ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 277

新しい日々 1 ぴかろん

朝起きるとヨンナムさんがいなかった
配達に行ったらしい
チョンエはまだ寝ていた

「おはよ」

隣のスヒョクがニコッと笑って小声で言った

「ん…おはよ…。あれ?ソクは?」
「ジジイは早起きだから…」
「…。じゃ、テジュンも早起きしたかな?」
「そうだね。二階、行ってみる?」
「…んぁ…ん」

曖昧な返事をした俺を、スヒョクは二階に引っ張って行った

*****

「美味しいっ!美味しいですテソンさん」
「そ?これも食べなよ」
「美味しいね、ソクさんイナさんテジュンさん」
「「「あ…おん…うまい…」」」

ご機嫌なスヒョクの問いに、casaの二階で朝飯を食っていた俺達三人は、ふわふわと答えた

「コーヒーと紅茶とどっちにする?」

Mayoッシが、いつになく柔らかな微笑みを浮かべながら尋ねる

「俺、紅茶!おいしー紅茶お願いします!俺、コーヒーは結構上手に淹れられるんだけど、紅茶は中々…」
「(^_^)オッケー。美味しくて香りのいいの、淹れてあげるね。他の皆さんは?」
「あ…じゃ…僕も紅茶で…」
「僕も紅茶…」
「俺、ココア」
「(-_-)」

冗談を言った俺に「mayoッシ」じゃなくて「闇夜」のひと睨みが浴びせられる

「…(^^;;)…じゃなくて…コーヒー…」
「イナ。みんな紅茶なんだからお前も紅茶にしろよ!」
「そうだよイナ。迷惑かけるなよ!」

MJの意見は一致しているようだ
え?MJって何かって?
想像つくだろ?…ミルキー・ジジイズだ…

なんだか知らないけど、ミルキージジイ達は急に団結して俺に辛く当たるようになった…
ちっと悲しくなって俯いていると、けひ…きひひ…と笑っている…
ムカつく…

「…じゃ…こうちゃ…」
「いいよイナシ。コーヒー淹れてあげる。私もコーヒー飲みたいからさ(^o^)」
「(;_;)mayoッシ…ありがと(;_;)」
「くふっ(^m^)涙目可愛いぞ、イナシ」
「「じゅるる…」」
「ソクさん!」
「あ…はい…けひひ…」

ところで何故俺達4人がcasaで朝飯を食らっているかというとだな…
それは…だな…
それ…は…(;_;)…

*****

爺ちゃんが朝飯をcasaで食いたいと言った
なんでか聞いてみたら、チョンエさんとヨンナムさんを二人っきりにしてやりたいのだそうだ
そうすることによって、『孫』に『現実』を理解させるという目論見があると…

なるほどな。でも、急に4人も行ったら迷惑だろう?と言うと、爺ちゃんはチャッと電話を取り出してcasaの番号は?と眼光鋭く僕に聞いた
そして、電話を受けたらしいチェミさんに今から4人、朝食をいただきに参りますのでよろしくと告げた
するとそこにスヒョク君が五歳児イナを連れてやって来た
爺ちゃんは、おお、よく来たな、ささ、飯に行こう、さささ…と僕達を外に導いた

チョンエさんはまだ眠っていた
その枕元に爺ちゃんは『邪魔しません。今を大切に…。ラブラブカップル×2より』というメモを残した

そういうわけで僕達は今、casaで朝御飯をいただいているのだ…
爺ちゃん…もとい…ソクとスヒョク君にとっては初めてのcasaのはず…
なのに妙に馴染んでいる…
ソクはチェミさんとも親しそうに話している。あんなに『ゴリアトゴリアト』とか言ってムッツリしてたくせに…

「何ブツブツ言ってるんだテジュン」
「は?」
「あのな、人は考え事をしている時、口の中が小さく動くんだ」
「へ?」
「そう『パタリロ』が言っていた」
「パタリロ?」
「お前は知らないかもしれないが、有名な子供だ」
「…」
「その『パタリロ』も僕同様耳がいい。いや、耳がいいというか、あれは…『人間じゃない』とバンコランが言っていた」
「ばんこらん?」
「ああ。美しい〇色のMI6諜報部員だ」
「は?」
「でだな。お前は今、考え事をしていたろう?」
「は…ああ…」
「口の中で小さく喋っていたんだよ」
「え?」
「だから僕の耳にお前の言葉が届いた」
「ええっ?!」
「チェミさんとゴリアトは同一人物ではないかと疑っていたのは確かだ」
「…ソクよ。その事は…」
「チェミさん、僕に任せて」
「あ…はい…(^^;;)」
「チェミさんはゴリアトであってゴリアトではない」
「は?」
「即ち、惨事にかかわっていたゴリアト、あれはチェミゴリアトのクローンというわけだ」
「は?」
「わかったか!」
「え?」
「わかったと言え!今後の展開上あのゴリアトとチェミゴリアトが同一人物では僕としても大変フクザツだ」
「は?」
「とにかく!わかったと言え」
「わ…わかった…(・_・)」
「(^^;;)…ややこしくてすまんな…ソクよ…」
「いいんだゴリ…いや、チェミさん。ははは」

「スヒョク君、どういうこと?」
「うん。だからソクさんの辛い思い出に繋がってるゴリアトは、チェミさんゴリアトのコピー体ってこと」

それはきっと、色んな設定上、そういうことにしておこうとなったのだろう(^^;;)
これ以上触れないようにしよう

※ゴリアトとは、映画「YESTERDAY」で、ソクさんの息子を死に追いやった人物なのです
 チェミが演じてたのでございます(^^;;)
 祭の時、チェミ=ゴリアトとして、チラッと登場したことがあったので、↑のような設定にさせていただきましたm(__;;)m
 チェミ=ゴリアトでお話を進めると、ちと辛いかなと思いましてすみませんm(__;;)m



とにかく僕達は『爺ちゃん』ソクのはからいでcasaで美味しい朝食をいただいているのだ
幸せなことだ
爺ちゃんは特に嬉しそうだ
イナは…はふはふ溜息ばっかりついている
そんなイナを見ると、僕もはふはふ溜息をつきたくなるってもんだよ…はふ…

******

飯の後、ソクとスヒョクはパン作りの見学をしに、工房に降りてきた
テジュンはその後からとぽとぽと階段を降りてきた
テスがメニューをあれこれ練っている

「うーん…ハーブパンとクロワッサン、バケットにくりいむぱん…。くりいむぱんは異色だけど、ウチのウリだよね?」
「ああ。お前のグーの手がモデルだからなぁ(^-^)」
「ウフフ…それ以外にぃ…うーん…。 イングリッシュ・マフィン グリッシーニ
リリーシロップ はどうだ?」
「最初はやっぱ、食事のお供のパンを売り出してさぁ、それからお菓子みたいなパンを増やすほうがいいよ」
「だがくりいむぱんしか甘いパンがないぞ」
「だから一日一種類のケーキを出すんじゃん。それにイナさんのこどもぱんがあるし」
「ああ…そうか…でもなぁ…リリーシロップ…」
「こだわるなぁ、なんかあるの?」
「お前の可愛いヒップに似てるだろう…(^m^)」
「(-_-)却下!…っていうか、しょっぱなから出さなくてもいいよ」
「しかし、バラエティに富んでないと客足が伸びんぞ」
「いいんじゃない!それがウチのコンセプトじゃない!」
「客足伸びずがか?」
「違うよ!バラエティに富まない。シンプルな気まぐれパン屋だよ!」
「…うーむ…」
「そういう、一風変わったカリスマパン屋で名を知らしめたのちにぃ、あれっこういうパンもあるんだぁ(^o^)っていうお客様の驚きと喜び…くふん…たのしー」
「…なるほどなぁ…」
「あれもこれもいっぺんにやっちゃうと、にっちもさっちも行かなくなっちゃう」
「そうか…」
「そう!」
「ふは…。俺のカミさんは、しっかりしてるなぁ(^o^)」
「えへっ(^o^)」
ちゅっ☆

勝手にしろよ…
俺はパンを練り始める
スヒョクが興味深そうに俺の手元を見ている

「やってみるか?」
「え…いいんですか?」
「チェミさん、スヒョクにも作らせてやってもいい?」
「お?いいぞ」

テスとの打ち合わせに夢中なチェミさんは、ニコッと笑って頷いた
普段なら、真剣さが足りんとか、パンを馬鹿にするでない!とか怒鳴るくせに…

スヒョクは嬉しそうに粉を捏ねている
ソクがそれを携帯のカメラで写真に撮っている
なんだかな…みんな浮かれてるな…

ふとテジュンと目が合った
一瞬感じ取った寂しさをすぐさま消して、テジュンは優しく微笑んだ
俺も微笑みを返した
テジュンは凭れていた壁から離れ、俺に近づいて会社に行くねと言った
うんと頷くとテジュンは俺の鼻を摘んでドアに向かった

あれ…キスは?

…キスは無しのまま、テジュンは外に出て行った
拍子抜けするのは間違いか?
俺は未だに揺れている
そんな馬鹿な男に、いつもいつも優しくなんてできるかってんだ…
ソクも言ってたもん…テジュンはキツキツなんだって…
隣で生地を捏ねているスヒョクを、俺はつい、羨ましげに見てしまった

(※パン協力:あしばんさんm(__)m)


新しい日々 2 ぴかろん

*****

配達から帰ってくると、チョンエだけが居間で眠っていた
チョンエの枕元に、ソクさんの(あまり上手とは言えない)文字で、『邪魔しません。今を大切に…。ラブラブカップル×2より』と書かれた紙切れが置いてあった
ふーむ
なるほど…
じゃあやっぱりこうしないと…

僕はチョンエの寝顔に唇を近づけた

「オッパ、何時?」
「う」
「今何時?!」

ガバッと起き上がったチョンエは、僕を揺さぶりながら聞いた

「えと…8時過ぎたぐらいかな…」
「たいへんっ!オッパ、用意して!」
「は?」
「送って!」
「どこへ」
「いいから送ってよね!今顔洗ってくるからっ!」

バタバタガサガサ、おっぱぁぁ、あたしのカバンどこよぉ!あっあった!ガサゴソばたん。シャシャシャ…ギギ…うっ、いてっ。ダダダダ、急がなきゃ!

「ねぇ…どこへ行くのさ…」
「メールメール…あああったいへんっ間に合うかしらっ…」
「だからどこへ…」

バタバタバタガラッ、おっぱぁぁ早くうう…

素早く着替えたチョンエは化粧もせずに玄関で騒ぎ立てる
僕はふうっと溜息をついてチョンエの後に続く
今日の配達は…ありがたいことに夕方までナシだ…

「仕方ないなぁ、付き合ってやるか」

呟きながら外に出て、トラックのキーを開け、チョンエを乗せる
チョンエは助手席にヒョイと乗り込みながら誰かに電話している

「え?あ…はい、そうなの?よかったぁぁ…私迎えに行くって言っちゃったから…。うんうん。解った。じゃ、そっちに直接ね。了解」

友達みたいだな?ところで…

「どこに行けばいいの?」
「新村」
「新村?…まさかテジュンの会社?」
「そ」
「…それって例の話か?僕の周りを固めようっての?それで僕を運転手に?!」
「まぁそれもあるけど。私自身の仕事もあるし…」
「何の仕事?」
「スカウト」
「は?」
「まあいいじゃん。とにかくお願い、送ってよオッパぁ」

甘えた語尾に僕の心はときめく
もう一度、仕方ないなぁと呟いてトラックを走らせる

チョンエは車の中で化粧を始めた
うーん…僕を男として意識してないってことか?

チラチラと送る視線に気づいたチョンエは、僕をじいっと見つめた

「…なに…」
「ごめんオッパ。遠慮なくて」
「…ああ…うん…」
「でも間に合わないんだもん。見ないでよね」
「…見ちゃうよ。女の人のお化粧ってどんな風にするのか興味あるしさ」
「ふーん」

ああなんて気のない返事だ…
チョンエは色んなものを塗りたくっている
塗らなくても十分綺麗なのになぁ…

「オッパオッパオッパ、止まって」
「は?急いでるんじゃないの?」
「止まってよ。アイライン入れてマスカラつけなきゃ!」
「…はいはい…」

トラックを道端に寄せて、そのアイラインとマスカラというものの使用法をじっくり見てやった

「見ないでよ」
「だって暇だもん」
「じゃ、なんか楽しい話してよ」
「…。ふぅぅん…そんな風にして目を大きく見せるんだ…ふぅぅん」
「見ないでって言ってるのに!」
「…。必要ないじゃん」
「え?」

チョンエはマスカラとやらを宙に浮かせ、片方だけ強調された睫毛を僕に向けた

「必要ないって言ったの」
「…何が?」
「化粧」
「…え…」
「素顔で十分可愛いよ」
「…でも、礼儀としてお化粧は必要よ…」
「いらないよ、チョンエなら」
「…」
「とくにそのアイラインとマスカラとかいうものは要らないな」
「…そ…れ…、どういう意味よ…」
「だからさ、もともと大きな目なんだし、睫毛だって長いんだし…それに…」

口紅なんかも要らないぐらい唇だって紅い…

「…そ…そんなことないよ…」
「そんな事あるよ。化粧すんなよ」
「そういうわけにはいかないもん」

チョンエはプイっと拗ねた顔で、もう片方の睫毛にマスカラを塗った
それから口紅を取り出して唇に色をつけた

ああもう…今つけちゃったらキスできないじゃないか…

「…なによ…」
「しなくていいって言ってるのに…」
「そうはいかないわよ!素顔美人が飾ってくるってぇのに、私だけスッピンなわけにはいかないじゃない」
「素顔美人?友達のこと?」
「あ…うん…そう…」

口ごもるチョンエ
どんな人だろう…チョンエがこんなに意識する女性って…
よっぽど美人なんだろうな
でもきっと僕はその女性よりチョンエの方が…

どきん

心臓が大きな音を立てた
好きだ…と頭の中で僕が叫んでいる

「できた。オッケーよ、オッパ。車出して」
「…時間あるんだろ?テジュンの会社、9時からだ」
「時間ないよ。あと20分しかないよ」
「20分もあるじゃないか。テジュンの会社なんてここから5分で行けるよ」
「それでもギリギリに飛び込むわけにはいかないもの。出してよ」
「20分もかからないよ」
「…何が?」

飾られたチョンエは確かに綺麗だ
でも僕は素顔の方が好き…
縁取られた瞳も、濃い睫毛もいらない
そのままの瞳で十分だ…

「…ねぇ…何が20分かからないの?」
「ん?ほんの5分だよ」
「5分って何が?」

ほんの少し近づいたチョンエの顔に手を伸ばして頬を包む

「…何?ファンデーションが取れちゃう」
「取っちゃえよ」
「何言ってるのよ、せっかくお化粧したのにっ!」
「口紅、濃すぎる…」
「え?そう?」
「僕が取ってやる」
「え?え…え?」

目を白黒させているチョンエに、僕は唇を近づける

「お…おっぱ…お…」

形の良い小さな上唇を、僕はそっと啄ばむ
小さな息が漏れる
何度もその紅を啄ばんでいると、やがて僕の下唇が啄ばまれる
負けずにチョンエの下唇も包み込むと彼女は、苦しげな声を喉の奥で漏らして、それから僕に体を預けた
柔らかいくちづけを飽きることなく続けていると、ふいにクラクションを鳴らされた
慌てて離れた僕達の横を、見慣れた車が通り過ぎて行った

「…やばい…テジュンだ…」
「やだっ!今何時よ!」
「んと…8時50分だ…」
「もぉぉ!何が5分よっ!なんでこんなとこで発情するのよっ!やっぱりオッパは危険人物だわっ!急いでよ!」
「発情って…」
「何でもいいから早く出して!」
「…。何を?」
「…。ばかっ!」

頭だの肩だのをバンバン叩かれた
それからチョンエは手の甲で形の良い唇を拭い出した

「それは取らなくていいのに…」
「え?なに?」
「僕の余韻は拭わなくてもいいよ」
「…。ばかっ!」

そんなにごしごし擦ったら、唇が腫れるぞ…なんて思いながら僕はテジュンの会社を目指した


新しい日々 3 ぴかろん

「間に合ったぁぁ…すみませんジャンスさん」
「ああチョンエさん、いいんだよ、テジュンから全て聞いた。全てね…ふ…ふふ」

ジャンスさんはニヤリと笑いながら僕を指さし、やらしいヤツ…くひひん…と笑った
…テジュン…見えたのか?通り過ぎただけなのに…

「おはよう、チョンエさん」
「す、スヨンさんおはよう(^^;;)」

あ…。たら…。…。スヨンさんだ…
友達って…素顔美人って…スヨンさんのことだったのか…
なら当然のことだが、僕はチョンエの方が…

「口紅、つけてないの?」
「あいうっ(@_@;)えっと…あの…ちょぉっとトラブルがあって取れちゃってその…」

スヨンさんがチョンエに問いただした

「スヨンさん。スケベジジイのヨンナム君がチョンエさんの紅を食べちゃったんですよけひひひ」

まったく…ジャンスさんってば余計な事を言う…

「まあ!」

スヨンさんの真っ赤な唇がぽっかり開く
それを見つめながら僕は言い訳をする

「あ…あのその…違うんです、あまりに赤すぎたので僕がその…ふ…ふき取りまして…」
「唇で!けひひ」
「ジャンスさん…違いますよぉ」

舌でだよ!と心でつっこみながら、ジャンスさんに親指を突き出してやった

「あ~ら、指で拭ったのかしら…それにしては真っ白ですこと。ね~え、スヨンさん?」
「…ヨンナムさん。私の口紅の色にご不満がおありですか?!」
「えっ(@_@;)」

スヨンさんはプリッと怒った顔で僕を睨みつけた
そして次の瞬間に、くすくす笑って

「お似合いですわよ、チョンエさんとヨンナムさん」
「あ…いう…」
「やだ、スヨンさん」
「やだぁん、ヨンナム君もチョンエさんもぉ、嬉しいくせにぃ」

ジャンスさんがクネクネと体を曲げた

*****

スヨンさんは昨日の最終便で済州島からこっちにやってきて空港近くのホテルに泊まったらしい

「ごめんねぇ…私、お迎えに行くつもりでいたのに…」
「いいのよ。宴会は楽しかった?」
「…知ってるの?」
「昨日の夜、テジュンさんからメール頂いてたの。だから、これは無理かなと思ってジャンスさんに迎えをお願いしたのよ」
「…無理って…」
「…邪魔しちゃ悪いし」
「そーそー悪いしぃ(^_-)-☆」
「ジャンスさん…(_ _ ;)」

俯いたチョンエがまた可愛い…

「何ニヤけてるんだスケベ男。あんな場所で朝っぱらから濃厚なキスしやがって…」
「なんだとテジュン!お前にそんな事言われたくないぞ!お前だってイナとしょっちゅう…」
「…。やっぱりしてたんだ…。カマかけただけなのに」
「(@_@;)」
「言っとくけど僕とイナは恋人同士だからノーコーなチューも構わないと思う。でもお前は?正式に交際することになったのか?」
「(@_@;)」

そう言えば、まだちゃんと『好きだ』と言ってない…

「…や…やだな、テジュンさん。オッパと私はそんなんじゃ…」

な…なんだって?!
確かにまだ『好きだ』とは言ってないけど

「 (@_@;)そんなんじゃないのか?!」
「え…」
「…僕は…」

チョンエの肩を掴んだ僕をテジュンが制する

「ヨンナム。TPOを考えろ。こんなとこで告白する気なのか?」

そ…それもそうだ…こんな…うっとおしいテジュンと得体の知れないジャンスさんとたらこ唇…もとい!赤い唇をした…いや違う!その…真面目なスヨンさんの前でチョンエに告白する必要はない!こんなシチュエーション、最悪だ…

「…じゃ…あの…あとで…ね…」

そう言うと、チョンエは一つ瞬きをした

「やだぁん、ヨンナム君、それってぇ、『後で告白します』って予告してるのよねぇくふん」
「ジャンスシ、すみませんが巨体をくねらせないで。仲がいいってことは、つまりヨンナムさん、例の済州道民の講師の件、引き受けてくださるってことね?」

にこっと笑った赤い唇は、逸れていきそうな話題を『仕事』に戻したうえに、『有無を言わせないわ』という強い意志を感じさせる
僕は少し反抗してみる…とても勝ち目はないと感じながら…

「…でもぉ…」
「でも?」

真っ赤すぎてコワい…

「え…あ…の…僕、こっちの仕事がぁ…」
「月に二、三日だったらどうでしょうか?」
「…え…」
「纏めて3日間でも、週に一回でもどちらでも構いませんわ。済州島に来ていただいて講義していただければ…」
「でも…日帰りは無理でしょ?」
「できないことはないですよ」

…そんなオイシクないしんどい仕事…チョンエと遊ぶ暇ないじゃん!

「でも、それじゃお体もお心もお辛いでしょ?やはりお泊りいただいたほうがよろしいかと思いますわ」

赤い唇がズバズバと図星をつく

「でもぉ…泊まるとなれば、僕はこっちの仕事を余計に休まなきゃなりませんし…」

もうちょっと抵抗…

「それは僕とソクとスヒョク君がフォローする。きっと頼み込めばBHCの他の連中だって協力してくれるさ」
「だってテジュン、仕事の手伝いしてもらったらバイト料出さなきゃなんないじゃん…」
「お前、イナとデートする時にソクにバイト料弾むからって仕事任せてたことあったろうが!こないだ済州島に来るときだってそうだったんだろ?」
「あれは…たまにはいいじゃないか…」
「済州島に来るのがイヤなのか?」
「行くだけなら積極的に行きたいけどぉ」

僕はチラリとチョンエを見た。チョンエも僕に視線を向けた
その瞳から突然ポロリと涙が零れた!(@_@;)

「どっどどどどどうしたんだっチョンエ!どっか痛いのか?!」

僕は慌ててチョンエの顔を覗き込んだ

「…オッパとやりたい…」
「…え(@_@;)…」
「私、オッパとやりたいの(;_;)」
「…なんだって?(@_@;)」

『私、オッパとやりたいの』…

意味は解っている
仕事を一緒にやりたいと、チョンエは言っている
しかも、涙を流すほど僕と一緒に仕事をしたいらしい…
嬉しい
ものすごく心臓がドキドキしている
なのに頭の中では、全裸のチョンエと僕が抱き合いながら楽しげにクルクルと回り続けている
BGMはチョンエの鼻にかかった甘い声…

『オッパとやりたい…オッパとやりたい…』

が響いている
いかん!いかんがしかし…

ごくり

すぱこーーん☆

「でっ…」
「仕事がやりたいって言ってるのよ!」
「…わ…わかってるよ…」

怒られた
涙目でふくれっつら…
可愛いじゃないか…
やはり幼馴染だけあって、イナと同じような表情をするな…
ふとイナを思い出し、少しだけ胸が痛んだ

あいつと過ごした温かな日々
眠ったように過ごしていた僕を揺り起こしてくれたイナ…
あいつと一緒に済州島へ行った
城山日出峰へいつか行こうと約束した
あいつの気持ちがじわじわと伝わってくる…
テジュンがいるのに、テジュンじゃなきゃダメだって戻ってったのに…あの瞳…
僕に向けられたあの…

チョンエが僕の腕をぎゅうと掴んだ
はっとしてチョンエを振り向くと、瞳の色がいつもと違っていた

「…あ…何?どうしたの?」
「…」
「ん?」
「…。なんでもない…。ごめん…」
「…なんで…謝ってるの?」
「…。いいの」

「あーあ。泣~かした!」

とジャンスさんに責められた
チョンエは泣いてはいない
けれど、何だかいつものチョンエらしくなかった

「お前、何が不満なんだよ」

にくったらしいテジュンに言われた

「だってバイト料…」

口ごもると、スヨンさんが割って入った

「わかりました。ヨンナムさんが済州島に来てくださる間の、そのバイト料、ウチが持ちます」
「…え…」

「スヨンさん、ジャンスんち、そんなお金ない」
「ええ、ジャンスシ、わかってます、巨体をくねらせないで。…ウチのホテル協会から出させます」

え…え…?
そんな事までしてくれるの?

「それでもダメかしら…」
「そ…そんなに僕が必要ですか?」
「ええ」
「…見込み違いだったら?」
「違いません」
「…でも…」
「講義については難しく考えないで。ほら、この間済州島で私にお話してくださったでしょ?あの時のように、貴方の接客方法や工夫なさっている事を気楽に話してくださればと思ってるの。それでも不安なら、テジュンさん、ジャンスさん、私も協力します。講義の内容はゆっくり詰めていきましょう。いかがかしら?」
「…それは済州島で打ち合わせるのでしょうか…」
「ソウルでもどちらでも構いません。勿論チョンエさんも一緒に。報酬は十分にさせて頂くつもりよ」
「…」

それは…とってもラッキーじゃないか…
引き受けたら…そしたら僕は何度もチョンエに会える…済州島に会いに行けるしチョンエがソウルにやって来ることもある…
しかもうちのバイトの賃金を出してくれて僕自身もお金が貰える
僕はチョンエと一緒に、何だか解んない講義をして…そして…そそそそして夜はチョンエと一緒に…

「きゃー!(@_@;)」
「「「どうしたんですか?」だ?」でござりまするか?」
「あ…いえ(@_@;)なんでもありま…へ…ずるる」
「鼻血出すなよヨンナムぅ(_ _ ;)」

「そこまで仰ってくださるなら…あの…引き受けます…」
「ありがとう!ありがとうヨンナムさんっ!チョンエさん、よかったわね(^-^)これで貴方のお店も安泰よ!(^o^)」

スヨンさんはキラキラした顔をチョンエに向けた
チョンエは薄く笑って頷いた…何だか少し沈んでいる
どうしたんたろう…

「…ごめんねスヨンさん…私の『色仕掛け』は役に立たなかったわ…」
「何言ってるのるチョンエさん!」

なんだ、そうだったのかチョンエ(>▽<)ばかだなぁ、僕はお前の『フェロモン』にすっかり参ってしまってハフフン(*^^*)なのにもぉ~かわいいっ!

「オッパは…オッパはこっちの仕事とバイト料が気になってたのよ。私なんか何の役にも立たなかった…」
「まぁ…チョンエさん…貴方らしくないわ…」

ばかだなー、チョンエったら。そりゃ気にはしてたけど、ちょーっと赤い唇に抵抗したくなっただけだし…
…くふふん…可愛いな…嬉しいな♪

チョンエはスヨンさんに背中を撫でてもらっていた
僕が撫でてやるのに…
チョンエが僕に振り返って言った

「でしょ?オッパ。決め手はやっぱりバイトの賃金よね?」
「…。それもあるけど、でもチョンエと…」

一緒にいたいのが一番の理由だと言おうとしてやめた
後でしっぽりと告白しよう…ふふ…ふふふふふふふ

「スヨンさん。ウチの店との契約、正式にお願いしますね」
「ええ。今書類を揃えるわ。少し待ってて」

チョンエはスヨンさんに向き直ってビジネス口調になった
スヨンさんはジャンスさんやテジュンとともに衝立の向こうに消え、僕とチョンエは二人きりになった
そっぽを向いた可愛い顔…
やっぱり今言っておかないと…

「チョンエ…僕はチョンエが一緒にやりたいって言ってくれたから…」
「オッパさ…」
「ん?」
「…」

小さな唇がきゅっと締まった

「…チョンエ、なんか怒ってる?」
「…怒ってない」
「じゃ、なんでそんな顔してるの?」
「別に。お互いに仕事のこと、うまくいってよかったね」
「うん。チョンエの店が無事に出店できるようになってホッとしたよ」
「そうね。そうよね」
「…。チョンエ?」

「お待たせ。チョンエさんはこちらにどうぞ。ヨンナムさんはテジュンさんのところで書類を整えてね。さ、チョンエさん、こちらに…」

チョンエと僕は引き離される
ほんの少しの距離なのに、寂しい…


新しい日々 4 ぴかろん

*****

少しだけ離れた場所で僕達はそれぞれ仕事の契約を交わした

「サンキュ。助かったよヨンナム」
「いや…」
「…気もそぞろって感じだな。チョンエさんの契約が済んだら、お前ら自由だから。ゆっくりデートしてこいよ」
「え?ほんと?!」
「…。頑張れよ」
「どうしようっ!どこに行こう!どこがいいだろうテジュン!」
「…お前の得意なアジュンマの店にでも連れて行ってやったら?」
「そ…その他には?」
「…」
「ねねねテジュン、どうしようっ!」
「…。どこでもいいよ!うまくやれ!このバカ」
「テジュン~」

テジュンは苦笑いしながら僕の頭を小突いた
指の関節が頭のてっぺんにグリグリ当たってかなり痛かった

やがてチョンエの契約も終わり、僕達二人は解放された

「じゃあチョンエさん、夕方ね」
「ええ」

チョンエはスヨンさんと約束があるのか?夕方ってなんだろう

「スヨンさんとどこかに行くの?」
「…。BHC」

チョンエはつっけんどんに答えた
あれ?

…。怒っている
絶対に怒っている
なんで?
僕、何かした?

…落ち着こう…怒らせるようなことはしてないはずだ…
だから僕に怒っているんじゃあ、ない!

「…BHCか。いいね。じゃ、スヨンさんをお迎えに行って、二人をBHCに送ればいいね?それまで何する?僕の仕事も今日は夕方まで配達ないし。どこに行きたい?」

チョンエは足早に歩いていく。追いつくのが大変だ
エレベーターの手前までやってきたけどチョンエは返事をしない
根気よく…根気よく…

「ん?どこに行きたい?」
「べつに…その辺で降ろして」
「…チョンエ?」
「ああ。いいわ。私、新村の街、見たいし」
「…。じゃ、一緒に行こうよ、ね?」
「いい。一人で行く」
「なんで?!」

無言でエレベーターに乗り込むチョンエの後を追う
中には人が何人か乗っていて、突っ込んだ話ができない
どうしてチョンエは急につんけんしだしたんだろう…

ビルの外に出て、どんどん歩いていくチョンエの腕を引いた

「いたっ!」
「あ…ごめん…。でも、どうしたのさ」
「なにが?」
「なんで急に冷たくするのさ」
「別に。これが私だもの」
「え…」

トンと僕の腕を突き放してチョンエは歩き出す
何が何だかわからない
ハッとしてまた彼女の後を追った

*****

涙を堪えているチョンエの頭をそっと引き寄せた


そんな事思ってたの?
そっか…ごめんね、僕の言葉が足らなかった…

あのね、チョンエ
お金を儲けたいからじゃないよ
君がいるからこの仕事、引き受けたんだ…
本とはすぐにウンと言いたかった
けど、こっちの仕事を疎かにするわけにはいかないだろ?
これでも結構あてにされてるんだぜ

え?イナ?
イナは…うん…
だから…その…単なる『友達』…。…。だよ…
え?今の間合いが気になる?

