ひつじごてん~第4回~トロトロ鼠の巻き~





羊御殿の羊君は今日も退屈。

なにしろうまれてから一度も外にでたことがないのです。

「たいくつだよ~。」と羊君。

そこにするするっと山羊執事がやってきました。

「羊君、退屈している場合ではありません。いまトロトロ鼠が羊御殿に大量発生しています。早くつかまえないとたいへんなことになってしまいます。」と山羊執事。

「たいへんって?」羊君。

「トロトロ鼠にさわるとトロトロになるからです。羊君もお気をつけください。もしトロトロ鼠を見つけても決して触ってはいけませんよ。」そういって山羊執事はするするするっと出ていきました。

そんなことを聞いて羊君の頭の中はトロトロ鼠で一杯になりました。
トロトロってどんな風になるのだろう?

羊君はそっと部屋をぬけだしました。

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羊君は廊下をあるいています。でもだれにもあいません。
たぶんトロトロ鼠が出たからみんなかくれているんだ。と羊君はおもいました。

おやおや?だれかいます。

「やあ、君はだれだい?」と羊君。

「やあ、僕はトロトロ鼠だよ。」とトロトロ鼠。

いきなりトロトロ鼠にあってしまった羊君。どうしようかこまりました。
だっていきなりなんだもの。

「ねえ、こんなところで何をしてるの。」と羊君。

「トロトロになりたいやつをさがしてるんだ。」とトロトロ鼠。

「トロトロってどうするの?」と羊君。

「脳みそをトロトロにするんだ。するとな~んにも考えないでよくなるんだ。すご~く気持ちがいいんだよ。どう、やってみる?」とトロトロ鼠。

「脳みそをトロトロにされるのなんかいやだな~」と羊君。

「大丈夫だよ。トロトロになっても生きてるしなんにも考えずに生きることができるんだ。いままでいろいろ考えて生きてきただろう?それが今からの人生、何も考えずに生きることができるんだ。
素敵だろ?」とトロトロ鼠。

羊君は何も考えなくなる事を考えました。でも、なにかすごくいやでした。

「何も考えなくなるのはいやだな~。」と羊君。

「どうして?いままでの人生でいろんなこと考えてきただろうけど、何かいいことあったかい?考える事が良い事を呼ぶなんてことはないんだ。それならいっそうのこと何も考えない人生なんて素敵だろ?何も考えなくて良いんだよ。なにも。」とトロトロ鼠。

「いや、やっぱり何もかんがえなくなるのはいやだ。トロトロ鼠は何も考えなくなるのがいいの?」と羊君。

「当り前じゃないか。考えるより何も考えない方がいいにきまってるよ。」とトロトロ鼠

「み~つけた!」と後ろから声が聞こえました。
羊君が降りかえるとトロトロ鼠がたっていました。

「見つけたよ。ねえ、すぐに僕をトロトロにしてくれ。すぐにすぐに!!」と今来たトロトロ鼠がいいました。

「あぁ、しょうがないな。先に見つけたほうがトロトロになれるルールだから。」そういう最初からいたトロトロ鼠は口から長い舌をだしました。
その長い舌がするするともう一人のトロトロ鼠の耳の穴に入っていきます。チュウチュウチュウと音がしました。音がするたびに舌を耳に入れられて方のトロトロ鼠がうっとりとした顔になっていきます。しまいには床に倒れこんでしまいました。

「あ~ぁ、みつかっちゃった。僕が最後になっちゃった。おもしろくないな~。」とトロトロ鼠。

「どうなったの?」と羊君。

「僕が最後のトロトロ鼠だから、僕をトロトロにしてくれる人はもういないんだ。僕はそれが悲しい。」とトロトロ鼠。

「なぜ、かなしいの?トロトロにならずにすんでよかったじゃない。」と羊君。

「みんなでトロトロになるのが幸せなんだ。みんな一緒がいいんだよ。あ~あ。」そう言ってトロトロ鼠は去っていきました。

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山羊執事が羊君の好きな山胡桃のジュースを持ってきてくれました。

「いろんなところにトロトロになったトロトロ鼠が見つかって大変です。早くあつめて燃やさないと。」と山羊執事。

「もやしちゃうの?」と羊君。

「トロトロになったトロトロ鼠は燃やすしかないのです。」と山羊執事。

「他に方法はないの?燃やす以外で。」と羊君。

「ありません。」と山羊執事。

羊君はじっと山胡桃のジュースをみました。
ちいさくため息をつきます。
そしてストローで飲み始めました。

チュウチュウチュウ。


羊御殿第4回~トロトロ鼠の巻き~

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