「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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ぴかろんの日常
リレー企画 133
これで決まりさ! ぴかろん
※132からの続き
僕達は…とても大人気ないケンカをした
本気でテジュンさんに腹を立てた
テジュンさんも本気で怒っていた…
そして僕達は、それぞれのシングルの部屋に別れて、少しの間甘い時間を過ごした
僕は『少し』で終わりたくなかったのに、ラブが部屋に戻るといって、僕のヨクボウは中途半端に燃え盛ったまま…
もしかして…わざと?!
わざと中途半端に燃えさせておいて…三日間のハウスを決行するつもり?!
部屋から出て行くとき、ラブの目が光っていたような気がした…
あああんラブゥゥゥ…
それでも僕は幸せなんだもんっ…
てじゅのへやでぶんぶんおこっていたら、てじゅがおれをだきしめてくれた
しょして、ギョンジンよりもっともっとしゅごいきしゅをしてくりぇた
らぶにもこうしたのかってきいたら、こんなしゅごいのはおまえだけでしゅってこたえた…くふん…
うしょでもかまわにゃいら…
ギョンジンのいうように、しあわせにひたってやるのら…
へへん…へへん…
なんだかすっごく…きもちいい…
しあわせ なのかもしれにゃい…へへん…
しあわしぇきぶんをまんきつして、おれはダブルのへやにもどった…
イナさんが帰ってきた
俺達は暫く睨み合って、そして、我慢しきれなくなって吹き出した
それから軽く罵りあい、頭をくっつけあって眠った
眠る前にイナさんとキスをした…
イナさんとのキスは、とっても気持ちいい
俺はイナさんが大好きだ…
「ね。イナさんとテジュン、ギョンジンと俺、ギョンジンとイナさん、テジュンと俺、それからイナさんと俺…」
「なにさ」
「キスする間柄…。くふっテジュンとギョンジンだけ仲間はずれ…」
「は…ほんとだ。あいつらがキスするなんて考えられな…」
イナさんが固まった…
「どしたの?」
「…ある…してる…」
「え?」
「あいつら…キスしたことある…」
「え…うそ…」
「祭の前日…まだギョンジンがヤな奴だったころ…」
「…」
「…」
「明日はこれで…」
「ジジイをからかおうっ」
「「おうっ」」
俺たちはぴったりとくっつき合って、安心して眠った…
リクエスト オリーさん
今日の彼は2・3回客のリクエストを間違っている
携帯耳切りの代わりに親指ハンカチを、親指ハンカチの代わりにいきなり腕掴みをしてしいた
幸いお客は彼がすまないと言って額を押さえるだけで喜んでるからいいけど
歩き方は普通っぽいけど、僕から見るとちょっとカクカクが入っている
やっぱり出張の話、急だったよね
客が途切れたので控え室に行くと兄さんがいた
「お前、イギリスだって?」
「正確にはオックスフォード」
「あのユダヤ人の先生か」
「兄さん知ってるの?」
「あの先生アポ取るの難しいぞ。ちょっと変わってるからな」
「え?」
「今まで何人かトライしたけど門前払いだ」
「そんな風には聞いてないけど」
「甘いんだよ。」
「・・・」
「でもお前が素人っぽくやったらいけるかも。ま、頑張れ。お前がしくじったら僕に回ってくる。それは避けたい」
「避けたいって、だったら今僕が断われば兄さんってことだよね」
「意地悪言うなよ。僕は今ここを離れられない、くふっ」
「デレデレしないのっ」
「とにかくだ、頑張って決めて来い。それと・」
「それと?」
「留守の間はちゃんと見ててやるから心配するな」
「何を?」
「彼氏だよ」
「大丈夫だよ」
「でも見ててやる。心配するな」
兄さんはそう言うと僕の首をするっと撫でて出て行った
誰もいないのでソファに体を投げ出して天井を見つめた
やっぱり先輩、僕をはめたんだ、ふぅ
突然頭の上から声がした
「ギョンビン君・・」
「ソヌさんっ!」
僕は飛び起きた
「イギリス行くんだってね」
「あ、はい」
「お願いがあるんだ」
お願いと言いながらソヌさんは無表情で僕を見下ろしている
スーツ姿のソヌさんは決まりすぎていて緊張する
「何でしょう」
「CDが欲しい」
「CD?」
「コールドプレイ」
「グイネスのご主人がやってる?」
「それだ、頼む」
「ここでは買えない?」
「だめだっ!本場で買ったのが欲しいっ!全部欲しいっ!僕のこだわり、わかるだろ?」
ソヌさんは僕に詰め寄った
「わ、わかりました。探してみます」
「人気バンドだから探すまでもない。頼む」
最後にソヌさんは僕の肩に手を置くとふっと微笑んだ
「悪いね」
「い、いえ」
ソヌさんは満足そうにうなずくと控え室を出て行った
マグネットとCD、僕は頭のメモ帳に記録した
店に戻ろうと立ち上がった途端、テジンさんが入ってきた
「ギョンビン君、イギリス行くんだってね」
「はあ」
「悪いんだけど・・」
「何か買ってきましょうか?」
「実はちょっとがさばるんだがティーカップを」
「どんな?」
「ウェッジウッドのマグカップでストロベリーブルーっていうんだが」
「マグカップですね」
「スハと一緒に使いたくてね。なかなかいいブルーなんだよ」
「2個ですね」
「ほんとに悪いね、代金は払うから」
テジンさんはひっそりとした微笑みを浮かべると出て行った
ウェッジウッド、ストロベリーブルー、マグカップ、これは長い
入れ替わりに今度はテプンさんがやってきた
「イギリスの名物てのは何だよ」
「名物・・とりあえず紅茶ですかね」
「お、それだ。そいつをひとつ頼む」
「銘柄は」
「銘柄?種類があんのか・・美味いヤツ。チェリムに文句言われないように美味いやつ」
「はあ」
その後、テプンさんから奴らにみやげを頼んだかという話が広まり、
店が終わるとみんながドンジュンさんと僕の回りに集まってリクエストを始めた
ジュンホさんは奥さんに紅茶、子供さんに何かお菓子
イヌ先生とウシクさんはお揃いのTシャツがいいと言った
あまり派手なのは困るな、と先生は照れた
スヒョクさんはソクさんにライター、自分はいらないと言った
とりあえずこれもペアかな
チョンマンさんはもうすぐアメリカ行くからいいやと言ってから、やっぱ何か買って来てと
スハ先生はテジンさんが何か頼んでくれたようですが、と聞いてきた
秘密にしておいた
シチュンさんはパリジェンヌなんか無理だよねと言ってテプンさんに張り倒された
テソンさんはドンジュンさんにメモ用紙を渡し、できるだけ書いてある食材買って来てと言った
僕には小声で闇夜にフォートナムのハーブティーをと言った
ラブ君はキャドバリーのチョコでいいよとウィンクした
兄さんは何か言いかけたが、ラブ君に口を押さえられた
イナさんは何でもいいからてじゅとおしょろいと言って彼にぺちんとされた
監督は大人のおみやげと言ってミンギ君にゴムでしばられそうになってた
ホンピョさんは監督に入れ知恵され、バーバリーのコートと言ってドンヒさんにぺちんとされた
スヒョンさんは僕とドンジュンさんの肩を抱いてお前達が無事に帰ってくるのが一番のお土産だからねと言った
それを聞いたテプンさんが、一人だけいいカッコすんなとぺちんとしてみんなが笑った
大体話が落ち着いたところで、それまで黙っていた彼が立ち上がってそろそろお開きにしようと言った
「元チーフのみやげは何?」
テプンさんが聞いた
彼は答えずにっこり笑った
「自分だけいい物頼んだんじゃねえだろうな、こらっ」
彼はその突っ込みを無視して腕を回して僕を呼んだ
僕は挨拶して彼の後を追った
「お先に失礼します」
後ろでテプンさんが騒いでいるのをチョンマンさんがなだめていた
「ぜぇったい、特別なもん頼んでるぞ」
「特別だっていいじゃん、人の事なんだからさあ」
「でもよお、いいもんだったら俺も欲しいじゃん」
僕は振り返って叫びたい衝動にかられた
「彼のみやげはアリスちゃんとうさぎさんのマグネットですっ!」
それを察知したのかどうか、僕の腕を掴む彼の手に力が入った
ああ・・みんなに言いたいような、言ったら困るような・・ああ
結局僕は何も言わずにそのまま彼と家路についた
La mia casa_13 妄想省家政婦mayoさん
タッタッタッタッタ....スルスルスル...^o^....
ぉ...どうした..
リビングのソファでうたた寝している闇夜にまとわりついていたはるみが俺の腿に乗った..
闇夜が部屋に入り...ベットメイキングを始めた...
「はるみ...すっかりなついちゃったね....」
「ん...俺といる時間多いからな..な?...はるみ..^_^...」
「んみゃぁ#..^o^」
「んだが..こいつはち◎うせんなぁ...テソンにもテスにもせん...オトコ嫌いではあるまい?ん?」
....〃@o@〃.....はるみは前両足を自分の両ほっぺに当てて首を横にふった...
「テソンにはほっぺchuするよねぇ~...はるみぃ~...」
「みゃ#^o^...」
「何っ...俺にはせんのにっ...ふんっ...ならば....こうして....」
==おーきなかおが..たこち◎うでちかじゅいてきました..はひひん>o<..
あたまぱこぱこ...はにゃをかりかりしました..
でぇも..はにゃのあにゃをいじくるのはやめみゃした......
アタシのあしがばっちくにゃるしょ?...ンケッケッケ...(>▽<)==byはるみ
闇夜がぽんぽんと枕を叩いた...ベットメイキングの終了だ...
はるみを抱き上げて椅子から立ち上がった...
「今日は眠れるよ...パリッ#とさせといた..」
「ん....まだちょっと顔色が悪いな...大丈夫か?」
「ぅん....薬湯飲めばよくなるょ....」
「ぷっ...テソンの薬湯はお前仕様だからな...」
「...ぅん...」
(ブツブツ)...テソンの奴...薬湯より”ちゅーしゃ”の方が速効だろうに....(ブツブツ)..
ぐぅー★.....ぱこぱこぱこ###
「ったく...聞こえる独りごと言わないっ#...」「ぅみゃん#...」
「す....すまん....^^;;....」
見上げた闇夜と互いに外せなくなる視線が交錯する...
すりすり〃〃.....俺の手が闇夜の頭に置かれるのを合図に互いに視線を外した...
~~~
「テソンさぁ~ん...」
「ん?....」
「そんな急がなくたってさぁ...30秒でも1分でも早く顔見たいわけ?」
「そっ#」
「ったく..もぉ~..ポケットにでも入れといたらぁ?」
「テスぅ...」
テソンさんは店を出て凄い早足で歩いてく...
僕等の家はすぐそこなのにぃ....僕の足..もつれちゃうじゃんかぁ...トットコ..トットコ...
僕たちが家に着くとテソンさんはmayoシとほっぺすりすりしてからキッチンに立った...
テソンさんがキッチンにメモを貼っていたので大方の下ごしらえは済んでいた...
テーブルにも黒漆と朱漆の盆がセッティングしてあって..
料理に合わせた器もカウンターに用意してあった...
==和のメニュー==
*鮪の網焼き
(鮪を大蒜醤油に5分ほどつけ..軽く炙り中を半レア状態にし水茄子の薄切りの上に盛る....)
*鮑と車海老黄身酢和え
*ごま麩の白味噌仕立て
*竹筒に入った葛あんをかけた豆腐
僕が料理を仕上げて4人でテーブルについた...
「美味しいな...^_^...」
「mayoシ~」
「ん?」
「みんなで食べるから余計美味しいんだよ...」
「ぅん..」
「ぁ..ね...mayoシ~今度の新人どんな?」
「ん~~...建築屋と..医学生と..苦学生...かな...」
「「「ふ~~ん」」」
「ぁ...苦学生のジュノはね...すごいばあちゃんっ子なんだ....手つないで寝るんだよ..」
「くぅ--...>o<...弱いなぁ..俺は...そういうのに...」
「ぷっ..で...ばあちゃんの目の手術費用のために高層ビルの窓掃除してる...」
「ますます健気じゃないかぁ...なぁ..テス..ひぃぃん...」
「ぁん....ちぇみぃ~~..よしよし〃....」
「「.....^^;;...^^;;...」」
ちぇみはばあちゃんっ子で...俺はばあちゃんに育てられたようなものだ..と僕等に話していた...
例のお粥の店のばあさんはちぇみのばあちゃんに似ているらしい...だから凄く仲がいい....
ちぇみは..老女...動物..テスにからっきし弱いのだ...
で....世の中で一番苦手なものは...ゴキブリである...(←実話)
前に一度だけ3人で悪戯にフェイクのゴキブリを廊下の隅に2,3匹置いた...
@_@.....見つけたときのちぇみは....僕等の想像を遙かに超えた....
きぃぇぇ~~~ぃ##..の奇声の後....肩で息をしながら...沈黙の後にやっと言葉を発した..
「ぁんぐ....ぉ~~...ぉ...ぉ..ぉお前等ぁ~~....にひ.....に...二度とするなよっ#」
中指立てのキッツイぐぅぅー★が僕等3人に落ちたのは言うまでもない...
料理の後に冷えた”竹流し”(竹筒に入った水羊羹)をみんなで食べた...
竹筒の底に開けた穴に挿してある竹片を抜くと..つるるん@と器にこぼれる...
はるみはその様を見て...みゃ#みゃ#みゃ#..^o^...と前足でテーブルを叩く...
闇夜が浅い器の中で小さく分け..はるみはつるんつるんと口に運んだ...
「美味しいね..はるみ..」
「(ぅんぅん..)..*^×^*...」
ちぇみ特製ばあちゃん直伝のそれは..底に1cm程粒あんを仕込んであり..
水を抱き込ませた様な食感...寒天の量をぎりぎりに抑えたに違いなく..
口に入れると餡の粒子が溶けていく感じ..甘みを抑えていて美味しかった...
「ここまでとは...ちょっとビックリした...」
「ぷっ...お前の和の最後に変なもんは出せんだろ?...」
僕とちぇみは互いに眉を上げて声無く笑った...
俺は部屋に入る前にリビングのソファで闇夜に薬湯を飲ませているテソンに一枚のCDを渡した..
テソンが捜していた曲が入っている...
「ぁ...見つかったんだ...」
「ん...3曲目に入ってる...」
「やった#..ありがとう...」
「ぷっ...ん...」
~~~~
先に部屋に入ったテスがPCの前に座っていた...
テスと入れ違いに俺が椅子に座り..テスが俺の腿に跨った...
PCの画面を覗いた...
★.:*・°..Gateau d'anniversaire...:*・°★
記念日のケーキ..とタイトルの付いたテキストファイル...
幾枚ものケーキの写真を解説付きで編集したようだ..
写真のケーキはすべて過去にオーダーを受けて俺が作ったものだ...
「ぷっ...お前がこれ編集したのか?」
「ぅん#...」
「たはは...^^;;...よく調べたな...テス...」
「へへ...mayoシにも手伝ってもらったけどね.....」
「ぷっ...ん...」
「これなんか凄いもん...
5段
でしょ?...」
「ん...それは確か..50年目の記念日..で...5段だ..」
「そっか...」
「テス..まさか..やるのか...これらを....」
「ぅん..だってさ..こういうのってさ...皆幸せなキモチになれる気がする......」
「ふっ..ん...」
「それに作る方も楽しいじゃん...ケーキ囲んでどんな会話するんだろうとかさ..」
「そうだな...」
「ね...駄目?...」
「駄目じゃないが....」
「僕でも何か手伝えるでしょ?」
「ん...だが数はこなさんぞ...追い立てられるのはシロ#..(嫌だ)..」
「わかった...こそこそクチコミにする...ならいい?...」
「ぷっ..お前は駄目だといってもやるだろ....頑固だからな...」
「へへ..^o^...やった...僕ね..これ好きなの..チカチカって
ランブ
付くんでしょ?」
「ぷっ..ん..今度作ってやる..」
「ほんと?」
「ん...」
「ね....ちぇみ...」
「何だ...」
「仲良く...何か...した?....」
「な...何って...ベンチで話をしただけだ...何もせん#..ケホン..」
「ふ~~~ん...」
テスの口端がちょいと曲がった...やな予感...
ぽちゃぽちゃの両手が俺の両頬を..ぎゅぎゅゅぅっ..と挟んだ...
「...ゃ...ゃめろ#....>>o<<...」
「ん~~~~~...アッポ?...」
「ア..ア..ア~~~アッポ##..」*アッポ=痛い
「へへ..ごめん...(ナデナデ...)」
「ん...;;T_T;;...」
今日は挟んでグリグリのスペシャルだった....
あいつの白い顔もぎゅぎゅゅぅっとされるのでは?..ちょいと頭をよぎった...
仲良き事は… ぴかろん
僕達はホテルをチェックアウトして帰路に着いた
とにかく異常なぐらい荷物が多くなっている
トランクに入りきらないぐらい…
当然後ろの座席の足元なんかに荷物を詰め込んだりして…はぁ…
それで…僕が運転し、運転の交代要員としてギョンジンが助手席に座る事になった
可愛い子ちゃんたちは…後ろの座席でキャッキャしたりイチャイチャしたり…
なんでイチャイチャ?!
とにかく仲がいい…
行きのあのピリピリしたムードはどこにもなかった
「ねえねえ…ギョンジンなんで大人しいの?」
悪魔のようなラブが言った
ギョンジンは亡霊のような顔を後ろにむけて
「それは女王様のせいです…」
と呟いた
その顔を見てイナが
「病み上がりのテジンの顔だ…」
なんて言っていた
たしかに目の下にくっきりとクマがある…
「ん?なんでそんなに憔悴してるの?二人っきりの間に…ヤったんでしょ?お前たち」
「テジュンさん…あんな短時間では僕はムリです…まさかラブが本とにイナと寝る…いや『眠る』つもりだったなんて思ってなくてね…」
「そうだよなぁ…ま、僕は別に…フフン…へへん」
「…あっ…テジュンさん…あんな短時間のうちにまさか…」
「あ…げほっ…ふふん…」
「くうっ!」
「なによ、お前は拒まれたの?」
「拒まれたならまだいいです。僕は苦しみながらも『体力温存』のために眠りにつけますから」
「じゃ…どしたのさ」
「…何というか…すっごく…中途半端だったんです…はあん…悶々としたまま僕は一人夜明けを迎えました。なんども二人が寝ている部屋に忍び込み、イナがスヤスヤと寝ている隣でラブを…と考えたのですが…はぁん…そんな事したら後がとっても怖いのでやめました…ひぃん…ああん…」
「…中途半端…だったから眠れなかったの?」
「はい…これはきっと女王様の新手のいじめ技なんですクフン…僕は…けへん…耐えなくてはホヒンクフン」
そんな事を聞きながら、僕達は懐かしい街へと向かっていた
後ろの可愛い子ちゃんたちは本当に…へへん可愛らしい…
イナの笑顔がキラキラしてる…
よかった…四人で来てよかった…
運転をギョンジンに変わった僕は、後部座席を見つめてにやついていた
「なぁにいやらしい顔で俺達を見てんのさぁ…」
ラブが顔を寄せた
綺麗だね…ラブ…
「あっこららぶっ!おれのてじゅにしょんなにちかじゅくなよ!」
イナも顔を寄せてきた
可愛いね…イナ…
「ねっ。三人でチューしよぉ!」
「「「えっ」」」
運転しているギョンジンも反応している
「ちゅっ」
ラブが僕達の頭をぐいっと引き寄せ、チュッなんてしちゃったよ
お遊びだけどね
「ずるいっす!なんで僕のときにそれしてくれないんですかラブ様ぁぁ!」
本気で怒ってるな、ギョンジン…
「じゃ、後で四人でチュッしよう」
「いやですラブ様!こんなジジイも一緒だなんて」
「テジュンの事?」
「ほかにジジイは乗ってません!」
「何敬語なのさ」
「らってラブ様ですもんっひひん」
「ばか!それより…ねっイナさん」
「ねっラブ」
「何々?どしたの?」
「ギョンジンとぉテジュンってぇ…」
「まちゅりの前日、俺の目の前できしゅしたよな」
「「…」」
「ギョンジンがテジュンに吸い付いたんだってねぇ…」
「「!あ…あのとき…そういえば…。ぎゃあああああっ」」
「ね、素敵な四角形だよねぇ、一筆書きできるかなぁこの関係」
「らぶがいうと、なんかやらしいじょ」
「なんでさっイナさんったらっきいっそんな事言うとんがり唇は、塞いでやるうぅぅ」
「あっごめんっらぶっやっ…ん…んは…んむ…」
「「なにやってんのぉぉぉぉお願いだから複雑な関係にならないでぇぇぇ(T_T)」」
僕達はすっかりヘンタイな四人組になって帰ってきた
昼過ぎにBHCに着いた
車から大量の荷物を降ろし、皆で控え室のロッカーに土産を詰め込んだ
その後『オールイン』に移動し、そちらのロッカーにも詰め込んだ
僕以外の三人はそのまま店に残り、店に出るという
僕はヨンナムの下宿に帰った
「ただいま…誰もいないか…」
「ようっ兄弟!」
庭から出てきたヨンナムと抱き合う
「ん…。いい旅になったみたい」
「ん…ご心配おかけしました…」
「…これからだな…」
「ああ…」
「早速だけど、こんなに郵便物が届いてる…」
紙の手提げ袋一杯に溜まっている僕宛の郵便物
「なにこれ…」
「仕事はちゃんとやっていたんだな、テジュン」
「…ああ…」
「新しい仕事、何やる気なの?」
「…ん…まだ決めてないし…職安にでも行こうかな」
「ばっか…こんなに求められてるのに?」
「え?」
「ま、じっくりこれを読んで考えなさいって…。僕としては配達要員続けててほしいんだけどねぇ…」
「…ヨンナム…また相談にのってよね…」
「はいはい、聞くだけならいくらでも…」
「たよりにしてるよ、兄弟っ。これ、イナと僕からの土産。勝負の時に使ってくれ!じゃ、僕一度部屋に戻って、軽く寝ます、ありがと」
僕が部屋についた後、階下からヨンナムの地を這うような怒りの声が聞こえてきた
ふふん…仕方ないじゃん、お前に似合いそうな土産なんてそれしかなかったんだからさ…
僕は寝転んで紙袋から封筒の束を取り出し、一通一通に目を通し始めた
そのうち眠くなってきて僕はうとうとした
ヨンナムが、僕達からの土産の、にっきーの顔がいっぱいプリントされたボクサーパンツを穿き、彼女らしき人に、黒いレースのぱ○つ(ギョンジンが持ってたヤツね)を穿かせようとして思いっきりぶん殴られている夢を見た
振り向いた女の人…と思ってた人は…ラブだった…
夢だから…いいよね…へへへへんっ…
父の横顔 足バンさん
「ね…やっぱりやめよう…僕ひとりで行くから」
父の家にあと少しで着くという所で、僕は車を停めて言った。
スヒョンは長い間僕の顔を見ていた。
「だめ」
「何で…何でそんなにこだわるの?」
「おまえってね、何でも真っすぐで素直でいいやつなんだけどひとつだけ屈折してるの」
「何がよ」
「お父さんにはいつも本当の自分を見せて来なかったでしょ」
「そんなこと…」
「ない?言い切れる?いつもどこかに引っかかってない?」
「…」
「何とか期待に応えようってずっと無理してきたでしょ」
「スヒョン…」
「お父さんを幸せにしなくちゃいけないって」
「僕の…心の奥が…そう言ってるの?」
「ずっと気になってた」
「そ…スヒョンにはわかるんだ…」
スヒョンは手を伸ばし室内灯をつけて僕を覗き込んだ。
「こんなやつと関わりになって後悔してる?」
「ううん…そんなことない…」
「けど?」
「…僕たちのことだけはまだ黙っててくれる?」
「どうしてもいや?」
「まともに聞いてくれるとは思えないし」
「お父さんを傷つけたくない?」
「いつかその…僕から言える時がくるかもしれないじゃない」
「おまえが父を越えられる日か」
「スヒョン…」
「わかった。僕たちのことには触れない。部下の将来を案ずる上司でいればいいんだね」
「ん…本当にそうしてくれる?」
「行こう。待ってるよ」
父はもうずいぶん前に米軍基地から出てこの場所に移った。
父と母が結婚当初住んでいたらしいこの片田舎の土地。
僕が仕送りをしている今もタクシーを流して気ままに暮らしている。
父は杖をついて玄関先で待っていてくれた。
普段から愛想のいい父ではないので、笑わないのは気にならない。
スヒョンは名刺を出したりしてチーフとして丁寧にソツなく挨拶をした。
何となく和んだムードにちょっと安心した。
「え…ハリョンから電話があったんですか?」
「ああ、もしかしたらおまえに世話になるかもしれないとな」
「周到だな…じゃ話は早いですね」
「で?おまえはどうするつもりだ」
「よく…考えます。そのためのパリ偵察でもあります」
「スヒョンさん…ご迷惑は掛からんのですか?何よりもそれが気になってました」
「ご心配なく。店としましては貴重な人材ですが、できるだけ協力して行くつもりです。
大事なのはドンジュン君の気持ちですから」
父は手の中の湯呑みを見つめながらポツリと言った。
「私はセリュンの社長を辞めると言い出した時反対したんですよ、放棄するのかと」
「ドンジュン君から聞いています」
「こいつは仕事を成し遂げたが同時に限界を知ったんです」
「ええ」
「尊敬する会長が亡くなり同族の争いにずいぶん無駄な時間を費やした」
「…」
「そんなこいつがまたあの世界に関わるのは半分は反対なんですわ」
「…」
「しかし言い出したらきかないのは親譲りですからな」
父は真剣な目で僕を見た。
「おまえが納得いくようにやれ。そして決めたら最後までやり通せ」
「はい」
僕はほっとして足を崩そうとしたけど…そうできなかった。
次に父から出た言葉に凍り付いたから。
「で、スヒョンさん」
「はい」
「あなたと息子はどういう関係ですか」
「お父さ…」
「おまえは黙ってろ。スヒョンさんにお聞きしている」
父の目は先ほどまでと打って変わってひどく険しいものになっていた。
昔から知っている厳しい父の横顔だ。
長い長い沈黙の後
スヒョンは座り直して真っすぐに父を見た。
その目は驚くほど澄んでいた。
「私は……彼を愛しています。性別も何もかも全てを越えて」
湯呑みを持つ父の指が白くなるほど力が入ったのがわかった。
何も言わず刺すような目でスヒョンを見ている。
僕の心臓はむちゃくちゃに暴れ出した。
「おっしゃりたいことはわかります。でもお詫びするつもりはありません」
「なに?」
「私は…彼という人間に出会えたことに感謝しています。全てに真っすぐで正直で。
幾度もそんな彼に救われました。それは私だけでなく仕事の仲間も感じているはずです」
「…」
「私にとって彼が男性か女性かはどうでもいいことなんです」
「…」
「彼という命に巡り会えたことが全てなんです」
「…」
「そんな彼をこの世に送り出して下さったお父さんにも…感謝しています」
スヒョンは手をついて深く頭を下げた。
スヒョンの言葉に僕の目からポロポロと涙がこぼれた。
父の前で泣いた顔など見せたくなかったけど我慢できなかった。
そんな僕を父は忌々しそうに睨んでいたが目を伏せて静かに言った。
「さ、ドンジュンもう帰れ。用件は済んだはずだ」
「お父さん」
「仕事の件はさっきも言った通りおまえに任せる」
「ちょっと待ってお父さん」
「おまえは私のものじゃない。どんな生き方でも好きにしたらいい」
「お父さん!」
「何も言うな。茶を飲んだらすぐに帰れ」
父は足を引きずって奥に入り静かに戸を閉めた。
戸が閉められてからもスヒョンは手をついたまま暫く顔を上げずにいた。
僕は心が潰れそうだった。
父が怒ったからじゃない。
ドンヒ姉さんが出て行った時も、ドンソクが警察沙汰になった時も
怒りを露にしたあの父が一切声を荒げなかった。
どれほど深く傷つけたかと思うと堪らなかった。
道路でもう一度振り返って硝子戸の小さな明かりを見た。
「大丈夫か?」
「うん…」
「僕が予約してるホテルに行こう。シングルから替えてもらうから」
「うん…」
「明日の朝もう一度来よう」
「ううん…もういい…たぶん…もう会ってくれない」
ホテルまでのたった10分程がとてつもなく長く感じた。
田舎町の空にはソウルの何倍もの星が瞬いていた。
La mia casa_14 妄想省家政婦mayoさん
「これも...これも?」
「ぅん...」
「1つでいいじゃん...こんなに飲みたくないょ..」
「駄目っ#...どれも量は多くないよ..甘えても駄目...ちゃんと飲んで...」
「@_@...テソンノイジワル...」
「何?何か言った?」
「〃@@〃....」
3つの薬湯の1つを飲んだ後..闇夜がゴネた...
僕はリビングのオーディオに何枚かのCDをセットしながら闇夜にダメ出しをした...
闇夜は床に座り..ソファーに寄りかかりながらブツブツ言っている...
僕がソファに肘をつき上半身を起こして横になると闇夜が僕に振り返った..
「ね...何で今日は3つもあるの...」
「疲労回復#..貧血#...それに..」
「それに?」
「今日窓掃除したんだろぅ?...半日....」
「ぅん... だから?」
「...ちょっとだけ...日焼けしてるょ.....」
「ぉん..>_<....そ?...肌にいいの?」
「そっ#...」
「じゃ飲む...」
闇夜は残りの2つの薬湯を飲み始めた...
「....ったく...最初から素直に飲めば可愛いのに..」
「...@×@....」
闇夜は飲みながら恨めしそうに上目使いに僕を見て..目で笑い..残りのカップを空にした....
はるみは闇夜が「ぅぷっ...けぷっ」っと小さく喉を鳴らすと..僕の代わりに闇夜の頭を撫でた..
床に座ったまま僕へ向き直った闇夜が前髪をかきあげた..
「ちょっと伸びてきた?...」
「ぅん...ちょっと鬱陶しいんだ...」
「カチューシャする?」
「ぷっ#...して..笑うんだろ?...テソンもやっぱ顔おっきぃょぉ~~ひひん#..とか何とか...」
「ぁはは....^^;;....明日ちょっと切ろうか...」
「ぅん.....俺も..僕も..って言われるかもよ?」
「ぷっ#...」
「さっきのCD..何?」
「ん?...捜してた曲があったんだ..母さんが好きだった曲..」
「古い曲なの?...」
「ぅん....小さい頃からEP盤でよく聴かされたんだ....」
「そぅ...」
耳慣れた曲が流れたとき闇夜を突っついた...
3. Paroles, Paroles
「ぷっ#..これ...」
「知ってる?」
「有名だもん...この曲...それに今ドラマの挿入歌になってるよ...」(←実話)
「ぅそ...何のドラマ?...」
「ほら..メイが出るはずだったドラマ...」
「パティシエのやつ?」
「ぅん...♪Caramels, bonbons et chocolats~~♪ってフレーズ入ってるし...」
「そっか...歌えるの?」...闇夜はくすくす笑った..
「語れるの?」...僕もちょっと笑った..
2人でちょっとだけ歌って...語った...
==てしょんとまよが....ち◎..ち◎うぅしてましゅ....*^o^*...
ふたりのみっかぶりのち◎うでしゅ...
したが..れろんってからまってましゅ...てしょんのほっぺがすぼんでいきましゅ..
しょんなにしゅったら..まよのくちびりゅはれちゃいましゅ..まよがいたいみゃん...
ちょっとのーこーち◎うでしゅ...はひん..>_<.....べっとでやれちゅーの#
ぁ..やっとはにゃれました....くちびりゅ...
アタシ..そふぁのうえで..ねたふりしてじゅぅーとみてました.....プフフン...(>▽<)==byはるみ
僕がはるみを抱き上げ...座っている闇夜を立たせて部屋へ入った...
ラベンダーの泡いっぱいの中で2人でじゃれた...
闇夜の背から腰へ手を滑らせた...
「mayo...」
「ん?...」
「細くなった?」
「ぷっ...ろくに食べなかったからかな...ぁ..違う...」
「・・?」
「テソンが来ないからおんならしいからだにならないんだ...」
「ぁふ..ぁふ...^^;;...」
闇夜はくすくす笑った...
んなこと言ったくせに..
闇夜はベットで僕が胸に引き寄せると..くぅぅ...すぅぴぃーと寝息をたてて眠ってしまった...
ベットの端ではるみが僕に..みゃぉぉん...>_<...と鳴いた
再会 れいんさん
いつもと変わらない店の風景
いつもと変わらない仲間達の顔ぶれ
そんな日常を繰り返しながら、僕たちは皆それぞれに少しずつ変化している
新たな事に挑戦しようとする者、やり残した夢をもう一度掴もうとしている者・・
僕もまた、スハと共に前を向き歩み始めている
イギリスへ発つ前にギョンビンに皆がそれぞれ好き勝手にお土産を頼んでいた
それに乗じて、僕も以前から欲しかった物を頼んだ
ウェッジウッドのティーカップ
スハと過ごす休日の午後のために・・
そんな時、僕に指名が入った
フロアに視線を移すと、肩くらいの髪の後姿の女性
僕はゆっくりとボックス席へと近づいた
「お待たせしま・・あ!」
「・・お久しぶり・・」
その女性はゆっくりと振り返った
「・・エジュ!」
「何?幽霊でも見た様な顔して・・」
「どうして・・」
「・・とにかく座って」
驚いて言葉も出ないまま、彼女に促され僕はソファに腰掛けた
無口な僕の事をよく知ってる彼女は、無言でスラリと伸びた足を組み、煙草を銜えた
上目遣いに僕を見て火を点けてと催促する
僕は慌てて胸ポケットからライターを取り出し、煙草の先に火を点けた
彼女は、煙草を深く吸い込むとすうっと煙を吐き出した
メンソールの香りが微かに漂う
シガレットケースを差し出して、僕に煙草を勧める彼女
僕は軽く首を横に振った
「まだ煙草やめてるの?」
「・・いや、そういうわけでは・・」
彼女はシルバーのシャープなシガレットケースをパタンと閉じた
「私ね、留学先から一時帰国したの。・・貴方の事、探したわ」
「・・・」
「ウンスさんに聞いたの。ここにいる事・・」
「・・そうか」
「レースはもうやめたのね」
「ああ」
「安心したわ。あの時は死ぬほど心配したもの」
「悪かった・・」
「家具のデザインはまだ続けてるの?」
「ああ、また展示会もやる」
「・・変わらないわね、無口なところ。私と再会しても嬉しそうな顔ひとつ見せてくれないのね。
本当に憎らしい人。・・もしかして一番会いたくない相手だった?」
「そんな事はない。会えて嬉しいよ。元気そうでよかった」
「・・ねえ・・ところで・・どちらの名前で呼んだらいいのかしら」
彼女のストレートな言葉に僕は一瞬戸惑う
「僕はテジンだ・・知ってるだろ?」
「ええ・・貴方に会った最後の日・・私はさよならを言うつもりで作業場に行った
貴方は私を優しく抱きしめてくれた。・・でもその後、私は真実を知った
あの日の事は今でも忘れられないわ・・」
「すまなかった・・君を苦しめて」
「そう・・私はあれからずっと苦しんだ。貴方の狂った愛を理解できなくて、貴方を忘れようと必死だったの
留学先でも、色んな男に言い寄られたわ。忘れる為に付き合ってみたりもした」
落ちてくる髪をかきあげ、彼女はまた煙草の煙をすうっと吐く
彼女は以前よりずっと綺麗になっていた
洗練された大人の女性だ
上品な色の赤い口紅とほのかに香るエンヴィのフレグランスがよく似合う
細い煙草を指先でゆっくりともみ消して、彼女がまた言葉を続ける
「でもね・・結局、私の心の中から貴方は消えてはくれなかった」
「・・・」
「ウンスさんに話を聞いた時は、正直驚いたわ。ウンスさんと幸せに暮らしていると思っていたから・・」
ウンスとエジュはどんな話をしたのだろう
エジュは僕の事をどこまで聞いたのだろう
だが、そんな事を気にしてもしかたがない
ウンスが話した事はすべて真実だろうから
そして僕は、あいつと歩んで行く事を選択したのだから・・
父の横顔 2 足バンさん
ホテルの部屋のカーテンを少しだけ開けると
白い朝の陽が真っすぐ差し込み、カーペットに光のラインを描く。
そのラインをゆっくり追っていくとドンジュンの寝顔に辿り着く。
昨夜ドンジュンは疲れ切って眠った。
「いつかは通らなきゃいけないんだ…ちょっと早くなっただけだ…」
「僕が選んだんだもんね…逃げようってのが間違いなんだよね」
「ごめんねスヒョン…ごめんね」
何度もそんなことをつぶやきながらシーツに顔をうずめていた。
僕はベッドに腰掛けて眠りつくまで髪を撫でていた。
細く開けたカーテンの間から外を見る。
田舎町の小さなホテルの周りはのんびりとした美しい風景で
無数の大きな桜の木が夏の朝の透き通った陽を反射している。
きっと春にはこの辺りは花でいっぱいになるんだろう。
その時、僕の目はある一点にくぎ付けになった。
見覚えのあるタクシーのシルエット。
昨夜ドンジュンの家に横付けされていたタクシー。
僕は急いでジャケットを引っ掛け物音を立てずに部屋から飛び出した。
ホテルのエントランスから走って出た僕の姿を見て
車の横に立っていたその人は慌てて身を翻そうとした。
「お父さん!お父さん待って下さい!」
ドンジュンのお父さんは少し俯いて、そして横を向いたまま小さく頭を下げた。
ホテルをぐるりと囲む桜の木の下を
僕とお父さんはゆっくりと歩いた。
規則的なお父さんの杖の音が早朝の空気に響く。
「ここにあなたが泊まると聞いていたので…」
「ドンジュン君にお話があったんじゃないですか?」
「いや…あなたに…」
お父さんは立ち止まって僕を振り返った。
「私は古い人間です。あなたと息子のことは理解できんし、したくない」
「…はい」
「正直言って冗談か夢であってくれたらと思う」
「…はい」
僕は何を言われても黙って聞く覚悟だった。
「でも…あなたの昨日の言葉が…どうしても気になった」
「…え?」
「あいつが男か女かはどうでもいいことだと」
「…はい」
「笑わんで下さいよ…あいつの母親が言った言葉と同じだったんです」
「…」
「私と女房は駆け落ち同然で結婚したんですわ…散々苦労させて…
で、逝く間際に私がかけた苦労を詫びると…そう言ったんですわ…
私という人間に会えたそれだけでいいと。それがたまたま男の私だっただけだと」
朝の優しい木漏れ日が、その深いしわが刻まれた横顔に揺れる。
「あいつを見ていると、周囲にどんなに反対されようと曲げなかったあの強い母親を
思い出します…うちの子は3人とも母親似ですわ」
「お父さん…」
「何も言わんで下さい…私は今ひとり言を言っとるんです」
「…」
「あなたと息子の関係は認められないが…あなたという人間を認めないということではありません」
「…」
「それだけです…それだけ言いたくて……じゃ…行きますわ」
その深い瞳が少しだけ緩んだように見えたが
気のせいだったろうか。
僕は何も言えぬままその場でお辞儀をし
木漏れ日の中の小さな後ろ姿を見送った。
そして急に思い立ち、急いで部屋のドンジュンに電話を入れた。
木に寄りかかり待っていると、靴ヒモを結ばぬままのドンジュンが転がるように走り出て来て
車に乗り込もうとしていたお父さんの元に向かった。
何ごとか言葉を交わしてドンジュンがうなだれると
お父さんが躊躇いながらそっと息子の肩に手を掛けた。
ドンジュンはその小さな肩に頭を垂れ何度も頷いていた。
出発ぎりぎりまで父と子は静かな時間を過ごすだろう。
僕はチェックアウトの延長を頼み軽く食事をとった。
部屋に戻ってベッドに横たわり目を閉じる。
これでよかったのだろうか、いやよかったのだと今更ながら揺れてもいた。
そして…その夢をみた。
桜の花が美しく舞い散る中。
見知らぬ優しそうな女性と天使が腕を組んで歩いている。
わたしがついているからだいじょうぶ…じぶんをいちばんだいじにしなさい…
その真っすぐな眼差しの女性は天使に微笑みかけ
天使はその女性の額に優しくキスをした。
ゆっくり目を開けると夢の中の天使がそこにいて僕を見つめていた。
