ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 136

お泊り…  ぴかろん

店に出ると完全に涙目でいじけているイナさんがいた
こんなんで営業できるの?と思ってたら意外と「かわいい」とか「そのまま突っ立ってこっち向いて」とか「号泣して」とかいう「お涙リクエスト」が相次いだ

イナさんは「泣き虫」で有名なんだな…
客がひいて、俺はイナさんに耳打ちした

「今夜泊まりにこない?」
「いくっ!」

涙目のまま、即座に答えたイナさん…

「しゃびしくてしにしょうら…えっえっ…」
「…テジュンの事聞いたよ」
「誰に?」
「ギョンジン。配達中のテジュンに会ったんだって。電話してたってよ」
「…電話が好きなら電話と付き合えばいいら…」
「またそんな幼稚なことを…」
「ふんっ…」
「くふ…。下着も新しいの揃ってるし、そのまんまうちにおいでよね」
「…うん…ぐしゅっありがと…」
「よかったら明日もどう?明日はギンちゃんも来る予定だけど…」
「いくっ!」
「じゃ、決まり。楽しみだなぁふふっ」

そういうわけで店が終わってから俺とイナさんはギョンジンに送ってもらって俺のマンションに行った
車を降りてバイバーイと手を振ったのに、ギョンジンは車を動かさずにいる
側に寄って顔を覗き込むと…泣いている…

「なによ…何泣いてるんだよ…」
「らってらって…ラブ様…忘れてるんらもんっ…」
「…何を…」
「襟巻きとキッス…してないもんっ…えっえっ…」
「…今、イナさんがいるでしょーが…」
「ええっええっやらっやらっ僕帰らないもんっ」
「…しょうがないなぁ…」

俺はイナさんに三分だけ待ってて、あの『足』に褒美を与えなくちゃなんないから…と断ってもう一度ギョンジンのところに行った

ギョンジンは車から降りて、後ろから俺の首に巻きついた
そして俺の顔を後ろに向かせて(こいつ、これ好きだよなぁ…)キスをした…

薄目を開けてギョンジンの顔を見てみると、すっげぇ入れ込んだ表情
耐えがたきを耐えっ…てやつか?
心なしか震えてるような気がする

あっ…手錠ちうとかいうのするんじゃなかったのかな?ま…いいや…

んで…キスは…濃厚にはならなかったんだ…
耐えがたきを耐え…てるんだろうか…

すっげぇ切なそうな顔をして俺を離すと

「はぁん…辛い…」

と言った
完全にその「オトコの香り」の主人公を演じてるね…
ちょっと引き込まれそうな瞳だったもん…(^^;;)

んで

「僕達は運命に引き裂かれるんだ…アデューマイスウィートハート、明日までしばしの別れ…ああ…つらいっくううっ」

そう言って切なそうに車に乗り込み、涙目で運転していった
無事に家に着くかなぁ…

「おまたせイナさん」
「…なんか…いつものギョンジンじゃなかったな…えらくあっさりしてなかった?」
「…うーん、気持ち的にはいつもより濃厚だったみたいだけどね…いいんじゃない?本人あれですっごく満足してるみたいだし。さ、行こう」

部屋に入るとやっぱりイナさんも、俺の椅子にビックリしていた…

「こんなに椅子あってどうすんの?」
「…別に…どうもしないけど…」
「すげぇな…こだわりあるんだな…。あ…あの薬棚は何?」
「見せてあげる…」

俺は時計のコレクションをイナさんに見せた

「うわっすっげぇな…かっくいー。いくらぐらいするんだ?」
「…かなり高い…」
「…盗んだのか?」
「…買ったの…っていうか…買ってもらったの…」
「パトロンにか?!」
「違うよ!親父…」
「…いいなぁ…親父さんがいて…」
「…。そうかなぁ…」
「そうだよ…」
「…」

そうなのかもしれないな…ずっと反発してたけどな…
今度顔見に行こうかな…でも門前払いされそう…

「どした?」
「あ、いや…イナさんお風呂はいる?」
「ん…」
「じゃ、お湯入れてくるから先に入って」
「えーっ一緒に入ろうよ」
「…」
「…らめ?」
「…いいけど…」
「なんか心配?」
「心配はしてないけど…どしたのさ…随分甘えモードだね…」
「…ぐしゅ…らって…しゃびしいんらもん…えっえっ…」

泣いているイナさんと一緒に風呂に入った
テジュンが急に仕事らしき事を、ほんとに急に始めたのも、その事を一向に教えてくれかったのも、イナさんにはとってもショックだったらしい…

「れも…テジュンにはテジュンの考えがあると思ってしゃ…おれ…我慢し…えっえっえうっえうっ…」
「そんなの我慢しないで聞いてやりゃいいんだよっ」
「んで聞いたけど…誤魔化しゃれた…きっとおれが理解できないと思ってるんだ…えっえっ…」
「…っていうか…テジュンってもしかして、めんどくさがりかもね?」

そんな気もするなぁ…
釣った魚にえさをやらないタイプだったりして…
えさを与えすぎるギョンジンみたいなのもヤバイけどさ…

風呂から出て、俺達はバスタオルいっちょでビールを飲み、いろんなことを話した
話しているうちにイナさんは落ち着いてきたみたいだった…
そろそろ寝るかって時にイナさんの電話が鳴った

「もしもしっ」
『イナ?どこにいるの!家にかけても出ないから心配した』
「…へへ…ラブんち泊まるの…」
『なにっ?!そんないい事するのかっ!』
「…」
『…いや。けほ…冗談だ…。じゃ…寂しくないな?』
「…しゃびしいよ…」
『ばか…あさってには帰って来るからさ』
「…ん…」
『いい子で待ってるんだぞ』
「…ん…」
『じゃ…』
「あう」
『ん?なに?』
「…」
『なんだよ…』
「…好き…」
『…。イナ…』
「…って言ってよ」
『…好き…だよ…じゃっ』
「あっ!…切れちゃった…。てへっ…照れたのかな?」

「好きって言ってくれた?」
「…ん…」
「そ…よかったね…。んじゃそろそろ寝ようか」
「…ん…俺どこで寝るの?」
「俺のベッド」
「え?一緒に寝るの?」
「いや?」
「…いいの?ギョンジンの指定席じゃねぇの?」
「あいつは違う部屋で寝かせたから…」
「え?」
「ベッドには寝かせてないから…。イナさんが初めてだよ、一緒に俺のベッドで寝るの…」
「…いいのか?俺で…」
「イナさんだからいいの」
「…。なんか、わりぃな…」
「へへ。明日ギョンジンに言ってやってね、あいつきっと身もだえするから…ひひひ」
「わかった…んじゃお言葉に甘えて…」

