東方見雲録

東方見雲録

2023.07.20
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カテゴリ: 環境
日本の森づくりの父、宮脇昭。世界で4000万本の木を植えた「行動する植物学者」だ。生まれは1928年。1928年に、単身ドイツに留学し、当時最先端の学問「植物社会学」を学んだ。帰国後は、北海道から沖縄まで歩きまわり、森林から海岸に至るまで、土地の植生を調べ尽くした。まさに植物版の伊能忠敬。10年がかりで、116名の植物学者を巻き込み、全10巻からなる大著「日本植生誌」にまとめ上げた。

70年代になり、社会は宮脇を求めた。公害など環境問題が急速に表面化したのだ。71年の環境庁の新設からも、時代の変化がみてとれる。次々依頼が舞い込んできた宮脇は、企業や行政との森づくりに全国、世界各地を飛び回った。

日本の大企業の中で、いち早く宮脇との森づくりをはじめたのが、新日本製鐵(現・日本製鉄)である。当時、公害の元凶のように扱われていた製鉄所。力を貸すか悩んだ宮脇は「本気でやるなら、協力する」と、2つの条件を出した。

まずは、当時全国に10ヶ所あった全ての製鉄所で森をつくること。もう一つは、日本最大の製鉄会社に、廃業の覚悟を迫るものだった。

「(製鉄所の側につくった森が)ある日突然枯れるようなことがあったなら、それは人間にも深刻な悪影響を及ぼしているということです。その時は溶鉱炉の火を消すことを決心して欲しい」

そう宮脇は、依頼にきた新日本製鐵の担当者に言い放ったのだ。社内からは「そこまでして、木を植える必要があるのか」との反対の声もあがった。最終的に、新日本製鐵は宮脇の条件を受け入れ、全国での森づくりをはじめた。共につくった森は現在、約830ha、東京ドーム約180個分にも及ぶまでに、育っているという。

企業が宮脇を頼る理由のひとつに、経済性があった。宮脇方式の森づくりでは、メンテナンスが必要となるのは最初の3年のみ。その後ほとんどの管理が不要である。それ故に、先見性のある企業や行政は、宮脇の森づくりを求めた。
こちら

「そんなものは、偽物だ!」

宮脇は、たとえ相手が大企業の経営者であっても啖呵を切り、ひたすら本物を追求した。徹底した現場主義で森づくりに邁進する姿は、多くの人間を惹きつけた。西野の父もその一人であった。



植生は、人間の干渉前の「原植生」と干渉後の「代償植生」に分けられる。「潜在自然植生」とは、人間の干渉を停止したと仮定し、その土地で再現される植生のこと。宮脇は、この概念をドイツで提唱者から直接学び、森づくりに本格導入。土地ごとの潜在自然植生を調べ上げ、それに応じた多様な木々を植え、ふるさとの森を再現する。それが、宮脇流の「本物の森づくり」だ。

そうした森は、木材生産のためにつくられた人工の森と違い、災害を防ぐ緑の壁となる。その事実を教えてくれるのが、陸前高田の「奇跡の一本松」だ。メディアで盛んに取り上げられ復興のシンボルとなっていたが、現地調査をした宮脇は憤っていた。

「津波以前、そこには約7万本のマツがあった。1本は残ったとはいうけれど、逆にいえば、7万本は流された。7万本は凶器となり、内陸へと運ばれていってしまった」というのが宮脇の見解であった。

一方、宮脇が森づくりの手本とする、神社仏閣の周りに残された「鎮守の森」は、倒れずに生き残った。潜在自然植生に応じて宮脇らが植樹した木々も、大津波で流された大量の自動車などをしっかりと受け止めてなお、倒れていなかった。「ふるさとの森は、人間の命を守ってくれる」という宮脇の持論は、被災地で証明されたのだ。

神社や祠の周りに残された鎮守の森は、強靭な根をもつ広葉樹が多く、大きな津波にも耐えて残った(米軍撮影)。
© Forbes JAPAN 提供

師匠・宮脇が育んだ「秘伝の森のレシピ」を、西野は現代版にアレンジ。その土地本来の森を復元できる樹木の種類と割合を決めていく。いまは無価値の荒れた森林でも、百年単位で残る「本物の森」にできると、西野は自信満々だ。

既存の林業は売れる木だけを価値とし、森の産業活用一辺倒である。一方、西野が提唱する新しい林業「森林業」では、防災と産業活用を両立する。防災は、前述の通り、潜在自然植生に基づいた森づくりが鍵となる。産業活用のためには、木材に使える産業林を一部につくりつつ、山地災害を引き起こさない里山・奥山へと森をデザインする。今は何もない土地だが、森のレシピを駆使し、無からの価値創造に挑む。


西野の里山ZERO BASE構想にて、「里山」とは、人の住む住宅・田畑と管理を必要としない「奥山」との間で人と自然が共存する管理が必要な山林のことを指す。この里山を自然度高く保全し産業活用するのが目標だ。
© Forbes JAPAN 提供

春山慶彦。登山アプリ「YAMAP」を提供するヤマップのCEOだ。同アプリの累計ダウンロード数は370万を突破。国内登山人口の半分以上が、利用している計算となる。春山は、スタートアップの世界では、異色の存在。創業期に「ニッチで、儲からない」と投資家に言われ続けた「山」という領域を、見事ビジネスにしてみせた起業家として知られる。



「人が豊かになるために、自然環境が貧しくなってはいけないんです。僕たちが事業を行う登山・アウトドアという領域でいえば、山を楽しむ登山者が増えることで、山がどんどん削られ、貧弱になっていくことは、目指すものではありません。山に登る人が増えることで、山が豊かになる。そんな仕組みをどうやってつくるか、ずっと考えていました」

春山がたどり着いたのは「山に登る人に、山で植樹してもらう」という仕組みだった。参考にしたのは、奈良・吉野の山づくり。戦国時代、金峯山寺に吉野詣に訪れる参拝者は、山の麓で桜の木を買い、手に持って山を登った。そうした参拝者による桜の献木植樹の文化が起点となり、吉野山は現在まで続く桜の名所となっている。

春山は、以前から宮脇方式の森づくりに興味を寄せていた。「登山者と一緒につくるなら、鎮守の森のような生物多様性に富んだ森をつくりたい」と考え、ヤマップでの森づくりに宮脇方式を採用するべく、宮脇の弟子筋の人材を探した。

「森の設計図を書ける人は、なかなかいないんです」

たどり着いたのが西野であった。春山からみても、西野は稀有な存在だった。潜在自然植生の調査に基づく「森の設計図」が書ける上に、30代と若い。林学博士だが、森の研究ではなく、森づくりを実践している。アカデミックな知識を研究室に閉じ込めず、株式会社での事業へと昇華させているからだ。



この流れを大きく推し進めたのは、2022年12月に、国連の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」。それに呼応して日本政府は、23年3月に生物多様性に関する国家戦略を閣議決定した。9月には、国際組織「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が、自然資本の情報開示枠組みを公表予定。今や、気候変動への対策、脱炭素は当たり前。次は、自然資本の保護・回復へと、資本主義は舵を切っている。

環境経営のモデルは、アウトドア用品メーカー・パタゴニアがつくり続けてきた。同社は22年9月、創業家への全配当を環境保護に回すことを目的に、創業家が持つ全株式を新設の信託と、非営利団体に寄付すると発表した。創業者のイヴォン・シュイナードの言葉を借りれば、パタゴニアの経営は、「地球が唯一の株主」の体制へと移行した。環境経営の新たな地平を開くこのモデルに、世界は驚いた。

経済という土俵の上で、人と自然を結び直す──自然豊かな日本から、世界に誇れる新モデルは生まれるか。それは「新しい資本」の担い手たちの挑戦にかかっている。
引用サイト: こちら

参考サイト:生物多様性センター 植生・植生図 こちら

横浜国大 宮脇 昭 名誉教授の遺した「森」という研究資源
森は、「つくる」から「まもる」のフェイズへ
小池:今は世の中に、新たに森をつくる場所がないのです。1970年代ぐらいまでは、住宅開発にともなって更地がたくさん生まれていました。今は、むしろ多様性が高い伝統的な草地が失われている状態です。そのため、森を新たにつくるよりは、既存の緑地をいかに維持するかが問われています。

学長:もし今、宮脇先生が現役で研究をされていたら、伝統的な植生の保全にも熱心に取り組まれていたかもしれないということですかね。

小池:そうですね。現状の保全では、珍しい種類を守ることに力が偏っています。しかし生物は単体で存在するわけではなく、広い生態系のなかに棲んでいます。ですので、特定種だけでなく、その種が属するシステム全体を保存する必要があります。

学長:森づくりから、森の維持へ。それで、学内でヤギを飼い始めたのですね。

小池:大学の周縁は住宅地と接するので木を抑制していますが、そうすると蔓草が生えてくるので、草刈りを続けるのに膨大な手間が必要です。敷地も広いので、とても人力では刈っていられません。そこで、ヤギに食べてもらおうということで飼い始めました。これも新たな森の管理方法の提案ですね。そこには日向を好む里山の植物もいるので一石二鳥です。

学長:本学は45万㎡ありますから、たしかに人力ではとても管理しきれません。それにしても、ヤギはすごい食べますね。報告書をみてびっくりしました。なんだか私、最近小池先生がヤギに見えてきて……(笑)。
引用サイト: こちら

Wikipedia情報 こちら

参考サイト:私見・地域林づくり こちら

参考サイト:私見・咲の森づくり こちら





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Last updated  2023.07.20 08:00:07
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