pooyanの部屋

pooyanの部屋

山麓の二人


険しく八月の頭上の空に眼をみはり
裾野遠く靡いて波立ち
すすきぼうぼうと人をうずめる
半ば狂える妻は草を敷いて坐し
わたくしの手に重くもたれて
泣き止まぬ童女の様に慟哭する

  わたしもうじき駄目になる
意識を襲う宿命の鬼にさらわれて
逃れる途無き魂との別離
その不可抗の予感

  わたしもうじき駄目になる
涙に濡れた手に山風が冷たく触れる
わたくしは黙って妻の姿に見入る
意識の境から最後に振り返って
わたくしに縋る
この妻をとりもどすすべが今は世に無い
わたくしの心はこの時二つに裂けて脱落し
げきとして二人をつつむ此の天地と一つになった


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