おしゃべり

私は「口から生まれてきたのか!」と周りの人から言われるほど[おしゃべり]というか口が立つらしい。
そんな私でも、小学3年生のある事件が起きるまでは、人見知りの激しいおとなしい子だったのだ。私の幼少時代を知らない人達には、私が無口なおとなしい子だったなどと説明しても、誰も信用しない。
この事件を境に[おしゃべり]の楽しさ、自分の話術で人が喜ぶという快感を私は知り、それから私は無口な女の子から 六口 な奴に変身を遂げた。二十歳を廻ってからは、数百人の同級生前にマイク片手で演説を唱えるのが快感でもあったのだ。カラオケが大好きなのも、多くの人が聞いてくれてこそ快感が増すというもの。

何をそんなに話す事があるのか!とよく父親などからお叱りを受けたが、小学校高学年頃から[人生論]にはまり、ロマン・ロランやヘルマン・ヘッセの本を赤鉛筆片手に読みふけっていた私は、もっぱら友人達と[人生]について討論をしていたのだ。
別に真面目くさって人生論ばかりを唱えていたのではなく、エッチな会話やお馬鹿な会話も山ほどした。
ただ私が嫌いでしなかった話といえば、人の悪口と芸能人の噂話である。
とかく女3人集まればかしまし・・・なのは楽しい事だが、総体的に女というのは人の噂話が好きらしく、その場に居ない女友達の悪口を始めるのには辟易とした。
芸能人の噂話にしても、何ら自分には関係ない根拠のない事に何だカンだ言ったって、何の特も無いと私は思うのだが・・・

イタリア生活を始めるまでは、[女はおしゃべり、男は無口なもの]と勝手な先入観があったのだが、ナント此処イタリアではこの観念は当てはまらないのである。
総体的にイタリア人全員、日本人に比較すれば超おしゃべり人間達ではあるが、イタリア人の男と女、おしゃべり対決させたら男に軍配が上がるのではないかと私は思う。

イタリアのテレビ番組に討論番組が異様に多いのも、おしゃべりな国民性の象徴だ。
有名人に限らず、名も無い一般人出演の討論番組も毎日やっている。その中で、イタリア人の口の回り具合には流石の私もビックリ仰天させられる。
絶対に自分の非を認めないイタリア人 の性格もあるので、「負けてなるものか!」と口が更に廻る。
口を閉じたら負け! とでも思っているのだろう、相手の話など聞かずにしゃべり続ける。
争いごとの嫌いな私としては醜い彼等を見ていると、日本の女達の噂話や悪口なんて可愛いもんだ!と思えてくるのだ。

一体全体、歴史的にイタリア人に何があったのであろうか?
あそこまでに口が立つのには、私の小学3年生事件のように何かしら理由があるはずだ。
それとも育って来た環境だけのせいなのだろうか?
生まれた時からマンマとパパは一日中しゃべり続け、来客があればあったで、赤ん坊のお昼寝なんぞに気を遣う事も無く彼等もしゃべる。[静かな一日]など経験する事無く赤ん坊達は大きくなる。当然この赤ん坊達はおしゃべり大人しか見た事ないので、自分もおしゃべりさんになるという訳か???

病院の待合室やエレベーターの中、バス停やホーム、バールや電車・飛行機の中などなど、公共の場で見知らぬ者同士が二人以上首を揃えると、必ずそこに会話が始まる。
奴らは黙ってはいられないのだ。 [沈黙]は彼等を窒息死させる に違いない。

スーパーのレジでたくさんの人が並んでいても、そんな事はお構いなしにレジのおねえさん・おばさんは客と会話する。二言三言では済まず、いつ終わるともや知れない会話が続くのだ。よって、列の客数が少ないレジを選ぶのではなく、無口そうな客が並んでいるレジを選んで並ぶのが得策なのだ。しかし私の見込みが間違っておしゃべり客が続いた時など、自分の見込み違いに腹を立てると共にイタリア人そのものに怒りが爆発する。
先日などはレジのおばさんが友人から掛かってきた電話で長話をし続けて、流石に我慢強い私も堪忍袋の尾が切れた。順番が回ってきた私の剣幕に早々にレジのおばさんは電話を切ったが、私に謝罪する事無く会話を打ち切られた怒りを顕にしていた。

街中やスーパーの店内で友人・知人と顔を合わせたら、歩道や通路をさえぎってこれまた長~い立ち話が延々と続く。日本と違って巨大なショッピング・カートを引いて買い物している客にとっては、彼等と彼等のカートの隙間をすり抜けるのに相当な苦労をさせられる。
ばか~~~!どけ~~~!口を閉じろ~~~! と、私は日本語で叫ぶのだ。

近代日本の機械的喧騒から逃げ出して来たというのに、こんな原始的喧騒に悩まされるとは、世の中全く思うようにはいかないものである。

さて、ここで日本の皆さんに質問です。
あなたは何分、イエ何十分、もしや何時間、同行者の立ち話を横で黙って待ち続けられますか?
私は現イタリア人夫の友人との立ち話を、 2時間半 待った経験があります。


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: