静謐に揺らぐ
秋がはじまる 毎年のことながら この季節独特の静謐な居住まいに耐えられない どうしてこうささくれるのだろうと 自らのこころをもてあます 片房がいびつになったせいなのか 治療のために付けられた 赤マジックのバッテン印が 放射線で焼き付けられたまま黒ずんで 未だ消えないでいるせいなのか 終わりを閉じると覚悟をしていた生が 続くことになって戸惑うのだ 上手に終われなかった…… 必死に通った治療の日々は こなすことだけが大変で その先を考える余裕などなかった おまけのように付いてきたこれからを 扱いかねて喜べない 敏感になりすぎて 少しのことでも痛みを感じる乳先を 原罪のように引きずって どこへ行こうとしているのだろう |
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