ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 138

替え歌 「空に星があるように」 by ミンチョル ロージーさん

空に星があるように
浜辺に砂があるように
ボクの心にたった一つの
大事な愛があるのです

夜に眠りにつく時も
朝に目覚めるその時も
僕の心はたった一つの
その愛だけで満ち足りていた

淋しく淋しく星を見あげ
ひとりのひとりの夜を見つめて
何もかもまわりは
色褪せて見えるけど
それでもただ時間は
流れてゆくけれど

春に小雨が降るように
秋に枯葉が散るように
それは誰にもあるような
ただの季節の変わり目のこと

(荒木一郎『 空に星があるように 』)


もらい泣き  ぴかろん

朝方、うとうとしかけた俺は、目覚めてからの鬱蒼とした気分に、しばらく身動きできなかった
視野が狭いな…
泣いたから目が腫れたか…

スローモーションの映像のように、俺はゆっくりと動き出した
湯を沸かして熱いコーヒーを淹れた
香ばしい香りが鼻腔を擽り、昇りたつ湯気は柔らかく俺の周りを漂う

コーヒーを口にしたのは、湯気も香りもどこかへ消えてしまってからだった

あと五日か…
どうしよう…
今日の仕事が終わったら、俺はまたこの部屋に戻ってくる
そして一人で眠るのだ

今までずっとそうしていたのにな…
どうしてこんなに寂しいんだろう…
いけない…また涙が出そうになる…

今日も早めに出勤して、店の掃除でもしておこう…

昨日と同じように、ううん、昨日以上に、隅々まで掃除した
何かしてないと涙が込み上げてくるから…

夕方…そろそろ皆が出勤する時間…
今日の一番乗り(俺を除いて…)は誰だろう…


ギイイっと裏のドアが開く音がした
続いて

「誰?えらく早いじゃないか…」

という落ち着いた声がした
俺は声のする方に向かっていった

「スヒョン…」
「だっ…だれだっ!」

スヒョンは目を丸くして身構えた

「何だよ、ふざけんなよ、俺だ、イナ」
「…イナ?!…どうしたんだその顔!ケンカでもしたのか?!髪の毛もくちゃくちゃで…」
「…え…」
「…。ちょっと見せてみろ」

スヒョンは俺に近づいて俺の顔を上げようとした

「いいよ、大丈夫だ」

スヒョンに触れられたら読まれちゃう…

「…泣いた?」
「…なんで…」
「お前、泣き虫だから…。テジュンさんとケンカした?」
「…。してねぇよ!」

俺はスヒョンから顔を背けて、控え室に逃げ込もうとした
躓いてよろめいた俺の腕を、スヒョンが掴んで体を支えてくれた

そして…俺の顔を覗き込んで、胸に抱き寄せてくれた…
何も言わず、何も聞かずに、俺の心を読み取っている…

こんな事させたくなかったのに…また心配かけてしまう…

俺は腕を突っ張って、スヒョンから離れようとした

「いいよ…大丈夫だよイナ」
「…スヒョン…」
「構わないよ…おいで」

スヒョンの優しい言葉に、また涙が流れる
スヒョンは俺の頭と背中を擦り続けてくれた

「頑張ったね…イナ」

『馬鹿だな』でも、『泣き虫だな』でもない言葉がスヒョンの口から出た

「…頑張れたのかな…俺…」
「…テジュンさんに仕事させてあげたかったんでしょ?」
「…」
「お前にしては頑張ったね、よく…泣かずに話せたね…」
「…スヒョ…」
「偉いよ、イナ…」

もうだめだった
我慢できずにわあわあ泣いた
スヒョンは俺をずっと抱きしめていてくれた

「スヒョン…スヒョン…俺…なんでこんな弱いままなの?なんでお前たちはそんなに強いの?頑張ったけどその後ずっと泣いてた。寂しくて堪らなくて…」
「…イナ…」
「寂しいよ…なんでこんなに寂しいんだろう…。こんなんじゃ俺、俺…」
「イナ…、テジュンさんと少しずつ話をしなよ。自分がどうしたいのか、テジュンさんがどうしたいのか…。焦らなくていい。ちゃんとカタチが見えるまでは泣きながらでいいから…逃げないでぶち当たればいい」

ひとしきり泣いてから俺はスヒョンに言った

「スヒョン…俺さ、テジュンにはやりたい事、もちろんやってほしいと思ってる。今やってる事に対しても、何も思わない。テジュンが楽しいと思うなら、俺も嬉しい…。昨日、テジュンにちゃんと『頑張って』って言えたことが嬉しかった…。なのになんでこんなに寂しいんだろう…お前もそう?ミンチョルも寂しいの?」

スヒョンは俺の髪に唇を寄せ、頭を撫でて黙っていた
口には出さないけど…きっと寂しいんだ
いつも側にいたヤツが、ほんの少しの間とはいえ…遠くに行っちゃったんだもん…
いくら心が繋がってても、寂しい気持ちは消せやしない…よな…

「スヒョン…」
「…ん?」
「…俺の気持ち、読んでる?」
「…ちょっと前の気持ちならわかるけど、今のお前の気持ちは読みにくいんだよ」
「…なんで?」
「お前は思ったらすぐ言葉に出すタイプだからね…」
「じゃ、言うよ。スヒョン」
「なんだい?」
「もらい泣きしていいぞ」
「…え?」
「俺が寂しがってるの、かわいそうだなってもらい泣きして…いいぞ…スヒョン」
「…イナ…」

スヒョンは俺の顔を見つめた
それからフッと笑ってまた俺の頭を抱きしめ、俺の髪に顔を埋めた

「泣いたら少しは心が軽くなるぞ」
「…お前は?随分泣いたみたいだけど…軽くなったの?」
「…軽くなるんだけどさ、すぐにまた寂しくなるの。俺、寂しがりやだから…」
「クッ…そうだな…ほんとに…お前は…」

俺はスヒョンの心を思った
大人で、冷静で、めったに感情を乱さないスヒョン…
そんなに落ち着いていられるのは、側にあいつがいるからなんだろ?
あいつが強いから…お前はいつもゆったりと構えていられるんだろ?

だから…今…寂しいはずだよね、お前も…
偉いね、涙も見せずにさ…
泣けばいいのに…

寂しいなら寂しいって…言えよバカ…

俺は…

「寂しいよ…」

口に出すと同時にまた涙が流れる
俺の涙と寂しさは無限なのだろうか…

涙が涙を呼んで、俺はまた泣きじゃくった…
俺の耳にスヒョンの小さな嗚咽が聞こえた…
俺を抱きしめている腕に力が入り、小刻みに震えている…
目の前にあるスヒョンの喉が激しく動いている

スヒョンが…泣いている…

俺はスヒョンの背中を抱きしめた
ほんの少しの時間だけ、スヒョンは体を震わせていた

震えが治まった後、俺はその胸から顔を上げてスヒョンに笑いかけた

「もらい泣きしてくれてありがとう…」
「…。…。一緒に泣いてやると、寂しさも半減するだろ?」
「…うん…。いつもありがとな…」
「…イナ…」
「顔洗って用意してくる、営業始まるだろ?」
「…その目で店に出る気?妖怪みたいだぞ!」
「…いいじゃん…妖怪イナ様登場で…」
「…氷で冷やせ!その目はあんまりだよイナ!」
「取り繕うの嫌いなんだ」
「お前がイヤでもお客様に失礼だろ?」
「…解った…ひやすよ」
「…イナ…」
「…なにさ…」
「…コマウォ…」

スヒョンはするりと後ろを向いて、事務室に入っていった


La mia casa_21  妄想省家政婦mayoさん

 ☆dime porque lloras...de felicidad~~♪

mayoシは呟くように歌いながらしなやかに踊る..
僕はこの頃やっと足が縺れることなく付いていける様になった..

不思議なんだ....
mayoシと踊るときは足が軽くなって..ステップが踏める...
僕も好きなこの曲を一緒に歌って踊りたかった..
もっとmayoシのココロが解る様な気がして...

僕のパートだ..

 ★di porque me tomas fuerte asi, mis manos y tus pensamientosTe van llevando...♪

「@o@//..テテテ..テス..シ..???」
「えへへぇ~~....」
「覚えたの@@..???」
「ぅんっ#...」
「凄いっ..テスシ..」

 「^_^」★no me ames, porque pienses que parezco diferente♪
 「*^_^*」☆tu no piensas que es lo justo ver pasar el tiempo juntos♪


俺とテソンは屋上まで覗きに行った....
ちょっと離れたところで2人の踊りを見ていた...

「テス...歌ってる?」
「ん..あまり聞こえんが..口は..ぱくぱくしてる...」
「ぷふっ...そう...ね..何処で教えたの?」
「ん?..風呂に入りながらとか...ベットの中でだ...」
「テス..すぐ寝ちゃうじゃんか..」
「ん...呪文の様に耳元でな...そうすると寝たまま口だけぱくぱく動くんだ..可愛いぞ..」
「たはは..そぅ..」


僕の手は♪に乗って..自然に背に..腰に降りていく..
僕の首にしなやかな腕が巻き付く...

 「^_^」★no me ames, que comprendo la mentira que seria
 「*^_^*」☆si tu amor no merezco no me ames, mas quedate otro dia

撓った後に..僕の腕に戻る反動でちょっと頬が触れた..
白くて..冷たくて..柔らかいほっぺた...
互いにピクン#として顔を動かす..
....◎...スレスレ...
くすっ#...と笑って離れる....

「「@_@...」」

ちぇみは俺の隣で固まった...僕もちょっと固まった...

「な..触れたと思うか?」
「わかんない..びみょぉ...くちびる...」
「あいつめ...」
「....ちぇみ..」
「何だっ#..」
「....テスが恨めしそうだけど?..」
「...ぉ..お前もだろっ#...」
「ぅん?..僕は平気..」
「んぐっ...テソン..」
「何?..」
「お前..最近..余裕だな..」
「そっ?..ぐふふ...」
「@_@..」

ちぇみが僕を...見た...深い瞳でじぃっ#っと..見た..
目を伏せて..前に向き直って..今度は前をじっと見ていた..
で...ちょっと間があって...

びぃ~~っ~~たん#...スぅ~~リスぅ~~リ〃..

ちぇみのいつもの..”これ”....
今日のは..
す~~んごく##..す~~んごく##...重かった...
す~~んごく##..す~~んごく##...キモチが込められてた..ひん!..



僕は着替えて店に出掛ける前にちぇみの首に巻き付いてち◎うをした..
デスクのPCが♪ピロロン..と鳴った..メールだ..
ちぇみはメールを読んで..部屋から出るとテソンさんの耳元でこそこそ..
で..テソンさんがmayoシにこそこそ..

「ねぇ...なぁに?僕にも教えて..」
「ん..^_^」...ちぇみは笑って誤魔化した..
「テソンさぁ~ん..」
「^_^」..テソンさんも笑って誤魔化す..
「mayoッシ~~」

「みゃぁ...^+^..」..mayoシははるみちゃんとほっぺち◎う...

唇を噛んだ僕をちぇみは後ろから肩を抱きしめた..
んなこといいっ#..

『僕にも教えてよっ##』

ちぇみの腕を解いた僕の背をテソンさんがぽんぽんと叩いて促す..
.....僕とテソンさん達は店に行った..

『みんなのいぢわる...ぐすん...』


Alice shop  オリーさん

「教授は病院の方へ行かれました」
10時に約束してあると伝えた僕の電話に、教授の秘書はキンキンと響くクイーンズイングリッシュで答え、
そしてそのまま一方的に電話を切った
親切な秘書だ
仕方なく僕はWarneford Hospitalへ電話をかけた
長いこと待たされたあげくもらった答は、教授は本日は大学です、というものだった
とりあえず、僕も門前払いの仲間入りができたようだ

携帯を握りしめてため息をついていると、後ろから快活な声がした
「朝からため息なんかついてちゃだめよ。お食事が足りなかったかしら?」
振り返ると奥さんがニコニコして立っていた
「いえ、食事はとても美味しくて、もうおなか一杯です」
カリカリに焼いたトースト、お手製の木苺のジャム、程よくソテーしたベーコンとソーセージ、
フワフワなスクランブルエッグ、新鮮なジュースとご自慢のミルクティ
イギリスの食事はえてしてまずい、
そんな評判がまるっきりデマに思えるような朝食で僕は本当に満腹だった

「だったらため息の理由は何かしら?」
「約束していた先生が掴まらないんです」
「おやおや、それは由々しき問題ね」
「そうです、由々しき問題です。会うのが難しい先生みたいで」
僕は相槌を打って答えた
「わざわざ遠くから来てるのに、随分勿体ぶった先生ね。一言文句を言ってあげたいわ」
奥さんは眉根にしわをよせた
「とにかく大学の方へ出かけてみますから」
僕は食卓から立ち上がった

着替えて下におりて奥さんに声をかけた
「出かけます。夜には戻りますから」
奥さんは台所からすっ飛んできて叫んだ
「思ったとおりだわ!」
「何か・・」
「あなたはスーツがよく似合うわ。とっても素敵」
そして微笑みながらネクタイをきちんと直してくれた
「そうそう、アンディが足を用意してくれてるはずよ」
「足?」
「さ、行ってみましょう」
僕は腕を引っ張られて外に連れ出された

外に出るとアンドルーさんが自転車のそばで何やら作業をしていた
「ポンコツだけど今チューニングが終わったところだ。これで行きなさい」
そう言って自転車をポンとたたいた
「娘が乗っていたけど、最近はほっぽってあったから、ちょいとオイルをさしておいた。車より小回りがきいて便利だ」
「ありがとうございます」
レンタカーを借りるにはちょっと大げさだと悩んでいた僕は嬉しくなった
「今日の予定は?」
「大学である教授と会うはずだったんですけど・・」
「あなた、ひどいのよ。お約束をすっぽかされたんですって」
奥さんがまた憤慨した
「それはいかんな、どこのカレッジだ。ちょこっとDeanに電話して文句言ってやる」
「え?クライスト・チャーチにコネがおありですか」
アンドルーさんは髭をいじりながらニコニコした
「すまん、冗談だ」
奥さんが彼の腕をつねるのが見えた
僕はそれを見ない振りをして言った
「じゃ遠慮なくお借りします」
自転車を漕ぎ出そうとした僕にまた声がかかった
「待て待て。今夜の予定は?」
「夜は特に」
「だったら夕食は家で食べるといい。キャシーのミートーフはミラクルだ」
奥さんはつねっていたご主人の腕をさすり始めた
「ありがとうございます、御馳走になります」
「ディナーは7時よ、いいわね」
自転車を漕ぐ僕の背中に奥さんが声をかけた
僕は片手を上げて大きく振った

夫妻の家から大学に向かって進むと街の大通りHigh streetに出る
この通りの両側にはカレッジが立ち並びまさにオックスフォード大学オンパレードだ
High streetに交差するAldate’s streetを右折してしばらくすると左手にクライスト・チャーチがある
名門オックスフォード大学の中でも最も伝統があり美しい教会を持つこのカレッジは、
今はホグワーツ魔法魔術学校としても有名になった
ハリーの聖地を見ようとますます観光客がおしよせるようになったらしい

夏の間の観光客やサマースクールの受講生などで賑わうこの地は、
秋風が立ち大学が新学期を迎えると、目つきの鋭いエリート達が戻ってきて様変わりする
僕はすっかりアカデミックな雰囲気を取り戻しているカレッジの中へ入り、
何人かの学生を掴まえて教授の部屋を聞き出した

教授の部屋をノックして入ると、先ほど電話に出たらしい親切な秘書がパソコンとにらめっこしていた
「先ほどお電話したミンですが」
若草色のポロドレスに淡い紫色のカーディガンを羽織った彼女はちらと僕を見上げた
「先生は病院だと申し上げたはずですが」
茶色の瞳がなかなか魅力的で、ひっつめた金髪が知的なイメージを与える女性だ
「病院で聞いたらやはりこちらだと。何とかお会いできませんか」
僕はつとめて明るく聞いてみた
「困りましたね。私は言われた通りのスケジュールしか把握しておりませんので」
ちっとも困っていない様子で、親切な上に優秀な秘書は答えた
「あまり時間がないのです。明日までに、できれば今日先生にお目にかかりたいのです」
僕はBBと携帯の番号を紙に書いて彼女に差し出した
「僕の滞在先と携帯の番号です。先生が戻られたらご連絡いただけると大変助かります」
彼女は興味なさそうにそれを受け取ると、わかりました、と答えた
「お願いします」
僕はにっこりと笑ってもう一度彼女に頼んだ
それがどのくらい効果があったかはわからない
彼女は僕をちらっと見ると、またパソコンに視線を戻した

部屋の外に出るのと入れ違いに学生が部屋に入って行った
僕が外で待っているとしばらくして学生が出てきた
「君、ワインバーグ先生の学生?」
彼は僕の問いかけに立ち止まった
「それが何か?」
「先生の講義は今日あるの?」
「いえ」
「次はいつ?」
「明日の2講時ですけど、何か?」
「先生に会いたいんだけど、なかなかつかまらなくて」
「そうですか。またお散歩かなあ」
「散歩?」
「時間があるとフラフラするんですよ、先生」
「どのあたりを?」
「色々です。キャンパスの時もあれば街に出ることもある」
「そうなの、どうもありがとう」
僕はそばかすに赤毛というハリーの相棒みたいな学生にお礼を言った

とりあえず明日の講義を待つしかなくなった僕は、大学の近くにアリスショップがあることを思い出した
少し通りをすぎた向こう側だ
僕は今朝彼に送ったメールを思い出しながら、アリスとうさぎを求めてまた自転車を漕いだ

無事に着いたよ、宿のご夫婦はとても感じがいい
今の所問題なし。そっちはどう?

真っ赤な木製のドアを開くと、アリスのワンダーワールドがそこにあった
決して広いとは言えない店内はアリスに関する物で満たされている
ルイス・キャロルの原作本や色々なフィギュア、小物、チェスボードもある
店内をざっと見てから、マグネットを探した
それは店のレジの近くに無造作に置いてあった
横を向いた巻き毛のアリスと懐中時計を持ったウサギがチョコンと小さなボードに張り付いている
僕は思わず笑みを浮かべながら、その可愛らしいマグネットに手を伸ばした
ほとんど同時に横から別の手が伸び、マグネットの上で僕の手と重なった
「すみません・・」
僕は思わず手を引っ込めた
「いや、こちらこそ」
そう答えた手の主を見た僕は思わず声を上げた
「ワインバーグ先生・・」

突然名前を呼ばれた相手は面食らった顔をした
「君は?」
教授は銀縁の眼鏡の奥から僕をじっと見つめた


That Night  ぴかろん

営業が終り、僕はラブ様を車に誘う
ラブ様は助手席にだらしなく座り、疲れたと呟く
ああそんな風に僕に見せないで…

僕は運転席に滑り込み、ラブ様が僕に見せている首筋や腕の内側や立てられた膝を見る
我慢できないっ!

「あんっ!やだっもうっ野獣!ばかっやめ…ん…ぁ…」

吸い寄せられるんだものっはむはむはむっはむはむはむっ
長い時間キスを貪った…
甘い唇をなんども啄ばんだ
柔らかな舌を強く、軽く、絡め取った
唇を離してラブをみつめる
ラブの瞳が潤んで光る…ああ

「ここで欲しい…」

もう一度キスしようと唇を近づけると、ラブはラブ様に変身して僕の胸をドンっと突いた

「バカ言うなよ!こんな通りに面したとこで!」

そしてツンと僕に背を向けた
言い訳の言葉が出てこず、僕は目を閉じて息を整え、車を動かした



ったくもう…。
いきなりの物凄いキスに、俺は一瞬ここがどこなのか忘れるぐらいだった
だったけど…「ここで」は、あんまりだろ?
拗ねて横を向いていると車が動き出した
あれ?ああんとかくふーんとかなんとか言うと思ってたのに拍子抜け…

こっそり運転中のギョンジンの顔を見た…

どきっとした…

どうしたんだろう…さっきまでのハイテンションはどこに行ったんだろう…
心なしか震えてるような気がするけど…
俺はそっとギョンジンの太腿に自分の左手をおいた
ピクリと体が動く
でも何も言わない…
シートから乗り出して、そっと体を寄せてやる
肩に頭をもたせ掛ける

「…こら…危ないよ…」

静かな声で言うだけ…
彼の首筋に俺の髪が触れるように、わざと頭を動かす
そして彼の顔を斜め下から観察する
少し口が開いた…
喉がゴクリと動いた…

その首筋に軽く唇を落とす
ハンドルを握る手に力が入ったのが解る
太腿を撫でる
足に力が入る
耳たぶを軽く噛む
息が漏れる
頬に唇を這わせる

「…運転中だから…」
「じゃ…止めて…」

ギョンジンは路肩に車を止めた
俺は彼の首に巻きついてその唇を捉えた
ああ…こんなキス…久しぶりだ…
出会った頃アンタがしてくれた凄いキスが甦る…

俺いつもこんな凄いキスしてもらってるのに…毎日だと慣れちゃうんだろうか…
たまにはお預けした方が…いい?

「…ラブ…我慢できない…」
「だめだよ…うちまで我慢しなきゃ…」
「酷いよ…ここで…いいだろ?」
「やだっ!ばかっ!」

ばちいいいん☆

あ…しまった…。頭叩いちゃった…
ああ…蹲って痛がってる…

ごめんギョンジン…でもさぁ…

「こんなとこじゃやだっ!」
「…ひどいよ…。じゃああんな事するなよ…」
「…ごめん…」

だって…
触れたかったんだもん…アンタに…

俺達は暫くの間、大人しくそれぞれの席に座っていた
やがて落ち着いたらしいギョンジンは、また車を動かした
俺のマンションまでの道のりが随分長く感じられた

ようやく駐車場に着いた
俺は先にエレベーターに乗り込み、愛しい人を待つ
車から降り、まっすぐに俺に向かって歩いてくるその人を
はやく迎え入れたい…
そっと箱の中に踏み入れたその人に俺は腕を伸ばした
箱の扉が閉まる瞬間、突然その扉が開いた

「ごめんなさーい、失礼しまぁす」

うう…8階のマダムだ…

「ああら今晩わぁ…なかなかお会いしないわねぇボクちゃん…お元気ぃ?」
「はい…マダムこそご活躍でいらっしゃいますね」
「やっだぁん…そんな事ないわぁ…」

ギョンジンが箱の隅でマダムを注視している
このマダム、女優らしい
あのデラルスのミミさんそっくりの、テ・ミラという人…
こんな時間に一緒になるなんて珍しい事だ
だってこの人、撮影が終わったら決まって飲み歩くって噂だもん…
このマダムと二人っきりでエレベーターに乗るのは避けたほうがいい…
…何をされるか解ったモンじゃないから…

よかったギョンジンと一緒で…

「あら…もしかしてお兄様?」
「いいえ…」
「違うのォ?そっくりじゃない。お友達?」
「職場の後輩です」
「後輩?…彼の方が年上に見えるわぁ」
「年上の後輩なんですよ」
「ふぅぅん…ボクちゃんの職場っていろんな雰囲気の人がいそうねぇ」
「はい、そうですね」

必要最小限の会話に留めたい

「今日はなぁに?」
「…仕事がありまして…」
「んまぁ持ち帰り残業?」

女優のくせにそんな言葉使うのか?

「そんなトコです」
「あっらぁ~アタクシ何か差し入れして差し上げようかしらぁん」
「いえ、集中して短時間で終わらせないとまずいので…」
「そぉなのぉ?残念だわぁ…」

チーン
やっと5階に着いた!俺はギョンジンに先に出ろと促し、マダムに挨拶して扉を閉じた

「何あのバ…」
「しっ!部屋に行ってから!」

もし聞こえたら怖いから…俺達はそそくさと部屋に入った

「あー怖かった、あのオバサン女優なんだぜ、信じられないだろ?アンタ覚えてるる、デラルスってトンチキなグループにいるヘビ女のミミさんってオバさん。そっくりだろ?…でも俺はミミさんのがいいな…」
「…ラブ…」
「アンタは今のオバさんのがいいあっ…」

ギョンジンが俺を抱きしめる
荒い息が耳に吹きかかる

「待ってよ…あがろう…」
「待てない…待てない」
「あ…ギョンジン…鍵かけ…」
「かけた…ラブ…ラブ」

俺に激しいくちづけを落とすギョンジン
玄関だぜ…せめて…部屋に…
ギョンジンは靴を脱いで廊下の壁に俺を押し付け、くちづけを続ける
それから俺の服を脱がせ始めた

「待って…待ってよこんなとこ…で…あ…やめ…やだっシャワー浴びたいっ!」
「待てない!」
「あっやっ…」


壁際で俺はギョンジンを受け入れた
熱く荒い息が俺の喉にかかる
俺の名前を囁くように漏らす彼の頭を抱きしめる
ああ…こんなの…

波が起こりそうな瞬間、彼は突然離れた
なに?
…また得意の焦らし?…

俺は彼を睨んだ
彼はハアハアと息をして、目を泳がせている
どうしたんだろう…

「ごめん…ごめん僕…」
「…ギョンジン…」
「…」

目を閉じて反省してるの?
俺のこと、そんなに…欲しかったの?

「シャワー…浴びようよ…」

中途半端に脱がされた服を廊下に投げ捨て、彼の服も同じように投げ捨てて、俺達はバスルームに行った
俺の手で彼のからだを、彼の手で俺のからだを洗う…
彼の目は上から下まで俺を眺め回している
切ない顔…涙が零れそうだね…ばか…

泡だらけになった体で抱き合い唇を貪りあう
たった三日の辛抱なのに、こんなに我慢できないの?
困った人だね
困った俺…

温かなシャワーの下で泡を落としながら、胡坐をかいたギョンジンの上に乗る
深く繋がる
仰け反る背中
肩を掴む指に力が入る
彼の唇が俺の胸を攻める
波が高くなる
声が漏れる…
名前を呼ぶ
息と喘ぎの合間に飛び交う俺達の名前…

「ラブ…ラ…だめだ…イッちゃう!」

え?
…もう?

「あっあああっあ…」

…え?
…うそ…
…ほんとに?

背中を撓らせて小刻みに震えている彼
えええっ?
信じられない!
そんな事もあるのぉっ?

不思議な気持ちで彼を見ていた
彼の瞳がフッと何も見なくなった

いけない!
俺はとっさに彼の背中を抱えた



どうしたんだろう僕…
確かラブとシャワーの雨の中で繋がって…

朦朧とした意識の中、ゆっくりと目を開けると、心配そうなラブの顔が見えた

「あれ…ラブ…僕どうしたの?」
「イッちゃって、いっちゃったんだよ貴方」
「…え?」
「どうしたの?からだの調子悪かったの?」
「…」
「鼻血出してたよ…」
「…あ…」

ふと鼻に触れるとティッシュがつめてある…

「…僕…先にイッたの?」
「うん。すぐに」
「…ごめん…」
「フ…びっくりした…エロミンでもこんな事あるんだ…」
「…ごめん…」
「もしかして毎晩あんまり寝てなかった?」
「…ん…」
「俺の事考えて?」
「…ん…」
「…ばか…」
「…ごめん…」

恥ずかしい…エロミンのこの僕が…




俺は可愛い彼の頭をそっと撫でた

「…ここ…どこ?」
「俺のベッドルーム」
「…えっち禁止の?」
「ん」
「できないじゃん…」
「あんたできそうにないじゃん…」
「…できるよ…」
「無理すんなよ…」
「だって…僕だけ…」

俺はくすくす笑ってその耳に囁いた

繋がれたからいいじゃん…

彼はすまなそうな瞳を向ける
俺は情けない顔の彼をみつめる
横に寝そべって、肘をついて、そこに頭をのっけて見下ろす
鼻血を出したその鼻を人差し指でチョンと触る
彼の顔がまた切なくなる
眉毛をそっとなぞる
目を閉じる
瞼にも頬にも顎にも触れる
吐息が漏れる
唇をなぞる

「…ラブ…お前がまだ…」

人差し指を押し付けて言葉を遮る
唇を近づけて彼を覗き込む

「キスで…イかせて…すんごいキスで…」

俺はその可愛い人に覆いかぶさり、朝までずっと…キスをしていた…


替え歌 「どうぞこのまま」 by ラブ ロージーさん

この確かな 時間だけが
今の二人に 与えられた
唯一の あかしなのです

ふれあうことの 喜びを
あなたのぬくもりに 感じて
そうして 生きているのです
夜の隙間にこぼれる 言葉さえ惜しむように
ただひとすじに ただひとすじに
ただひたむきに

それは 愚かなあこがれが
見せる夢だとしても
今を 信じたいのです
夜の隙間に融けだす 吐息さえ惜しむように
どうぞこのまま どうぞこのまま
どうぞ醒めないで

愛されることの 歓びに
もっと素直で いたいから
だから いつまでも このまま
どうぞこのまま どうぞこのまま
どうぞ醒めないで
どうぞこのまま どうぞこのまま
どうぞ醒めないで

(丸山圭子『 どうぞこのまま 』)


僕の先輩_8  妄想省家政婦mayoさん

「ミンギ..」
「ぅ..ぅん..んぐぁ??..」

僕は昨日の.."らぶちゃん邸"の#..
左右からの#..サンドイッチ状態の#..唇半開き攻勢の#..寝不足を解消するために#..
ゼミが終わってから店に来て2階のスパイ小屋で...寝てた..(-_-)zzz...
先輩が僕を揺さぶって...起きた...僕はソファに座り直した..

「ほらっ..」
「ぁ...あぢっ...」

先輩は熱いタオルを僕によこした..
僕がゴシゴシと顔を拭き終わるとvolvicのボトルをよこした..
営業用にスーツに着替えていた先輩は僕の隣に座った..

「目さめた?..」
「ぅん....はぁー..」
「ぷっ#..寝不足の顔だな..」
「だってさぁー..ぁん..ぅう..あ...とか...んぁあっ…あ…はぁはぁ...とか」
「ぷっ...ぅん」
「左右から半開きの口で挟まれたら..寝れないよっ# 寝返り打てないしぃー」
「ぷっ..真ん中に寝たのか...ミンギは..」
「ぅん..そう..らぶちゃんは寝ぼけて..ばちいいいん☆ってぶつしぃー」
「イナ君は?..」
「抱きついてきたから..ヨシヨシしてあげたよぉ..」
「それはご苦労さん..ミンギ..」

先輩の左の目元が緩んだ..

先輩が僕の肩を叩いた...僕は先輩の顔を覗く..

「何..」
「先輩は..ぐっすり??」
「含みがあるな...その言い方..」
「てへへ..昨日お邪魔しなかったしぃ~~..」
「だから..何..」
「ん??..ウヒヒだったっかなぁ~~♪っと思ってっさっ#..」

先輩の右目..僕に..ギロリ..
でもって..ちょぉぉっと口元が..上がった...かな??

「さぁねぇ~~..ウヒヒでも..言わない..」
「そうスね..」
「今日来るの?」
「いいスか?」
「ぷっ...ゆっくり寝るといいよ..」
「さんきゅーっス#..一緒に寝る? 先輩..」
「のーさんきゅ..」
「ぉん.>o<..」


店の営業が終わってから先輩のマンションへ帰った..
先輩の後にバスルームへ入って...シャワーの後バスルームから出ると
先輩がワインクーラーの前で考え込んでいる...

「軽いのにする?」
「昨日..濃厚だったんスか..」
「ミンギ ??」
「ぁ..ワインの事っスよぉ...濃かったんスか??..ウヒヒ.」
「@_@##」
「ぁ..余計なことスね...はいはい..」

僕は首をひっこめてリビングのテーブルの前に座った..
先輩は白ワインとガラスの器に入った生の大粒のブルーベリーを持ってきた..
微発砲のワインはすっきりとシャープで気泡の多いスプマンテよりもずっと爽やかだった..

「ブルーベリー好きだった?..先輩..」
「僕目が弱いから..」
「そうだっけ?..」
「ほら..僕..目から血の涙流れるでしょ...」
「先輩..」
「おもしろくないね..ごめん..」
「^^;;..」

僕は先輩にらぶちゃんとの”副業”の話をした..

「いいんじゃないかな..ラブ君とだったら楽しくできるし..」
「ぅん..先輩は?..何か考えてるんスか?」
「僕?..まだ何ぁ~にも..銃の密売でもしようか?」
「先輩~冗談キツイっス...」

あははと笑った先輩はソファに横向きに寝転がって..
右手でスタンドのスイッチを弄び始めた..
らぶちゃんの部屋の話や時計の話をして笑ったり頷いてた先輩の右手がふと止まった..
スタンドの明かりはついたままだ..

スタンドのスイッチを持ったまま先輩は目を閉じている..

寝たのかな..

僕は先輩の顔を覗いた..
左右の口角が下がって..ちょいアヒル口..

寝てる..

昨日の疲れ??..ヒヒ..
閉じてる瞼が動いてる..眼球はぐりぐり動いてるってこと?
でもそれもすぐ治まった..

僕は先輩の手にあるスイッチをそぉっと取った..
ふはっ#..と息の漏れた先輩が今度は仰向けになって..右手を額の上に置いた..
頭の方から先輩を観ると..こけた頬が目立つっけ..
フカヒレのおかげ?..ちょっと前よりつるつるなってきた..

唇を覗いた..
真ん中5mmくらい開いてるアヒル口..
色っぽくなぁーい..そこがいいのよ##とは..ヌナの弁..
昨日らぶちゃんやイナ兄貴に挟まれたからからそう思うのかな..

僕..先輩と寝たことないんだよねぇ..男と寝るのヤみたい..
先輩の ぁん..んぁぁ..はぁはぁとか..想像できないよ..
でも”それなりに”らしいし...

ウヒヒの時も淡々とこなす..だろうなぁ..
意識なくすことなんかあんのかな..
嬉しさとか..顔に出なさそう..
ぁ..嬉しくないのか...駄目駄目..
先輩~~そろそろちゃんと恋してもいーんじゃない??..
でも遅咲きのそれって..狂うらしいね..ケケケ..

先輩の寝顔を鑑賞した僕はスイッチをOFFにした..


Paris2  足バンさん

マレ地区のサン・タントワーヌ通りをバスティーユ広場に向かって歩き
途中で左に折れてボージュ広場に続く道に入る
僕にはどうしても行ってみたい所があった

足早に歩いていると後ろからパタパタと足音がする
まさかと思って振り向くとミンギ君モドキ君がまたヒーコラ走って来た

「また何か渡し忘れ?」
「はぁはぁ…いえ、ホテルまでお送りするように…はぁはぁ…言われて…」
「だから行きたいとこがあるから車はいいって断ったじゃない」
「ですから車は置いて来ました」
「げっ!ただ僕を追いかけて来たってわけ?」
「社長に無事送り届けるようにと言いつかってますので」
「もしかして君って超クソ真面目?」
「たまに褒められます」
「褒めてないっつぅの」

僕は呆れてスタスタ歩き出した
モドキ君もトコトコ付いて来る

「あの…どちらへ?」
「ユゴー記念館、まだ入れるでしょ」
「ギリギリですね急ぎましょう」
「君は付いて来なくていいってば!」

ヴィクトル・ユゴー記念館は長く彼が家族と住んでいた家で
ここであの”レ・ミゼラブル”の大半が書かれたという話
ボージュ広場を四角く取り囲む17世紀の石造りの建物の一角にある家は
思わず見過ごしてしまいそうな小さな看板と共にひっそりとあった

「まず4階に上がってユゴーの説明を読んだらいいですって」
「そうなの?」
「ええ、ここに書いてあります」

入口のフランス語で書かれた注意書きを読んでくれた瞬間に
僕はニッコリ笑ってモドキ君の腕をがっちり確保した

ユゴーに興味を持ったのは
いつだかスヒョンが彼のことが好きだと言ったから。
十代に読んだ”レ・ミゼラブル”は確かに名作だとは思うけどすっきりしなかった
”よいおはなし”っぽい気がして。
物語の冒頭についてもずいぶんやり合ったことがある

「僕だったら親切にしてやったのに物を盗むやつを庇ったりしない」
「おまえらしいね」
「嘘言ってまで庇ったらそいつのためになんない」
「結果的にその優しさに触れて彼は改心するんだよ」
「嘘ついたって負い目持って生きるだけじゃない」
「その経験を活かして生きるんだろう」
「罪を認めてやり直すべきだ」
「人の可能性ってやつを信じたいじゃない」
「それって偽善者っぽーい」

入口の地味な印象とは変わって中は広く鮮やかな印象
赤やグリーンや濃いブラウンの空間は
僕が抱いていたあの髭オヤジのイメージとは違った

恋人のためにデザインしたという家具や家の壁紙や絨毯、家具、
骨董コレクションの独特のセンスが目を引く
そこに集められた色彩と造形は彼の情熱と強い意志を物語っているような気がした

「ユゴーって生涯民衆のために戦った人だったんです」
「ただの小説家だと思ってた」
「文壇にも演劇にも政治にも教育にも立ち向かっていったんです」
「亡命生活も長かったんだ…」
「その後もコミューンの志士を一生懸命受け入れていきました」
「ふぅん」
「僕はものすごく純粋で真っすぐな人だったんじゃないかって思ってます」
「も一回読んでみようかなミゼラブル…ラストよく憶えてないし」

「ご存知ですか?”愛することは行動すること”」
「ああ…それって彼の言葉なんだ…」

いつだか何の話の時だったか、スヒョンがふと言ったのを思い出した

「愛することは行動すること…そんな風に強く生きられたらいいんだけど」

僕は唐突にミンチョルさんのことを思い出して
心の奥がチクチクした、ほんのちょっぴりね
そしてスヒョンが何でこの作家が好きなのか何となくわかった気がした

記念館の外に出るともう陽がかげり辺りは青く染まっていた
ボージュ広場の木々たちは風に揺れながら、向こう側の建物に溶け込みはじめ
そこを通る恋人たちや観光客は街の灯にほんのり照らされている

「ね、今日ヒマ?一緒にメシ食わない?」
「えっ!僕とですかっ?」
「無理強いはしないけど」
「そんなっ…よよよろこんで」

僕たちはモドキ君が知ってるという広場近くの小さなレストランに入り
何だかわからないけど彼が注文してくれたものを食べた
ワインは安いものでもコクがあってさすがにおいしかった

ワインでまた誰かさんを思い出したので、せっかく持たされてる携帯から掛けてみた
モドキ君は「む、向こうは真夜中ですよ」と慌ててたけど
今夜も掛けないと何言われるかわかったもんじゃない
ずいぶん長いコールのあとやっと出た

「はい」
「寝てた?元気?」
「…」 ガサゴソガンッドタッギェッドタッ
「あっドンジュン?元気?」
「…何やってんの?」
「いや、寝てたんだけど…寝ぼけてた…ちょっと酒も入ってて」
「ふぅん…」
「どう?仕事の方は」
「うんまぁまぁ…そっちは?」
「うん、ケホッ大丈夫、みんな元気」
「ふぅん…じゃ切るね」
「え、もう?」
「うん、とりあえず元気って報告だけ。じゃね」
「あ、はいおやすみ」
「ね、愛してるって言ってみてよ」
「え?」
「…」
「あ、あいし」
「もぉいいっ!じゃね!」ブチッ

「めちゃくちゃアヤシい!」バンッ
「え、え?」
「女でも連れ込んでんじゃないだろうね!おいモドキ!ワイン!」
「???…あ、はいどうぞ」

怪しかったけどこの距離じゃジタバタしたってはじまんない
僕は何度も「アクター開発した人と飲めるなんて」とつぶやくモドキ君の恋愛話やパリの生活事情
ついでに(ついでかよ)マジな仕事の話もひっくるめて
あれこれ喋って飲んで食べて笑った

モドキ君はご苦労にもタクシーでホテルまで送ってくれて
明日は十時にお迎えに上がりますと言って帰って行った

すぐにホテルに入らずぶらぶらと広い通りに出てみる

オレンジ色にライトアップされた凱旋門が夢のように浮かび上がって
その向こうにシャンゼリゼの光の帯がまっすぐ伸びている
その間に流れる車のライトは生き物のように流れて夜の空気を切る

この美しい情景のすべてが人の手によるものかと考えると
人間ってすごいのかなと思う

部屋に戻ってシャワーを浴び
今日の仕事をまとめていると呼び鈴が鳴った
出てみるとモドキ君が息をきらして立っていた

「捜したらありましたミゼラブルの最終巻!」
「わざわざ?」
「あの…持って帰っていただいても構いませんので」
「ありがと…嬉しい」

モドキ君はペコリとお辞儀をしてまたパタパタと帰って行った

遅くまで仕事をしたあと
窓を開け放ってそこに椅子を置きクッションをたっぷり敷いて
最終巻をぱらぱらめくる
ナナメ読みのつもりだったのに終わり近づくにつれて物語に入り込んでしまった

最後の行を読み本を閉じて窓の外を見る
僕はほっぺの涙をぬぐってしばらくボンヤリしていた

夜更けのパリは美しく瞬いている
人間ってすごいのかもしれないともう一度思った

帰ったら真っ先にスヒョンに伝えようかな
もしかしたら僕も…嘘ついてまで庇うかもしんないって


ジンセイの逆転?!  ぴかろん

うとうとすると柔らかい唇が僕の唇を啄ばむ
それに応えているとすっと離れる
そして肩に心地よい重みを感じ、またうとうとする

朝までずっとそれが繰り返され、眠っているようないないような
でもとてもリラックスした気持ちで僕はフワフワしていた
肩の重みが胸にも加わり、急速に深い眠りに落ちたのは
多分夜明け頃だったと思う…

何度か柔らかい感触を唇に感じ、僕の意識は段々と目覚めてくる
閉じていた唇を押し開かれ、僕の口内を弄ぶ悪戯な舌と唇が、僕を本格的に覚醒させた

「…ん…むぅ…ぁ…」

はーむはーむ…

「…ん…、濃厚…」
「くふっ…起きた?」
「…んぁあ…よっく寝たぁ…」

大きく伸びをして、僕に纏わりついているラブを抱きしめる
なんて気持ちのいい朝だろう…

「おはよぉぉぉラブぅぅ」
「あんっもう痛いよっ」
「…ふぅん…気持ちいい~」
「…朝じゃないよ…」
「え?」
「もう1時…」
「ええっ!この早起きのエロミンが昼過ぎまで寝てしまったというのかっ?!」

僕はガバッと起きた
起きて気づいた
丸裸だ…
上掛けもどっかにいっちゃって丸々裸で…

僕は慌てて枕で…隠した…
ラブはひゃーひゃー笑っている

「もう…シーツぐらい掛けといてくれてもいいだろっ」
「あははだってぇ起こしに来たら…あっはっはっ」
「…え?先に起きてたの?」

よく見たらラブは上半身は裸だけど、ちゃんとGパン穿いてるし…

「ねぇ…どうする?」

えっ?まさか今から昨日のリベンジを?
…僕ちょっと今はまだ…自信が…

「お風呂入る?それとも食事?」
「…あ…」
「俺もう先に風呂入ったからね」
「…じゃ…お風呂…」
「んじゃそのまま風呂場へゴー」

僕は…丸裸のまま…もう隠すのもなんなので堂々とリビングを横切ってバスルームに向かった
そして泡のお風呂にちゃっぽんと浸かる

ふぇぇぇ…気持ちいい~

カタン

バスルームの扉が開いてラブが覗き込んでいる

「どう?」
「…気持ちいい…」
「じゃ、俺ももう一回はいろっと」
「…え…ええっ?!」

どぎまぎしているとするするとラブが入ってきた
そしてバスタブに寝そべっている僕めがけて嬉しそうに巻きついてきた…

「んー気持ちいい~」
「ラブ…」

ラブはまた僕に軽くちゅちゅちゅっとキスをする
そして僕の首筋に顔を埋めて巻きつけた腕に力を込める

「苦しいってラブ…」
「んんー…だってぇ…」
「なによ、珍しい…甘えモードだな…」

僕の顔を見つめてくふふと笑う
可愛い笑顔で唇を尖らせて僕の唇にキスするラブ

「…ん…ん…。どうしたのさ…ん」

僕はヴィーナスのキスに蕩けそう

「だいすき…」

ああノックダウン…

「昨日…あんなだったのに?それでも…大好き?」
「あんなだったからもっと好きになっちゃった」
「…なによそれ…」
「たまには…キスだけってのもいいな…ちゅ」
「…んー僕は我慢できない…ちゅ」
「…ね…」
「ん?」
「いつ連れてってくれるの?」
「…え?」
「リオ・デジャネイロ」
「…あ…」

そ…それは…僕今自信が…

「自信なさそうなアンタって可愛いちゅっ」
「…くそー…」
「じゃさ、俺が連れてってやろうか…」
「ええっ」
「なによ!俺には無理だと思ってんの?!」
「…いや…そんな…怖い…」
「怖い?何言ってるのさ…このまんまじゃ帰さないからね」

それは…それは冗談だよね?
いつものラブならこんな積極的な事言わないよね…

そんなに…昨日…物足りなかった?

「すまなそうな顔しないの!ちゅっ」
「だってさ…お前がそんな事いうなんて…よっぽど情けなかったんだね…僕…」
「ふはは…そんな事ないよ…でも…」

アンタがもっと欲しいと、また鼻血の出そうな事を言う…

「だから今日も…送ってよね…」
「あ…夜か…」
「ん?」
「いや…今からヤんのかと思ってビビってた…。夜なら大丈夫。一晩中カーニバルだ!」
「…」
「なによ」
「俺がぁ!リオに連れてってやるって言ったでしょ?!」
「だってサンバに参加するんだったら僕も頑張らないとさ」
「…まぁ…その方が…楽しいけど…」
「楽しいだけじゃないでしょ?くふん」
「…戻った…エロミンに…」
「だめ?」ちゅ
「だめ」ちゅちゅ
「なんで?」ちゅちゅちゅ
「面白くない」ちゅちゅちゅちゅ
「んーもぉ…こいつ…」

はむはむはーむ…

お湯の中で戯れた
正確に言うとまだ『エロミン』に戻ってない
『エロミン』だったら迷わずここでGO!だもん…
今は…なんでかな…大人しい僕…

バスルームから出るとラブが言った

「軽くなんか食べるでしょ?」
「外で食べようよ…」
「うーん、食べさせあいこしたかったのにぃ」
「…」

そそ…そんなに…そんなに昨日物足りなかったの?!あああああ…バカな僕…

「なに落ち込んでるの?」
「…あ…いや…今夜がメイン・パレードだから…」
「くはっ…」

ラブはくすくす笑ってリビングに向かった
僕は濡れた髪を乾かしてからリビングに向かった
その僕にラブはポンと何かを投げた

「ほら…これ…新しいぱ○つ」
「え?」
「貴方のは洗濯致しました。シャツも血が付いてたから洗ったよ」
「…あ…ありがと…でも着替えがない…」
「くふふふ…そこに用意した…くひひひ」

ラブは意味ありげに笑うと自分の服を着だした
ラブのくれたぱ○つを穿く

…こっ…これは…
こんなぱ○つがこの世にあるのか!
ウォーホルのマリリン・○ンローの絵がプリントされている…
いや!よく見ると紛い物だ!
ウォーホル風のマリリンが僕の…。…。げほっ…

そしてラブが用意した服は…破れたジーンズとサイケデリックなプリントのぴっちりしたTシャツだ…
これもウォーホルのマリリン…風?

これを…
これを僕に着ろと?
それはラブにゼニアのスーツを着せるようなものでは?!

でもラブはスーツ…似合いそうだけどな…くふん…こう…オールバックにしたりしたら…
あっ…こんど着せ替えごっこしよう!くふん

「うわぁぁっ似合わないっきゃーはははは」

ふんっ…わざとだな…ふんっ…

「あ…拗ねてるぅ…珍しいな、拗ねるギョンジン。ちょっと写真撮っとこっと」パシャ

ラブは膨れっ面の僕をデジカメに収め始めた

「やめろよ!」
「髪をこうすれば…」

ラブが僕の髪に指を挿しいれ、くしゃくしゃっと崩す
せっかくドライヤーでキチンと乾かしたのに

パシャ…

ラブの瞳が濡れている
写真を撮ってから僕の首に巻きついて深くくちづける…

ああん…どうしちゃったのさラブ
いつもと違うんだもん…

昼間だというのにずいぶん濃厚なキス
音を立てて唇を離すなんて…

「そんなに…そんなに昨日の僕って…ダメだった?」
「何言ってるのさ!ダメじゃないよ…すっごく可愛かった…」
「だってさっきから随分誘って…んんん」
「…そ…。誘ってるの…今夜のリオのカーニバルにね…フフフ」
「…」
「夜なら踊れるんでしょ?」
「…頑張る!」
「へへっ。じゃ、軽くご飯食べにいく?んで店に直行しよう!」
「…この格好で?」
「さっきよりかっこよくなったよ、ホラ」

ラブはデジカメの画像を僕に見せてくれた
あ…僕じゃないみたい…

「ほーんと…かなりイイ線いってる…」
「はー…よっく言うよ!俺がスタイリングしてやったからだろ?」
「だってこんな服着たことないもん!」
「…どういう気分だった?」
「んとね…恥ずかしくて街を歩けない感じかな…」
「ん。それね、同じ事、ミンチョルさんとギョンビン、思ったみたいよ、アンタの土産で」
「…え?…」
「さ、行こう行こう。今夜が楽しみ~♪」

ラブは気がかりな言葉を残して先に玄関に出た
そして僕にサイケなスニーカーを…貸してくれた

足の先でもマリリンもどきが微笑んでいる…
ああ…








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