俺達はまた一緒に眠った
イナさんとは頭をくっつけあって眠るのが楽しい…
ああ…寝る前にもちろんキスする…おやすみの…

キスしてる時、イナさんが急に泣き出したので(多分テジュンを思い出したんだろうな…罪な男…)ちょっと抱きしめてあげて、ちょっと濃い目のキスをした…

イナさんは「はふ」って言って泣き止んで「ごめん…」と謝った
可愛かったのでもう一度抱きしめて、そのまま眠った
イナさんとこうやって眠ると安心する…

明日はどうやって寝ようなぁ…ギンちゃんも来るし…三人だし…うーん…

そんな心配をしながら、俺達は穏やかに眠った


La mia casa_19  妄想省家政婦mayoさん

「よし...OKだ..」
「みゃぉん.*^o^*...」

はるみは首輪の代わりにピンクのリボンをいつも結んでいる....
頭にも同じピンクの小さなリボンを結んでいるがそれが頭フリフリ踊りで解けた..
リボンを結び直すとはるみは嬉しそうに笑い..俺の髪を触った...

「ん?....俺も付けろってか...」
「みゃん#...」
「たはは....^^;;.どれ...」

==ちぇみはりびんぐからぴんくのりぼんをもってきみゃした...
  しょして..まえがみをちょっとたたせてから.....ぴんくのりぼんをむすびみゃしたぁ...

 「ん?」

  ンッケッケッケッケ...プヒャヒャヒャ....きゅーと#きゅーと#でしゅ..(>▽<)

 「ぷはは...はるみ..写真撮るか...」
 「みゃみゃ#」

  .....*^_^*.....^_^.....

  おしょろいのぴんくのりぼんをつけて..けいたいでしゃしんをとりみゃした...
  ちぇみはけいたいをもったうでをぐぐっとのばしました..
  しょうしないと..かおがじぇんぶはいらないからでしゅ...ンケッケ...^^;...byはるみ==


はるみと一緒の写真を撮るとすぐに♪Brave Heartが鳴った...
♪Brave Heartは相変わらず4人の着信音なのでちょいと困る..^^;;...
電話は闇夜だった...

「...どうした...店だろ...急用か?」
「ぉん....今オルシンに電話したんだ...」
「ん?...何故....」
「ミンギの尾行の件....アマアマでさぁ~...」
「ぷっ#....ぁんのじじぃ...下っ端使ったな?...」
「そうみたい...それでさ...明日来いって...」
「何だ...期限は明後日だったろ...」
「ぅん...」
「俺の資料はすぐ仕上がる..お前のは?」
「まだ残ってる...帰ったら仕上げるけど...」
「わかった...手をつけとく...お前のPC借りるが...」
「ぅん..いいよ...それと...」
「何だ...」
「オルシン..一緒に来いって...」
「ぉ...そ...それは避けたいな..」
「ぷっ..だよね...」
「お前は昼間行け...俺は夜に行く...」
「わかった...じゃ帰るまでお願い...」
「ん...」

電話を切った後...
先にリビングで闇夜の資料を大方仕上げてから自分の資料の仕上げに入った...
程なく3人が帰ってきた...


あわあわでじゃれた後..テスがベットの中で昼間のお出掛けの報告をする...

「ドクターは元気だったか?」
「ぅん...忙しそうだったけどさ...パンも食べたってさ..」
「....?」
「ほらぁ...昨日さぁ..オーナーのとこに集まったらしいよ..」
「ぷっ...そっか....」
「ちぇみ..遅くまでかかるの?」
「ん?すぐ終わる...寝てもいいぞ..」
「ん~~..待ってよっかな...たまに...」
「ほんとか?」
「ぅん#...」

っと言ったテスは俺がデスクから戻る小一時間もしないうちに..
既に口ぱっくんで眠っている.....頭を撫でると懐に入ってきた..


ベットのヘットボードに背もたれ..頭に入らない本をめくっていた...
サイドの時計を見た...日付はとっくに変わっている...
ベットを出てリビングへ行ってみた..
案の定..闇夜はテーブルに片手を伸ばし..頭を乗せて眠っていた..
テーブルのPCは閉じていて...レーベル印刷済のディスクが3枚...PCの側にある...

『終わったんだな...』

闇夜の腕を僕の首に巻き付け...よっこいしょと姫ダッコして部屋へ戻った...
ベットに横たえて額にち◎うをするとちょっと微笑んで僕の胸に入ってきた...
両手でふわりと包んで僕も眠った...


俺たちの未来は?  ぴかろん

朝、俺はラブを起こさないようにそおっと起きた
随分早くに目が覚めたのでもう一度寝ようと思ってたのに…眠れなかった
それはテジュンのせいでもあり…それから昨日の店での出来事のせいでもあった…

ドンジュンとギョンビンが海外に出張するんだって
それも副業とやらで…

しゃびしいだろってミンチョルとスヒョンに聞いたら

「寂しくはないさ…心が繋がっているから」

とか言いながら、キツネは随分リクエストを間違えていたように思う
目玉も曇りガラスだったしな…

スヒョンにも同じ事を聞いてやったら

「僕を誰だと思ってるの?」

なんてスカしてたけど、チーフの部屋に入る時躓いたのを見逃さなかったからな

あいつらも寂しいんだなと思った
でも…でも…
ミンチョルのやつ、いつの間にか『ミューズ』の企画室長になったらしいし…スヒョンに至っては『俳優』やるらしい…
なんだよ!皆副業についてやんの…どういうことだよ!

