水 沢 有 美

水 沢 有 美

水沢有美さんと<青春学園シリーズ>第14回


第一部:夏木陽介主演『青春とはなんだ』(13)
新旧三人目娘競演 ~『青春とはなんだ』第39話「大空に夢を描けば」篇~


 いよいよ『青春とはなんだ』もラストスパートに入ってきました。今回は主に第1クールで豊浦美子、岡田可愛と共に三人娘を形成していた土田早苗さんが久々で最後の登場となります。土田早苗さんは関西から日曜日ごとに撮影に通っていたという制約もあり、1クール目の高松保夫(杉浦哲章)と樋口育子(土田早苗)の二人のロミオとジュリエット的関係の問題が解決した後の登場はなくなっていました。そのおかげで我らが水沢有美さんの登場機会が増えたわけですが、残り3回となったこの第39話で土田早苗さん最後の登場と相成りました。その第39話の放映日は1966(昭和41)年10月30日でした。監督は高瀬昌弘、脚本は井手俊郎に監督の高瀬昌弘との共同脚本となっています。

 まず、今回のキャスティング・ボードは40人がクレジットされているのですが、これは多い方だと思います。ところで、クレジットされなくても出演していたり、反対にクレジットされていても出演しなかったということは、この頃の作品には多いのですが、ボード作成に時間がかかったために脚本が仕上がる前に作ったためなのでしょうか。仕上げ段階で登場シーンがカットされてしまってということもあったのでしょう。

1枚目 夏木陽介
2枚目 藤山陽子
3枚目 豊浦美子、岡田可愛、土田早苗
4枚目 木村豊幸、矢野間啓治、関戸純方
5枚目 柴田昌宏、杉本哲章、阿知波信介
6枚目 水沢有美、遠山智英子、松田八十栄、田辺和佳子
7枚目 如月寛美、松島真一、光秋次郎、宇留木耕嗣
8枚目 宇仁貫三、田中浩、立花里美、大橋智子、内木祥裕
9枚目 三遊亭小金馬、左卜全
10枚目 名古屋章、菅井きん
11枚目 藤木悠、十朱久雄

 水沢有美さんは、6枚目にサブ女生徒のトップに来ています。4人目の田辺和佳子さんという方は、どの方なのかは分かりませんでした。しかし、東宝映画では、端役の常連女優さんで60年代に活躍されていた方です。おそらく女生徒役だったと思いますが、初めてのクレジットです。3枚目の豊浦、岡田、土田の並びは久しぶりであり、土田早苗さんは最終回には出演されていないので、この並びは今回でおしまいです。

 今回の物語は、前半と後半と分かれています。前半は、勝子(岡田可愛)にあおられて思わず野球部のバットを折った寺田(矢野間啓治)と久保(木村豊幸)が生ゴミ回収のアルバイトをしながら弁償代を稼ぐのですが、その間に中学の時の同級生で魚屋の勝田(松島真一)との軋轢があり、土田早苗さんの樋口育子が間に入ったりします。水沢有美さんをはじめとするサブ女生徒三人(他に松田八十栄、遠山智英子)は後半のマラソン大会から登場します。なお、左卜全さんは生ゴミを受け入れる養豚所のオヤジとして登場します。
 さて後半は、その養豚所の老人(左卜全)が寺田と久保の働きに感謝してバット代の二千円を上回る七千円を払ってくれたことにより、ラグビー部と野球部の親睦をめざした駅伝マラソン大会のカップの代金とされることになります。ただ、当日、中学の同級生で魚屋の勝田の父親が緊急手術をすることになり、樋口育子の連絡で久保が献血をしてそのまま駅伝に出場することになるのです。しかも寺田が走っていると幼い女の子が怪我をしているのを発見するのでした。

 水沢有美さんは、サブタイトル前のプロローグの教室のシーンで顔を出していますが、ラグビー部と野球部の親睦駅伝マラソンの場面からサブの女生徒らと一緒に本格的に登場します。
 それでは、水沢有美さんの出演シーンをチェックしていきましょう。

第1場面(#1)教室
 野々村先生が黒板に「希望」と書いて生徒たちにそれぞれの希望について語らせています。みんなに笑われた久保と寺田の発言に対して勝子だけが真剣に反応します。それに対して水沢有美さん扮する佑子は「どうしたの?勝子」と問いかけます。すかさず順子(豊浦美子)の「夏休み以来、どうかしているのよ。勝子は」という発言に、佑子「(納得したように)あああ…」。つまり、この三人は横三列に並んで座っていました。『青春とはなんだ』では、クラスでの座席や座っている生徒は毎回違うのですが、基本的に順子と勝子は並んでいるのですが、佑子がこの位置に来たのは初めてのような気がします。