君、僕とイナの事、お見通しじゃなかったの?

え?急にわかんなくなった?なんで?
いたっ!痛いよ。グーで殴るなよ!もう…
ああ…いいよ大丈夫。平気だよ、ホントだって…もう…
怒ってないよ、怒ってるのは君だろ?
え?怒ってない?
じゃ、なんでそんな膨れっ面なのさ…

え?気になるから?

わかったよ…
えと…何から話せばいいのかな…
話せば長くなるけど…聞いてくれる?


イナがひっかかるというチョンエに、僕のことを順を追って話した
必然的に『彼女』の話もした。それからテジュンと僕との関わりや僕とイナの関係もほぼ全て…
それは、僕自身のイナに対する気持ちを確認することにもなった

僕は今、チョンエに好意を持っている
それはチョンエが女性だからというだけではない
漠然と…だが、彼女の中に僕の求めるものがあるような気がするのだ

イナが僕の心の穴を埋めてくれると思っていたこともイナに随分甘えたことも話した
傍にいて欲しかったことも、頼っていたことも、テジュンからもぎ取ってそれから…
僕達が無理に『恋人』になろうとしたことも…


「あの子は貴方をまだ好きだわ。貴方もそうでしょ?少しは好きでしょ?」

そう言われてキュンとするのは、『図星』ってことなんだろうか…

「なんとなく…薄く…その気持ちは残ってるかな…誰かさんのおかげで消えかかってるけど…」

もう、ほとんど、気持ちはチョンエを向いている

「わかるだろ?僕の気持ち」
「…」
「わかんない?」
「…。…あの子の気持ちはどうするの?」
「それは…僕にはどうにもできないよ」
「…そうね…どうにもできやしないわね…」
「…あいつが許してくれるなら、ずっと友達でいたいと思う…」
「友達に…なれるのかな…貴方たち」
「君だってテス君と『友達』なんだろ?今は」

チョンエは唇を噛んで、腰を降ろしていた芝生をみつめた

「…。あ…。そか…」

ふっと視線を浮かして、澄んだ声で呟いた

「…。そういう気持ちか…」
「え?」
「…オッパがイナに対して抱いてる気持ちと、私がテス君に対して持ってる気持ち、似てるんだと思う…」
「…へ…ぇ…。そ…」

チョンエは…テス君を見ると胸がキュンと痛むのかな…(イナの切ない顔を見ると、僕がそう感じるように…)
テス君がチェミさんにとっぷり甘えていると、少し寂しいと感じるのかな…(イナがテジュンの甘えていると、僕がそう感じるように)

「…それは…」

チョンエがテス君にそんな感情を持っているとしたら…
(僕がイナに対して確かに持っているものだ…)
それをチョンエがテス君に持っているとしたら…

…やだな…
悔しい…

「…あ…。そうか…」
「ん?」
「そういう気持ちか…」
「…」
「チョンエはそんな僕を見てこんな風に感じたってことか…」

それはつまり、僕を好きでなきゃ湧いてこない気持ちのはずだ…

その時の、チョンエを見つめる僕の目には、優しさや憐れみや愛おしさと同時に、雌に執着する雄のぎらつきが表れていたに違いない

…うん…

チョンエは真っ直ぐ前を見つめて小さな声で、だけどハッキリと言った

「それって…」

自分のモノだと印しておきたい僕は、チャンスに切り込みかけた
なのに僕の欲望の切っ先は、するりとかわされた

「…イナはね、情の深いヤツなの」

落ち着いたチョンエの声に、ぎらついていた心が鎮まる
僕は彼女の話に耳を傾ける
『イナ』というフレーズに、弱いのかもしれない…
そんな事言うと、また膨れるかな…

「友達の事、考えすぎて色んな事に深入りしすぎちゃうトコあるの…」
「…うん…」
「昔は『友情』で収まってたのにな…。テジュンさんと出会ってからね、きっと…」
「ん?」
「…深入りしすぎて、懐に飛び込んでいって…甘えるふりして相手を甘えさせて…」
「甘え上手だからかな?」
「ううん。甘えるの下手糞よ、あの子」
「…そう?」
「うん。テジュンさんのせいよ」
「…?」
「オッパには無理」
「…。なんで?」
「なんでって…。そうね…。どうしてかな…」

僕には無理だと、それは感じていたことだ
だけど何がどう無理なのか、よくわからない…

「きっと…そうね…きっと…とても愛している…ってことなのかな…」

月並みな言葉ね…こういうのは語っちゃいけないのよ、そう言ってチョンエはクフンと笑った

「チェミさんもそうね。私には無理でも、チェミさんにはテス君、甘えられるしそれに、甘えさせてあげられるのよ」
「…テス君がチェミさんを?」
「うん」
「…ふぅん…。僕はイナを甘えさせてやれない?」
「だって…」
「ん?」

抱けなかったんでしょ?とチョンエはきっぱり言った
血が逆流して頭が爆発しそうになった…

「そんな事言うなよ!恥ずかしいじゃないか!そんな…はしたないことばを…ああう…おお…」
「何言ってんのよ。オッパなんか大声で『抱いてやる』って叫んだじゃない」
「あれあれあれはあれはあれは…」
「…いやらしい!…もしかして、この手の顔はみぃんな『口ばっかりのセクハラ顔』なの?」
「なななな…ちがちが…」
「そうね、テジュンさんは違うわね。正統派だもの」
「ぼぼぼ僕だってお望みならばどんな風にでもっ」

両手挟みビンタが飛んできたのは言うまでもない
ああ、そうだ…
僕はまだ、肝心な言葉を言っていないのだ…おお…痛い…

「抱くとか抱かないは関係ないにせよ…、オッパには無理よ」
「…テジュンより器が小さいから?」
「そういうのじゃなくてさ、イナと合わないのよ…」
「…テジュンそっくりでも?」
「中身は違うじゃないの」
「…うん…」

そうだ。僕はイナじゃなくてチョンエ、君とわかりあいたいんだもの…

「オッパと私は似たもの同士なのかな」
「…そうかな…そうだね…」

チョンエの頭を僕の肩に乗せさせた
いい香りがする
ちゃんと言わなきゃ…ちゃんと…

「チョンエ」
「ん?」
「好きだ」
「…」
「僕、君が好きだ」
「…」
「僕と…ぼ…げへ…僕とつき…つきあってくれないかな…」
「…うん…」
「えっ?!」
「なによそれ…なんで驚くのよ…」
「ほんと?」
「うん…」
「ぼぼぼ…僕のこと好き?」
「…うーん…」
「えっ?!」
「…いちいち変な反応するわね」
「だって、普通『好き』だから『お付き合いオッケー』なんじゃないの?なんで『うーん』なの?」
「…」
「ねねねねね。好き?僕の事好き?ねねねね」
「…しらない」

チョンエはスッと立ち上がった
どうゆうことよ!ここで、オッパ、私もオッパが好き…ちゅうううはむはむはむぅ…ああしあわせぇぇ…あらまだ夕方まで時間があるわ、じゃ、気持ちを固めるために気持ちいいことしちゃいましょうか…なあんちゃってぇげへへへばっちーんおっぱはどうしてそっちの方面ばかりにいくのよバカ!…あ、チョンエ、ごめんごめんでへでへ…じゃ、ここでゴロゴロいちゃつこうよひひん…なあんていう展開になって幸せなバカップルでこう…ああ…

僕はまたまたチョンエの後を追いかけた

「チョンエ。チョンエってば…。ほんとにつきあってくれるの?」
「…うんって言ったでしょ?」
「じゃ、僕の事好き?」
「…うーーーん…」
「なんでうーんなのさ!どうして『好きよ』っちってくれないのさ!」
「…だって…」
「だってなんだよ!」
「そんな事言ったら、オッパ、付け上がるから…」
「(@_@;)」
「すぐ発情するし…」
「(_ _ ;)」
「そーゆーの、ヤだからね」
「ええっ?!(@_@;)」
「なんで驚くのよ!」
「だっていい大人の男女が好き同士ならハツジョーもするだろう!」
「…」
「いやその…あの…」
「…とにかく、付き合うんだからいいじゃない(^-^)」
「へ?」
「お腹すいた」
「は?」
「ご飯食べたい」
「…あ…は…ほん…」

完全にはぐらかされてしまった
そして僕はアジュンマの店にチョンエを連れて行った
アジュンマは目を細めてチョンエをみつめ、あれこれと二人で話をしていた
僕は…僕はそれはとっても嬉しかったのだけど、どうして『好き』と言ってくれないのか、少し寂しく思っていた(;_;)


Enemy2 Fire オリーさん

秋のキャンパスを歩いていると、
ある言葉を思い出す
Back to school…
学びの舎を離れて随分経つので、それは懐かしい響きだ
毎年この時期に味わっていた高揚感を思い出す
新しい学年と新しい教師、そして新しい友人
新学期は常にエキサイティングだった

だがファーイーストでは新学期は春であるらしい
3月とかいう話をどこかで聞いたな
日本は4月だということだが
不思議な現象に多々遭遇するものだ

僕は今、モウソウルのある私立大学の構内を歩いている
本部と連絡を取る間、ミン兄とそのラマンにつきあわされ
ファンタスティックな日を送っていたが、
さてと、仕事だ
教授に会いに行く

どうもあの教授は苦手なのだが、
あの手紙を読んでからは、ますますその気持ちが強くなった
なぜなら、彼があのような荷物を背負いこむことになったのは
僕にも責任の一端があるからだ
もちろん、それを認めることは許されないことであるが

その情報がもたらされたのは、最初はいつだったろう
疑心暗鬼で向かった場所に、果たしてアジトはあった
大物は逃したものの、何名かは捕まえることができた
そしてその後も情報は定期的にもたらされ
常にやつらのアジトを正確に教えてくれた

情報源を特定できなかったのがミスだ
最後の最後でその情報は嘘だったのだから
周到に用意されていたに違いない
もし、ミン弟に尾行をつけていなかったら、
完璧に裏をかかれたままだったろう
あの情報は誰からもたらされていたのか…

その答は出ているような気がする
疑念は、霞の中で徐々に確信へと変わっている
情報はその中心から流されていた
そう、あの男だ

当初、アジトにいたのは大抵は雑魚ばかり
幹部がいたためしがなかった
だが徐々に幹部も捕まえられるようになってきて
それで信じてしまった

だが、もしあの男が情報源だとしたら、
なぜ仲間を売るようなことをしたのか
もしかしたら、奴自身本当は捕まりたかったのではないか
まさか…
すべては、最後の最後で出し抜くためだったのだ
あの教授に会うために

だがなぜ?
ただ会いたかっただけなのか
いや、理由があったのだ
莫大な資金はまだ見つかっていない
あの男は教授にそれを託した

オックスフォードでは失敗した
だが、準備は幾重にも重ねられ
最後はそこにたどり着くようになっている
そうに違いない
あの手紙が最初の道しるべ

あの手紙で何かを伝えた
それだけは確かだ
何がしたかったんだ…
あの男は何が…


「また君か」
思ったとおり、教授は僕を見て面倒くさそうに言った
「お邪魔します」
こういう時には、有無を言わせぬ態度が大事だ
彼は肩をすくめて、扉を大きく開いた
賢い男は好きだ
無駄な抵抗はしない、ある程度までだが

「先日はお疲れ様でした。時差ボケは直りましたか?」
「そのつもりだったが…」
「まだ調子が戻りません?」
「君の顔を見たら、また時差ボケになったような気分だ」
「それはお気の毒です」
「感情の伴わない言葉は無益だ」
「これはまた相変わらず手厳しい」
「お茶でもどうかな?インスタントだがね」
「ありがたく」

すすめられて机の前に置いてある椅子に腰をおろした
その部屋は机と椅子、
そして壁に作りつけの書棚があるだけの簡素な部屋だった
書棚は空で、机の脇に専門書が無造作に積み上げられていた
その本の山が唯一のアカデミックな情景だ
比較的窓が大きめな事が救いだろうか
教授がこんな環境を受け入れていることが
少なからず驚きであった

マグカップに入ったお茶が目の前の机に置かれた
中に入っているティーパックはフォートナム・メイスン
インスタントでも最後の線は崩したくないようだ
「後は勝手にやってくれたまえ」
僕は言われたとおり、パックが入ったままお茶をすすった

教授は引き出しを開けて中身を机の上に出しながら僕に話しかけた
「用件は何かな?」
「ちょっと伺いたいことがありまして」
「ほお…」
「手紙の件で」
「手紙?」
「銀行の金庫に入っていたやつですよ」
僕はさらりと言ってみた

教授は手を休めることなく動かしている
「あれが何か?」
「よく見せてくれましたね」
「君になら見せなかったがね」
教授もさらりと言ってのけた

「ミン兄を行かせたのは正解でした」
「そうかもしれない」
「それで、あの中の事で教えていただきたいことがあります」
「何か?」

僕はマグカップを置いて教授を見つめた
「あの中にこんな文面がありましたね」
教授の手は下の大きな引き出しにかかったようだ
僕はかまわず続けた
「それでもやるべきことはやったつもりだ
私がいなくなった後にすべては動くようにしてある
お前なら気づいてくれるかもしれない
私が何をしたかったのか…」

教授はやっと手を休め、僕に視線を向けた
「それが何か?」
「彼が何をしたかったのか、おわかりになりますか?」
「いや」
「では、いなくなった後にすべて動くようになったとあるのは?」
「わからないね」
「何か変わったことは?」
「何もない、ボストンへ行った以外は」

教授は僕の眼をまっすぐに見つめた
その眼からは強い意志を感じることができた
嘘だ
僕の直感がそう囁いた
教授は何かを知っている
ただそれを言う気はないのだ

「何をやりたかったのでしょうね?」
僕は無駄と知りつつ重ねて尋ねた
「さあ…」
「見当もつきませんか?」
「もう長い間会っていなかった。本当に長い間だ…」
教授はそう言うと、今度は机の上の物を紙袋に入れ始めた
「むしろ君の方が詳しいんじゃないか?ずっと追っかけていたんだろう?」

「確かに随分追いかけましたよ。でも追いついたと思うとそうではなかった…」
「君にも敵わない相手がいたとはね」
「敵ながら切れる奴でしたよ」
「あたりまえだ」
「…」
「私の親友だ」
そう言った時だけ、教授は一瞬手を止めた

「ところで、さっきから何をしてるんです?」
「何をって?」
「大掃除ですか、机の中身を全部出して」
「引っ越しだ」
「引っ越し?」
「君たちの言う撤収だな」
「撤収?」

「ファイアーされた」
「え?冗談でしょう?」
「本当だ」
「いつ?」
「今日呼び出されてね」
「なぜ?どうしてファイアーされたんです?」

「不適切な人材だそうだ」
「まさか…」
「いや、理由はわかっている」
「何です?」
「君には関係ない」
「信じられないな。あなたみたいな人を手放すなんて。
まさかボストン出張のせいではないでしょうね」
「そうなら君の責任にできるがね」

「僕に何かできることは?」
「いいんだ、少し休みたかったから」
「休暇ですか?」
「しばらくぶらりとしようかと」
「どちらへ?」
「深読みはしないでくれたまえ。ただ何もせず休むということだ」
「本当に?」
「私には休暇が必要だ。ただそう思っただけだ」

「おっしゃる通りです、が今日の今日とは急ですねえ…」
「学生に挨拶できないのが唯一残念なのだが」
「最後の講義もなしですか?」
「一応、言ってみたんだが」
「礼を重んじる国だと聞いていましたが」
「どうやら礼を損ねたのはこちらのようだ」
「一体何を…」
「それより、手伝ってくれないかな、この本を運びたいんだ」
「それはいいですけどね」

床に積み上げられた本はそういう意味だったのか
積み上げられた書物を束ねながら、妙な予感がした
おかしい…
何かおかしい…

教授の荷物は二度ほど往復して彼の車に納まった
それにしても、この教授
金持ちだとは聞いていたが…
いつの間にこんな車を買ったのか

「どうかしたかね?まさかレクサスを見るのは初めてじゃないだろう」
「ここでは珍しい。東京では何度か見ましたが。新車ですね」
「今月まで待てばワンランク上の車種が出ると言われたが」
今月出るって、レクサスLS600hLのことか?

「すぐに乗りたかったので、これにした」
「いい車です」
ということはこれはLS460Lか…
僕は確認するために、車を見るふりをして回りを一回りした
おいおい、クビになったってのに
こんな車買っちゃって大丈夫かよ
大丈夫なんだろうな、ちっ

「昔、日本車がビッグ3を抜く日が来ると予言した男がいた」
「…」
「私は鼻で笑った。トヨタやホンダがビッグ3に勝てるわけがないと」
「予言は当たりましたね」
「確かにね」

答はわかっていたが、聞いてみた
「で、誰です、その男は?」
「君が敵わなかった相手だよ」
思っていたとおりの答が返ってきた

教授は運転席のドアに手をかけた
「送ろうか?」
「いえ、大丈夫です」
「じゃあ、これで失礼する」
「何か思いついたらぜひ連絡をここに」
僕は名刺を差し出した

教授はそれを受け取ると、
それをまじまじと見つめた後で苦笑いをした
「表向きは大使館職員か。それにしても随分長い肩書きだ」
「よく使う手ですよ」
「在日英国大使館付防衛駐在官…ポール・ロジャース」
「一応陸軍出身でしてね」
「おじさんと気が合うわけだ」
「とんでもない。僕はまだヒヨっこですからね」

教授が笑って運転席に入ろうとしたとき
数人の学生が駆け寄ってきた
どうやら、教授との別れを惜しみに来た様子だ
僕はゆっくりとその場を離れた

学生に囲まれた教授は、
彼らに何かを語りかけ、肩をたたき、別れを惜しんでいる様子
もしかしたら、あなたはいい先生なのか
そんな顔ができるのなら、
一度くらいは僕もそんな顔で迎えてほしいものだが

さて、礼のある学生に比べ、
礼のない処遇をする学校をちょっと調べてみよう

振り返ると
教授はまだ学生たちに囲まれていた













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