お兄さんそこで何してるの?


上海―北京旅行記

2004年12月23日



さてタクシーをつかまえ市の中心部にある今夜の宿となるユースホステルに向かう。

タクシーは走り出したが、寒い。

車内に暖房は付いてないようだ。予想気温はマイナス10度といったところか。はっちはすでにファー付のダウンジャケットのフードを被りエスキモー度マックス状態になっている。

息で曇った窓をこすって外を見ると目に入るのはずっしりと重く圧し掛かってくる濃緑の冬の夜空と延々と続く寂しげに並んだ木々のみである。

beijin sky


「寒い、、、、。もう無理。上海に帰りたい、、、。」

と隣からつぶやく声が聞こえる。北京に降り立って若干20分、もう二人の心はこの夜空と同じ濃緑色であることは間違いない。

今夜の宿が近づいてくる。

が、タクシーの運ちゃんはよく場所が分からないようだ。

何度か曲がったりしてようやくまだ雪の残る道路の脇に止まった。

ここが今夜の宿らしい。

運ちゃんはもらった金額が気に入らないらしく、スーツケースをタクシーから取らせないなどといってふっかけてくる。

暖房無しの車内にずーっといるので脳みそが凍ってしまっているとしか思えない。はっちががんがん言って、なんとかけりが付いたが少々後味が悪い。

建物に入るとどうやらユースホステルは地下二階にあるらしい。入り口のガラスドアが大きくひび割れているのがとても印象的だ。

二人とも大荷物なので迷わずエレベーターに。

割れたドア

エレベーター


 ボタンを押す。

      エレベーターが開く。


お兄さんこんにちは。


何故かエレベーター内に若いお兄さんが白いプラスチック製の椅子に座っている。

私達二人は乗り込むと、地下2階のボタンを押す。、、、、、、10秒経過、、、、、、、。



  お兄さん、「、、、、どこに行くの?」

  私達、「地下2階に。」

  お兄さん、「そこには行かないんだ。」

  私達、「、、、、、、、。」。



また1階でドアが開く。

二人で出る。

お兄さんを残したままエレベーターは閉まった。

エレベーターの動く音は聞こえない、、、、。

このエレベーターは地下2階だけと言わずにどの階へも行かないようである。

恐すぎる。

私達が見たあのお兄さんはこの世に存在するものなのだろうか。じゃあ1階に行くとでも言ったらまた違っていたのだろうか?


このさびれた階段をえっちらおっちらとスーツケースを引きずって地下2階まで。

地下2階と書いてあったのに実際には3階分下がった。

ここら辺に中国の一面を垣間見ることが出来る。



チェックインを済ませ部屋へ案内される。


参りました。


いや、安いからそれなりの覚悟してたけど、ここは監獄かなんかですか?もう一気にテンションの下がる二人。

私が安さに負けて無理に決めただけにここに泊まることになってしまったはっちに対して罪悪感で一杯だ。


机、パイプのベッドとサイドテーブル2つ、パイプのコート掛に中国人には欠かせないお茶を飲むための保温ポット。

コート掛には誰かが置いていったのであろうちぐはぐなハンガーが付いている。

そのうちの一つはなんと竹で出来ている。

保温ポットは下の部分がさび付いて茶色に変色しているし、中にはいつのものか分からないお湯が残っている。

ドアの色にマッチする黄緑色のシーツがまた哀愁を誘うではないか。薄暗い廊下の電球は切れ掛かっていてちかちかしている。

暖房が付いていると聞いたが、暖房を入れなくても十分に暖かいのは地下2階(3階?)効果だろうか。

すでに上海が恋しい二人だ。「やっちまったよ」というのが的確な表現だろう。

しばらく呆然としていたが、一人が部屋を出て戻ってくるときのドアのノックで危険を知らせる合図と何事もないから空けてくれという合図をお互いに確認しあう。

これで万が一のときも大丈夫であることを祈る。

これは以前にはっちとニューヨークに旅行した時YMCAに泊まっていた頃から使っている合図だ。

あの時もトイレの個室に入ると隣の個室で一人物語をノンストップで話す怪しいおばあさんに遭遇したりして背筋が凍ったものだ。

この天井を越えて遥か上部にはあのお兄さんがまだエレベーター内にいるのだろうか。角度的にあの天井の斜め上辺りかな等と考えながらこの夜は床に就いた。

ユースとはっち

ドアに張ってあるよれよれのポスターのケリーチャンが微笑んでいたのが忘れられない。

kelly zhang



  → 北京観光初日。ヴィバ永和大王へパンダ



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: