一即多、多即一

一即多、多即一

華氏911



 ドキュメンタリーは真実をありのままに伝えることであるのが前提であるが、それからするとこの作品はマイケル・ムーアの色が強く出ていて、純粋なドキュメンタリーと言えないかもしれない。彼の主張が全面に出ているから、それを注意して見た方がよいと思う。しかし、いくつか注目すべき映像があるのも事実である。

 911テロがあったとき、ブッシュはマイアミの小学校を訪問していた。そこで報告を受けたが、ブッシュはしばらくそこから動かず、子供達と一緒に過ごしていた。それほど大事な報告があったのならすぐに行動してもよさそうなだが、全く何もしていない。こういった事実はアメリカ国民に知らされていなかったのだろうか?少々不思議である。

 イラクで子供たちが先頭の犠牲になっている映像は実に痛々しい。戦争を肯定したりやむを得ないと主張する人たちは、そういった映像を見た上でもまだそういった主張ができるのであろうか?現場はもっとすさまじいことであろう。人間の愚かさに暗澹たる気持ちにもなる。

 短いショットだが、日本人は注目すべき映像がある。数ヶ月前イラクで邦人三人がとらわれの身となった。彼らに対して自己責任論や挙げ句の果てには自作自演説まで展開され、非難ごうごうであった。無論彼らにも注意すべき点はたくさんあったが、ただ世論の彼らに対する非難の仕方は、少々行き過ぎではないかと思わせるものであった。
 彼らがのど元に刃物を突きつけられ脅されている映像がある。そのときの恐怖の表情は、とても自作自演とは思えない。自己責任だ自作自演だと軽く語る人は、自分自身がその様な目にあった時、どのような反応をするのだろうか?安易な非難をする人は、まずはその映像を見て、我が身に置き換えてから言ってほしい。そういう人は我が身に置き換えてということがなかなかできないのだろうが。

 これはマスコミで報道されていることしか知らなかったり、マスコミの報道が真実であると思っている人こそ見た方がいいと思う。マイケル・ムーアもすべて真実を語っているとは言えないだろうが、マスコミに毒された人々はこういった事実もあるのだ、ということを認識しておくことは大切であろう。

 マイケル・ムーアはこの作品を上映することによって、ブッシュの再選を阻止しようとした。しかし、結果はそうはならなかった。アメリカでは結局ブッシュ支持の人はこの作品を見ることはあまりなく、ブッシュに反対する人や、民主党を支持する人が主に見たようである。マイケル・ムーアはブッシュを支持する人にこそ見てもらいたかっただろう。なかなか世の中思い通りにはいかないものである。

 ブッシュが当選したことについて嘆いたり、憂いたりする人もいるだろう。しかし現実は現実として受け止める必要がある。これからどうしていけばいいか?それを考え実践していくことが大切である。マイケル・ムーアも次回作のことをすでに考え実行しようとしているようである。彼の考えに賛同するかどうかは別にして、その行動力、実行力は見習うべきものがあると思う。

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