歪曲ロマンチスト

歪曲ロマンチスト

第1話・0楽章


「今日こそ逃がすか!」
全部で50人程だろうか。
警察官らしき男達がそんな事を口にしながら、一人の女を追う。
「ふふ」
追いかけられている女は男達を見て鼻で笑った。
黒いコートに、黒いブーツ。
長めの紫の髪は上の方でひとつにまとめられている。
女にしては長身の、髪と同じ色をした瞳の美人。
その女は走るのを止めて、男達の方へ振り向いた。
「よし、チャンスだ!」
「今日こそ年貢の納め時だ!」
「この―――泥棒め!」
そう言った男達が女に捕まえようとした。
その瞬間。


「っがっ!?」「痛っ!」「うぁっ!」
「ぐうっ!」「てぇっ・・!」


上がる幾つもの小さな呻き声。
女の手には2丁の銃。
撃たれた。
しかも、足を。
撃ったのは勿論、女である。
「学習しないのねー。前回もコレだったのに」
女は、ふう、と溜め息をつき、銃をしまう。
そして、ウエストバックをごそごそと探る。
「あったあった」
と呟いていると。
残りの男達が来た。
「お前!其処から動くな!」
「動けば撃つぞ!」
今度は全員銃をもっていた。
しかし女はそれにひるむ事無く、むしろ呆れ顔である。


「『動くな』って言われてホントに止まる馬鹿が居るかっつーの」


 ピンッ。
 シュッ。
 カツン。
 コロコロ、コロ、ロ・・・・・・。


「ん?」「なんだ?」「なんか投げたぞ」
男達の視線の先には。


手榴弾が、ひとつ。


「「「「「・・・・・・・ぅわああぁぁあああぁっ!」」」」」」」
「おい、逃げろ!」
「此処まで追い詰めたのに!」
「チクショー!」
パニックと悔しさと落胆が入り混じった言葉を吐いている男達を見て、女は微笑みながら、手を振ってこう言った。



「またねー」


そう女が言った直後に、光が炸裂した。
閃光弾だった。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: