ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 296

こんなにお前が可愛かったなんて 3 ぴかろん

「…ブリっ子って僕のこと?」
「お前、そんなにイナが恋しいのか?この野郎!今日一日イナにたっぷり甘えたくせにっ!」
「…ヨンナム。なんでそんなにイジワルするんだよ…」
「ふん!」
「あいう~ヨンナムヒョンニム、テジュンシと喧嘩しないでくださいぃぃ」
「ヨンナムさん、チョンエさんから電話がないからってイライラしないでくださいよ。それにテジュン。メソメソするな。イナにとっては可愛らしいかもしれんが、ミルキーな僕達にとっては気持ち悪いだけだぞ」
「そうです!僕にとっても貴方の泣き顔なんて気持ち悪いだけです!」
「そうだよなぁギョンジン」
「はい。ソクさん」
「それより知恵を出さんとジョンダル君が破裂してしまうぞ。原因を考えよう。ギョンジン、何かないか?」
「はい。僕が思うに」
「…ギョンジンは平気なの?ラブ、イライラしてたよ」
「…」
「テジュン。今はジョンダル君に協力する時だろう。ギョンジンの士気を挫くな」
「ソクだって。スヒョク君、かなり焦れてたぞ、可哀想に…」
「…」
「はぁ…。イナ一人で寂しくないかな」
「あーもう、テジュン!てめぇ、いつからそんなにジメジメした野郎になったんだ、うっとおしい!てめぇの余計な一言でソクさんとギョンジン君、撃沈したじゃねぇか馬鹿野郎!」
「あいう~ヨンナムヒョンニムゥ、テジュンシも、お願いしますよぅ、協力してくださいよぅ」
「ねぇねぇ、とにかくさぁ、カテナチオが開いたらこの仕事は終わりなんだからぁ、今はこの問題に集中してよね。頼んだよ。じゃ、ジョンダル、ボク、明日のパンの仕込みがあるからこれで帰るけど、頑張ってね」
「えええっ?!テスヒョンニム、そんなぁっ。こんな収拾つかない状態でドロンされてはぁぁ」
「ダイジョブダイジョブ。これぐらいの事纏められないでどうすんのよ、ヨンナムさんに会社乗っ取られちゃうよぉ~」
「ひひーん(@_@;)」
「じゃ、皆さん、ジョンダルのことよろしくね」

テス君は非常にもパタパタと帰っていった。僕もイナのところへ行きたい…。イナ、電話ぐらいしてくれてもいいじゃないか…

「電話ぐらいしろってんだよな、アイツ!なんだってああ意地っ張りなんだろう!寂しいくせに、ちいっ」

ヨンナムは電話を弄くりながら文句を言っている。ぼんやりヨンナムを見ていたらまたとばっちりを受けた

「あんだよ!ジロジロ見るな!馬鹿野郎!」
「…ヨンナム、お前から電話すればいいじゃないか…」
「るせーな、夕方僕からかけたんだ。今度はアッチからかけてくることになってるんだ!」
「…。夕方喋ったんなら今日はもういいじゃないか」
「何言ってるんだ!オヤスミの挨拶しなきゃダメだろうがっ!…たく、何やってんだろう…まさか、済州島でいいオトコを見つけたとか…」
「あ…あのぉ皆さん、お願いですから、鍵に集中してくださいよぅ」
「そうですよ、ジョンダルさんが気の毒です。皆、考えを出し合いましょう」
「あ!もしかしてダイヤル部分にガムがくっついてるんじゃねぇか?そいつを剥がしてダイヤル合わせりゃキチンと開くんじゃぁ…」
「却下。馬鹿馬鹿しい!ギョンジンさん、さっき言いかけた事はなんですか?」
「あ、ドンヒ、てめぇ俺に対してすっげぇ失礼だぞ!大体この仕事、元々俺に依頼されたモンなんだかンな!」
「じゃ、お前一人でできるのか?」
「え…」
「できないだろう?」
「…」
「できないくせに威張るんじゃない!ギョンジンさん、さっきの意見をお願いします」
「…ドンヒのばか…」

ホンピョ君はいきなりいじけ始めた。皆に背を向けて肩を落としている。ドンヒ君は、口とは裏腹にホンピョ君の背中を優しく撫でながら、司会の役割を果たしている。時折ホンピョ君の顔を覗き込み、優しい顔をする。なんだかいい感じじゃないか

水を向けられたギョンジンは、口から出まかせとも取れる意見を述べた。僕からみれば、ホンピョ君の『ガム説』とあまり変わらないように思うのだが、みんなは口々に、流石は元スパイだ、そういう事もありうるなどと褒め称えた。きっと皆、早くこの会議を終わらせたいに違いない

「ええっと、ギョンジンシのご意見によりますと、この鍵は古くなっているため、ポイントを合わせるタイミングが難しいと…。普通、『カチリ』と音がすればそこがポイントではあるが、そのポイントより弱冠強め、または弱めに本当のポイントがあるのではないか…と。皆さんこのご意見に賛成…と…」
「賛成っていうか、そうやって探って行くしかないかもねってことだよね?みんな」

ソクが口を挟む。平気な顔をしているが、きっとスヒョク君のことが気になっているはずだ

「では、明日の昼、依頼主の館にてホンピョシに音のするポイントより弱め、強めと探っていただいて挑戦してみることにいたしますm(__)m」
「あーよかったよかった。決まったね。ホンピョ君、頑張ってね」
「あのよぉ」
「ん?なんだい?ホンピョ君」
「ソクさんも来てくれるんだろ?明日」
「え?」
「そうですよ、ソクさんも来てくれないと」
「なんで?僕、何の役にも立たないよ」
「ソクさん、耳がいいだろ?」
「そうですよ。正確なポイントの音を聞き分けられるの、ソクさんしかいないじゃないですか」
「ええっ?!僕、明日は朝からスヒョクに会いに行こうと思ってるのにぃ」
「…。会いに行ったってどうせ『口だけ』なんだろ?ソクさんは。…畜生、なんで電話がかかってこねぇんだ!」
「…。ヨンナムさんって恋すると凶暴になるんですね…ヤな感じ」
「なぁ、ソクさん、来るよな?な?来ないはずないよな?!」
「ホンピョがこんなに謙虚に頼んでるんです。お願いしますよソクさん」
「謙虚?」

どうやらソクは鍵開けのお手伝いに連れて行かれるらしい。気の毒に。僕は明日、イナと一緒にトロトロとした時間を過ごすんだ。また甘えさせてくれるかな…うふ

「テジュンシもお願いいたします」
「え…は?」
「依頼主がちょっと、アレでして。人あしらいのお上手なテジュンシなら依頼主のご機嫌も良くなるかと思いまして」
「そんな…僕、明日はイナとゆっくり…」
「イナヒョンニムはパン屋の開店準備のため、明日一日、お店の時間までcasaにカンヅメだとテスヒョンニムからお聞きしております」
「え?僕そんな事、聞いてないけど…」
「なにせパン屋開店という大事業でありますから。ご了承いただきませんと…」

ううう。確かに『パン』については、イナも一生懸命頑張っていたし…casaの皆さんには何かとお世話になっているし…

「…つまんない…しょうがないけど…」
「ということで、テジュンシもご同行願いますm(__)m」
「あ、でも僕、ほら、仕事が」
「明日、休みだお前」
「え?なんでヨンナムがそんな事知ってるんだ?」
「来週あたり済州島の仕事が始まるから今のうちの休みを取らせるってジャンスさんが言ってた」
「…」
「だからお前明日行け」
「あの、ヨンナムヒョンニムもお願いいたします」
「え?!なんで僕まで?」
「せっかくのMKB揃い踏みですし、依頼主が難しい方なので同じ顔が三つ並べば喜んでいただけるかと…。それにBH顔も三つ揃うわけですし…」
「…ちょっと待って、って言うことは僕も行くの?」
「ギョンジンシ、勿論でございます。依頼主はご婦人ですので、『正統派攻撃』でだめなら『えろみん攻撃』に切り替えよとテスヒョンニムが…」
「『えろ攻撃』ならドンヒがいるじゃない!彼はその方面に長けているから大丈夫だよぉ」
「…ギョンジン、抜け駆けは許さない。僕だってスヒョクが気になってるんだ。君もラブ君が気になるだろうが僕達に付き合え。どうせ女王様にはツンケンされるだけだ」
「そ…そんなこと…」
「決まりましたね。ジョンダルさん、よかったですね。ホンピョ、お前が主役なんだから頑張れよな」
「…ドンヒ、お前は来てくれるのか?」
「当たり前だろう?お前がどんな失礼をしでかすか心配だもの、ついていってやる」
「…そか…」

ホンピョ君の顔に光が射している。ドンヒ君とホンピョ君っていいコンビだなぁと思う反面、どうして僕は休みの日にわけのわからない仕事をしなくてはならないのかと首を捻る
でも、イナは忙しいようだし…。気を紛らせるのもいいかもしれない。ソクだってギョンジンだって(ついでにヨンナムだって)、好きな人に会えないってわけだから…ふ…
僕は深呼吸して心を落ち着かせた。その時、僕の携帯にメールが届いた

「あああっ。イナからだぁ♪」

喜び勇んで携帯を開くと、『すげーぞ』という文字とともに、何枚かの写真が届いていた

*****

チョンエからの電話がない!もう夜中の1時半だ。くそ。なんで『オヤスミ』の一言を言ってくれないんだぁ~。僕は泣きたいのを我慢して、ジメジメしているテジュンをいじめまくっていた
カテナチオについての方針が決まり、僕達は全員、明日、鍵開けの手伝いに行くことになった
居間を片付けて雑魚寝の準備をしていると、テジュンが嬉しそうな声を上げた。イナからメールが届いたらしい。畜生!先を越された!チョンエ~電話をくれよぅ…と心の中で叫んでいたら、テジュンの携帯にギョンジン君とソクさんが群がっていた

3人が声もなく驚き顔で固まっていたので、なんだかわからないが面白いと思い、ソクさんの携帯で写真を撮った…だって僕の携帯にはチョンエから電話がかかってくるかもしれないもーん
驚き顔写真は大変よく撮れていた。何がそんなにびっくりなのかと尋ねると、3人は一斉に僕を見つめた。それからテジュンがそっと自分の携帯を差し出した
その何枚かの写真は確かに衝撃的?なものだった。特に真面目顔の透け天使は秀逸だ。また、若い二人が顔をくっつけてぶりっこしている写真は本当に可愛らしく妖しい。そらぁこの3人にとっちゃたまらんだろう!
ん?待てよ。スヒョク君やラブ君のこんな可愛妖しい写真見て固まっているテジュンは『けしからん』のではないか?イナに対してどう言い訳するつもりなんだ!
だがしかし、あまりにも面白いので、ソクさんの携帯からスヒョク君に3人の驚き顔写真を送ってやった。どうやらスヒョク君はラブ君の家に泊っているらしい。でもなぜイナからこの写真が送られてきたのか?しかもテジュンに…。イナは『悟り』を開いたのか?…『ごさいじの悟り』…ちょっと寂しいかも…
そんな風に感じるのも全て、チョンエが電話をかけてこないからだぁ。ちくしょう!

恋人たちから自分たちに直接写真が送られてこなかったことに落ち込んでいるギョンジン君とソクさんは、お互いの顔を見合わせ、それから肩を叩きあってため息をついていた

****

手の中で暴れだした携帯に反応してスヒョクはまた俺を跳ね除けて飛び起きた。痛いなぁもう…

「…だれから?」
「…ソク…さん…」
「え?」

俺も慌てて起き上がり、スヒョクの顔を見た。スヒョクは携帯の画面を少し俺の方に寄せる。俺はそれを覗き込む。髪が触れ合う

「ソクさんからだけど、ソクさんじゃない…」
「え?」

俺達は画面に書かれた文字を読む
『MKB会員番号三番より代理送信いたします。キミタチってばキュートすぎる! よんなむ』という文面のあとに、顔面蒼白で頭を寄せ合い、携帯を覗き込んでいるテジュン、ソクさん、ギョンジンの3人の写真がくっついていた

「…ヨンナムさんが撮ったのかな。あはっ。このテジュンの顔」
「ギョンジンさんの顔も可笑しいよ」
「ソクさんだって」
「…」
「イナさん、テジュンに転送したんだね、あの写真」
「…うん…」
「くそ。ごさいじ…ほんとに…ムカつくよな」

俺達は、画面の中のおっさん達に安堵と満足を感じた。それから、眠いのに俺達の望みを叶えてくれたイナさんのかっこよさに、ムカつきながら感謝した

「ヤなヤツだよね、なんか悔しくない?ごさいじったらさぁ」
「ほんとに…今日のイナさんは…」
「へちゃむくれだよ!」
「え?」
「やんなっちゃう。また勝ち目なくなるじゃん!」
「ラブ」
「そう思わない?」
「…嬉しいくせに…」
「嬉しくなんかないよ!」
「そう?俺は…うれしい」

目尻に涙を残しながら柔らかく微笑むスヒョクはとても素直だ。鏡の中の俺はこんな風に正直なんだろうか

「ラブも嬉しいだろ?俺とおんなじ気持ちなんだから」
「るせー!お前さっき『ちがう』っちったじゃん!」
「意地っぱりだな」
「ふん!」
「確かに負けちゃうよね」
「…」
「イナさんみたいになれるといいな」
「なんなくていい!」
「ラブ」
「スヒョクはそのまんまでいい!」

俺がきっぱり言うと、スヒョクはそうかな、と呟いた

「スヒョクぐらい素直で可愛い奴、いないよ」
「…そんなこと…」
「あるの!」

自信なさげなスヒョクにラリアートを食らわせながら俺達はベッドに倒れこんだ。ちょっとだけスヒョクに圧し掛かるカタチになった

「痛ぇし重いよラブぅ」
「重くないもん!」
「重いってぇ…」
「じゃ、もっと重くしてやる」

俺はスヒョクの体に乗っかって押さえ込んでやった

「ぐえ…ぐるじい、息ができない」

更に頭突き…じゃない、もう一度額をくっつけてみた。だってさ…可愛いんだもん、スヒョク

「らぶ…ほんとにおもい…」
「ウシクさんとどっちが重い?」
「知るか!ウシクさんに押しつぶされたことないもん!」
「そっかぁ。じゃあ今度こっそりイヌ先生に乗っかって比べてもらおっと…。…。くふ。ゃあ~んけひひっ」
「…。ラブ。だめだよ、そんな事しちゃ。ギョンジンさんが悲しむよ」
「…。悲しまないよ、っつーか、気づかないよアイツ」

だってアイツの頭の中は『可愛くてたまらない弟』の事でいっぱいなんだもの…
ふっと気を抜いた瞬間、スヒョクは物凄い力で俺を押しのけた

「あーん、ひどぉい。いたぁい。でも簡単に押しのけられるってことはぁ、俺、そんなに重くないってことだよね」

ふざけた俺を睨むスヒョク

「ギョンジンさんが気づかなきゃいいの?自分の気持ちに背いて楽しい?」

真剣な眼差し。スヒョクって奴は本当に真っ直ぐだ…

「んと…ごめん…」
「自分にウソつくと苦しいじゃん」
「うん」
「ギョンジンさんだって悲しむし、自分も悲しいじゃん」
「うん」
「そんなのダメだと俺は思う」
「うん」

返事をしながらジワジワとスヒョクに近づく俺。だってさ…可愛いんだもん、スヒョク

「ラブは本当は純情なのになんではすっぱなフリして…」

三度、コツンと額をくっつける

「さっきからなんなんだよ、ラブったら」
「スヒョクのおでこ、気持ちいいもん」
「…。鼻がくっつく…」
「くっつけてんの」
「…」
「ついでに唇もくっつけよう」
「…」

あれ?嫌がらないぞ。いいのかな?

ちゅ

「押しのけないの?」
「…あのさ…」
「ん?」
「どうしたらお前みたいに色っぽくなれる?」

意外な問いに驚いて俺はデコを離す。いつも何かを我慢してるようなスヒョクの顔を見つめる

「だから、言ってるだろ?そのまんまでいいの、スヒョクは」
「ダメだよ、俺なんか。色気ないもん。ソクさんが煮え切らないのは俺のせいなんだ、きっと」
「ちがうってば!」
「ラブみたいに可愛らしく色っぽく迫ればもしかしたら…」
「そうじゃないよ、スヒョク。俺ならほっとかない。絶対…」
「なにを?」
「何をって…お前を!」
「なんで?」
「お前は色っぽくて可愛いんだよ。俺ならほっとかない。っていうかきっと我慢できないと思う」
「俺が色っぽい?」
「うん。可愛いし」

まっすぐだし控え目だし…

「待たせないけどな、俺なら」

潤んだ瞳。こんなの間近で見ててなんでダメなんだろう、ソクさんは…。アレとコレとは別問題じゃん!俺でさえちょっと…いや、かなり…そそられるのに。
その件に関して言えば、ギョンジンだってソクさんと同じではあるけれど…

「待たせないって…なにが?」

ん?もしかしてわかってない?

「だからね、お前があーじゃないかこーじゃないかって悩む前にね」

コツン
もう一度額をくっつける。いいなぁ、これ。癖になりそう♪こうすると必然的に鼻先もくっつくし♪

「悩む前になにさ」

スヒョクは俺の唇を掠めてとぼけたことを言う

「んー。俺だったらぁ、食べちゃう♪」

お返しに奴の唇を掠めてみる

「食べる?なにを?」

…。意識ゼロ。額を離してまあるい目を見る。マジだ。スヒョクって天然?

「ねぇ、ラブ。悩みごとに効く食べ物があるの?」

ねぇよ!そんなもん!

「ねぇラブ、なんで急に膨れっ面になってんの?」
「…」
「ねぇラブ、欲望を抑える食べ物とか知らない?」
「…」
「ねぇ。何、怒ってるんだよ、ラブ」
「怒ってないよ、別に…」
「じゃ、教えてよ、欲望を抑える食べ物」

…んなの…

「ない!」
「…そっか…ないのか…」

スヒョクはあっさり了解するとションボリして唇を尖らせた。は、やっぱり…可愛い。もっとからかいたくなるなぁ

「欲望ってぇ、爆発させちゃえば暫く抑えられるもんじゃん?」
「爆発させる?…そんな…どうやってさ…ソクさんはあんな状態だし…」
「だから、俺がテジュンに走ったみたいにぃ、お前もソクさん以外と…。例えばぁ…俺とか」
「な!」

あ、怒った。くふふ

「…俺と軽く…どう?」
「…軽く?」
「うん、軽く特訓。」
「特訓?」
「そ」

俺は奴の耳に囁きかける。スヒョクの瞳が潤んでいるのは、怒りのためなのかそれとも…
くふ。楽しい

「…色っぽくなれるの?」
「ん、まぁね。俺に任せて…」
「え…」

スヒョクの額にまた額をくっつける。五回目。ちょっと堪らないなぁ、これ♪ 必然的に鼻先もくっつき、唇も近づく
俺はできる限り艶っぽい声を出す

「食べてもいい?」
「え?あ…」

返事を待つつもりなんて毛頭ない。いただきましょう、その唇

「…おいしい」
「上唇、痛い」

そういう問題か?
仕方ねぇな、天然だもん…

「んじゃ下唇にする。あむ」

ふざけながらキスを贈る。やがて俺達はキスに夢中になる
スヒョクは携帯を握り締めたまま俺のキスに応えている。そんなに『色っぽく』なりたいのかな、今のままで十分なのに
それにしてもソクさん、キスだけは鍛えてるなぁ。俺の方が痺れそう…
俺はギョンジン仕込の、スヒョクはソクさん仕込のキスで勝負を続ける

「…ん…待って…。これでホントに色っぽくなれるの?」
「なぁに言ってんの。これは特訓のとっかかりじゃん…。それぐらいわかってるでしょ?一度は経験してるんだからさぁ…」
「え…あ…ん…」

女の子相手にしてるみたい。なんだか新鮮。俺はスヒョクのパジャマの裾からそっと手を入れ、奴の素肌に触れてみた
スヒョクは驚いて目を見開いたけど、抵抗せずに全てを俺に預けている。滑らかな肌を掌で感じながら、俺は奴のパジャマのズボンを少しずらした

*****

あらゆる罵声を皆に浴びせながら、僕達3人の驚愕の表情を、こともあろうに僕の携帯で写真に収めたキム・ヨンナムシは、ギョンジンと僕が恋人たちから直接、この可愛い写真が送られてこなかったことに嘆き悲しんでいる最中にかかってきた電話に、あぁん、ハニー、ううん、全然待たなかったよ、あ、違う、待ってたけどイライラなんてしなかったさぁ、だってキミの瞳を思い出していたらあっという間に時間が過ぎてぇ、ああん会いたいなぁ、会って抱きた…抱きしめたいなぁくふぅん…などという大変不愉快な猫なで声をあげていた
ギョンジンと僕は互いに顔を見合わせて、キム・ヨンナムシのデレデレ顔を写真に撮った。ああ、恋とはこんなにも人を変えるものなのか…。自身のふるまいを気をつけたいと思う
そうだ、テジュンさん、あの写真僕の携帯に転送してよ、とギョンジンが叫んだので、僕も便乗して可愛い二人のパジャマ写真を自分の携帯に収めた
ああ…こんな緊張してこんなゴージャスでセクシーな衣装を着て。ああ、なんてイチゴ柄が似合うんだ。可愛い。あう。むむむむむ。危険な香りだ。なぜこの可愛い子ちゃんたちはこんなに頬を密着させているんだ!ああ。あああ。僕達はそれぞれの恋人の可愛らしい写真を眺めては身悶えして苦しんだ
大げさかもしれないが、僕自身は本当に身悶えして苦しんでいるのだ…スヒョク…待たせてすまない…祭の頃はこんなじゃなかったのに…ああ…
そうだ!待たせてごめんねと言おう!一歩ずつ頑張るからと言おう!そして本当にそれを実践していけば、僕達はきっと幸せになれるはずだ!
キム・ヨンナムシの呆けた顔を見ながら、僕はスヒョクの電話番号を拾い出した

*****

「…も…や…だめ…ラブ…」
「だめ…今動いちゃ…あ…」
「ああ…ああ…」
「我慢して…もうすぐだから…」

俺は眉根を寄せて喘ぎもがくスヒョクの肩を押さえつけ、動きを止めようとした
スヒョクは荒い息の合間に、どうにかして…と言葉を吐いた。もう少しだから…動かないで、俺は自分の腕に力を込めた
握り締められていた携帯が突然懐かしいジャズを奏でる
あ…ああ…ソクさんだ…
呟くスヒョク