「ホ○トじゃダメなのか?ホ○トって職業は誇れないって事か?ああ?」

俺が騒いでたらシチュンがこそっと漏らした

「あのぉ…俺もぉ…俺の店、ちっと頑張ろうかと思ってさぁ…テソンさんたちに相談してんだけど…」
「…お前も?何を頑張るの!」
「いや、大した事じゃねぇんだけど、メニューをさ…いろいろ…」
「…メニュー?」
「チェミさんもテスさんと一緒に…あ…ま、そのうちわかりますから…、じゃ」
「じゃっておいっ!何?みんな着々と副業するってこと?」

そういえばテジンは前から工房持ってて、今もその仕事やってるし、スハも近くの子供たちの勉強見たりしてるし…
テプンは…。草野球の監督してるな…仕事じゃねぇけど…

それにドンヒの野郎がなんかシュミレーターがどうのこうの言ってたな…
あいつも特殊な技術持ってるじゃん…

チョンマンだって夢は映画監督だっけ?まだ留学できずにウロウロしてるけど…
そんでジホさんは現役の映画監督だし…ミンギだって映画監督目指してる…
ジュンホ君は地道に勉強してるしな…

テソンはもう本業だしなぁ、厨房…

ウロウロしてるのっていったら…ソヌさんだろ?スヒョクだろ?イヌせんせにウシク、ラブとギョンジンとホンピョと俺…

なんだ、仲間は一杯いるわ…ほっとした…

でもなぁイヌせんせなんか、すぐにセンセできそうだしなぁ…ウシクだって宅急便やろうと思えばできるし…ソヌさんは…リハビリ中か…
けども…あの人、きれる人だからなぁ…
なんか…俺…置いてけぼりにされそう…
でもでも俺、俺、内装とか製パンとか木工とか…ムショで資格取ったし…
はぁん…それに俺、ギャンブラーなんだし…
アメリカに行けばすぐに何百万ドルって稼げる…し…
ああ…
なんて浮き沈みの激しい俺の人生…
地道からは程遠い…
もいっかいピットボスで雇ってもらおうかなぁ…ってそんなことしてたらBHCに出れないし…

はああん…どうしよう…俺…

「イナさんどうしたの?!」
「あ…起きた?」
「こんな早くに…。眠れなかった?」

起きてきたラブにそのモヤモヤした気持ちを話した
ラブもうっすら考えてたらしくってさ

「なんで急にみんな仕事しだしたのかなぁ。いいじゃん俺達はホ○トとして胸張って生きていこうよ…」

なんて笑って言ってたけど、ふっとマジな顔したんだよな…

「なにさ、なんかやりたい事あるんじゃないの?」
「やりたいっていうかさ…、俺の時計のコレクションさ…、ここに眠らせておくのもったいないかなぁってちょっと思う」
「うん…確かにもったいないよ…」
「でもなぁ…これをどうすればいいか…わかんないし…やっぱまぁいいか…」
「…。なぁ…ギョンジンはどうする気だろう…。弟がもしも、副業の方で活躍とかしたらさ…自分もやりたいとか思わないかなぁ…」
「…うーん…あの人ねぇ…確かに…才能ある人だけどさぁ…今呆けてるからなぁ」
「呆けさせたの誰さ」
「…俺…」
「この野郎!」
「くはっやめてやめて!くすぐったいよ!…くはは…はぁ…」
「…まぁいいか…。ホ○トの方で頑張れば…」
「…そだね、皆が副業やって、手薄になったとこを俺達で埋めていこうよ」
「…ん…」

そんな事を言いつつ、俺達は朝食の準備を始めた



少し早めに店に行くと、mayoさんとテソンがいた
テソンがコーヒーを淹れてくれたので、俺は厨房に入って昨日のラブの家の話をした

「あいつんちさぁ…面白いんだよぉ…椅子が一杯あって、それが全部違う種類なの」
「ほぇぇ…ラブってアジアンテイストが好きなの?」
「らしい…落ち着くんだって。それとさぁ…時計が好きなんだって」
「えっ!時計?」
「ん…。俺はよく知らないけど、有名な時計メーカーのものとかコレクションしてるって。見せてもらったけどカッコイイのが一杯あった。あとエロいのが一つ…」
「エロい…それってもしかして…」

mayoさんが珍しく食いついた
俺はあれこれ突っ込まれたけど、詳しくないからよく解らず、ラブに直接聞けば?って言ってやった
mayoさんは目を輝かせていた
テソンはそんなmayoさんを見て、あーあ、また始まった…全くmayoは趣味が多すぎる上に、趣味の領域超えてるからなぁ…とブツクサ言っていた

俺はテソンに

「もし俺がなんか仕事するとしたら、何がいいと思う?」

と聞いてみた
テソンは俺をじっと見つめて考え込んだ
そして

「園児」

といった…
それは仕事じゃねぇ!

「ごめんごめん…冗談だよ…。イナはテコンドーとか教えたらいいんじゃないの?」

と言い直した
テコンドーか…
んでもテコンドーならギョンジンのが…

ギョンジンと二人でテコンドーの講師やるとか?
ラブが怒るかな?
てじゅもおこるかにゃ…はへん…

俺は大きなため息をついてコーヒーごちそうさんと行って厨房を出た

「どこ行ってたの…電話鳴ってたよ」

ラブが言った
俺は慌てて控え室に行きかけ、ラブにmayoさんがなんか聞きたそうだったぜ、時計の話…と告げた

控え室で電話の着歴を見ると、『てじゅ』とあった
すぐさま電話する俺




俺はフリップを閉じた…

ぐしゅんうええん…らってらってらって…
はなしちゅうなんらもんうええええんええんええんぶぁかぁぁぁっ…



mayoさんの時計の話っていうのが気になって厨房を覗いた
するとほんとに、こんなmayoさん見たことないっていうぐらい瞳をきらめかせたmayoさんがすととととっと俺に近づいた

「エロティカ持ってるんだって?!」
「…え…うん…」
「ほかにっほかにはっ?」

mayoさんにいろいろと突っ込まれた
話を聞くとmayoさんも時計好きなんだって
俺より詳しい…
で、俺はイナさんと今朝喋っていた事をなんとなしに話してみた
mayoさんは『考え込むポーズ』になり、黙り込んだ

「こうなるとしばらく喋らないからね、mayoは…」

テソンさんはくふっと笑って言った

「謎が多い彼女持って…飽きないねぇテソンさん」
「…っていうか…寿命が確実に縮んでるんだけど…」
「それにしては幸せそう」
「お前もね」
「は?俺は…謎が多い恋人じゃないもん…」
「…そうかぁ?謎めいてるよぉあの人…」
「…まぁ…ある意味ね…」

二人でくふふっと笑い合い、俯いてニヤニヤしているmayoさんをちらっと見て…もうどうしようもなさそうなので(^^;;)厨房から出た
控え室に戻るとまた涙目ですねすねのイナさんがふてくされていた…
おーよしよし…ほんとに…ほっとけないなぁ…

イナさんを抱きしめながら、ああmayoさんにお礼言うの忘れてた…と気づいた
でもまぁいいか、今までテソンさんやmayoさんとこんな風に喋った事なかったもんな…
時計がいいきっかけになったかな?
これからの俺は…なんだか明るい未来が待ってるぞぉぉって気がしてならなかった

「えうえうってじゅううてじゅうう」
「あーはいはい…そのうちまたかかってくるよ、ね?」
「てじゅは何の研修受けてるんらぁぁぁ」

は?受けてる?受けてるの?俺はてっきり

「受けてるんじゃなくて、センセイしてるんじゃないの?」

と思ってたんだけど

「センセイ?なんの?」
「…だってテジュン、総支配人だったからさぁ…、そういうノウハウを…教えてるんじゃないのかなぁ…」
「はっ…しょうか…お前ってかしこいなぁ…ぐしゅぐしゅ…」

あまりにも可愛らしいイナさんをもう一度抱きしめて俺はテジュンの凛々しい姿を思い浮かべた
その時、イナさんの電話が鳴った
イナさんはすぐに電話に出た

「あうあうあう…てじゅっ…」
『イナ…昨日はどうだった?楽しかったか?』
「楽しかったけどしゃびしか…ええええっええっええっ」
『泣くなよ。明日帰る…からな?』
「…」
『ん?どした?』
「ちっとつまっただろ、今」
『え?…いや…何が?』
「…」
『イナ、今夜はひとりか?』
「今夜もラブんち泊まる!ミンギもいっしょら」
『そ…よかった…。仲良くしてもらえよ。我儘いうんじゃないぞ』
「おれはこどもじゃないもんっぐしゅっ」
『あ…もう行かなくちゃ』
「てじゅてじゅ」
『ん?好きだよイナ』
「でへっ…あいや、そうじゃなくて」
『なんだよっ思い切って言ったのに』
「…。てじゅ…センセイなの?」
『あ?』
「けんしゅうのセンセイなの?」
『…あ…。まぁ…その…ちょっとセンセイっぽいかも…』
「…」
『それが?』
「…ご立派でございますね…」
『…なによ…』
「…いや…べちゅに…」
『…イナ…。好き…あ、はいっ今行きます…じゃ、イナ、夜も電話するからなっちゅっ』
「はうっ…。…。切れた…はふ…」

電話を終えたイナさんは、体中から「しゃびしい光線」を出していた
こんなとこ、ギョンジンには絶対見せたくない!
ほっとけない!ほんとにもう…よしよし…

テジュンったらもうちょっとかまってやればいいのにな…ふぅ…
俺は涙目で俺の胸にすがり付いてきた野良猫のようなイナさんの背中を暫くの間さすさすしてあげた…


お仲間  オリーさん

「ずいぶんやられてるぞ、フン公害」
ミンチョルは僕の後ろに回るとチェックし始めた
「え、そんなに?」
「ジャケット脱いだ方がいいな」
「せっかくコーディネートしてきたのに」
「さすがのお前もフンは似合わない。店で鼻つままれるぞ」
「そうだな・・」
「ちょっと待て。袖口持っててやるから静かに脱げ。他にくっついたらまずいぞ」
「そんなにか・・やれやれ」
「ほら、左の腕からそっと引き抜け」
「ん・・」
「そら・・」
「っと・・」

「ちょちょちょっとっ!そこの二人っ!何接近してるんですかっ!」

「スヒョク、どうした?」
「ミンチョルさん、はいっ、離れてっ!」
「何?」
「いいから、スヒョンさんも離れてっ!」
「でも・・」
「ジャケットが・・」
「いいからっ!僕が持ちますっ!」
「あ、スヒョクっ、そこ・・」
「え?・・・・・」
「何すか、コレ?」
「お前、背中のそこ、今ぎゅって握った?」
「あ、はい・・」
「鳩のフン、ぎゅって?」
「鳩のフン?うわっ!きったない・・」
「きったない、じゃないだろう。ああ、だから静かに脱がせてたのに」
「お前が今握ったとこ、しみになっちゃうかも」
「う・・」
「このジャケット、気に入ってて結構高かったんだよね」
「う・・」
「す、すみません・・異常接近してるかと思って」
「異常接近?」

「ミンチョル、スヒョクは僕の監視役なんだ」
「監視役?」
「ほら、僕ら取り残されちゃったろ。二人が留守の間何かあると・・ね?」
「取り残された・・」
「ミンチョル、動揺した?」
「ばか、するわけないだろっ!」
「だよな。」
「僕も忙しくて大変なんだ」
「だよな。スヒョク、そういうわけだから、心配ご無用」
「今回はそのちょっと早とちりでした。でも俺ドンジュンに頼まれちゃってますから・・
あ、あと店にみんな揃ってますから」
「ああ、今行く」
「お願いします」

僕はスヒョクが出て行くとミンチョルを振り向いて苦笑いした
「ドンジュン、ぴったりのを監視につけちゃってさあ」
「さすがだ。お前も信用ないってことだろ」
「ひどいな」
「鳩のフンなんかつけてお前らしくない。よっぽどボーっとしてたんだな」
「お前に言われたくないね」
「もしかしてそれでさっき寂しいとかって言ってたのか」
「ケホンっ、お前こそどうなんだ」
「僕は別に。ミューズの方も動かさなきゃいけないし、それどころじゃない」
「そうか、そうだよな。全然寂しがってる暇なんかないよな」
「当然だ」
「そうだと思ったよ」
「ほら、早く服の始末しろ。遅れるだろ」
「そうだな、でもミンチョル、お前も強がらずに、寂しいなら素直に寂しいって言った方がいいぞ」
「強がってなんかないさ」
「ならいい。ところでミンチョル・・」
「何?」
「お前、秋になったのにクールビズやってるの?」
「クールビズ?」
「ネクタイしてないぞ」
「あ・・」
「もちろん、わざとだよね、ふふん」
「・・・」
「ネクタイ選んでくれる人がいない、なんて言い訳しないよねぇ」
「と、当然だっ!全部セットしてもらってるから心配ない」
「へぇぇ、お洋服全部そろえてもらってたんだ、ふぅぅん・・」
「も、もう行くっ!」
「ネクタイは?」
「上着を脱ぐっ!」

くくっ・・よかった僕だけじゃなくて・・


賑やかな食卓 れいんさん

店がはねた後、僕は野良犬と野良猫を引き連れてヨンナムさんちに帰った

「ただいま帰りました」
「お帰りなさい・・あれ?ホンピョ君、どうしました?そんな所で」

戸口で顔だけ覗かせていたホンピョがのろのろと玄関の中に入って来た

「・・その猫・・どうしたんですか?」
「あっ兄貴っ!あのよっ、この猫な、独りぼっちでのたれ死に寸前の可哀想な猫なんだっ。ほっとけなくてつい連れて来ちまった・・ここんちで飼っちゃダメか?」
「・・」

「あっ明日ちゃんと病院にも連れて行くつもりだ・・ドンヒが」
「・・」
「検査や注射なんかもするつもりなんだ・・ドンヒが」
「・・」

「・・やっぱダメか?・・ダメだよな・・ぐしっ」
「・・」
「そうだよな。いくら太っ腹の男気のある頼み事には嫌とは言わない二枚目のさすがの兄貴でも・・」

「・・いいでしょう。猫でも鳥でも野良犬でもすけべおやじでもBBSSでも、なんでもかんでもウェルカムです」
「BBSSって?」
「ブルガリブラックしゅっしゅっ症候群」
「なんですか?それ・・ま、とにかくよかったなホンピョ」
「うんっさすが兄貴だっ!」

ホンピョは片手でブルーを抱いたままヨンナムさんに抱きついて喜んでた

「ほんとにもう・・急に家族が増えちゃって・・賑やかなのはいいんですが・・僕は合宿所のおばさんにでもなった様な気分ですよ」

なるほど、玄関には脱いだ靴がたくさん並んでいる
それもきちんと踵を揃えて
ヨンナムさんの根気強い指導の賜物だ

「ささ、早いとこ御飯にしましょう。今日もたくさん作りましたよ。皆気持ちいいくらいにきれいに平らげてくれるからね」

ヨンナムさんは早速台所の隅にブルーの寝床を準備してくれた
テソンさんに貰った小魚やチーズでお腹いっぱいになったブルーは、にゃーと鳴いて寝床に入った
そして手足を伸ばしてブルブルっと体を震わせた後、丸まって眠りについた
ホンピョはそんなブルーの薄桃色をした肉球をつんつんとつついて
「おやすみ。また明日な」
なんて呟いていた



居間に行くとソクさんとスヒョクさんがいた
また二人揃って御飯を食べていた


「よお、お帰り。お子ちゃま二人組。先に飯食ってたぞ」
「あ、ソクさん、ただいま」
「子持ちの野良が野良猫拾ってきたんだって?」
「けっ!子持ちの野良って誰の事だよっ。そっちこそまた不発に終わったんだろ?その顔見りゃわかるぜ」
「おっ!何、生意気言ってるんだ。不発だなんてそんな俗な表現するんじゃない。・・ね?スヒョク」
「はい、ソクさん」

「けっ!この前ぐしぐし泣いて電話して来たのはどこのどいつだよっ」
「だって、あの時はソクさんの態度が変だったから・・」
「そいつはいつも変だっつってんだろ」

「ソクさん・・あんな事言ってます」
「気にするなスヒョク。僕みたいな能ある鷹は普段は爪を隠しているものさ」
「ソクさん・・!」
「スヒョク・・!」
「けっ!隣り合って何じーーっと見つめ合ってんだよっ、馬鹿馬鹿しいっ!」

「・・あれ?ところでテジュンさんはどうしたんですか?」
「ああ、テジュンなら研修で留守。ここにいる時もひっきりなしに仕事の電話がかかってきてますよ」
「ふぅん・・忙しいんですね・・」
「ホント・・イナさんが寂しがらなきゃいいんですけど。これ以上監視する対象が増えちゃうと僕困ります」
「何ならイナの監視は僕がやろうか?」
「絶対ダメです!」

「あっ!このおかず、そっちの方が大きいぞ」
「ばか。どれも同じだろ?」
「ドンヒ。とっかえてくれよ」
「しょうがないなぁ」

「ソクさん、野菜よけちゃダメです。ちゃんと食べて下さい」
「あ・・バレた?スヒョク代わりに食べてくれよ~」
「ダメです。ちゃんとバランス良く食べないと加齢臭が早まりますよ」
「う・・」

「あい。ごはんおかわりっ。大盛りなっ」
「ばかっ!自分でよそえよっ」
「ちぇっケチ」

「ええっと・・今度から食後の後片付けは当番制にしましょうかねえ・・ブツブツ」
「テジュンにもちゃんと片付ける様に指導しなくては・・。後、買い物も当番制に・・ブツブツ」
「それから鳥と猫のお世話当番と、香水悪用禁止の貼り紙も書かなくては・・ブツブツ」


皆それぞれてんでバラバラに好き勝手な事を話している
そんなこんなでヨンナムさんちの賑やかな夜は今日も更けていった


闇夜のドン_1  妄想省家政婦mayoさん

ぉっとぉ^_^...ぅわっ@o@....ふっ^^.......

昼ごはんの後..出掛けるからと着替えに部屋に入った闇夜が部屋から出て来た...
僕たち男3人+一匹は部屋から出て来た闇夜を見て固まった....

闇夜はチマ・チョゴリを着て部屋から出て来た....
オッコルム(胸の前から垂らす長いリボン)が若草色...
チョゴリ(上着)は淡いピンクで..左胸に刺繍が入っている...
チマ(スカート)は2枚仕立ての濃淡のサーモンピンクだ....
髪を1つに小さくまとめピニョ(長い簪)とコジ(短い簪)を一本づつ挿している..
そして今日はちょっとしっかりメイク...

==それぞれの反応

  僕......^_^....似合うじゃん...ふふ...
 テス......mayoシじゃないぃぃ..@o@
ちぇみ......顎に手をやり..無言で口元で笑う....
はるみ......みゃみゃみゃぁ~~~*^_^*......

滅多に見られないから写真撮ろう#とテスがオートシャッターで写真を撮った...
そして闇夜は履き慣れないコムシン(靴)でかっくんかっくんと出掛けていった....


郊外にある広大な敷地にオルシン邸はある....
韓服を着て座卓を前に座っているオルシンに韓式の挨拶をして立て膝で座った....

「顔を見せたのは何時以来かのぉ..」
「祭に出掛ける前ですか...」
「そうか....ほれ..近う寄れや...」
「はぃ...」

オルシンは座卓の前まで進むと手にした扇子で頭を撫でる...
書類を出すと早速目を通した...

「外堀は固まったようじゃな...」
「はい..」
「すまんのぉ..今回は急がせたかの..ンカッカッカ#」
「ぃぇ...いつものことでは?..オルシン....」
「相変わらずの減らず口じゃな....」
「それが楽しみでは?」
「ぷっ...そういう言い草はお前の親父そっくりじゃ...」
「....^^;;...」

「今回の若いのはなかなか使える様じゃな...」
「もしかして..尾行の件...試しましたね....」
「何故そう思う...」
「オルシンにしては...ちょっとお粗末な仕事ぶりでしたから...」
「ンカッカッカ#...んまぁ..ちと試しもあるかの...」
「お人が悪い...」
「むほほう....どれ...散歩に出るかの...」
「はい...」

敷地の中の散歩に付き合わされるのはいつものことだ..
散歩はいつも1時間強付き合わされる....
扇子を持った手を後ろ手に組み...ちょっと前を歩くオルシンが振り返った

「顔が少し緩くなってきたようじゃの...」
「はぁ...」
「んまぁ..ちと複雑なような感じもするがのぉ...」
「...^^;;...特別心配なことは...何も......」
「まぁいい...」

オルシンは扇子で軽くパシン#と私の頭を叩いた後カッカッカと笑った....


男3人で午後に家政婦モードをこなした後に茶を飲みながら...
僕とテスはちぇみからオルシンの話を聞いた...
闇夜の親父さんと懇意で...闇夜を可愛がっていて...
ちぇみは仕事を通じてずっと懇意にしていた..というとこらしい..

「ねぇ..凄い人なの?...」
「ん?...テス...ただのジジイだ...」
「ぷっ...でも怖いの?」
「ん....昔はかなり...」
「「ふ~~ん...」」


闇夜は夕方前には帰ってきた...

「ぁ~ちかれたちかれた...」

闇夜はチマをたくし上げてばたばたと部屋に入り...
いつものカーゴパンツと黒シャツに着替えて出て来た...
はるみとちょっとじゃれた後...ソファで少し居眠りを始めた....
店に行く時間になって闇夜のほっぺたをにっきーの手で挟んだ...

「んがっ#...」

っと起きた闇夜はチマ・チョゴリをはるみに着せた..
みゃみゃ〃^o^〃...と前足を振るはるみに見送られ僕等とテスは店に行った...

**オルシン=父の友人や老人に対する尊敬語デス...


Bed & Breakfast オリーさん

「疲れたでしょう。それにはこれが一番」
ミルクティがなみなみと入った大ぶりのティーカップが僕の目の前に差し出された
僕は丁寧にそれを受け取るとカップを口に運んだ
紅茶とミルクが見事に溶け合った暖かい甘い魔法が僕を包み込み思わず口元がほころんだ
それを見たご婦人は満足そうにうなづいた
「キャシーの紅茶はザ・リッツのアフタヌーンティにも負けてない」
脇からご主人が僕に話しかけた
「リッツでお茶を飲んだことはありませんけど、奥さんのお茶はとても美味しいです」
「君は正直者だ。気に入った」
僕の答にご主人は口ひげを揺らして大きく笑った
どこかショーン・コネリーに似ている体格のよいご主人と、小柄で優しい瞳を持ったご婦人
これが僕のBBの主だった

予定時刻にヒースローに着いた僕は、ぼーっとして入国審査の列に並んでいた
横から腕を引っ張られた
顔見知りの昔の仲間だった
別室に連れ込まれ説明を受けた
「宿は希望どおりオックスフォードのBBを取っておいた。教授にも明日アポを取ってある。10時だ」
「わかった」
「オックスフォードまでのバスチケット、バスターミナルの2番だ」
「ありがとう」
「そっちには張りつけないから単独でやってくれ」
「わかってる」
「後はコレを持って行け。取扱にはくれぐれも注意して。帰りにここで回収する」
拳銃だった
「いらない」
「念のためだ」
「使う必要ないだろう」
「持つだけ持ってろ」
「下手に持って厄介な事になる方が嫌だ」
「わかるだろ、僕が怒られる」
「・・・・」
僕は仕方なく受け取った
「でも使わない」
「それはそっちの勝手だ」
ちょっと気の滅入る押し問答をしてから僕は開放された
外に出ると到着した時にわずかに残っていた陽射しは消えかけていた
冷たい外気が頬に当たり思わずブルゾンの襟を立てた
そして教えられたバスターミナルからオックスフォード直行のバスに乗った

夕方までは30分毎、夕方5時以降は1時間毎に空港とオックスフォードを結んでいる
乗客のほとんどは通勤客、他はオックスフォードの学生風がちらほら
時間帯のせいか観光客らしき姿は少ない
押し付けられた拳銃が僕の心を少し重くした
バスが進むにつれ、景色も夕方から夜へと急ぎ足で変わっていく
英国が誇る美しいスロープも、今は闇に包まれてひっそりと地平線の手前で息を潜めている
バスは順調に進み、すっかり帳のおりたオックスフォードの中心部へ着いた
ほとんどの乗客は慣れた様子でバスを降り、それぞれの帰路についた
僕は最後にそのバスを降りると、まっすぐタクシー乗り場に向かった

タクシーは10分ほどで目的地に着いた
運転手に少しチップを多めに渡しお礼を言って車を降りた
正面にこじんまりとした庭がある落ち着いた感じの煉瓦造りの家だった
玄関で呼び鈴を鳴らすと、中から大きな声がしてすぐドアが開いた
「ミンさんかな」
恰幅のいい老人が僕の目の前に現れた
「待っていたよ、さあ、入りなさい」
そう言うなり彼は老人とは思えない力で僕と荷物をいっしょくたにして中に引き入れたのだった

僕が紅茶を飲み干すとキャサリンとアンドルーと名乗ったご夫婦は揃って満足そうに微笑んだ
「さて、では部屋に案内しよう」
アンドルーさんは僕の荷物を軽々と持ち上げると先に立って歩き出した
僕の部屋は2階だった
カントリー調のドレッサー、使い込んだ感じの机と椅子、ベッドはお手製らしいキルトでメーキングしてある
先ほどの紅茶といい、清潔なこの部屋といい、僕は大当たりしたようだ
「いい部屋だろう」
僕の心を見透かすようにアンドルーさんが声をかけた
「娘が使っていた部屋だ」
「お嬢さんは?」
「嫁いで、今はロンドンにいる」
アンドルーさんはちょっと寂しそうにちょっと嬉しそうに答えた

「まだバスは使える。使うならすぐ使いなさい。2階の奥だ」
そう言うと、彼はをおろして出て行った
この時間にシャワーが使えるとは思っていなかったので、
僕は荷物の片付けを後回しにしてバスルームへ飛び込んだ
そして思い切り熱いシャワーを浴びた

「遅くまですみません。シャワー終わりました」
シャワーを終えて着替えると階下のリビングへ行ってアンドルーさんに声をかけた
彼はおもむろに僕を振り返るとにっこり笑った
「待ってたよ、こっちへ」
彼は僕にソファに座るよう合図した
テーブルの上にはすでにボトルとタンブラーがのっていた
「ジェットラグ解消にはこれが一番だ」
彼はこう言うと、タンブラーにスコッチを注いで僕に差し出した
茶目っ気たっぷりのウインクと共に

部屋に戻るとちょっと飲みすぎた僕はベッドに倒れ込んだ
確かに時差ぼけには飲んで寝るのが一番かもしれない
おかげで今夜はぐっすり眠れそうだった
宿の主人が飲みながら話してくれたことが頭の中でぐるぐる回った
自分はイギリス海軍の軍人だったこと、
現役の時は奥さんをかまってやれなかったこと、
リタイアしてからは庭いじりが日課になっていること、
時々飲みすぎて奥さんに叱られること、
だから僕のように酒の相手になりそうな宿泊客は大歓迎だということ、
そして何より奥さんを愛しているということ
さんざん自分の話をしてから、彼は僕に独身かと聞いた
僕はそうだと答えた
でも大事な人はいるのだ、とつけ加えた
彼は目を細めてうなづいた
大事な人を大切にする、そんな簡単な事が案外難しい、だから人生は複雑だ
僕よりはるかに経験豊かな退役軍人は遠くを見る目つきになって呟いた

眠りに落ちる手前で、空港での彼の後姿が瞼の裏に浮かんだ
ねえ、後ろ向いてないで顔を見せてよ・・
僕はそう囁いてみたけれど、彼は顔を見せてくれなかった


Paris  足バンさん

「ヒャッホー!パッ!リッ!ィ!」

朝早く目を覚まし窓を開け、とりあえず記念の第1声をあげてみた。

機中では仮眠をとるくらいに留めてひたすら資料に目を通し、
隣の日本のビジネスマンとお喋りし、映画を観て、観光ガイドを読破し時差ボケ矯正。

空港まではギスの会社の若いスタッフが迎えに来ていた。
そいつはちょっとミンギ君似でとても世話焼きみたい。
夕食にいいレストランを紹介するよう言われたということだけど断り
直接ホテルに向かってもらった。
そして部屋に入るなりベッドに倒れ込み(たぶん)1秒で熟睡モードに入った。


ホテル・スプランディッド・エトワールは凱旋門の目の前にある4つ星のプチホテル。
ギスには小さなホテルでいいって言ったのに。
小さいってのは安いっていう意味だったんだけどなぁ。

とにかく予約されてたスィートからスタンダードに替えてもらった。
それでも窓から凱旋門がすぐ向こうに見えるナイスビュー。
夕べは見損ねたけど夜景はさぞ綺麗だろうな。

ヨーロピアンスタイルの部屋は落ち着いていて装飾過度でなく
ベージュと白、ブルーグレーですっきり統一されている。
白い両開き窓の外の黒い装飾格子がちょっとパリっぽいかな。

窓を開ければ凱旋門を回る車の音がこだまする。
この丸い道では車はぐるぐる回っていて周りの放射状の12の道に好き勝手に出入りしてる。
ルールは、右から来る車が優先、交差点から出る時は外回り、
まだ出ない時は内回りを走る。
でも1度中側に入ってしまうとなかなか外側に出にくくなる。
このクレイジーな交差点の通り抜けが問題なくできれば、パリで立派に生きていけるとか。
うふふんさっそく後で行ってみなくちゃ。

今韓国は午後のおやつの時間。
スヒョンは何してるかな。
と、今更ながら到着時にスヒョンに電話をいれ忘れたことに気づいた。
ま、いいか。夜中の3時に勘弁しろって言ってたし
文句言われちゃかなわないもんね。

どーせ僕がいなくてハネ伸ばして絶好調に決まってる。

さて、過密スケジュールの開始。
なぜ過密かというと遊びの時間もばっちり組まれてるから。

軽い朝食をとってから北側の8区モンソー公園に行ってみる。
いわゆる庭園風ではないちょっとワイルドな公園はけっこう好きなタイプ。
池の周りの古代ギリシャのような列柱が目をひく。
広い芝生の中に点在するグリーンのベンチに座り冷たい朝の空気を吸い込んだ。

朝の空気なんてまるで眼中になくキスしながら歩いてる恋人たちを見ると
どうしたってスヒョンを思い出す。
ここをあいつと散歩してるシーンを妄想してると
あのミンギ君モドキ君がひーこら走ってきた。

「なに?どうしたの?」
「はぁはぁ…フロントでこちらにいらっしゃったと…はぁひぃ」
「まさか監視付きじゃないでしょうね」
「これをお渡しするのを忘れてしまって…こちらではこの携帯をお使い下さい」
「こっちじゃ携帯持ちたくないんだけど」
「社長のご意向なので…」

困ったような顔がまたミンギ君にそっくりで気の毒になり
仕方なくそれを受けとった。
彼は「では午後2時にお迎えにあがります」と言ってまた走って行った。

さてさて。
ホテルに戻った後はお得意の電話かけまくり作戦。
今回は一般ユーザーを装って各自動車メーカーやディーラーのナマ声調査。
我が国製の自動車を購入したいがどんなもんでしょうという無茶な内容。

たどたどしい仏語にほとんどの担当者は軽くあしらう。
でも10件に1件くらいはちょっとしたヒントをくれる。
まだ偏見はあるものの、以前に比べれば評価は上がってる。

100件ほどで区切りをつけてランチ。
コンコルド広場に向かってシャンゼリゼの裏をブラブラし比較的安そうなレストランに入った。
ダメなポワロみたいなギャルソンが意外に親切に対応してくれた。
メニューが全然わかんないから適当に指さして注文。
魚っぽいかなと思ったらこれが見事当たりました。うふふ楽しいっ

2時ピッタリに迎えに来てくれたミンギ君モドキ君に無理言って運転させてもらい
例の凱旋門の周りぐーるぐーるを堪能!
間に割り込む度に相手に投げキッスしたら意外とすんなり出られた。
モドキ君はヒヤヒヤして顔色悪くしてたけど。

ギスが借りてるオフィスはルーブルの奥の
パリ市役所近くの古いビルの中にある。
それにしてもあれが市役所とは。どう見ても教会か博物館。
写真家ロベール・ドアノーの「 パリ市役所前のキス 」を思い出したところで
ついでにまたちょっとスヒョンのことも思い出してやった。

ギスは現地スタッフと一緒に待っていた。
ソウルで会った時より何十倍も細かい話になり
僕も観光気分を捨て去って本格的にツッコミを入れる。

ギョンビンに言われた通り遠慮しないでとにかく言う言う言う。
それで僕を切るならその程度のプロジェクトだ。

「自社部品の確保、とにかくそこを避けて通られちゃ困ります」
「しかしドンジュン君、現実には…」
「いいですか、ただの組み立て屋としてヨーロッパに利用されるためにわざわざ巨額の
 投資をするのなら最初から手を引くべきです」
「…」

とにかく明日のフランス側との会議の前に言いたいことは言っておいた。

帰りはモドキ君の車を断りバスティーユ近くのマレー地区まで足をのばす。
ここは王朝の最も古い歴史を持ち貴族が多く住んでいた所だとか。

夕刻、店先の1920年代のガラクタやアールヌーヴォーの家具が光を反射して映え
不思議なまでの美しい空間をつくり出す。

ある骨董屋の店先の少し黄色がかったカットグラスに惹かれた。
美しく強く揺るがない曲線と直線が幾重にもなり輝いている。

スヒョン…あなたみたいだね…

僕はそのグラスにそっと投げキスをしてまた歩き出した。


Al futuro   妄想省家政婦mayoさん

闇夜は2階のスパイ小屋で電話をかけている...
ラブがまた厨房に入ってきた...

「テソンさん...mayoさんの『考え込むポーズ』終わった?」
「ぷっ....何やら動いてるみたいだよ?..」
「ぇぇー...もぅ?...」
「ぅん...多分.あっちこっちにアンテナが伸びてきてる...」
「わかるの?テソンさんは...」
「くふっ...まぁね....」

2階から降りてきた闇夜がラブに気づき...
2人で丸椅子に座り..厨房の作業台の隅で話始めた...

「時計のコレクション....もっと生かそう...時計が可哀想だもん...」
「ぅん..」
「さっき話聞いたらかなり貴重な時計ばっかりだよ...見本市用の時計もあるようだし...
 職人ひとりがケースから部品すべて手作りのアンティーク...んな時計...二度と手に入らない...」
「ただの古い時計じゃないんだぁ....」
「お父様がちゃんと考えて買って下さった物もあるんだよ...」
「そうなのかなぁ....」
「それに...自分が好きで買ったものもあるでしょ?リトモラティーノとかさ...」
「ぅん...あの出目金みたいなのが気に入ってさ...重いけど気に入ってる...」
「そういう時計...ただ眠らせておくにはもったいない..時計もトクトク呼吸してるの#
 眺めるだけじゃただの『オタク』だからさ...『お洒落』に変身させなきゃ...時計をさ#...」

「mayoさん...」
「ぁ...ちょっと熱いね..私....」
「かなりね...ホント...時計好きなんだね....」
「ぅん..^^;;...」

「でさ....何できる?..どういう風にする?」
「んっと...時計をね...レンタルするの....」
「ってさ..人に貸すってこと?」
「違う...個人にレンタルはまだ止めた方がいい..信頼関係できてないとトラブルになる....」
「だよね...じゃぁ...」
「雑誌とかの撮影用に使うのよ...」
「時計専門の?」
「違う違う...時計専門誌はつまらない...ただの見本だもん..」
「時計とファッションとをコーディネートする...スタイリスト...やってみたら?」
「難しそうじゃん....」
「大丈夫だよ....いつもありきたりの服着てないでしょ?」
「人とおんなじって恰好悪いじゃんか...俺そういうのヤだからさ...」
「ぅん...ってことはおっ#っと思う時計のコーディネートもできるってことでしょ?...」
「まぁね....」
「雑誌にそういうページがあってもいいと思うわけ....
 ...ラブ流でいいんだよ..ラブ流でLovely~~♪...Love you~~♪.....」
「あのさ....ギョンジンみたいなシャレ言わないでくれる?」
「....ごめん...^^;;..」


「ゆくゆくは雑誌の何ページかを任されるようになるかもしれないじゃん..」
「俺ひとりで出来っかな....」
「ミンギと一緒なら出来るでしょうが...」
「そっか#....ギンちゃんとなら俺やる#...」
「ギョンジンさんは?」
「.....いい.....」
「ぷっ...渋オヤジ雑誌の時計レンタルもイケるし...」
「それはついでね..」
「あはっ^^;...」

「オトコ雑誌...オンナ雑誌に拘らずにイケると思うんだ...両方大丈夫だと思う....」
「そう?...」
「ぅん...それに...部屋も椅子や家具がいっぱいなんだって?」
「ぅん...人が言うには統一性がない..らしいけどね...」
「ぷっ...でも自分らしいんでしょ?」
「ぅん...そう...」
「部屋だってファッションページ...インテリアのページ撮影に使える...」
「そっか....」
「ミンギとファッションページ飾っちゃたりなんかできる...
 もしかしたら”若者のカリスマスタイリスト”になれるかもしれない#...」
「何かさ...ちょっとわくわくしてきた...」
「何人かのスタイリストに声かけといたからさ...きちんとしたとこ紹介するし...考えてみたら?」
「ぅん.....わかった....ね..mayoさんさー...」
「何...」
「時計が好きなのに何故時計してないのさ...」
「.....ん~....いつか自分だけの時計を作りたいの..世界に一個しかない時計...」
「そっか.....いろいろありがとう....」
「ん....」


「ね..テソン...」
「ん?何...」
「考えてみたらさ....BHCで雑誌作れるね....」
「ぷはは....そうだな....」
「ファッション...音楽...映画...料理...コラム....今日の健康(医大生入るし...)....」
「みんな何かしらできるしな...」
「ぅん...出版元も確保できそうだしな...」
「って?どこよ...」
「ん?...ぅん....」

闇夜は肩をすくめて僕に笑った......









© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: