ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 269

ライバル 1  ぴかろん

「ピーちゃん。お風呂どーぞっ♪」

ダーリンはポールに背後から飛びつきながら、可愛い笑顔で言った

「…ラブちゃん、まずは疲れているだろうミン・ギョンジンに入ってもらったほうが…」
「いや、僕は後でいいよ。お前が帰ってからで」

後に続くであろうダーリンの言葉が解っていながらポールに精一杯のイヤミをぶつける

「…。アンタ何言ってるの?ピーちゃんはゲストだよ。帰るわけないじゃん!ね~ピーちゃん」
見ろ。やっぱりだ。僕にはダーリンの考えが読めるんだ!
「…。ラブちゃん。何だったら僕はホテルに行くけど…」
よしゴリラポール。お前本当はいい奴だな。でもダーリンはお前を帰さないのさ
「だめ。お風呂入って。素敵なパジャマ、用意しとくから」
ほらね。…。素敵なパジャマ?!ゴリラ用の?!ダーリン、そんなものを用意しているのか?!
「え゛…あ…ラブちゃん」
「なぁに?」
「『古代ローマ風』はやめてね」
『古代ローマ風』だと?!
「わかった。『縄文風』にする」
『縄文風』?!
「…」

ポールは困ったような笑みを浮かべながら、『慣れた足取りで』バスルームに向かった
僕はダーリンと二人きりになった
ダーリンはなんだか気まずそうな顔をし、「あっそうだ!忘れてた」とわざとらしい声をあげてリビングから出て行った
ふぅと溜息をついて、僕はベランダの外に出た


*****

「ピーちゃん♪」
「あん?どしたのラブちゃん」
「一緒に入ろうか♪」

俺はラブちゃんの顔をマジマジと見つめた
ラブちゃんはクフンと笑って俺の首に巻きつき、唇を寄せた
その唇を掌で遮り、ラブちゃんの瞳を覗き込んだ

「…。なぁんで?いつもしてるのに…」

唇を尖らせてでラブちゃんが首を傾げながら可愛らしく聞く
そんな顔はミン・ギョンジンに見せてやればいいのに

「俺、解らない。君達の関係」
「…」
「恋人同士でしょ?たった二、三日離れただけでこんなによそよそしくなるもんなの?」
「…」
「ラブちゃん、ずっと待ってたんだろ?ミン・ギョンジンのこと」
「…おふろ…はいろ…」
「一緒になんて入った事ないじゃん。ね?俺一人で入るから。ミン・ギョンジンと一緒にいなさい。俺、長風呂するからその間たっぷりアレコレしなさい。俺、邪魔だったらホテルに帰るから」
「や!」
「…。その『や!』が解らない。東洋の神秘だ。素直じゃないな。どうしてミン・ギョンジンに甘えないの?」
「…べっつに…甘えたくないもん…」
「とにかくね。俺、一人でゆっくりお風呂に入りたいから」
「…。ぴーちゃん冷たい…」

突然涙を浮べたラブちゃんに、俺は慌てた

「ななな、なんで涙?!」
「だって…冷たい…」

東洋の神秘か?!俺は西洋人なので、主張も趣向もハッキリしている。別に冷たくしているわけじゃない。本当に一人でゆっくりお風呂に入りたいからそう言ったまでだ。意地悪ではない。頼むからミン・ギョンジンのところで待っていてくれ。ああ、ホテルに帰るなんて言わないから。ああ。はい。泊まるから。はい。そう!解ってる!3人で並んで寝るから!はい。はいはいはい!

なんとか言いくるめてラブちゃんをバスルームから追い出した

バスタブで足を伸ばし、ミン・ギョンジンの『らしくなさ』を思い返した
あんな奴じゃないのに…
ボストンで何があった?
単なる時差ボケか?

そしてラブちゃんだ。解らない。俺は離れていた恋人が帰ってきたら、びったりくっついて離れないぞ
夢の中でさえミン・ギョンジンを求めていたくせに、本物が目の前に立つと、なんでラブちゃんはそっぽを向くんだ?
俺とばかりキスを繰り返すラブちゃんをミン・ギョンジンはなぜそうも優しげな瞳で見つめていられるのか…
あれは本物のミン・ギョンジンなのか?!
まさかボストンで教授に洗脳だの○○だのされたとか?!

あり得ない…
アイツがジジイに反応したり屈したりするとは思えない

俺は知っている
クールにキメていたエージェント時代、アイツが密かにコレクションしていた『可愛らしくて不思議なぬいぐるみの数々』を…
街中でそれらのぬいぐるみを見つけると、アイツはそれらを愛おしげに見つめ、抱きしめて「チフンにプレゼントするんだ」と幸せそうに言う
買い集められたぬいぐるみは、息子に送られた形跡ナシ
複雑な事情があるのは解っているが、そういう理由をつけて『自分好みのぬいぐるみ』を傍に置いておきたかったのだと俺は分析する
そんな『可愛いもの好き』なアイツが、ジジイに反応なんかしない!絶対しない!金髪を賭けてもいい

アイツは『エロミン』と呼ばれた男だ
おかしい。おかしすぎる。なぜラブちゃんにアレコレしないのだ!
これではただの『素敵なカッコイイ男』ではないか!そんなつまらない男、ライバルにしたくない!

とにかくアイツからボストンでの報告を聞くのが先だ
ラブちゃんとアイツの関係については、教授関係が片付いてから考えればいい

ゆったりとバスタブに寝そべり、ニホンの生活を懐かしく思った

*****

僕の心は今、ジェット・ラグのせいで纏まらない
十分嫉妬しているのにそれを脳が体に伝達してくれない
口元は微笑んだままだから、物分りのいい優しい男に見えるかもしれない
それはそれでいいかも…
けどダーリンはきっと寂しがる
それも解っている
どうしてこうも神経系統が鈍っているのか

ダーリンを抱きしめてキスしたくないわけがない
ずっとずっとダーリンを思っていたのだから

でもダーリンだけを思っていたのではない…
大切な弟の事も頭にあったさ
教授と同行させなくてよかった…
こっちでミンチョルさんと一緒にいる方がいいと
そう思っていたのに…
なぜだろう
なぜあんな背中を見せる?
僕が気づかないとでも思った?ギョンビン

教授からのプレゼント
小憎らしいほどさりげなく、あれば有難いもので、しかもセンスのあるお洒落な品を
あの人は即座に選んだ

ああ、弟はちゃんとRRHに帰ったのだから…
今、ミンチョルさんは映画の撮影中で…けどそれは仕事なのだから…
大丈夫だからギョンビン
大丈夫だから…その人に頼るな…おにいちゃんがいるだろう?

幼かった頃の弟の笑顔が甦ってくる

おにいちゃん…おにいちゃんはかっくいいね
おにいちゃんはどぉしてなんでもしってるの?
ギョンビン、おにいちゃんみたいになるの
だってギョンビンね、おにいちゃん、だいすきだもん

可愛かったな
まあるい目がキラキラして
僕の大切な弟
辛そうな顔、しないでよ
おにいちゃん、聞いてあげるから

そんな事言っても僕に相談なんかするはずない
解ってる
もうお前は小さかったギョンビンじゃないんだもの…

*****

リビングに戻ると、俺が気に入っている一人掛けのソファの背もたれに、アイツの上着が掛けられていた
普段ならムカつくのに今日はそうじゃない
アイツはベランダに出て何か考え事をしている

ほんの少しでも
俺のこと
思ってる?

俺は欲張りだからね

アンタがどんなに優しい人か
解ってるよ、俺

でも俺は欲張りだからね
知ってるよね…

ガラス越しにアイツの背中を見つめる
肩かゆっくり、大きく上下した

俺は今、どんな風に振舞えばいいのか解らなくなっている
いつものように拗ねて甘えればいいのかな…
そしたらアンタは少し困った顔をして、俺を抱きしめてくれるのかな…

*****

もう一度溜息をついて夜の空気を吸った
背中にダーリンの視線を感じ、僕は部屋を振り返った
寂しそうな、どうしていいかわからないような顔をして、ダーリンはこちらを見ていた
愛しいダーリンを見つめながら、僕は今度こそ彼を抱きしめようと部屋に近づきガラスの引き戸に手をかけた

*****

俺の視線に気づいたアイツは、見たことのない綺麗な優しい微笑みを浮べてガラスに近づいた
開けようとする戸に鍵をかける俺
なんで?と語るアイツの瞳をじっと見つめる
口元を緩めてまた優しく微笑み、アイツは俺を見つめ返す
見詰め合ったまま、俺はガラスに唇を近づける
一拍遅れてアイツも唇を寄せる
ガラス越しにキス
冷たい感触

アンタの心、見えてるのに触れられない
全部見えてるのに触らせてくれない
平気なのに俺

アンタが俺の全てを受け止めてくれるように、俺もアンタを全部受け止めたいのに
どうして言わないの?ギョンビンが心配だって
言ったら俺がヤキモチ妬くから?

鍵を外して戸を開ける

「よかった。ここで一晩過ごさなきゃなんないかと思った」
「…キスして…」

戸惑いの色が浮ぶ瞳で、アイツは俺にキスをした
ひんやりと冷たい唇
触れただけで俺は顔を背け、アイツから離れた

「…ラブ…」

後ろから肩に回されたアイツの逞しい腕に抱かれる
心臓が弾けそうになる

「…時差ボケしてるのかな、僕…。反応、鈍いよね…」

髪に感じるアイツの唇
なんか言ってやりたいのに何も言えない
アイツの体が心地いい
目を閉じて酔っていた

突然、アイツの指が俺のシャツのボタンを外す
俺はその手を掴み、振り返ってアイツの顔を睨んだ

「お土産があるんだ…」
「…。土産?」
「つけてあげようと思って…」

そう言って微笑んだあと、両手を俺の首筋に這わせる
その手がピクっと留まり、アイツは俺の瞳を覗き込む

「…こんなの…持ってたっけ?」

一瞬なんのことか解らなかった

「…。素敵だけど、外してくれないかな…重なっちゃう…」
「は?あ…これ?」
「うん。どうしたの?この錠前」
「もらった」
「もらった?」
「ピーちゃんに」
「…」

アイツの唇が真一文字になった
ちょっと嬉しい

「なんであのバカが!外して!」

怒った口調も嬉しい

「外せない」
「なんでっ!」
「鍵、ないもん」
「鍵?!」
「ピーちゃんが持ってる」
「なにっ?!」

調子が戻ってきたみたいだ
些細な事がとても嬉しい

「ペアなの。ピーちゃんが鍵、ぶら下げてるからピーちゃんに外してもらわないと」
「あんだって?!どうしてなぜあのゴリラがラブとペアなペンダントを?!」
「あんたのお土産って…ペンダントなの?」
「うん。ラブに似合いそうだと思って、ホラ」

掌に乗った ペンダント は柔らかいフォルムを見せている
渋くてかっこいい…
嬉しい

「なによこれ。ティファニーって丸解りじゃん」
「けへん。でもお前に似合うと思って…」
「なんで時計じゃないの?」
「え…」
「ティファニーの時計で欲しいのあったのに!」
「…あ…いや…。僕が選んでもその…ラブ、気に入らないかもしれないと…」

フンとそっぽを向く
アイツは言い訳を始める
ああ…ちょっとだけ『いつも』の気分だ

「うるさいな。つけてよ!」
「へ?」
「ペンダント!」
「あ…う…でも錠前…」
「これとこれなら両方つけててもカッコイイじゃん?」
「…ずっと二つつけてるつもり?」
「うん」
「…やだな…取ってよ。錠前」
「鍵がないと取れないもん」
「…なんでポールとそんな…(;_;)」

あ。涙。すっごく嬉しい!

「いいじゃんか。ピーちゃんと俺の絆だよ絆!」

くふふ。意地悪も楽しい

「やだっ!僕がいない間何があったのよ、ゴリラと何したのよっ!ゴリラ用のパジャマだとかこんなヘンな錠前だとかっ!」

変な?…後悔するなよその言葉…

「何したって構わないだろ?!俺がしたいと思ってしたことならアンタ我慢するんだろ?!」
「…そう…らけろ…(;_;)れも…」

いひひ。泣け泣け。もっと泣け!
俺を寂しがらせた罰なんだから!

「やだよ…ラブ…」

俯いてポソッと呟く
その唇にキスをする
冷たかった唇が温かくなる

話してほしいのに話してくれないのは
自分自身が気づいてないからかもしれないね
体中でギョンビンを心配してるのに
頭ン中に泣き顔のギョンビンがいるのに
ギョンビンが気になってしかたないのに
そんな説明もできないなんて
ずっと昔っからそんな風に
ずっとずっとギョンビンを気にしてきたんだろ?
それが当たり前になっちゃって
『弟が心配なんだよ』
なんて言葉にする必要がないんだアンタ…

唇を離してアイツの頭を抱きしめる
大丈夫だよ、ギョンジン
俺、ちゃんとここにいるよ
甘えてもいいんだよ
解ってる?

俺は意地悪だから
アンタが自分で感じ取るまで
絶対に言葉になんかしない
だってアンタ、意地悪な俺が好きだろ?
拗ねた俺も、寂しそうな俺も
好きでいてくれるんだろ?
そんな事を楽しむなんて、俺達やっぱり変なのかもね…


ライバル 2  ぴかろん


俺の首筋をゴソゴソ触りながら、アイツはペンダントをつけてくれた

「やっぱこれ邪魔だよラブ」
「…。そんな事言ってもいいのかな…」
「え?」

パタコン☆
「ラブちゃんパン○とパジャマどこよぉ~。あれっ?ほぉん…。仲良くしてるじゃん。えへっやっぱり俺、ホテルに帰ろうかぁ?」

そう長風呂でもないピーちゃんが、腰にバスタオルを巻いてリビングにやって来た
忘れてた、『縄文風』…
俺はギョンジンから離れて、ごめんピーちゃんちょっと待っててと叫んで自分の部屋に行った
そして持ってきたワンショルダーのデレデレTシャツ(豹柄)とボクサーパンツ(当然豹柄)をピーちゃんに渡した

「…」
「いいでしょ?似あうと思うよきっと」
「…これって『石器時代風』だよね?」
「似合うからいいじゃん、何でも!ねっ」ちゅっ「ギョンジン、風呂、後でいいよね?」
「ぼぐはラブど一緒に入るっ!(;_;)」
「バカじゃない?!」
「だってっ(;_;)」
「俺、風呂に入るけど、アンタ、もしちょっとでもバスルームに近づいたらRRHに帰ってもらうからね!」
「はうっ(@_@;)」

「…。俺の長風呂のおかげで元通りになったようだな、ミン・ギョンジン」
「ゴリラのぶぁかっ!(;_;)風呂で溺れてろ!(;_;)」

ちょっとだけ元気?になったアイツをほったらかして、俺は風呂に入った

*****

「どういうことだ」
「何が?」

お宝はない。ブツの写真は送った。手紙と指輪。あれ以外ない

あの手紙、何かある気がする。お前どう思う?何か不審な行動はなかったか?教授は単独行動しなかったか?

黙れ!あの手紙を読んだあの人の気持ちがわかるか?手紙の写真撮った僕の気持ちがわかるか?ゲス野郎
弟には手紙のことは言うな。言ったら殺す。次だ。ラブにどこまで手を出した

何もしてない。お泊りさせてもらっただけだ。ミンギ君も一緒だ。それだけだ。僕はノーマルだ。何もしてない。キス以外何も

いいか。このたくましい上腕二頭筋はお前のその首を押しつぶしたくてぴくぴくしてるんだ。よく覚えとけ!いい女抱きたかったら、いい子にしてろ。店にまで出やがって、このお調子者が!

俺はナンバーワンになれるかも…すぱこーーんっ!
ラブちゃんには頭上がらんくせに…すぱこーーんっ!
さっきからやりたい放題…一言言わせてくれ。俺は内から燃えあがるのは得意だが、外から燃やされるのは嫌いだ

「何だ、それ?」
「ふんっ!」
「ふんっ!」

この3日間の報告をしあって僕達は睨み合った
クソゴリラめ!ちょっとでも『いいゴリラだ』と思ったのは間違いだった
人の良さそうな顔をして抜け目がない。探り合いで情報を得る
僕自身も身を置いていた世界だ。そうでなければ仕事にならない。解っている
だがやはり腹立たしい。怪しいと思うなら自分で調べろ馬鹿野郎!
それに…

「本当に本当にラブと何もなかったのか?キス以外」
「ああ」
「何故だ?!ラブはあんなにも可愛らしくて魅力的なのに!」
「だから俺は女性専門なの!」
「なら何故キスする!」
「キスはいいじゃん」
「よくない!」
「可哀想だったから」
「なに?」
「お前がいなくて寂しそうでさ。俺、いい人だから、そんな可哀想なラブちゃんをほっとけなくて…」
「ぶぁかっ!」
「なんだよ!俺は一応拒否したんだぞ!けどラブちゃんがどぉしてもって言うからっ!」
「だからだよ!クソッタレ」
「…。ミン・ギョンジン」
「なんだ!」
「…。調子が戻ってきたな」
「…」
「よかった。お前、次期法王を目指してるような微笑みで俺を見てたから背筋がゾッとしたよ」
「どういう意味だよ!」
「お前は俺が唯一認めるライバルだ。仕事でも色事でもな。お前は仕事を辞めた。その上色気までなくなっちまったら俺はどうすりゃいいんだよ」
「…。なんだそれ…」
「なぁミン・ギョンジン」
「あんだよ!」
「俺はお前が好きだよ」
「げ」
「お前に憧れている」
「ぐぇ」
「もし抱かれるならお前に」
「げぇぇぇっ(@_@;)」
「と思うぐらいお前をリスペクトしている」
「…。お前、熱でもあるのか?」
「だから負けたくないんだ」
「…」
「俺はお前の恋人を盗むなんてしないさ。だろ?ラブちゃんは確かに魅力的だ。そそられる。けどな、俺は燃えない。だって俺、出遅れてるじゃないか!俺達が同じ女を争った時を思い出せ。同時スタートだったろう?俺もお前も好みが似ている。だからどっちが早く恋人になれるかを競い合ったんじゃないか!」
「…馬鹿なことをしたもんだった…」
「そんな事言うなよ。お前、遊びで恋愛したわけじゃないだろ?」
「…ああ。常に愛した」
「だろう?俺もそうだ」
「…。お前もだと?…。信じられん」
「何を言う!お前と俺は姿形と国籍の違う一卵性双生児として有名だったんだぞ」
「は?!」
「お前と俺、やることなすことそっくりだって言われてたんだ。知らないのか?」
「げ」
「だからもし、ラブちゃんと知り合ったのがお前と同時期だったら…」
「…」
「俺は全力でラブちゃんにアタックしている」
「…」
「そういうことだ。わかるな?」
「ならあの錠前はなんだ」
「ん?」
「錠前ペンダントだ!お前が首からぶら下げているその鍵とペアなんだろ?!なんでラブとペアなんだ!」
「は?」
「あんな変なペンダント」
「あ…。そんな事言っていいのか?」
「お前のセンスなんか最悪じゃないか!いつぞや僕の誕生日にくれたあのTシャツの柄!」
「なんでだ!お前の好きそうな『不思議可愛いキャラ』だったろう?」
「あの目の位置は許せん!アレは『不気味キャラ』だ!」
「そんな事言うならお前こそ最悪じゃないか!俺の誕生日にくれたTシャツ」
「あれこそが僕の愛する『不思議可愛いキャラ』じゃないか」
「あんな不気味なものがか?!」
「なんだと?!」
「…」
「…」
「…。ポール。お前さっき僕達は『姿形と国籍の違う一卵性双生児』とか言ったな?」
「ああ」
「やることなすことそっくりだと」
「ああ」
「好みも似ているということか?」
「そうだ」
「ぶぁか!」
「なんだ!」
「『不気味キャラ』と『不思議可愛いキャラ』の違いもわからんくせに!なにが『やることなすことそっくり』だっ!」
「多少の差異は否めない」
「ぶぁかっ!この野郎」
「痛い!何をするかっ!」

バタンドタン
ぱたこん☆
「うるさいなぁガーガーガーガー。何喧嘩してるのさ。ギョンジン、風呂入って」
「ラブをこのゴリラと二人っきりになんてできないっ(@_@;)」
「だから俺はラブちゃんとはキスしかしないって言ってるだろ!」
「ペアのペンダントなんかしてるくせにっ(@_@;)」

「ああ、そうだ。ピーちゃん、外し方見せてあげてよ」
「あ、そうだね」
「外し方?!(@_@;)」

クソゴリラが豹柄の石器時代服で僕のダーリンに近づく
ダーリンはクソゴリラの首に腕を回し、顎を上げる(@_@;)

カチャ…カチャカチャ…ちゅ…カチャちゅ…カチャちゅ…ちゅちゅちゅはむぅぅぅ

「『ちゅ』と『はむ』は、やめいっ(@_@;)」
ちゅばっ「ギョンジン、すっかり調子戻ったみたいだね」ニコッ

ちゅばでニコはないだろうダーリン…(T_T)

「ミン・ギョンジン、わかったな?こうやって外すんだ」

涙で滲んでよく見えない
クソゴリラは僕に近づき、突然僕の首筋に腕を回した
悪寒が走る。さっきのポールの言葉が甦る

なぁミン・ギョンジン…俺はお前が好きだよ…お前に憧れている…もし抱かれるならお前に…

「げぇぇぇっ(@_@;)」
「ほい。無くすなよ。お前のものだ」
「…はい?(@_@;)」
「これは日本に滞在してた理事から預かったもんだよ。BHCのみんなに土産だ」

ポールがそのペンダントの説明と、配った時の恐ろしかった出来事などを笑いながら話した
僕の耳に、またさっきのポールの一言が甦った

『と思うぐらいお前をリスペクトしている』

「まだ泣いてるの?やっぱしまだ精神的に安定してないのかな?」
「大丈夫だよ、ミン・ギョンジンならキミと一晩しっぽり寝れば治るさ」
「…。じゃ、当分治らない」
「へ?」

ダーリンとゴリラが何か僕の事で話しているが僕の耳には入らない
とにかくいろんな意味でホッとした…
錠前のペアの鍵は、本当は僕のものだった(;_;)
そしてポールがそれを僕の首にぶら下げてくれたのだ
やはりいいゴリラかもしれない…

「あでぃがどう、ぼーる(T_T)」
「どういたしまして。こちらこそサンキューな。思ったより過酷な任務ですまなかった」
「あい(T_T)」

「はやく風呂に入りなよ」
「あい(T_T)」

僕は泣きながらバスルームに向かった
背後でダーリンがゴリラに、何を飲むか聞いている
ゴリラは、そろそろラブちゃんの××を…と答え、ダーリンが、いや~んピーちゃんのえっちぃ~と媚びた声をあげた

『と思うぐらいお前をリスペクトしている』
『俺はお前の恋人を盗むなんてしないさ』

大嘘つきめ!ゴリラなんか信じるもんか!
僕は5分でシャワーを終えてリビングに戻った
二人はまだ、飲み物の準備をしていて、ずぶ濡れの僕に呆れ果てた視線を投げつけた


跡  あしばんさん

駐車場でスヒョンを見送った後
どれくらいだろうか、僕はぼやんとその場に立っていた

空を見たって、その日は月も星も出てやしない
何となく身体が鉛のようでダルくって
そう、目一杯泳いだ午後みたいな…そんな感じかな

少し先に目を向けると、ギョンビンたちの車はもうなかった
いつ帰ったのか、ふたりが一緒に帰ったのかも知らない
その時になって気づいた
結局…僕は今日、ミンチョルさんをまともに見てないってことに

こんなことで、ホントにレコーディングなんかできるんだろうか
歌なんて、ただでさえ緊張するだろうに
あの人の指示の通りに「仕事」をするなんてできんのかな
そりゃ、悔しいから後に引くつもりなんてゼッタイないけど
正直言ってめちゃくちゃ気が重い

のろのろと店に戻っても
もうほとんどのメンバーは帰った後だった
厨房にテソンさんたちの気配がして
事務室の少し開いたドアからは灯りが漏れていた
イヌ先生とウシクさんの話し声がしたんだけど、そのまま通り過ぎた

ロッカーにしまってあったイナさんのお土産を取り出す
チェジュドの煙草だっていう話だけど、1本だけってとこがイナさんらしい

パイプ椅子を引っ張り出して、またいで逆向きに座り
ライターで、あ、これは接客用にいつも持ってるわけだけど、火を点けてみる
普段煙草は吸わないけど、こんな風に禁煙の場所でひとりやるのって気持ちいい
年に2、3度はやってるかな
ふんっ…どうせスヒョンは「ガキ」とか言うんだろうな
いいんだもん、充分ガキなんだからさ
誰かさんみたいに、香り立つような色気なんてないんだから

「はぁ…」げほっ


ぶらぶらと街に出てドーナツショップに立ち寄ったのは
そんな時間にも拘らず、急に甘いものが食べたくなったからだけれども
あれかな、ウシクさんの声を聞いたからかな

僕は、こういったガラス窓に面したカウンターに座るのが好き
通りを行く車を眺めるのが目的だけど
歩道をどんどん行き過ぎる人たちを見るのもいい
上を向いたり、笑ったり、俯いたりして歩いてる
みんなひとりずつ、きっと何か想ってるんだなと考えるとジンワリする
そりゃ…きっと酷い哀しみを抱えてる人もいるんだろな

「はぁ…」


こんな時間のドーナツショップにも結構客は多い
ほとんどが学生のおしゃべりって感じだけど
ひとりで本読んでるビジネスマンとか
あんな風に、大人な彼氏を連れて来ちゃう女の子とか…
「ゲホーッッ!ゲホッ!」
僕はむせて目一杯頬張ってたドーナツを吹き出しそうになった

注文カウンターの前に並んでるのは
パク・ウソク!

ただでさえ、あの男とドーナツは結びつかないってのに!
その隣でヤツの腕を掴んでるのは、どう見たって未成年の女子じゃないっ?
ひ~~2重に驚き
何てことだ…あの、美女を振り払った男の正体は
ミセイネンインコージョウレイイハンのスケベオヤジだったりするわけ?

とにかく僕は身体を小さくしておとなしくしてた
…ってか、僕にミツカッテしまった時の顔を見てやりたいけど
とにかく僕の中では疫病神の地位にあるアイツに、こんなとこで会いたくない
目立たないように下を向いて、ヤツが袋下げて店から出て行くのを待った

それにしても、人は見かけによらないもんだ
あのパリ第8大学哲学科の、完璧なストイックと言われてる
受付の女の子たちが必ず頬を赤らめる、睨まれると周りが石膏のように固まる
2年も手つかずだった中東の契約を4ヶ月でまとめた男が
ジョウレイイハンかよ

ずいぶん経ってそっと後を見ると店内にもうヤツの姿はない
ホッとして息を吐き珈琲をひと口飲んだところで
僕はまた吹き出しそうになった

硝子の向こうの歩道でヤツがじぃっとこっちを見てた
いつものあの調子の目でさ
こういうのを何て言うんだろう、弱り目に祟り目?

とにかく、どうにもできずに口だけニッコリしながら睨んでたら
パク・ウソクが面白いオモチャでも見つけたような顔で近づいてきて
僕の直ぐ右側の店の入口からひょっこりと顔を覗かせた

「忙しいと聞いていたが、ずいぶん暇そうだな」
「夜食くらい食います」
「食い過ぎじゃないか?」
「放っといて下さい、今はプライベートです」
「ねぇ、誰?」

細い声が響いて、パク・ウソクの腕の横から
酷い男の毒牙に引っかかった可哀想な女の子が顔を覗かせた
まぁ、けっこうかわいい顔してる…けど…やっぱ未成年だよな…このアクマめ

「ああ…仕事先の人だよ」
「そう、こんばんは」
「あ…こんばんは…」
「じゃあな、寂しいプライベートを邪魔して悪かったな」
「いいえ」
「何だ、文句ありそうな顔だな」
「は?とんでもない、今回は利用されなくてヨカッタなぁと思って!」
「ふん、恨みがましいやつだ」
「アクマを恨むと後が怖そうですけどね」
「…」
「何ですか!」
「今、誤解の坂を転げ落ちてるだろ」
「さぁ…ブレーキが壊れてるのは、いつものことですけど」
「…」
「まだ何か用ですかっ!」
「アゴについてるぞ、クリーム」

げっ…

クリームを拭いてる間に、パク・ウソクは未成年女子を連れて出て行った
まったく、いつ、どこで、どう会っても癪に障るやつだ

んでも、歩いて行くあいつにちょっとだけ目を奪われた
腕を取られて微笑んでるその表情の優しそうなこと
あいつでもあんな顔するんだって、妙な感心しながらも
何だかいつもの感じと折り合わなくて、しばしその後ろ姿を見送った

そう…その時の僕が、まだ何もわかっちゃいなかったってわかるのは
もうちょっと先の話なんだけど

やつのお陰で全然楽しくなかったドーナツの時間を終え
のろくさと家路についてる時に携帯が鳴った
ちょっとばかり疲れたハリョンの声がぎゃんぎゃんと響く
彼女は昔からイライラすると声が高くなる

「何度も電話したのに、どこほっつき歩いてるの!」
「え~?着信してないけど」
「え?そう?あら、どっかに間違えて掛けてたかしら」
「ハリョン、ダイジョブ?」
「大丈夫よ!」
「で、何?」
「さっきNYから返事があったのよ、OKだって」
「うそ!」
「それもCEO(最高経営責任者)から直よ、どう?」
「わおっ」

僕たちは、今回、NYの有名なインダストリアルデザインのスタジオに
アドバイザーとして入ってもらえないかとずっと打診し続けてきていた
すごく難しい話だから、もうダメもとのヤケッパチだったんだけど

「どうもあのパクが1枚噛んだらしいわよ」
「げ…」
「げ、じゃないわよ」
「またアイツか」
「どうも敵に回さない方が良さそうよ、彼」
「とっくに回ってるんだけど」
「とにかくNYから担当が来るって言うから、明日事前打ち合わせするわよ」
「って、じゃぁパク・ウソクもその件知ってるよね」
「ええ、今日、本人にも伝えたって言ってたわよ」
「あの野郎」

じゃ、さっき会った時にひと言話してくれりゃいいじゃんかよっ!

「それじゃ、そういうことでね」
「うん、了解、明日の朝みんなを集めといてくれる?デザイナーたちも」
「はいはい」

まったく、どこまで人をおちょくってやがるんだパク・ウソク
何だか無性に腹が立ってきて…
いや、NYの話はすごく嬉しいことなんだけど
とにかくさっきの情景が蘇ってきて、頭からブスブスと煙が出そうだった


ジャケットのポケットにしまおうとして、携帯を落としたのはその時だ
スローモーションみたいに四角い小さな光が落ちて行くのを
僕は、映画のワンシーンを見るように見ていた

大した音もしなかったから大丈夫かと思ったんだけど
慌てていじくってたら
昨日、録音されたままになってたスヒョンの伝言に行き当たった

はぁ…

パク・ウソク騒動で、ほんの束の間忘れてたことがまた降ってくる


ー撮影、終わったよ、少し飲んで帰る

滅多に留守録なんかしないスヒョンの声

2度、その声を聞いて
消去ボタンを押して
そして、携帯をしまった

帰ったら
久しぶりに部屋の掃除、しよう


その一日 1  ぴかろん

*****

ピーちゃんを真ん中にして3人で眠った
ギョンジンはあっちをむこうかこっちをむこうか迷っていたようだけど、結局仰向けになって目を閉じた
ピーちゃんも仰向けだったので、俺はピーちゃんに纏わりついた
俺のおデコにキスしてピーちゃんは目を閉じた

テジュンだとギョンジンまで手が届くのにな
ピーちゃん分厚いからバカのとこまで手が届かない
だから足先をバカの足に触れて眠った

夜中、ピーちゃんがうーんうーん暑いよ暑いよと唸るので、纏わりつくのをやめた
明け方目が覚めてピーちゃんたちの方を見た
ピーちゃんとバカが向かい合っている
ピーちゃんの腕はバカの肩を抱き寄せ、ピーちゃんの足はバカの腰辺りに絡み付いている
バカのこんな風景を見るのは初めてなので、俺はデジカメを持って来てパシパシ撮影した
二人の顔を、唇が触れそうになるぐらいまで近づけてやった

その後、ピーちゃんは寝返りをうち、バカと離れた
俺はバカの体を仰向けにして寝顔を観察した
可愛い鼻
ちょっと捲れた唇
ふっとい腕
きれいな手

初めて会った時、この手が俺のナイフを取り上げたんだ
あの時のアンタ、かっこよかったな…
そう言えば、あの時からずぅっと…アンタはギョンビンを気にかけてたんだ

ねぇ…
耐え切れなくなったら、また俺じゃなくてイナさんに縋るの?
そうなったら俺、どうしよう
拗ねればいい?微笑んでいればいい?どうしたらアンタは安心する?