「…出ろよ…」
「…だめ…聞こえちゃう…」
「聞かせてやれよ」
「いや…」

片手で携帯を奪い取り、通話ボタンを押してスヒョクの耳に押し当てた

「…やめて、ラブ…こんな…」
『もしもし?スヒョク?どうしたの?』
「あ…ソクさ…なんでもな…あ…いやっいやだラブ…ラ」
『もしもし?もしもし?スヒョク?!どうしたんだ?!』
「スヒョク、もう少しだから、ああっ動いちゃだめ」
「や、ああん、ラブ、も、俺…」
「あああ、スヒョク、だめ!」
「あ…あああ…ソクさ…たすけ…ああっあああっあ」
ブツ☆

*****

(@_@;)…。なんだったのだろう、今の『喘ぎ』にも似たスヒョクの声は…
確か、助けてと言っていた。いやだ、とも言っていた。ラブ、も、俺、とも言っていた
そしてラブ君は、もう少しだからとか動いちゃあああだめとか…


けほん。察するにこれは、はっきり言ってこれは。大変な事態に陥っているのではないのかぁぁっ!
僕は慌てふためいてもう一度スヒョクをコールした

『…う…あふ…』
「もしもししもしスヒョク?すすすスヒョク?ラブ君?何してるんだ?おい、返事してっお願いっ返事へへへんじぃぃ」
『…ぁあんぁああん…ソクさ…俺…あんっ』
「ずびょぐうぅぅ(@_@;)」
「…。ソクさん、貸して」
「あっ何するんだギョンジン!」

取り乱している僕から電話を取り上げたギョンジンは、唇に人差し指を当てて静かにするよう示した。僕の心臓はのた打ち回っているというのに、この男は何を落ち着いているのだっ!

「…。大丈夫ですよソクさん」
「なにがっ!なにが大丈夫なんだよ!キミとボクがボクとキミの可愛い子ちゃんをほったらかしにしておいたから二人は道ならぬ道に彷徨い歩き出してしまっているんぢゃないのかっ(@_@;)」
「ほったらかしてないでしょ?」
「ほほほ。ほったらかしちゃいないがしかし満足させちゃいないだろうがキミもボクもボクとキミの可愛い子ちゃんたちおっ(@_@;)」
「…。聞きますか?クライマックス」
「なにっ(@_@;)」

差し出された電話に耳を当てると、スヒョクの『たっしたらしい』声が響いてきた。僕の頭は真っ白になった

「聞きましたか?」
「あああああって…」
「それだけですか?」
「あああああっつぅんっ…って…。らぶくんが、おわったよっちって、あと、はあはあはあってふたりのいきづかいが…あうあう…」
「泣かないでください。これはラブの悪い冗談ですから」
「…冗談?」
「そのまま聞いててください。悪いヤツが出てきますから…」
「え?」

ギョンジンの言うとおりにしていると、なるほど受話器からラブ君の声が聞こえてきた。はぁはぁと荒い息を整えながら、ソクさぁん、スヒョク、めちゃくちゃ色っぽくて可愛かったぜ、キスも上手いし…とってもよかった、上手だった、なんてほざいている。僕は言葉を失くし、どうしていいかわからなくなった。ギョンジンが電話耳にあて、そのままラブ君の話を聞いていた

*****

「なぁんちゃって。あはは。びっくりした?あのねぇ、今スヒョクにぃ、ちょっとイタズラしてたんだぁ」
『灸か?』
「…え?」

熱かった。すんごく熱くて我慢できないぐらいだった。ラブに押さえられてなかったら火傷するところだった
ラブが言うには、そこは『せいよくをおさえるツボ』らしい。本当かどうかはわからない。俺が熱さに耐えていた間中、その表情を忘れるな、だの、その声だよ、だの『おいろけアドバイス』なんだからしっかり体に叩き込めなんて言われて、どうしていいのかわからなかった
最後は気を失うかと思うぐらい熱くてたまらなかった。叫びまくってたら熱さが消えた。終わったよって言われた時はほっとした
途中かかってきたソクさんからの電話に、俺は苦しげな声で助けを求めた。ソクさんは誤解しなかったろうか?いや、ラブの考えでは、誤解させて刺激してやればきっとうまくいく『かも』ということだった
ちゃんと最後までいってから(語弊があるかもしれないけど、そうだもん!)ラブは俺から電話を取り、笑いながら説明しだした
そのラブの顔が突然曇り、唇を噛みしめてポトリと涙の粒を落とした

「…ラブ?どうしたの?」

ソクさんがラブに怒鳴りつけたりするはずはない。たとえ怒ったとしても、俺が無事だったならそれで安心するはずだし、それに怒るなら俺に怒るだろう
俺は身を起こして、ベッドにペタンと座っているラブの前に行った

ラブは噛みしめていた唇を開いて喉の奥から震える声を出した

「…ごめ…」
『ソクさんに謝れ!お前、ちっともわかってない!僕等がどれほどお前達を大切に思ってるか、どれほど愛してやりたいか…。それがどうしてもできないでいる僕等の気持ち、お前、わかってるのか?!』

受話器から漏れてくるギョンジンさんの怒声。唇を震わせて泣くのを堪えてたけど、ラブの瞳に溢れた涙は幾粒か落ちていった
猛烈に腹が立った。俺はラブから電話をもぎ取り、彼の代わりに怒声を浴びた

僕達だって辛いんだ、お前達を待たせているって一番身に沁みてるのは僕達なんだ、僕ならまだいい、ソクさんはお前の悪い冗談に慣れてないんだぞ、度が過ぎる、僕達をからかってそんなに面白いか!謝れ!…

ラブは涙を拭き、鼻をスンと啜った。そして俺に手を差し出しいびつな笑顔を作った

「ごめん、大丈夫。代わるよ、ちゃんとソクさんに謝る」

気持ちを無理矢理切り替えたラブを制し、息を吸って声を出した

「電話してきたのはそっちじゃないか!」
『…。スヒョク君?』
「ソクさんをからかうつもりなんかなかった!クサクサした気分を晴らしたかっただけだ!勝手に電話してきて俺の声で誤解したのはソクさんの方だ!貴方達こそ俺達がどんな思いでいるかわかってるの?」
『それは…だけど…』
「貴方、ラブにどれだけ心配かけてるか知ってる?!ラブは…ラブは…」

俺達の気持ちをギョンジンさんにぶつけた。弁の立つジジイに屁理屈で押さえつけられるなんて真っ平だ。パジャマの裾を弄くりながら困った顔をしたラブを見たら余計頭に血が上った

ラブはこんなに純な子なのに…

「貴方はなんにもわかってない!ラブのことなんにもわかってない!」
『スヒョクく…』
「貴方にラブを愛する資格なんてない!もう二度とラブに会うな!」

叫んで電話を切った

「…スヒョク…」

ラブの顔を見たら涙がどっと溢れた
―だって俺、悔しくて。どうしてラブがソクさんに謝らなきゃなんないのさ!どうしてラブがギョンジンさんに責められなきゃなんないのさ!
ラブはこんなにいい子なのに…こんなに…
泣き叫んだ俺をラブは優しく抱きしめた

「…スヒョク、ありがと…」

なんでこんなに腹が立つんだろう。おっさん達は俺達をなんだと思ってるんだろう
俺達はいつもいつもおっさんたちの悩みに付き合ってるんだぜ!たまに口をついて出る自分たちのワガママに、自分で嫌気がさして苦しんでるのに、そんな事あの人達、知りもしないんだから…
泣きながらラブと自分に言い訳してる俺。情けない。人に強くあたると倍になって自分に返ってくる。言った端から言わなきゃよかったって後悔してしまう。断崖に爪を立てて、自分は間違ってないって叫びながら落っこちていくんだ…
俺の言う事もギョンジンさんの言う事も、半分は正解で半分は誤解だ。落ち着いて考えればすんなり解ることなのに
ラブは何も言わずにずっと俺の体を撫でていた。時折触れるラブの髪を感じながら、衝動的に吐いた自分のセリフを恥ずかしく思った

*****

俺の心の中の文句をスヒョクがアイツにぶつけてくれた。こんなに激しいヤツだったのかと驚いた
『もう二度とラブに会うな』って叫ばれた時も、俺はそれを撤回させることを忘れていた
俺の事なのに、こんなに真剣に怒ってくれる…それが嬉しくて…
電話を切って俺を見たスヒョクは顔をクシャクシャにして泣き出した。俺はスヒョクをそっと抱きしめた
らしくない感情的な言葉の理由を俺の腕の中で唱えるうちに、スヒョクはまた自分を責め始めた

「ありがとね、スヒョク。俺のかわりにアイツに文句言ってくれて…。嬉しかった。すっごく」
「…ラブ、ごめんね。ごめんね俺…俺…」
「謝るなよ。あのまま電話続けてたら、俺、おんなじようにキレてたから」

実のところ、俺はスヒョクのようにアイツに反撃しようとは思ってなかった。アイツが苦しいのもアイツの辛さも解ってる。俺の気持ちが理解されないのはムカつくけど、俺は今日、スヒョクのおかげでとても癒された。だから…アイツがイライラと文句言ったことをしっかり受け止めよう、俺はアイツを甘えさせてやりたいんだから…そう思って涙を堪えたんだ

貴方はなんにもわかってない!ラブのことなんにもわかってない!貴方にラブを愛する資格なんてない!もう二度とラブに会うな!

…アイツのことだからきっとショック受けてるだろう。若いスヒョクにこんな風に頭ごなしに怒鳴りつけられて…

「俺…俺…ソクさんに会わないから!」

腕の中のスヒョクが鼻をぐすぐすしながら言った

「何言い出すのさスヒョク。何でお前がそんな事」
「だって俺ギョンジンさんに、ラブに会うなって言っちゃったんだもんっ。だから俺もソクさんに会わない!」
「あは。店で会うじゃん、お前も俺もジジイ達にさぁ」
「あっ…うっ…。…。ああ会っても目を合わせないし口もきかない!」
「…」
「そうするから!ねっ?」

涙目のまま真剣に不可能なことを提案するスヒョクは、どこをどう切り取ったって可愛いと思う。しかも天然味。俺は込み上げる可笑しさを堪えて答える

「うーん。けど、俺、困るなぁ」
「どうして?!」
「お客様からリクエスト受けたらアイツと喋ったり絡んだりしなきゃ…、襟巻きとかさぁ」
「…」
「二度と会うなってのは困るなぁスヒョク」
「…わかった…」

コクッと頷くとスヒョクは携帯を開き電話をかけた

「ちょ…ちょっと、どこに電話してんの?」
「ソクさん」

俺はスヒョクの電話を奪ってブチっと切った

「なにすんだよ!」
「ちょっと落ち着こう、スヒョク」

スヒョクは目をあちこちに泳がせた後、俺の肩に額を乗せた
奪い取った携帯が鳴ったのでスヒョクにそれを差し出すと、「出て」と言って俺に抱きついた
なるほど、このジャズの名曲はソクさんのテーマなんだな?

「ヨボセヨ。ラブです」
『ラブ君?ソクです。今、電話くれた?』
「あ…ええ…あの…さっきはごめんなさい。ちょっと悪ふざけが過ぎました」

ソクさんに謝ると、腕の中のスヒョクが、ラブは謝んなくていい!とプリプリ怒った

『いやぁさっきはギョンジンが出しゃばるもんだからキミの話が聞けなくてさ。謝んないでよ。冗談だってわかったから』
「まんざら冗談でもなかったんですけどね」
『え?』
「スヒョク、可愛いです。色っぽいし」
「ラブ。やめてよ」
「だって本とのことだろ?ねぇソクさん」
『あ…あの…ラブ君、僕を煽ってる?』
「あは、ちょっとね。でもやめときます。ギョンジンにまた怒られちゃう」
『…。あの男さっき電話を切ってから取り乱してねぇ』
「え?」
『ラブをまた傷つけたってぎゃーすか騒いで家から飛び出そうとした。テジュンが遮ったけどね、ラブは大丈夫だ、お前のことわかってるからって』

気にしてくれたんだ。こんな些細な事だけで、ほんのり心が温かくなる
腕の中のスヒョクが俺を見上げる。スヒョクに微笑みかける
俺は素直になっていく

「…それでも俺、ソクさんに悪いことしました。ごめんなさい…」
『いいんだ。刺激になったから…』
「刺激?…ぅふ。ほんとに?」
『そりゃあ、なるだろう、あんな…』
「じゃ、俺達の目論見は成功ってわけだ」
『目論見だって?アノ場面に僕が電話したのは偶然だったんだぞ』
「んふふ。俺達、勘がいいからさ、わかってたんだ、ソクさんが電話かけてくること…なんてね」
『ふふ。じゃ、ギョンジンが怒るって事もお見通しだった?』
「…それは…」
『ラブ君、スヒョクはこんな僕にいつも付き合ってくれてる。あの子が我慢してるの、わかってるよ。僕はあの子が望むように彼を愛したい。なのにいざとなるとブレーキがかかるんだ…。きっとギョンジン君もそうなんだよ』
「…アイツはそこまで自覚してないもん」
『自覚?』
「スヒョクからソクさんのこといろいろ聞きました。貴方はブレーキの理由、理解してるでしょ?自身の問題だっての」
『…ああ…うん…』
「でもアイツは、それがよく解ってないんだ。ちゃんと自覚してない」
『なるほどね…』
「俺もスヒョクみたいにできればいいんだけどさ…中々…」
『スヒョクって実は毎日拗ねてるんだよ。今日は特別大きく拗ねたけど』
「…。拗ねたスヒョクって可愛いよね?」
『うん。そのせいもあったりして。ブレーキの原因』
「拗ねるのが堪んないって?ウフフ。わかるなぁそれ。でもソクさん、あんまり拗ねさせてると、俺がいただいちゃうよ」

「何をもらうの?」

腕の中で天然が呟く。受話器の向こうから笑い声が聞こえる

『スヒョクは一筋縄ではいかないよ』
「くふふ。すっとぼけてるしね」

「ね、ラブ、何の話?」
「ん?お前がこんなに可愛かったなんてって話」
「可愛いのはラブの方だよ」
「だからぁ、俺がぁ、可愛いのはぁ、わかってる」

『ラブ君、スヒョクと話させてくれる?』
「はい。ちょっと待ってね。…スヒョク、ソクさんが代わってくれって」
「…」
「ほら」
「だって俺、ソクさんと口きかないってお前に言ったもん」
「はいはい。もういいから。ほら」

スヒョクの耳に電話を押し付けた。奴は唇を尖らせながらうん、うんと頷いていた
強張っていた顔が柔らかくなり、俺の腕に頭を擦り寄せている。あああーっ、ほんっとコイツってば、可愛いな
スヒョクは何度かソクさんに返事をして電話を切った。それから俺をじっと見つめた

「ん?」

スヒョクは何も言わずに俺の喉元に頭を擦り付けた。なんなんだ、この甘えっぷりは!

「くすぐったい、スヒョクってば」

奴は俺によっかかり、俺達はコロンとベッドに転がった

「なななによスヒョクどしたんだよっ」

顔を上げたスヒョクは嬉しそうに笑っていた

「…とにかく…よかった…んだよな?スヒョク」

ヤツはコクンと頷く。そしていきなり俺の唇にキスをした

「ぶ。どどどすすすななな」
「…。やっぱりラブって純情だ…」
「は?」

純情天然男が俺様に何を言うかっ!

「ラブ、ありがと。俺、スッキリした」
「ソクさん、何か言ってた?」
「ん。頑張るって」
「ふほ」
「変な意味じゃないよ。無理せず、一歩一歩進みたいって。俺に、どんな気持ちも話すようにするって」
「…そう。よかったね」

嬉しそうな様子に俺もつられて嬉しくなった。不思議だ。羨ましいと感じない。やっぱりスヒョクは俺の『鏡』なんだろうか…

「ラブもきっとうまくいくよ」
「ん。そうだね」

俺が、も少し成長すればきっと…

「ふぁ…。安心したら眠くなってきた。ラブ、寝よう」
「え?あ、はい」
「おやすみ」

ちゅ

スヒョクは軽くキスをすると俺の体にくっついて目を閉じた。数秒後にスースーと寝息が聞こえてきた。俺も寝付くの早いけど、スヒョクも早いんだ

純情天然派スヒョクの予測できない可愛い行動は楽しい。俺は、腕の中で丸くなっている体をそっと包み込んで目を閉じた
明日、ギョンジンと話をしよう。目を逸らしてちゃダメだ。そう思えるようになったのは、多分コイツのおかげなんだろうな…
微かに上下するスヒョクの髪にくちづけすると、気持ちが安らいで…ああ…ねむくれたいいいい…

*****

爺さんは流石に爺さんだけあって、感情のコントロールがうまい。えろ青年はやはりえろ青年にすぎないから、若者を叱ったつもりが逆に叱られて取り乱している。頭の中が花畑の馬鹿野郎は、花畑のお姫様が現れるとドロドロに溶ける。まだ発展途上なのかこれが最終形なのかわからない若者二人は、部屋の端っこの布団で勝手に眠っている。背中に置かれた片方の青年の掌がもう片方の青年を、『友』もしくは『愛』という情で包んでいる。仕事上の問題に解決の糸口を見つけた海坊主は、体に似合わず謙虚で、皆が寝床を決めてから横になろうと決心しているらしい。正座して枕を抱え込み、襲い来る眠気に勝負を挑んでいる。(完全に敗北しているが)
僕はと言えば…
えろ青年を宥めた後、布団に入り、今日一日(いや、半日か)僕を甘やかしていた男を思い浮かべる。まだ起きているのだろうか?
子どもかと思えば突然大人になる。そうなった時には素直に甘えればいいのだと、今日初めてわかった
深刻な顔をして爺さんから静かな説教を受けていたえろ青年も、説教していた爺さんも、『けひ』だの『くふ』だのうるさい思い出し笑いをしていた花畑の住人も、やがてするりと寝床に入った。一人正座のまま舟を漕いでいた海坊主は、ガクリと体を崩した瞬間、『ひょんにむっ』と叫んで目を覚ました。それから周囲を見回して、自分に合った隙間が無いと解し、えろ青年の掛け布団をずるずると剥がして正座していた場所を中心に、なんとか体を伸ばした
布団を剥ぎ取られたえろ青年を見ると、縮こまって小さく唸っている。僕は先程の場面を思い出した

『ラブをまた傷つけてしまった。ラブが泣いてる。僕のせいだ』

本調子ではないえろ青年は、恋人に浴びせた言葉を後悔して家から飛び出そうとしていた。引き止めるとわけの解らないことを口走っていた
このまま外に出すのは近隣ならびにラブにも迷惑だと思い、あの子は大丈夫だということを告げた
えろ青年の瞳が僕を批難し、懺悔し、落胆した。電話を終えた爺さんが何事か囁き、えろ青年は少しだけ落ち着きを取り戻した

つまり、僕の意見は受け入れ難いということだ。その気持ちはわかる。彼にとっての僕は、僕にとってのヨンナムのようなものだから
ヨンナムはお姫様に、僕は王子様に心のほとんどを持って行かれ、他に目をやる余裕はない。今現在はそうであっても、近い過去、そうでなかった時があった
大丈夫だ。僕達だってようやくこうなれたんだ
僕は、自分の体を抱きしめているえろ青年の背中に、いつになく温かな気持ちで囁いた

*****

明日はカテナチオだ。ドンヒがいてくれる。それだけじゃない。ソクさんもいてくれる。それに、役に立つのかどうだか知らねぇけど、ギョンジンさんとテジュンさんもいてくれる。だから俺はうまく鍵を開けられるだろう。きっと開けられるだろう。そしたら明日は、俺がドンヒの背中をトントンして眠るんだ
幾らか知らねぇけどお金が入る。半分は貯金して、半分の半分ぐらい生活費に回す。残った『半分の半分』で、ネクタイを買うぞ。太くない、かっくいいのを買うんだ。リボンをかけた箱に入れて、俺はそれを…ふぁぁ…眠い…
明日はカテナチオだ。ドンヒがいてくれる。それだけじゃない…ソクさんも…ふぁ…

*****

泣いている。ラブが、ギョンビンが、泣いている…
泣いている。僕が泣かせた
助けたい。僕が泣かせたから
助けられない。僕が泣かせてしまったから
落ち着いたと思う端から混乱する僕の頭
話がしたい。何を話せばいいのか
話がしたい。傷つけぬように
どうしたって、うまくいかない
僕が傷つけた人々がみんな、泣きながら僕を掻き混ぜている
抜け出したい、動かなければ抜け出せない
動けない、動いたらまた傷つけてしまう

大丈夫だ。僕達だってようやくこうなれたんだ

大嫌いな人の声が僕のからだに降り注ぐ
信じたわけでもないのに、息苦しさが和らいだ
そうかな…そうなのかな…

大丈夫だ。あの子は君を愛してる

そうかな…だといいな…
会いたい
ラブに会いたい
とてもとても会いたい…

*****

ねてましゅ。おきましぇん。しゃしんはむりやりとりました。とったのは『エグチ』と『ゴサタン』でしゅ
へんなおめめになってるのは、ほとんどねてたからでしゅ
すけてんしのしゃしんや、ぶりっこしゃしんがおくられてきたときもほとんどねてました
しゃしんをちらっとみたあと、ごしゃいじはぼくに、これ、おくっといてとだけいいのこし、かんぜんなねむりにおちたのれしゅ。
らからぼくは、たいへんくろうしてメールをうちました。だれにおくればいいのか、どうやっておくればいいのか
たしかにぼくは、けいたいでんわをもったこぎちゅねぬいぐるみでしゅ。でんわでおはなしはできましゅ。でもメールとなると…
みかねた『エグチ』と『ゴサタン』が、てつだってくれました
「すげーぞ」は、ひかくてきかんたんでした。しゃしんのてんぷも『エグチ』がちゃんとしてくれました。さすがは『正統派担当』でしゅ
でも「ねむたい」は、うまくうてましぇんでした。まぁいいでしゅ。しゃしんをおくるのがもくてきでしたから…
『じょおうさま』と『おとめ』のあいどるしゃしんにまけないぐらいかわいいしゃしんをとろうとおもったのに…
ちゅかれたごしゃいじは、『正統派のかわいこぶりりん』なはなしだけして、かってにねました。ぶい!
まぁいいでしゅ。ひさびさにごしゃいじとあえたし…。まぁいいでしゅ。ぼくももうねましゅねふひん…





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