「やっと起きた」
「たくさん話しできた?」
「ううん…あんまり…でも一緒にご飯食べた」
「おいしかった?」
「うん最高に」
ドンジュンの目はとても落ち着いていた。
きっといい時間を過ごすことができたのだろう。
「身体には気をつけろって…」
「そう…」
「スヒョンにもって」
「…」
「ありがとう…」
「ん?」
「父の目を初めてちゃんと見たような気がした」
「そうか。よかった」
「それから…」
ドンジュンは僕の首の下に腕を入れそっと鼻先を僕の頬に滑らせた。
「嬉しかった…昨日のスヒョンの言葉」
「ん…」
「もう1回言って」
「もう言わない」
「言って」
「言わない」
「言って」
「じゃ1回だけね」
「うん」
「めちゃくちゃ愛してる」
僕は呆気にとられてるドンジュンを思いきり抱きしめた。
Stairway to the future オリーさん
僕はワイシャツの枚数をチェックして、ネクタイを確認し、靴をそろえた
スーツは新品も含めて数は足りてる
次に冷蔵庫をのぞき、足のつきそうな物を捨てた
明日飲み物を少し補充しておけばいいだろう
次は、たまった洗濯物を洗濯機に突っ込んで
明日クリーニングに出すものをまとめておく
引き換えに何枚かワイシャツが戻ってくるはずだ
それで大体いいだろう
ランドリーで洗濯を始めようとしたら後ろから声がした
「何してる」
彼が戸口でドアにもたれていた
「洗濯しちゃうよ。今すれば明日にはOKだから」
彼は首を横に振った
「いいから、こっちへ」
「でも明後日からいないし」
「いいから」
彼は腕をふぁっと回して僕をうながした
リビングのソファに彼は腰をおろし僕を目で呼んだ
僕はちょっと落ち着かない気分で彼の隣に腰をおろした
何か言われる前に先手を打った
「ほんとに急なことでびっくりしたでしょ。ごめん」
彼は僕の肩に腕を回した
「確かに急だ。正直驚いた」
「ごめん」
僕はまた謝った
「いや、謝るのは僕の方だ」
「え・・」
「最近自分のことしか考えてなかった、ミンの事もよく考えるべきだった。すまなかった」
「こんな風になるなって思ってなかったから」
「いい機会だ。改めて仕事の事を考え直した方がいい」
「どういう意味?」
「ミンの思う通りにすればいい。実はあの時からずっと気になってた」
「もしかして、僕に戻れって言いたいの?」
僕は祭の時のあの事件を思い出して、胸の底がざわざわとしてきた
「そうは言ってない。ただそれも一つの選択肢だ」
「僕はそんなつもりはないよ」
僕は肩に回された彼の手を振り払って言い返した
彼はそんな僕に向かって丁寧に言葉を選んで話しつづけた
「たとえばとても危険な仕事が来てミンにしかできないって言われたらどうする、断われるか?」
僕は俯いて唇を噛んだ
「ミンはきっと断われない。でも僕の事も気になる。その度ミンは僕と仕事の間で揺れなきゃいけない。
以前の仕事に関わっていればいつ何が起こっても不思議はないだろ」
「だから戻れって?」
僕は安易に昔の仕事に足を突っ込んだ事を後悔し始めていた
難しい仕事になればなるほど、どちらかを選ぶ事は困難だ・・
「軽く考えすぎてた、ごめん」
「謝る必要はない。いつかはちゃんと考えなくてはいけないことだ」
彼はまた僕の肩を抱き寄せた
「こんな言葉を知ってるか。恋とはお互いを見つめ合うこと、愛とは一緒に同じ方向を見つめること」
「誰の言葉?」
「忘れた。だがそろそろ僕達も同じ方向を見つめる時期だと思わないか」
彼は目に深い色を浮かべて僕に笑いかけた
「お互いに別の事をしていても、それが僕らの共通の未来、そう考えればいいだろ」
僕は思いがけない彼の言葉に衝撃を受けた
僕らの共通の未来・・
彼はとまどっている僕の頬を両手で包んでまっすぐ僕を見た
「あの時はまだ出会ったばかりで二人とも見つめ合うことに必死だった。
でもあれから僕らは十分見つめ合った。恋と正義を天秤にかけなくても、
今のミンなら両方手に入れられる。それを覚えておくといい」
「考え直せっていうのは・・」
「ミンの仕事は特殊だ。覚悟がいるだろう。どうするかはその都度自分の心の声に従えばいい。
僕もそれに従おう。僕らはもうそんな事ができる間柄だ」
彼の目がさらに深みを帯びた
「ミンが選んだ事、決めた事なら僕はそれを理解できる自信がある。
どこにいても何をしていても、いつも一緒だ、いいね」
僕は熱いものがこみ上げてきて言葉が出なかった
かわりに小さくうなずいた
彼は僕の頬に手をあて、親指でゆっくりと僕の唇をなぞった
「この唇は、どこにいても僕のものだ、そうだろう?」
僕は返事をするかわりに、唇に触れている彼の親指をそっと噛んだ
果てしなく続く階段の前に辿り着いた僕たちは、今一歩その階段を登った
そんな気がした
彼とならいつまでもその階段を登っていける、何があっても
僕は心にしっかりとそう刻み込むと彼の首に抱きついた
彼は僕を抱きとめ、髪の毛をそっと撫でてくれた
しばらくして僕は洗濯の事を思い出し、立ち上がってランドリーは向かおうとした
その前に振り返ってちょっと聞いてみた
「ずっとそんな事考えてたの?」
「何の心配もなく飛び立たせたやるにはどうしたらいいか考えてた」
「じゃあ、リクエストを間違えたのはそのせい?」
「リクエストを間違えた?」
「店で・・」
「僕に間違いはない」
「でも、店で・・」
「あれはわざとだ。僕は間違わない」
彼はそう言うとソファの背に両手を広げてもたれかかり、僕を上目遣いで見つめた
いつもの彼に戻っていた
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