第2場面(#34)グランド 35分頃
 ラグビー部と野球部との親善マラソン大会の出発前、みんなが集まっている。先生たちを含め佑子たち女生徒や久保と寺田の父親(三遊亭小金馬、名古屋章)もいます。久保と寺田が病院から戻ってきたのを迎える佑子たち。校長先生のスタートの合図で駅伝大会は始ります。佑子たち女生徒5人(水沢有美、豊浦美子、岡田可愛、松田八十栄、遠山智英子)らも応援団も交代選手を乗せたトラックに同乗して出発します。

第3場面(#36)山道
 トラックが走ってくる。乗っている水沢有美さんたち。いつもながら白いヘアリボンをつけているので、水沢有美さんがいることは遠めでもよくわかります。

第4場面(#37)中継地点 37分頃
 残り3地点らしくトラックに乗っているのは、女生徒5人と選手たち6人となっています。ラグビー部の久保が降りて心配した寺田が声をかけます。水沢有美さんのセリフもあるので、この場面を採録してみましょう。

旗が立ててある中継地点にトラックがやってきて止まる。降り立つ野球部の選手と久保。
寺田 「久保、がんばれ」
久保 「ああ」
勝子 「久保君、山道で大変だからあたしたちの車、一緒に走りましょうか?」
久保 「いいよ。オレ、照れちゃうから一人にしておいてくれよ」
寺田 「だけどお前、本当に大丈夫か」
久保 「いいっていいって、もう大丈夫。さあ、早く」
山道を前の選手がやってくる。
順子 「あ、来たわ! 行きましょう」
キャプテン 「よし、出発!」
走り出すトラック。トラックの上から「がんばって」と声をかけ手を振る女生徒たち。

第5場面(#38)次の中継地点
 引き続き採録します。
止まるトラック。降りる寺田たち。一緒に勝子も降りる。
順子 「勝子、どうしたの」
勝子 「私、ここで久保君の来るの待つわ」
佑子 「どうしたのよ。決勝点に応援団長がいないんじゃ意気があがらないわ。(みんなが同意する声を聞いて)ねえ」
寺田 「まあ、いいじゃないか。勝子ちゃんは最大の難関のオレと久保を応援してくれるんだから」
勝子 「野々村先生に中間報告しておいて。藤井君の健闘でラグビー部の勝利間違いなしって」
順子 「OK。行こう」
キャプテン 「よし、出発!」
走り出すトラック。手を振る佑子ら女生徒たち。
勝子 「お願いね」

第6場面(#43)校門前 43分頃
 アンカーがなかなかやって来ないので、心配している野々村先生たち。佑子ら女生徒もいる。育子も勝田のバイクに乗ってやってくる。心配した野々村先生、永井先生、佑子ら女生徒たちが様子を見に行くために歩き出す。勝田もバイクに乗ってついていくのですが、ここがミソ。

第7場面(#45)道
 歩いてくる野々村先生たち。寺田から山道で足を怪我した女の子を病院に運ぶのを引き継いだキャプテンたち(関戸純方、阿知波信介)が並んで走ってくる。目ざとく見つけた順子に続いて佑子のセリフ「並んでる、並んでる」。
 しかし、様子がおかしいので、勝田のバイクに乗って野々村先生が二人のところへやってきます。ことの次第を知り野々村先生は、さっそく女の子を病院へ運ぶためバイクで走り去るのでした。

第8場面(#47)翌日のグランド 46分頃
 ラグビー部や野球部、野々村先生、永井先生、女生徒たちそれに久保と寺田の父親たちも集まっている。結局、駅伝マラソンは決着はつかずに終わったのですが、勝子の提案でカップ代の五千円は怪我をした女の子の治療代にまわすことになります。そして全員で応援歌「貴様と俺」を歌うのでした。
 野々村先生は永井先生に向かって言います。「こいつら、“希望”という題の作文を行動で見せてくれましたよ」それに応えて永井先生も言います。「わたしたち大人も負けずに頑張らなくちゃ」強くうなずく野々村先生でした。

 以上です。水沢有美さんの登場場面やセリフは、けっして多くありませんでしたが、重要なポイントなるセリフを導いたり、状況説明をする役割を果たしていたと思います。

 次回は、2005年12月19日に亡くなられた藤木悠さん扮する中川先生のエピソードとなる第40話「なぐられた青春」です。『青春とはなんだ』ラス前の一話となります。


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