サヨコの土壇場日記

滝桜・2012

滝桜



淡いピンクに
薄墨色を重ねたら
千年の時の色になる


小さな花は身を擦り寄せあって
大きく生きていた


支える人もいる
支えられる枝もある


色も形も匂いもないものが
ガイガーカウンターの警告音を止めないのに
人は普通に生きている


「今年になって やっと蜂と雀が帰ってきたの」


食べてはいけない
菜の花もふきのとうもたらの芽も
観賞されるものとなって
福島の春を舞っている


滝桜の子供だという
樹齢四百年の紅枝垂れ桜にも会いに行くと
枝垂れの向こうから
冠雪の残る安達太良山がひっそりと
こちらを覗くのだ


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