「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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ぴかろんの日常
リレー企画 215
灰色の向こう 足バンさん
僕は疲れていた
だから台本がベッドの下に滑り落ちた音で目を覚ました時
向こうのダイニングの椅子にシルエットが見えたのは
単に寝ぼけているからなのだろうと思った
枕元の小さな黄色い灯りの中、片肘をつき半身を起こすと
そのシルエットは次第にはっきりと浮かび上がり
ゆっくりと立ち上がった
最終打合せのために朝からシン監督の事務所に詰めて
店に顔を出したのはほとんど開店の時刻だった
そんな場合最近はイヌ先生がミーティングなども指揮してくれているので
何とかことなきを得ている
いつもの店内、いつもの時間の流れ
やたらと賑やかで今日も目一杯元気そうなドンジュンは
近頃閉店後には当たり前のように寮に帰って行く
自身も仕事で忙しいらしいが
一度「台本に没頭してるスヒョンを見てるのって好きじゃないし、帰るから自由にやって」と言われてから
僕は無理に誘わずにいる
かと言って僕を避けているわけではない
昨夜は昨日行われたポスター撮りの顛末にあれこれ聞き入っていたし
僕のスケジュールについてもチェックを入れてくる
撮影現場に行かせろ、ウナっちに会って勝負する
妹役のカワイコちゃんもチェックするだのと言いながら…
ただ気になるのは
それはいつも「ふたり」の場じゃないということ
誰かが側にいて…
そしておまえはいつも笑っていて…
僕は最近おまえのそんな笑顔ばかりを見ている
そんな時僕はただ何でもない顔をして受け流す
それくらいしかおまえの辛さーあるいは優しさーに応えることができない
…などと思うのは僕の「逃げ」なんだろうか
最後のお客様を送り出した後
ジホ君が僕とミンチョルに「明日の告祀(こさ)の時間大丈夫ですか?」と話しかけ
片付けもの途中の若い連中がナンダカンダと集まってきた
チョンマンとジョンドゥは特に興味を示す
「告祀の後すぐ撮影ですか?」
「なか1日おいてクランクインだ」
応答は全てジホ君がやってくれてありがたい
「チーフたちお店の方はずっと休むんですか?」
「やっ、込み入ったシーンじゃなけりゃ店にも出るよ」
「こっ…込み入ったシーンってナンですかっ?」
ミンチョルは暫く黙っていたが仕事があるからと部屋から出て
その後ギョンビンが静かに出て行った
僕はソファに座って何となく店の中ほどを見ていた
そこに関係なさそうにジュンホ君と話して笑ってるドンジュンがいたから
しかしこちらの騒ぎが耳に届いていたことがわかったのはほどなくだった
映画の話題が盛り上がった頃
誰の声だろうか、メンバーの声は皆似ているのでわからなかったが
「チーフ、映画に心持っていかれてBHCを忘れないで下さいよぉ!」
という言葉が飛び出た時
そのドンジュンの笑顔がすいっと止まってこちらを見た
店の調光された明かりの下で
黒い瞳の部分だけがぬらりと濡れたように光って見える
ースヒョンはあの人を愛してるの?
ーその代わり僕を納得させてね…中途半端なもの創ったら承知しない
あのドンジュンの言葉と
昨日僕自身が決心した役への執着が僕を締めつける
苦い棘を持った美しい鞭のように
淡々と残りの仕事を片付け
真っ直ぐ帰ってシャワーを浴びたのはもうずいぶん遅い時間だった
バスタオルを巻いたままベッドに寝転んで台本を広げる
ホンに集中しようとするが
目を閉じればドンジュンの笑った顔が浮かんでは消え
先日カフェテラスで息巻いていたあいつの言葉が思い出され
先ほどの濡れた目を思い出し…
このまま撮影に入るのだろうか
このまま…この微かな灰色を抱いたまま
そんなことをゆらゆらと考えながら眠ってしまった僕は夢をみた
珍しく湿度が低い夜で窓を開けたままだったからだろう
僕は涼やかな風に吹かれて草っ原に寝転んでいた
何かの本を読んでいる僕を
白いシャツを着たヒョンジュが側の樹にもたれてじっと見ている
どこかで見た微笑みだ
待ってるから…スヒョン…
そう聞こえたような気がして僕は顔を上げ聞き返す
今喋ったの?
喋れるの?
え…今…何て言った?
答えのない彼に尚聞くために草の上に身体を起こそうとして…僕は目を覚ました
夢だったのだと直ぐに了解したので
薄暗がりの向こうの椅子に見えたシルエットは
夢の続きの幻影なのだろうと思った
しかしベッド横の灯りにぼんやり照らされたそれがドンジュンで
彼が身じろぎもせず僕を見つめているとわかった時
心臓が凪いだ夜の水面にぽちゃんと落ちたように感じた
さっきの言葉は…おまえだったの?
ドンジュンは立ち上がってベッドの横まで来ると
落ちていた台本を拾い上げ半身を起こした僕に手渡した
「ドンジュン…どうしたの…いつ来たの」
聞いても無駄だということはわかっている
ドンジュンは何も答えずにゆっくりと僕の上にまたがり
今しがた手渡したばかりの台本を取り上げ投げ捨てると
僕の首に腕を回してくちづけてきた
静かにしかし強引に
僕はその勢いを支え切れずにベッドに倒れ込む
あの月の夜のような容赦ないくちづけ
そしてあの夜と同じように迸る熱い感情
ドンジュンを引きはがしやっと口元が自由になった僕だが
しかし気の利いた何かを言えるわけではなかった
「ドンジュン…」
「何も言わないでっしないでっ」
その言葉に気圧され僕はドンジュンの肩に置いた手の力を緩めた
あいつは指先で僕の額や頬に触れ
その指の触れた後を唇がそっと辿る
寝てるスヒョンをずっと見てた…
ほんとはね…いきなり襲ってやろうかと思ったんだ…
この人は僕のものだって
僕を貫いて刻み込んでやろうかと思った…
ードンジュン…
でもそんなことやめた…
撮影前の主役の身体に傷をつけるわけにいかないし
ーおまえ…
僕の跡なんてどこにも付けてやんない…
そんなわかりやすいヒントなんてあげない
…
思い出すなら
ここで思い出して
ドンジュンは僕の裸の胸をトンと指で指し僕を見下ろす
「自分でもよく理解できないんだけどね…こんなプライド」
落ちた髪の影で表情はよく見えないが
その唇が僅かに震えているのがわかる
僕を見下ろす黒い目は涙を必死に留めてでもいるのだろうか
そんな顔しないで
僕が我慢してるのはスヒョンのためじゃない
僕のためだ
わかる?
誰にも渡したくないっていうどろどろした自分が
ああして僕を笑わせて泣かせてまとわりつくんだ
わかる?
全部僕の不安とエゴの産物
僕はね…スヒョンが思ってるほど
いいやつじゃない
何かを言おうと口を開きかけた時
ドンジュンの唇が真っ直ぐ降りて再び塞ぐ
その唇は熱を帯びた羽根のように僕を這う
やめさせたいと思う気持ちとは裏腹に
身体は欲のうねりに飲み込まれていく
外されたタオルの端が台本を無造作に隠しているのを
視界の隅に感じながら僕は目を閉じた
小さな電灯の明かりが蝋燭のように揺れる部屋
僕はどれほど頼りなく乱れた影を刻んでいることだろう
頭の奥のハレーションは次第に強くなり
僕の片手はあいつの白い襟を、もう片手は黒いシーツを強く掴む
何度も相手の名前を呼ぼうとしてそうできぬまま
僕はついに耐え切れず
背中を反らして喉から声を漏らした
ドンジュンはまだ鼓動の早い僕の肩に顔を押しつけ
僕は天井を見つめたままずいぶん長いことそのままでいた
頭をそっと抱いてやると彼はやっと小さな声を出した
いよいよだって思ったら…急に恐くなった…
そこにはもう先ほど「エゴ」という言葉を口にした自嘲の色合いはない
ドンジュンの顔を支えてこちらを向かせ
無理矢理キスを仕掛けながらその胸元のネクタイを緩めたが
ボタンのいくつかを外したところであいつは僕の手を押さえ
目にかかる黒い髪の向こうから見つめた
「成功させて…絶対…」
「ん…」
「応援してるのは誓ってマジで本当の本心だから」
「わかってるよ」
「僕のこと忘れていいから…悔いなくやって…最高のもの創って」
「ああ」
「でもっ…」
「…」
「でも…また帰ってきて…どんなんでもいいから…どんなにあの人を愛してもいいから
終わったら今のスヒョンに戻って…ここに帰ってきて…帰ってきて!帰ってきて!」
「ドンジュン…」
「めちゃくちゃ恐いけど待つからっ待ってるから!」
僕は大声で泣き出すのではないかと思うほど歪めたその顔を両手で包む
「やっと言ってくれた…笑わずに」
「…」
「ん?」
「だめだった」
「ん?」
「スカンと笑ったまま送り出したかった」
「…」
「ホントはこんな…」
しまいまで言わせず
あいつを抱え込んでシーツに組み敷いた
僕はこのビードロ玉のような愛情に
幾度翻弄され
…幾度救われるのだろうか
ー3日後
僕はクランクインの日を迎えた
替え歌 「残酷な天使のテーゼ」 ロージーさん
残酷な天使のように
恋人よ 神話になれ
蒼い闇が今 二人の夜満たしてる
僕だけを ただ見つめて 微笑んでるあなた
その胸の奥に 僕の愛も届かない
別の世界 あることなど 知っているけれど
そうさ 疾うに気づいている その背中には
どんな未来-asu-も自由になる羽根があること
残酷な天使のテーゼ 窓辺からやがて飛び立つ
ほとばしる熱いパトスで 思い出を裏切るなら
この宇宙-sora-を抱いて輝く
恋人よ 神話になれ
僕の愛だけが あなたの帰る場所でも
抗えない 夢の使者に 呼ばれる朝がくる
白い横顔が 僕の胸をしめつける
世界中の時を止めて 閉じこめたいけど
もしもふたり逢えたことに 意味があるなら
あなたは そう 自分を知るためのバイブル
残酷な天使のテーゼ 悲しみがそしてはじまる
抱きしめる心の在りか 喜びに目覚めたとき
誰よりも光を放つ
恋人よ 神話になれ
人は愛をつむぎながら 歴史をつくる
傷つき合い迷いながら それでも生きる
残酷な天使のテーゼ 窓辺からやがて飛び立つ
ほとばしる熱いパトスで 思い出を裏切るなら
この宇宙を抱いて輝く
恋人よ 神話になれ
恋人よ、神話になれ
(新世紀エヴァンゲリオンのテーマ『
残酷な天使のテーゼ
』)
千の想い 103 ぴかろん
とっとこと去っていく4人の後姿を、キラキラした瞳(してると思う、キラキラ…)で見送りながら、ジャンスさんが上ずった声で言った
「キム・イナ、凄いなぁ、皆さん芸達者だなぁ。まさか『ヨシモト風漫才』が見られるとは思ってなかった」
「…漫才?」
「コントか?」
「…しらねぇ…初めて見た」
「おおお!キム・イナさえも知らない技となっ!」
メモメモメモ!
「その上、テプンさんの『頬張り食いの一口食いのりすほっぺ喋り』も見れたじゃないか!おお!」
「は…はあ…」
「チョンマンさんの『ビール搬送』…チェックと…。ふう…楽しいなぁ。楽しいなっテジュン?」
「…よかったですね…」
「お前は楽しくないの?」
「…楽しいですよ…」
「…。お前…ヤな感じィ。くっらぁぁいっ」
「…。先輩がやたらはしゃいでるから僕は気が滅入ってるだけです!」
「ふぉぉぉん?そぉ?俺のせい?…自分のせいじゃないのぉぉ?ねぇキム・イナ?」
「は?え?あ…」
目が小さいくせに時々鋭い指摘をする
イ・ジャンス、食えないヤツだぜ、全く…
俺だってテジュンが楽しそうじゃない事ぐらい解ってる
どうして気が滅入るのかも何となく解っている
その気分を立て直そうとしているのも、それがうまく行かないのも…俺は感じている…
「てぇぇぇっ!」
テジュンを見てぼんやりしていたら、いきなり腕を抓られた
「いってぇな!…。なに…スハ…」
「あっ人違いでしたぁ♪」
「…」
「…やだなイナさん…僕の技ですけど…」
「お…おおお!その坊ちゃん刈りヘアは…かかかカン・スハさんれすねっ?しょして今の技は『抓っちゃった違っちゃった』れすねっ?」
「は。…よ、よろしくお願いします」
「おお…『カタい雰囲気』だ!あの…スハさん、この、『けんけん壁消し』ってのと『雨滴ガード』っていうのは…」
「はい。『けんけん壁消し』は店でできないことはないんですが、落書きしていただかないと…。でも落書きするとウシクさんが…あのその…」
「『張り手』?」
「あ…は…はい…イナさん…。近頃何だかムチウチになりそうな位、あの『張り手』が重く感じられて」
「…ふぅん…。でもぉ…スハなら…」
持ちこたえられるでしょ…と言いかけてやめた…
「…あのでもジャンスさん、もしもご希望でしたらあのその…男子トイレで披露しますが…」
「と。といれ?!…そっそっそりは『あーるしてい』ではない?!」
「ちっ違います!どちらかというと、『あーるしてい』的なものをキレイにするといいますか…あの…」
「?」
「ジャンスさん、学生時代によく落書きしてあったろ?誰と誰ができてるとかって、合い合い傘なんか書いてさぁ…」
「ああ!ふぅ…そういう意味の『あーるしてい』かぁ…」
「…。なによ…もっと過激な落書き想像したのかよ…」
「あ…お…いや、そうではなくて…。まぁいい」
「…そういや…ムショではよく見かけたな…ヤらしい落書きとか…」
「うんうんそうだなぁ」
「…ん?ジャンスさん…ムショにいた?」
「いや!俺じゃない!」
「?」
「げほごほ…。で、スハさん、『雨滴ガード』っていうのは?」
「ああ、これは簡単にいうと『雨漏り』をバケツ等でキャッチする技です。落ちてくる雨滴を正確に受け止められるようにバケツ等を配置するんです
店内では今のところ出来ませんが、実はテジンさんが『雨滴ガード』用のブースを作成中なんです…かなりデカイんですけど…まだチーフにもオーナーにも許可を得てないんですが…」
「「は?なになに?それなに?!」」
俺とジャンスさんはスハの言葉に興味を示した
「はい…あの…、今のところこの技はアスタリスクつきなんですけど…。かなり山奥の古い学校に行かないとできない技なんですよ。しかも大雨が降らないとできない…雨漏りしないと意味がないですから…」
「うんうん」
「それで…あの…僕の技の中では『幻の技』になってるんですけど」
「そうだな、俺、聞いたこともないもん」
「はい。それで…テジンさんと『雨漏りをバケツで受け止めると色んな音がするんだ』って話してたらテジンさんが『作ってみようか』って…」
「…」
「んで、あの…舞台に置くってつもりで…ブースを作ってるんです…」
「どんなブースよ…」
「はい…あの…えと…どう説明したらいいんだろう…えとあの…」
「スハ」
「あっテジンさん」
スハが焦り始めた時、テジンがすぅっとスハの横に座った
さりげなくだけど、テジンの手はスハの腰に吸い付いている
…仲良しだな…ふ…
「それについては僕が話すよ。あのね、ブースとは言っても『折り畳み可』だから未使用時の置き場所はそれほど取らない。天井部分にはランダムに開けられた穴があって、その上に水の入った水槽を置くんだ。そして水を流す…するとぽたぽたと水が落ちる。それをスハがバケツを調節して受けるんだ。装置としてはできあがってる。あとはバケツなんだよ。できれば美しい音を奏でさせたいからね。で、今、知り合いに問い合わせて、いい音のするバケツを探してる」
「…」
「天井部分は『易・普・難』の3枚の板を用意してあるんだ。これも取替え可能にしてある。お客様のリクエストによって『易・普・難』のどのバージョンでスハが立ち回るかっていう楽しみがある」
「…」
「問題はチーフとオーナーの許可。それとバケツ問題と、組み立ての時間を短縮できるように今考案中なんだ」
「ふぅうん…」
ジャンスさんは一々頷きながらメモを取っている
そのメモは何の役に立つのかなぁ…ふぅ…
「それで…えっとあなたは…おカッパヘアのテジンさん…ですね?」
「…」
「ですね?おカッパヘアの…」
「おカッパのつもりはないのですが…。…。スハ!何笑ってるんだよ」
「だって…テジンさんのヘアスタイルって誰も触れたことなかったから…くふふ」
「…すは…そんなに笑うなら、二人で一緒にスタイリッシュなビューティサロンでシャギーでメッシュでパーマネントなヘアスタイルにして貰いにいくか?」
「…」
「ん?似合うんじゃないかな…スハ…」
「…いやです!僕の持っているチェックのシャツにはこの髪型が一番合うんですっ!」
うん…しゃぎーでめっしゅでぱーまねんとなスハなんて気持ち悪い…
そんなテジンだって見たくない…
僕の特権 れいんさん
それは朝の日課、「笑顔体操」の時だった
「おい、真面目にやれよ、ホンピョ」
「何が」
「ほら、笑顔体操だろ。スマイル、スマイル」
「だから今やってんじゃねぇか」
「それ…睨んでるんじゃないのか?」
「俺の中ではこれは笑顔だ」
「うそ…じ、じゃあ、おまえの睨み顔ってどんなんだ?」
「あん?…ちょっと待て…これだ」
「…さっきのと同じじゃないか」
まあいい
こいつの『笑顔だ』と言い張る睨み顔の事は
それはそれで、コホン…キュートだし
それよりももっと大事な話がある
「ホンピョ、ちょっと耳貸せ」
「何だよドンヒ」
「あのな…」
コショコショコショ…
「マジかよ!」
「マジだ」
「テプンさんが?」
「うん」
「元チーフに?」
「元チーフにっていうか…最初はギョンビンさんに根回ししてたかな。CDデビューの事」
「それでギョンビンさんが元チーフに口添えしたのか?」
「うん、そんな感じかな…」
「ギョンビンさん、本気でテプンさんの事買ってるのか?」
「いや…なんだか脅されて無理やり…」
「え?あのギョンビンさんが脅されて?」
「うん」
「テプンさん、いったいどんな手を使ったんだ…
ひょっとしてアレか?ギョンビンさん、テプンさんに鋭利な刃物かなんか背中に突きつけられて言わされたとか?」
「いや、背中をバシバシ叩かれて、だ」
「マジかよ…そりゃ、痛そうだ」
「うん。あれじゃ多分背中に手形くっきりだな」
BHCの皆は顔も声も背丈も、もちろん手の大きさも同じはずなのに
テプンさんの手はグローブみたいな肉厚に思えるのはなぜだろう
チーフや元チーフ、イヌ先生やソヌさん達とは、指の細さや長さは絶対違うような気がする
僕はテプンさんのその手でバシバシ叩かれる図を想像し、背中がヒリヒリするような錯覚を覚えた
「…で、テプンさんの奴うまいこと売り込んだのか?元チーフに」
「おい、『テプンさんの奴』ってのは、敬称なのかそうじゃないのかハッキリしないな」
「だってよ先輩なんだから『さん』づけしないとマズイだろ。へへ」
「ぐすん…成長したなホンピョ…昔のおまえならそこで『さん』づけなんかしなかった…」
「ばかやろ。んな事で涙ぐむな。ほらよハンカチ」
「ああ…ハンカチまでちゃんとポケットに…立派になったな、ホンピョ…ぐすん…けど、何かくしゃくしゃしてるぞコレ」
「ちゃんと3日前に洗濯してあっから遠慮すんな」
僕は涙を拭きかけた手を止め、そのハンカチを綺麗に折りたたみホンピョに返却した
ホンピョはジーンズのポケットに無造作にそれをねじ込んだ
明日もそこのポケットに入ったままではないのかと、ハンカチの行く末が気にはなったが、今は話の続きだ
「でもよ、そこでまさか元チーフはうんとは言わなかったんだろ?」
「いや、快諾してた。携帯ぱんって歯切れよく」
「嘘だろ、オイ」
ところで、僕の名誉のために付け加えておくと
僕はテプンさん達の会話をこっそり盗み聞きしたわけではない
たまたま偶然居合わせたところに会話が聞こえてきたのだ
なにせ、テプンさんってほら、内緒話ができない人だから
「でもなぁ、ドンジュンさんとギョンビンさんのユニットは分かるけどよ、なんでテプンさんが、なんだよ」
「さあな。でも元チーフの事だから何か考えがあるに違いない。勝ち目のない勝負はしない人だと聞いてるし」
「でも、テプンさんでどう勝負するんだよ」
「バラエティ路線を狙っているのかもしれない」
「はぁん、なるほどな…」
「したたかな戦略だ」
「あの前髪の隙間から覗く鋭い眼差しは伊達じゃないな」
「ああ、前髪の隙間から覗く目には妖しいほど隈ができてた」
「ただものじゃないな」
「そんな事よりも、大事なのはここからだ」
「何だよ」
「あのな、テプンさんも『あり』なら、僕たちも…なぁ、どうだろう」
「どうって、何が」
「CDデビュー」
「ぶほっ!」
むせた拍子にホンピョの口から唾が飛んだ
僕はその軌道をずっと目で追っていた
唾は綺麗な弧を描いて床に落ちた
そのままにしておくべきか、ホンピョのハンカチを借りて拭き取るべきか、ちょっと迷った
が、そのままにしておいた
きっと後でウシクさんが綺麗に拭きあげるだろう
「デビューって…俺とおまえが、か?」
「そう、僕とおまえが」
「よせよせ、無理無理」
「ばか。最近よくあるじゃないか。イケメンユニット」
「誰がイケメンユニット?」
「正統派イケメンが僕で、ちょいワルイケメンがおまえ」
「俺はともかく、おまえはそういうガラじゃない」
「どういう意味だよ」
「どっちかってーと、ドンヒはマネージャータイプだ」
「マネージャー?誰の?」
「俺の」
「冗談だろ?」
「なんだよ。文句あるのかよ」
「おまえのマネージャーなんてやったら、ディレクターだとかプロデューサーだとかにずっと頭下げどうしじゃないか」
「なんでだよ」
「まず、早朝の収録なんかあっても寝起きの悪いおまえはどんなに起こしても起きない。当然遅刻だ」
「おまえが起こせばいいじゃねえか。その為のマネージャーだろ?」
「僕は毎日おまえを起こす度に蹴りやパンチを食らってる
今でさえそうなのに、夜明け前に起こしたらもっと痛い目にあう」
「あぅ…」
「それにレコーディングなんてのは何度も何度もダメ出し食らってやり直すんだぞ
アレコレ指図されてるうちにおまえ逆ギレしてマイク投げつけたりするだろ?」
「いっ…」
「それから例えば番組収録中に司会者から話題を振られたとして」
「う?」
「そしたらおまえ瞬きもせずぶすっと睨みをきかせてるか、生意気な口を利くかのどっちかだろ?」
「そりゃ、ヘラヘラ愛想笑いなんかできるかよ。かったりぃ」
「だろ?下手すりゃ変にツッコミされて逆ギレして暴力事件だ。番組ぶち壊し」
「ぐぐ…」
「まだあるな。例えば、そうだ。外出する時は当然サングラスにキャップで変装だ
そんな人相でウロウロしてたら、まず間違いなくパトロール中の警官に職務質問。で、逆ギレして暴力事件」
「むむ…」
「他にもあるぞ。撮影の打ち上げの時に未成年のコに酒を勧めて酔わせ、いい頃合を見計らって…」
「おぅ?ゴクッ…よくあるパターンか?」
「カツアゲまがいに勘定を支払わせる」
「そっちかよ!」
「でもって拒否されたら相手をボコボコに暴力事件」
「暴力事件ばっかじゃねえか」
「な?だからおまえのマネージャーなんか絶対イヤだ」
「…もういいよ。おまえなんかに頼まねえよ」
「じゃ、どうするんだ」
「他の人にマネージャー頼む。確かマネージャーっていつでもどこでも一緒なんだよな
一晩中一緒に過ごしたりもするんだよな」
「む…」
「写真集の撮影なんかで海外ロケなんつーのもあるんだよな
知り合いが誰もいないリゾート地なんつったら解放感でどうなるかわかんねえよな」
「むむ…」
「俺、結構ほっとけないタイプらしいからな」
「むむむ…」
「焼け付く太陽、飛び散る汗、海辺で横たわる俺…」
「むむむむ…」
僕は瞬時にその場面を想像した
海辺といえば水着もしくはハダカだ…
こいつは結構いいカラダをしてる…僕ほどではないにしても…
南国の雲ひとつない空、誰もいない青い海
日焼けした精悍なカラダに弾ける汗の粒
胸や背中に絡みつく白い砂…
挑むような野性的な眼差し
僕の頭の中に、グラビア風悩殺ポーズを決めてるあいつがぐるぐるした
ダメだ!
絶対にダメだ!
他の奴にそんな美味しい場面持っていかれるくらいなら、僕がマネージャーになる!
ってか、その前に僕のデビューはどうなった
いや、イケメンユニットもデビューもマネージャーもやめたやめた
あいつがマジでその気になったりしたらマズイもんな
あいつが他の奴の毒牙にかかったら、僕の今までの忍耐はどうなる
よし
もうその話はうやむやにしてしまおう
僕はまんざらでもなさ気なあいつに
ボイストレーニング及びダンストレーニングの辛さや
芸能界の上下関係の厳しさや
有名人になるとエッチなビデオもろくにレンタルできない苦悩を話して聞かせた
エッチなビデオが効を奏したのか、あいつはあっさりと諦めた
それから僕たちは何もなかったように笑顔体操の続きをやった
相変わらず、ホンピョの笑顔はどこからどう見ても笑顔には見えないが
「できなぃぃぃ」と半ベソかいてるソクさんよりは幾分マシだろう
笑ってるのか、怒ってるのか、分かりにくいあいつだが
本当のこいつの笑顔はとびきり可愛い
めったに見せないのだけど
めったに見せてほしくもないのだけど
「おまえのが大きい」と
夕飯のおかず大きさに不平を言うあいつに取り替えっこをしてやる時
煙草の自動販売機でおつりが多めに戻ってきた時
僕が背中トントンして眠りにつかせてあげる時
そんな時、こいつはとびきりの笑顔をくれる
それは今のところ僕だけの特権なのかな
できればずっと僕だけが知っていたい
こいつのとびきりのそんな顔
千の想い 104 ぴかろん
「で、それはいいとして、テジンさん」
流れを変える名人だな、ジャンスさんは…
「貴方の技はほとんどがアスタリスクつきですなぁ」
「はい」
「『酷似兄』というのは?」
「単に『兄になりきる』という、俳優のような技です」
「…。物真似?」
「いえ。もう『兄』なんです。これは…僕の亡き兄を知らない方にはお見せできないし…。それにちょっと辛い技でもあります…」
「…。よくわからないけどまあいいや。レースというのは…カーレース?」
「はい」
「木工というのは?」
「文字通り『木工』です。工房でないとその技は見せられません…。あ、でも、細かな作品でしたら店の入り口付近に並べてあります。よかったらお土産にどうぞ。女性には結構好評なんですよ」
「ほほぉ…なるほど。帰りに一つ戴きましょうかなぁ。…それと…ガーデニング…」
「庭がないと僕の『水撒き姿』がご覧いただけませんねぇ…」
「『くの字寝』とは?」
「今はスハしか見れません」
「…。とすると…店で披露していらっしゃる技は?」
「まぁ…『野菜の千切り』ぐらいですかねえ…テソンさんやテプンさんと被りますが。他には…そう…ちょっとこの頃『コマシ技』にキレがあるって言われたかな…
もしもお客様がいらしたその日、その方のなにかしらのイベント…例えばお誕生日だとか…そういうものがありましたら、そしてお客様が希望されればですが…送り出しの時にこの…『引き戻しチュウ』を披露できます」
「…え…テジンさん…『引き戻しチュウ』ってまさか…」
「え…あ…」
「まさか…車に凭れて『帰したくない』とか言ってチュウするあれ…」
「まあ…ね…」
「…いつの間にパンフに載せてたんです?いつの間に『技』にしてたんです?!僕ちっとも知らなかった…」
「あ…いや…スハに言うと気にするかなと思って…」
「…」
「それに…知ったら止めるでしょ?」
「…」
「そ…それに…今までこの技受けたの、二回だけだし…ね?ね?スハ…ね?」
「…二回も…」
「す…すは…」
テジンは慌てて拗ねているスハの機嫌を取り出した
「あの、俺、今日『はじめてのちゅう』記念日なんですっ!」
空気を読まないジャンスさんの明るい声に、スハとテジンは引きつった笑いを浮かべた
「俺それ希望しますっ!」
「う…」
「あのっジャンスさんっテジンさんのこの技は女性限定に…」
「そうは書いてありません!」
「…かか書いてなくてもそのっ…問題がっ…」
「問題?どぉぉぉしてですかなっ?俺の後輩のこのテジュンはそれはもうキム・イナとチュウチュウしょっちゅうやっとるわけです」
「せんぱい!」
「本当の事だ!真実だ!なぁキム・イナ」
「…じゃんすさん…」
「お?はじゅかしいのか?お?…けひっ…なんだなんだ『ちゅう』如きでそのような乙女な反応して…。ふ…」
もっとすごいことやってるくせに、とジャンスさんは低い、伸びのある声で付け足した
テジュンも俺も、そしてスハとテジンも一斉に俯いた
「とにかく、希望いたします!なにとぞよろしくねっ」
「は…あの…」
テジンは困惑顔でジャンスさんを見つめた
「おお…その瞳でみつめられるとクラクラっときますな。お前の気持ち、少し解るぞテジュンよ!」バンバン☆
「…せんぱい…迷惑かけないでください…」
「なんで迷惑なんだ?お?」
「あ…あの…ジャンスさん」
「なんですかな?スハさん」
「この『引き戻しチュウ』はその…テジンさんと同じか、それとも背が低いかっていう人でないとダメなんです!」
「ん?」
「でないと『絵』になりませんしっ」
「…スハ…」
「ほぉ…。どぉぉしても阻止したいと…」
ジャンスさんの眼は炎と化した…ようだ…
スハはたじろぎながらも背筋を伸ばして答えた
「う…は…はい…」
「…。キム・イナ」
「はい?」
「BH顔ってケチよね…」
「…」
ブツブツ言いながらもジャンスさんは最終的には「冗談だよぉふっはっはっはっ」と笑った
本当に冗談だったのかどうだかわかるもんか…
スハとテジンは焦りながら一礼をしてそそくさと奥に入って行った
ん?
なんかみんな厨房に行ってない?
この席にくると疲れるからかな…厨房で栄養ドリンクでも貰ってるのかな?
解るけどさ、ジャンスさんの相手は大変そうだし…(^^;;)
「なぁ!俺がBH顔にチュウしたって構わんよなぁテジュン?」
「…先輩!」
「なんだよぉ、お前ら毎日チュウチュウだろ?ん?お?」
ジャンスさんは意地悪な光を眼に宿し…ているのだろう…、テジュンの背中をバンバン叩いている
テジュンは痛い痛いと言いながら白い歯を見せている
俺はそんな二人を笑って眺める
胸の奥の方で、見てよ…こっちを…という声がした
「ようこそBHCへ」
物静かな低音が響いた
「テソン…」
「皆に言われてさ…お前もジャンスさんに挨拶してこいって…」
「…俺も呼びに行こうと思ってたんだ…あのさ、テソンスペシャル、後で作ってあげてよ」
「かしこまりました。何かお嫌いな食べ物はございますか?」
「…」
「あの…ジャンスさん?」
ジャンスさんはテソンの顔をじいっと見入って固まっている
「ジャンスさん、どうしたんだよ。まさかテソンに惚れたのか?!」
「…異色だ…」
「は?」
「このうきゃうきゃしたBHCの中に、こんな落ち着きのある人がいるなんて…」
「…」
「あなたのお名前は…イ・テソンさんですな?」
「は…はい…。あの…落ち着きがあるって…あの…僕は…。ほ…ほかにも落ち着いた人はい…いますしあの…」
「なーる!どおりで!」
「は?」
ジャンスさんはパンフレットをざっと読んで何事か了解したようで、大きく頷いた
「あの…」
「アロマテラピストでいらっしゃる!」
「…は?…」
「『蝋燭セレクション』とあります。これはそのお客様にぴったりのアロマキャンドルを選ぶ技では?」
「は…そ…そうですが…」
「おお…では俺には何がいいでしょうかなぁ…」
「は…もう少しお話してみませんと…」
「解りました、お座りください」
「…え…あ…僕はただ、ご挨拶に…」
「ふ。何を仰います!厨房担当の貴方がこうして客席にいらっしゃるなんて珍しいこと…。パンフにも明記されているじゃないですか!『イ・テソンは現在厨房に専念するため、技のリクエストはお断り致しております。ただし、お食事に関しましてはどんなリクエストにも応えられるよう尽力致します、かしこ』と!」
「ふ…は…はい…」
「そんな貴方を引っ張り出したのはやはり俺の魅力ですかな?ふぉっほっほっほぉー」
「「「は?」」」
テソンと俺だけでなく、テジュンまでもがジャンスさんの訳の解らない理屈に首を傾げた
「ジャンスさん、テソンがいないと厨房まわんねぇからさぁ…」
「どケチ!ちっとらけでもお喋りしたいんだもんっ」
「先輩…気持ち悪いです、ブリッコしないでください!」
「ぷんっ」
「「…」」
テソンと俺は固まった
ジャンスさん…酔ってるのかな?
わかんねぇんだよな、顔色変わらないし、目もちっこいから酔眼なのかなんなのかさぁ!
俺はちょっとキレそうになった
「…。あ…そうだ…イナさん、奥から伝言」
「…。奥って?」
「…奥は奥」
闇夜かな…
「何?」
「すぐ舞台裏に集合」
「へ?なんで?」
「イナさん今日はこのテーブルつきっきりでしょ?」
「あ…うん…」
「イナさん目当ての他のお客様からのリクエストが入っててね」
「…うん…」
「ジャンスさんにも見てもらえるし丁度いいんじゃないかって奥が…」
「奥って誰!」
「奥は…奥」
誰だよ!チーフか!チーフ代理かそれとも闇夜か!…まさかオーナー…
『奥』ってのが気になるけどまぁいいか…
「…。で…何するの?」
「テコンドーの型」
「はぁん…オッケ。舞台でね?」
「うん。五人で」
「は?五人?」
「なぁにを同じ顔でヒソヒソと」
ジャンスさんがテソンと俺のところに頭をつっ込んできた
「ついでにお前もホレっ」ぐいっ
「あうっせんぱ…」
そう…ついでにテジュンもぐいっと引っ張られて…俺の眼前に、寄せられた眉根と長い睫毛が貼りついた…
一瞬だったと思う
よろけたテジュンの肩を両手で支えた
テジュンの体が強張り、それが掌から俺の心に伝染した
強張った部分と柔らかい部分が引き千切られそうになった時、テソンが俺の背中を撫でてくれた
俺は我に返ってそっとテジュンの体を起こした
テジュンの瞳が俺を見る
一瞬だったと思う
視線が交錯した
感情が読み取れないままお互いに目を逸らした
仕事だ
俺はテソンにこの場を任せ、立ち上がって舞台裏へ向かった
La mia casa_50 妄想省mayoさん
====裏口~廊下
…???..
裏口を開けたチョンマン..廊下をつーーーーーっと滑って行く
「やっ#..ぴたっ#」
ドアクライミング状態のテプン&シチュンに面白がって飛びついた..
====控え室
顔を見合わせくすくす笑った厳格とくるまやに声を掛けたのはジュンホ..
「どんじゅんさん..しんじんさんのなまえは[ジュノ]さんなんですか?」
「ぅん..そう..確か..ジュンホさんとは綴りは同じじゃなかったかなぁ..」
「そうですか..けっこんしてるんですか?」
「ぁ..こそこそ..聞こえちゃった?..」
「はい..ぼくはないしょばなし..キャッチできます..」
「「そう..^^;;..^^;;」」
「[ジュノ]さんのおくさんはどんなひとなんでしょう..」
「気になるの?..ジュンホさん..」
「はい..」
「僕も気になるなぁ..ね..どんな人か知ってるんでしょ?..教えてよ..」
「ぁ..ぅ~~ぇ~~..」
「そにょんさんよりきれいですか?」
「ふ~~..へ~~..ほ~~..わかんないっ#..本人に聞けばいいでしょっ#..」
「「??..??..」」
ジュンホと厳格はちょいとふくれたくるまやの顔に首を傾げた..
厳格はくるまやの耳に触れんばかりに唇を寄せ..早口で囁いた..
「ね..誰かに似てるわけ?..」
「ぅんはぁ..ぁ..っはぁ..は..は~..」
くるまやは厳格の熱い囁きにやられたのか..吐息まじりを繰り返す..
「Puっ..わかっちゃった..そういうことね..」
厳格はくるまやの「は..は..」のみで[ハリョン]と察したようである..
くるまやは上目遣いで厳格に恨めしそぅ~~に視線を送っていた
====裏口
バッタンコー☆
開け放たれたドアノブを掴んだままの妖艶色気小僧が外へ向かって叫んでいる..
「三つ数えるうちに来なかったらアンタと別れる!」
#$%&+*/#%&…
「ああんらぶぅぅ、僕にはお前だけだょぉんくふけひん…」
好色嗜虐が妖艶色気小僧の襟巻きとなった..
====事務所
新旧代理ちーふは揃って書類を手にしている..
お狐様はソファに深く腰を落とし..左手の書類に目を通されておられる..
時折くっ...っと腰を伸ばす仕草をされる..お疲れのご様子..ではなかろうか..
…ぱこぱこ☆
「ふぉ?..何だ..」
「(^^;;)//..(おきちゅねしゃま..がんばっちゃったんでしゅょ)」
「くりーむぱんの分は何とか消化された..か..」
「みゃ..(^_^)..(しょのようでしゅね..)」
「だが..お狐様..御腰お痛めになられたご様子..か?..」
「〃@@〃..」
えっちたんちきのはるみは頷いた..
お狐様...体力に似合わぬ無理をなされたか..
書類を読むフリが大変お得意とお見受する..Ange様はデスクの椅子にお座りになられ..
向かいのソファにお座りのお狐様を視線で包み込むように..ひたすら"目"で"愛で撫で"..ておられる..
お狐様は視線を感じながらも顔を上げることなく..
それを心地よく感じてらっしゃるのか..
とにもかくにも...
おふたりの世界がそこにある☆
「みゃぅぅ..」
お嬢は両ほっぺに両前足をくっつけて溜息とも取れる啼声を吐いた
「ん?..どうしたんだ..お嬢..」
「みゃうみゃぁ..(うちゅくしいのはちゅみでしゅねぇ..ってことでしょうかねぇ..)」
「たはは..^^;;..」
美しいおふたり..何処吹く風のせんせーは
3人のちーふに律儀に挨拶をしたじゅのに眩しい視線を送る
せんせー細かい注意事項を幾つか述べられ..じゅのに復唱させた
素直に「はい」と返事をしたじゅのはせんせーのお言葉を忠実に再現した
せんせーの目元は柔らかく綻んだ..
…くぉん..くぉぅぉん..ぉん..
「ん?..」
アジが"くぉん"以外で啼いた..
どうやらアジは眼鏡をかけているせんせーに反応している..ようだ..
「いつもはウシクがBakuBakuおやつを食ってるみたいだからな..」
「みゃぅ..」
「明日は先生のおやつを作ってやるか..」
「みゃ??..(にゃにちゅくるの?..)」
「ん?..あれだ..あれ..」
俺は己の鼻先を指先でちょん..と上げた..
「みゃっみゃ#..(>▽<)//..(しぇんせーよろこびましゅ~~)」
だといいんだが…
…ガタゴトガタゴト#..どたん..ばたん#..ばったんこ#
テソンは耳障りにうるさい事務所のドアに後ろ手に拳固を3個.の力強く落とした
====事務所ドア前..
ドン#..ゴン#..ダン#
「「「いでっ..あっつ...ひぃん..」」」
テソンの拳固は不等辺三角形の位置にドア越しに落とされ..
ドアにBeたりとへばりついていたテプン..シチュン..チョンマンの3人の"中心"にヒットしていた..見事だ..
3人はやっとドアから離れた..
「「ぁぃぅ~~(>_<)..テソンかよっ#..んぐぐ..」」
テプンとシチュンは"中心"を押さえ..ドアに向かって唸った
「僕なんか..ご無沙汰なのにぃ..(;_;)..」
チョンマンは中心を押さえ..哀しみの猿顔で項垂れている..
「何してんのぉ?..」
廊下を進んできた妖艶色気小僧が好色嗜虐の襟巻きを暑苦しそうに解きながら..のーまる3人の側に寄った..
「ぉ!..ラブ#..新入りだ..新入り..」
テプンは事務所のドアを指さして言った..
「へぇ..また入るんだ..ふ~~~ん..」
「ね..ね..今回はどんな感じなのかな..ん?ん?..」
好色嗜虐が早くも新人りに興味を示すや..
「ふんっ#」
妖艶色気小僧は好色嗜虐に言い放ち..
「ぎんちゃぁ~~ん」
厨房から顔を覗かせたミンギを見つけると..きゅっ#..っとしなを作って手を振り..駆け寄って行く..
「まぃだぁ~りぃ~~ん」
好色嗜虐がその後を追いかける..
廊下を進んできたイナに電話..
イナは事務所ドア前に立つのーまる3人に軽く片手を上げ..ロッカールームへ入っていった..
====店正面
正面入り口のマットにころころローラーを丹念にかけるホンピョ..
ゴミを丹念に取り除いたのを確認して満足気のドンヒ..
ドンヒに誉められたのが照れくさいのか..
ホンピョはころころローラーをドンヒに押しつけ..店内に戻って行った
====店内カウンターバー付近
カウンター内で各種のボトルを拭き終えたソク..
カウンターの外でグラスを磨き終えたスヒョクにたこちぅ◎唇を突き出す..
スヒョク..人差し指をソクの唇に押し当てた..
ちゅるりゅん@..ちゅうちゅう..もぐもぐもぐ..
強い吸い込みでバキュームと化したソクのたこちぅ◎唇に
スヒョクの人差し指はずずずん..ずずずん..吸い込まれていく..
いたたまれないスヒョク..空いている片手でソクのほっぺたを思いっきり抓った..
「あぅ..ひぃ..(>o<)」
ソクのむっちりした唇からスヒョクの人差し指は解放された..
赤く腫れ上がったスヒョクの人差し指をソクはぺろり~~ん..舐めた..
やはり..濃&爽&天然エロ..このテの顔....
ヤらしい..
====事務所ドア前..
…ガチャリ☆
事務所のドアが開いた
「よーよーよーテソン..お前..知ってたのかぁ..ぁぁ??..」
テソンが中から出て来るや..テプンは顔を突ん出し..テソンに詰め寄る..
テソンは通路を歩きながらくすくす笑って頷いた..
3人のちーふと共に出て来たじゅのに上から下まで視線を走らせるのーまる3人..
「なぁテソン..まだ若っけーじゃん..」
「ぷっ..偶々でしょ..後先の問題じゃぁないでしょ..」
「んだけどよぉ..」
「テプンもシチュンも..もたもたしてられないよ?..」
「「ちっ..」」
「チョンマンも..」
「ふい~~ん..(;_;)..だってぇ..チケットがぁ..」
大人なちーふ3人はのーまる達の会話を耳にしながら苦笑していた..
====店内
ミーティングの為にBH顔が集まった..
じゅのはBH顔ひとりひとりの顔を確認し..手を差し出し..挨拶をした..
ミーティングが始まる寸前..イナは最後に店内の空いている椅子に座った..
じゅのは最後にイナに挨拶をした
「おぅ!..」
一応..じゅのに返事を返したイナだったが..上の空..のように感じた..
開店後..
じゅのは幾人かのメンバーに代わる代わる連れて行かれ..ヘルプに付いてまわっていた
~~~
つんつん☆
はるみは俺の左手首のOMEGAを突いた..
「お!..郵便局に行かねばならんな..」
「みゃ(^o^)..」
俺は回線を切り..PCを閉じた..
闇夜への釜山からの"ふみ"は今も滞ることなく..ほぼ一日おきに届き..
闇夜は忙しい中..必ず届いたその日に返事を書いて投函していた..
今日は小さなダンボールが俺等の部屋のデスクに乗っている
…いつもありがとう
ダンボールには闇夜の書いた付箋がついていた
俺はちょいと擽ったい思いでクスリと笑った
はるみとアジを連れ..夜8:00まで開いている世宋大路通り近くの光化門(クァンファムン)郵便局へ出向き..
闇夜が用意した小さなダンボールを発送した..
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