のんびり生きる。

のんびり生きる。

とにかく最後まで描く


「どんなに上手くゆかんでも、とにかく最後まで描く。いつものとおりたい」
 あっちゃんが笑いながら言った。いまの台詞は中学時代の美術部の顧問だった出水先生の口癖だった。
 先生は、「人生も絵とおんなじだぞ。上手に描けん、飽きた、つまらん、そげんこと言うて途中でやめるとが一番つまらんと。描き上げた絵は、時間が経ってから見直したら、どれもみんな味があるし、そんときは思いもせんかったようないろんな思い出ば連れて来てくれたりすると」とよく語っていた。104頁

 そして、自分でも意識してこなかった以外な内面の真実に突き当たった。 
 私は、私という人間のことが本当に嫌いだったのである。
 そう気付いた瞬間、何だそうだったのか、とすべてが了解できる気がした。
 四十七年間もの長きにわたって嫌いな人間と一緒に生きてくれば、誰だって心に陰鬱な翳りを生じさせてしまうのはむしろ、当然ではないか。
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