「…ん…ラブ。…どうしたの?」
「…起こした?」
「…ん…いい香りがした」
「気のせいじゃない?」
「ううん。とってもいい香りだった」
「…。ピーちゃんの香水じゃないの?」
「違うよ。お前の香り…」

呟く唇にキスを落とす
捕まえられて唇が熱くなっていく
抑えられなくなる前にアイツの腕を強く抓って離れる

「…ごめんね…ラブ…」
「…。ん~回復するかな?」
「…へ?」

俺はアイツの下着を少しだけ下ろす
アイツは目を白黒させてピーちゃんを気にしている
ヘソの真下にチュッとキスしてやる
アイツは俺の肩を強く掴んでダメダメと首を振る
ふふんと笑って俺はキスした部分を撫でてやる
アイツの瞳が潤む

「…やめて…ラブ…」
「や!」
「…やめ…あ…ふ…う…あ…」

アイツが仰け反りシーツを掴む

「どう?」
「…ああ…あ…お…あお…あおあおあおあっああああおおおあああぢぢぢぢぢ」

がばっ☆
「おおお!ミン・ギョンジン!灸か!灸だな?!おお!おおおお!燃えている!燃えているじゃないかっ!感動的だ!おおおお」
「ピーちゃん、彼の反応、いいでしょ?」
「うん。かなり色気があるな。どれ」

ピーちゃんは枕元に置いてあった携帯でギョンジンの『燻される様子』を動画に撮った

「ぶぁがごりらっ!何の目的でそんな事をあぢぢぢぢぢ…」

ギョンジンは涙を浮べて叫びながら、悶え苦しんでいた
俺はケラケラ笑いながらアイツの顔を見ていた
俺といる時には、アンタの気持ちが楽になりますように…
そう願いながら、俺はさっき撮った写真を使った新たな意地悪を考えていた

*****

昼間、俺達は三人でRRHに行った
ギョンジンは自分の車に乗ってレンタカーを返しに行くピーちゃんと俺の後についてきた
部屋に戻りたいような戻りたくないようなどっちつかずの風だったな、俺、知らんぷりしたけど…

それから三人でご飯食べて映画を見た
トロイとかいう映画で、ピーちゃんそっくりの俳優さんが、ごついけどカッコイイ古代ギリシャの英雄役で出ていた
キレイなオシリに目が行って、ピーちゃんのお尻もああなの?と聞いたら、俺のはもっとキュッとしていると目を泳がせながら答えていた
嘘つきめ!とギョンジンが呟き、なんだと?!本当だぞ!今度見せてやる、二人っきりのときにな!なんてピーちゃんがいきりたって返すので、周りの人に睨まれた
その後も二人の呟き合戦は続いた
ラブシーンを見るとギョンジンが、なんだあのいやらしいキスの仕方は!誰かさんそっくりだ!と言い、それに答えてピーちゃんが、誰かさんのキスの方がもっといやらしいじゃないかと言い、その度に周りの人が俺達を睨むので、俺はすまなそうな微笑を浮かべて頭を下げまくった

俺はゴリラっぽい英雄より、トロイの王子兄弟の兄貴に気が行った
弱々しくて我儘そうな弟を守り、闘うその姿がギョンジンと重なった
ギョンビンは弱々しくもないし我儘でもないけど、兄貴の弟を思う気持ちは同じなんだなぁなんて思った

それから店に行った
ピーちゃんは今日も暇だからと言ってヘルプにつくらしい
俺は印刷した例の写真を店の厨房のおやつテーブルに乗せておいた
それからロッカールームの扉にも貼り付けた
勿論ギョンジン達に見つからないように…

開店が近づいて、皆がやってきた
写真を見てみんなキャーキャー騒いでいた
一番にキャーキャー言いそうなドンジュンさんは、少しばかり反応が鈍かった
ギョンビンは一人で店に来た
昨日よりも強張った顔をしている
ヤバイな、『兄性本能爆発』しそうじゃん、アイツ…

ギョンビンは写真を一瞥して、兄さん、見境なくなったの?!とキツい一言をあいつに浴びせた
それで漸く写真に気づいたアイツは、ぎゃーなにこれぇぇ(@_@;)と叫びながら写真をくしゃくしゃに丸めた
あーあ、俺達の思い出の一枚を…酷いヤツだ…と言いながら、ピーちゃんは厨房にあったもう一枚の写真をヒラヒラさせ、うっとりした顔で写真にチュッとキスをした
そしてもっといいものを見せてやる。これが俺の撮ったミン・ギョンジンだ、とよく通る声で言って携帯を掲げた
わらわらと皆が集まると、灸を据えられて悶えているギョンジンの、色っぽい表情と上半身を映した動画を見せていた
やめてぇやめてぇ誤解しないでぇこれは違うのぉとギョンジンが叫べば叫ぶほど、皆は、エロミンだ、浮気者だとアイツを責めた
面白いけど…もし本当にピーちゃんとギョンジンがそうなったら…
ピーちゃんがニヤリと笑い、俺はゾクリと寒気を感じた

*****

「ギョンビンギョンビンギョンビン!(@_@;)誤解しないでっ!これはただのいたずらでっ(@_@;)」
「わかってるよ兄さんはラブ君一筋だってことぐらい」
「そ?そ?ほんとにそ?」
「わかってる。うっとおしいからあっちに行ってて!」
「…」

弟の背中の盾は、昨日よりもっと厚くなっている
僕の心はざわついて不安でたまらなくなった

「ギョンビン…あの…ティファニーのボールペン…素敵だったろ?」

なぜそんな事を聞いたのか

「…」

弟は押し黙ったまま苦しそうに頷いた

「…教授はさ…」
「うるさいな」
「…」
「先輩に頼まれた仕事があるんだ。急いで考えなきゃなんないからあっちに行って」
「…あ…うん…ごめん…」

僕には何も話してくれない
話さないのだから気にしなければいいのに
そういうわけにはいかない
弟だから…僕の大切な…

営業が始まり、弟は笑顔で接客していた
でもミンチョルさんと視線も会話も交わしていない
僕の方も見ようとしない…
ギョンビンは誰とも目も合わさない

何があったのかはわからないけど、自分を責めているように僕は感じる
辛そうな横顔

「今夜はどうするの?RRHに帰る?」
「…」
「ギョンジン?」

ダーリンに声をかけられて振り向く

「またそんな顔して…」
「え?」
「まだ時差ボケ治らないのかよ」
「…あ…。うん…」
「今日、どうするの?RRH?それともウチ?」
「…あ…」
「来てよ、ウチに」
「…え…あ…うん…」
「ピーちゃんも待ってるし」
「…げ…」
「また三人で寝よう♪」
「…」
「ギョンジン?」
「は…うん…そうだね…」
「ピーちゃん、ギョンジン今日も来るってぇ♪」
「そうか!それは楽しみだぁん♪」
「何が楽しみなんだ!ゴリラ!」
「今日はもっと楽しませてやろう♪」
「ぶぁかっ!」

ギョンビンの傍に居てやりたい。居たって何もできないのに…
だから…そう…ダーリンのうちで、バカゴリラとダーリンのおもちゃになって気を紛らせたほうがいい…
そう思って僕はまた、その夜もRRHに帰らなかった

*****

3人でしこたま飲んで昨日と同じように3人で眠る
今日は何故か僕が真ん中だ
ポールはふざけて僕に絡みつき、ダーリンは喜んで写真や動画を撮る

「ミン・ギョンジン、お前とキスしたことなかったけど一度ぐらいどうだろう」
「わ。いいんじゃない?やってやって!」
「馬鹿なこと言うな!誰がこんな奴と!」
「ピーちゃんキュートだよ。ゴリラでも」
「ラブちゃん、ゴリラはないだろう?」
「だってゴリラだもん」
「ミン・ギョンジン、酷いと思わないか?お前の恋人は親友をゴリラ呼ばわりする」
「だってお前ゴリラだもん」
「友達甲斐のない奴め!お前なんかに抱かれたくない」
「大丈夫。抱かないから」
「え?抱く?ギョンジンがピーちゃんを?!」
「うん、ラブちゃん。俺、抱かれるならミン・ギョンジンに…」すぱこぉぉん☆
「だからっ!キモチワルイこと言うなっつの!」
「あぅん…酷い…ミン・ギョンジンったら…」
「シナを作ってもかわいくない!」
「可愛いよ、ピーちゃん。ちょっとギョンジンに甘えて。そう、唇よせてみて」
「こう?」
「ラブ!変な演出しないでくれ!こらゴリラ!離れろ!この酔っ払い!床で寝ろ!」
「ピーちゃんはゲストなんだよ!酷いこと言わないで!」
「ラブ、お前はどっちの味方なんだ!」
「俺はただいい画像といい写真を」
「カメラ貸せよ!」
「あっ!」

僕はダーリンの腕を引いた
ダーリンは足をもつれさせてベッドの上に転がった

「大丈夫?ラブ?」

暫くうつ伏せになっていたダーリンは、バッと顔を上げて僕を見つめた
目の焦点が合っていない

「…。くふん」
「…。ラブ?どした?」
「けひん…なんかクラクラしてきた…けひ」
「急に酔いが回ったのか?ラブちゃんこっちへおいで」
「や!」

ゴリラの手招きをペシンと払い、ダーリンは僕の腰にしがみついておへそあたりに髪の毛をこすりつけた

「あひっ…ラブっ…ポールが見てるからっ!」
「見てたって大丈夫」
「あひん…ラブ」
「ラブちゃん、大丈夫って?」
「反応しないもん!コイツ」
「え?」
「…はんのう…しないんだも…えっえっえええっ」

ダーリンは僕のおへそあたりに突っ伏して泣き出した
相当酔っている。なんだかんだ騒ぎながら、かなり飲んだもの…
ポールはなんだか嬉しそうな顔をして僕に聞いた

「反応しないってどゆことだ?」
「…」
「つまり…」
「どうでもいいだろう!」
「どうでもよくないぞ、お前は僕のライバルなのにっ!そんな状態では勝負できないじゃないか!」
「なんの勝負だよ…」
「アレコレだ」
「…」
「話してみろ、親友だろ?可哀想に、ラブちゃんはそれで俺にキスなどを求めてきたのかぁ」
「…キス『など』とは?」
「…けへん…そういう理由だったのかぁ~で?原因はなんだ?」
「ポール。キス『など』とはどういうことだ?まさかやっぱりラブに何かしたんじゃ…」
「してない」
「…」

信用できん!

「原因はなんなんだ?ん?」
「嬉しそうに聞くな!」

僕はダーリンを引っ張り上げてちゃんと寝かせ、それからポールにアッカンベーをして背を向けた
原因は…
そんなもの…

胸の中にモヤモヤが広がり、弟の泣き顔とラブの泣き顔が乱れ飛んだ
目を閉じて無理矢理眠ろうとした
僕の背中にポールの暑苦しい体が当たる

「なんなら俺が『回復の手助け』をしてやろぉかぁ?」

寝たふりをしてゴリラのからかいをやり過ごした
はぁ…
はぁぁぁ…

ほっぽらかされたゴリラはブツブツと独り言を呟いていた

ニホンのエンカにこういう歌がある
『ヤクニタタズニ ツライヒハ
ジヨウキョウソウ ノメバイイ
イツカハ オレト マタデキル
ダレモ セメタリ シマセンヨ
キットヤレルサ マイニチまむし酒~』
これはな、辛い時にマムシ酒を飲んで立ち上がろう、そして幸せを掴もうという歌でな
だからお前、マムシ酒を飲んでみてはどうだ?ん?俺がプレゼントしてやろうか?ん?

はあああああっ!

思いっきり溜息をつき、僕はポールを無視した
でもポールの『独り言』で僕の心のつっかえ棒が外れたのは事実で
二人の体温の温かさの中、ゆっくりと夢の世界に落ちていくことができた

やっぱり…ホントは…いいゴリラなのかも…しれな…ZZZZZ











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