プロヴァンス・ダジュールへようこそ

プロヴァンス・ダジュールへようこそ

フランス的美意識

フランスの真実
La france en vrai




フランス的美意識

初めてフランスの地に足を踏み入れた時の印象は、「きれいな町並み!」でした。

申し合わせたように統一された家屋の色、道路脇には手入れされた花壇が並び、
…犬の糞には幻滅でしたが…、絵画の中に入り込んでしまったような感覚を持ったことを覚えています。
その時はただ単に、普段見慣れない場所だから感動も大きかったのだろうと思っていましたが、
その「きれいな町並み」には理由があったのです。

フランスはそれぞれ地方により家屋の壁色、瓦色が定められています。
ちなみに南仏ではベージュ、黄色、ピンクなどの壁色に
やはりベージュ、オレンジなどの瓦色と暖色でまとめられ、
北上してブルターニュのあたりでは白い壁にグレーの瓦となるようです。

これには驚き!
例えば「南仏にブルターニュ風の家を建てたい!」と思っても、条例で禁止されるんですね。
なぜそんな条例があるのか?
ズバリ、「美観を損ねるから」。

町の作り方にしても町や村の中央に密集する家屋が、中心地から離れるに従いだんだん少なくなると
田園風景が広がり、ぽつぽつと再び家屋が現れたら隣町の中心地に到着、
という風に非常に規則正しく存在しますが、これはナポレオンが統一した賜物だとか。
パリ近郊にもしっかりこのまちづくりの基本は徹底されています。

また、他の建物との調和を壊す近代的高層ビルなんて簡単に建てられるものではないから
(美しくないからという理由で)、新築の家屋でもなんだか歴史を感じさせるデザイン。
前は無かった広場の噴水も、歩道のタイルも、新しいはずなのに周りの景色にぴったり調和している、
それは周りの時代に合わせたモノを選んでいるからなのです!

ここまで徹底する筋金入りフランス人の美意識にかかったら現代日本の風景はなんとも破壊的!
長屋風の日本家屋の隣は小奇麗なヨーロッパ風近代家屋、ちょっと歩けばニューヨークのように高層ビルが立ち並び、
ここはパラレルワールドか??
よく言えば新旧隣り合わせの芸術、悪く言えば一貫性が無い。

私の勝手な見解を言わせてもらえれば、
第二次世界大戦で焼け野原となり、アメリカの使い捨て文化に多く影響を受け、
どんどん新しいモノを作り続けてきた日本。
さらに地震も手伝って、かたちあるものは常に変化を遂げるもの、
「新しければ良い」ような風潮なのに対し、
フランスでは自分たちで起こした革命で破壊された多くのモノに対する罪悪感と後悔からか、
保存しよう、再現しようという気持ちの表れが反映されているのではないかと。

しかし極度な保守的思想に固執するのもどうかしら?
新しいものにはそれなりの便利・快適さがあるわけで、進歩してこそ人間。


さらに冒頭で話した「手入れされた花壇」にも理由が。
これは市で季節ごとに植物を購入、市が人を雇い、常に手入れされているから。
一昔前、スプリンクラーが導入される前はまちの歌壇の水撒きは
夏の学生アルバイトの定番だったとか。
つまり、町の美観は税金でまかなわれているということで、
日本のようにボランティア町内会により足腰の弱くなった老人や共働きの奥さんが
休日疲れた体にむち打ち、世間体のために公園清掃に参加したりということが無いんですね、
これは画期的!


結論。
80年代、「このままではフランスは世界に乗り遅れる」と
当時近代技術を駆使してポンピドゥーセンターがパリに建てられたのは有名な話、
最近ではワイン倉庫跡を改造したショッピングスポットが12区ベルシーに誕生と
脱皮作戦を図っているようです。

フランスはさらに近代化を習い、日本はフランス的美意識を見習ったら、
住むに快適、見るに美しいまちが出来上がるのではないかと。

良いとこ取りのこの発想、まさに、日本人的なんですけどね。



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: