはかかさないよ。でも、すぐ水が漏ってしまって、ほとんどなくなっちゃうんだ。水が重いなら半分だけ入れて運べばいいんだよ。」とパノプティコンが言いました。
それを聞いた大きな器の男は元気が出ました。
「器の壊れた人でもがんばってるんだから、僕もがんばらなくっていゃいけないね。僕の器は大きいだけで漏らないんだから。」
そして、元気いっぱいに水を汲みに行きました。
そんな風にして、変な形の器の人や小さな口の器の人やいろんな器の人たちを励ましていました。
ある日パノプティコンが神の器に水を入れていました。
もう、夕暮れから夜になる時間でした。
微かな残照が神の器に照りかえり、鏡のようになっていました。
その鏡のような神の器に、パノプティコンの姿が写りました。
壊れかけの器をもち、必死に水を汲み入れている男の姿でした。
その姿を見た瞬間、パノプティコンの中で何かがはじけました。
僕は、いろんな人を励ましてきた。でも本当はその人達を心からうらやましく思っていたんだ。そして、本当に励ましたかったのは自分自身だったんだ。
その思いに気付いたとたん、赤い炎がパノプティコンの心を支配しました。その炎はパノプティコンの心を焼きました。そしてその衝動にとりつかれて自分の器を、自分の姿が写っている神の器に思いっきり投げつけたのです。
パノプティコンの器と神の器がぶつかりました。
その瞬間、この世のものとも思えないような美しい音色が響きました。それは信じられないような大きな音でパノプティコンの耳に響きました。
パノプティコンはその音色に聞き惚れました。その音のなかには今までパノプティコンがいろんな思いで汲んできた、水の音が全て含まれていました。そして、いままで神の器に汲んでこられたすべての人の思いが渾然一体となって響いていたのです。
パノプティコンが気付くと音が止んでいました。
一瞬のことだったようで、永遠だったような不思議な時間でした。
ハッと気付きパノプティコンは自分の器を見ました。
奇跡的に器は壊れていませんでした。無数のヒビは入っていましたが壊れていなかったのです。。。

それ以来、パノプティコンは、今までより一層、水汲みに励みました。
そして彼の一生が終わる時、彼の器は砕けて9つの珠になりました。
その奇跡を尊び、人々は彼の珠を神の器の回りに「パノプティコンの珠」として、据え置いているそうです。








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