1866年にイギリスの医師、 J.ラングドン・ダウン
という医師が
最初にこの症候群について研究論文をまとめました。
その人の名前を取って 「ダウン症」
と呼ばれるようになりました。
ダウン症は、染色体が通常より1本多いことにより、知的発達の遅れや、
心臓疾患などの合併症を伴うこともある先天性の症候群です。
21番目の染色体が1本多いタイプがほとんどなので、 「21トリソミー」
と
呼ばれることもあります。
まれに、他の染色体が1本多いタイプや1本少ないタイプもあります。
【2】ダウン症の原因
1959年にフランスの レジェーヌ
によって、ダウン症児は何らかの原因で
染色体が一つ多いことが分かりました。
およそ 1000人に1人の割合
で生まれています。
ほとんどが偶発的に起こる染色体のエラーによるものです。
染色体のエラーが起きる確率は、母親の年齢が上がると高くなると
言われています。
しかし、ダウン症児の85%は35歳以下の母親から生まれており、また、
染色体のエラーが父親に由来する場合もあると言われていて、はっきりとした
原因は分かっていません。
【3】ダウン症の種類
標準型21トリソミー:約95%
21番染色体が1本多いものです。
モザイク型:約1%
21トリソミーの細胞と正常な細胞が混じり合ったものです。
ダウン症特有の身体的特徴は軽微になります。
転座型:約4%
21番染色体が他の染色体にくっついてしまうことにより生じます。
(一部の片親には転座染色体保因者がみられます)。
身体的特徴は、21トリソミーと同じです。
【4】身体的特徴
目がつり上がっていたり、鼻が低かったりして特徴的な顔立ちを
しているために「親には似ていない」と偏見を持たれがちですが、
多くのダウン症児と接していると、親に似ていることが分かります。
その他、筋緊張の低下、低身長などの特徴を持ち合わせています。
【5】性格
人なつっこくて、おだやかで、明るい性格といわれる反面、
がんこでわがままだと言われます。
環境の影響にも左右されるので、子どもの良い面を伸ばせる
ように働きかけることが大切です。
【6】体質
ダウン症児は、「障害」というよりも 「体質の問題」
ととらえることができます。
アレルギー体質、アトピー性皮膚炎などと同じように、ダウン症という
体質を持っているといえます。
合併症を伴っていても、医療・生活・教育面での配慮により、普通に
生活することができます。
【7】知的発達の遅れ
ダウン症児は知的な発達がゆっくりです。
しかし、スモール・ステップで指導するなど教育面に配慮することで、
発達が促進
されることも知られています。
視覚優位なので 模倣が得意
です。
健常児と交流をすることにより、できることが増えてきます。
しかし、周りとの調整も重要です。
健常児と同じようにはできないことが多いので、保育者が間に
入って関係を調整したり、課題を段階的に設定したりすることが
ポイントです。
「できる体験」
を積み重ねることが
、やる気を引き出し、
知的発達を促進する
ことにつながるのです。
【8】合併症
合併症が全くない子どももいますが、 約50%は心臓疾患があります。
食道閉鎖、鎖肛、十二指腸閉鎖などを伴うこともあり、生後すぐに
手術することもあります。
眼科系
では、斜視、白内障、屈折異常(近視、遠視、乱視)などがあります。
就学までには検眼をして、めがねなどで視力を確保することが必要です。
耳鼻科系
では、外耳道閉鎖、中耳炎、鼻炎などがあります。
耳管が細いために滲出性中耳炎を起しやすく、必要に応じて
鼓膜切開やチューブを入れることもあります。
その他、 内分泌系
では甲状腺機能異常を伴うことがあり、投薬治療を行います。
【9】発達
ダウン症の発達はゆっくりです。
健常児の 約2倍
の時間がかかると言われていますが、
発達段階は同じです。
また、発達の早さは、子どもごとに大きく異なります。
筋緊張の違いや合併症などにも影響されます。
次ページにある図1・2※は、健常児との比較をしたものです。
そこにも書かれているように、ことばが出るようになるのは、
健常児の場合は1歳半頃ですが、ダウン症児の場合は 2~3歳
であり、子どもによって幅が大きいのです。
※図はハンドブックをご参照下さい。
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