『福島の歴史物語」

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2007.12.05
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 この安藤対馬守の叔母は、盛季の室(輝季母)であり、頼季の養祖母に当たる人である。頼季が、心安らかにして、交際していた人物である。
 城下の問屋たちが、高村との関係の決着を迫ろうとして、藩に訴状を提出してきた。
———何を、猪口才な!
そう思った高村は、今度は年寄衆を通じて、
「肴屋喜惣次、大町与左衛門それに伝蔵が、自分の不当を訴え出たことに関して、その吟味を自らやりたい」
との願書を提出した。
 しかしこれは、「被告人が裁判官になる」というようなものであるから、年寄側は、頼季の江戸出発前を理由として、お取り次ぎを拒否した。
 それでも高村は、「頼喜様に直接申し上げたい」と、再度願い出た。
 それを受けた頼季は、
「年寄共と直談すべし」
として差し戻した。
———何だ、頼季は。わしはお前の父親だぞ1
 三春藩と高村の関係は、ぎくしゃくしていた。
「おタカ。何やら臭いではないか。何の匂いじゃ?」
 家に戻った高村は、不快気に言った。特に今日の、頼季の拒否が、面白くなかった。それ
らの不満が、輪をかけていた。
 タマは、庭のそちこちに尿をして歩いていた。猫の尿には、強烈な臭いがある。まるでタマは、それで自分の存在を高村に示し、嫌がらせをしていたかのようであった。
「あれっ旦那様。お気づきになられましたか? どうも、野良猫でございましょうか、あちこちに悪さをしまして、私も気になって良く掃除をしたのでございますが、土に臭いが滲み込んで取れたものではございませぬ。困ったものでございますね」
「うむ。こんなことが、よくあったのかの?」
「いいえ、始めてでございます。明日にはもう一度、良く掃除を致しましょう」
「あっ・・・。まさかに、あの多兵衛の猫の悪さではあるまいな?」
 高村は、おタカに確認するかのように、訊いた。おタカは、返事をしなかった。彼女も、そう思っていたのである。女中たちには辞められ、それに自分の思うように動いてくれぬ頼季に、高村は、苛立っていた。気のせいか、家の中が少し荒れてきたかのように思えた。
———どうもあの猫が出てきてから、悪いことばかりが続く・・・。多兵衛のせいか? それとも、あの猫が祟っているのか?
 高村は、そう思った。その疑念が、高村をさいなんでいたが、しかし、対外的には、強硬な姿勢を貫いていた。
———わしは、殿の実父じゃ! どうじゃ、恐れ入ったか!

 年寄衆も、殿の命令とはいえ、 「直談は如何がか」ともめていた。それらを見すかした高村は、自ら与左衛門を調べたいとの願書を、年寄衆に再提出した。
 年寄衆は、「すでに町方で吟味を始めた」との理由で、拒否した。
 そこで高村は、「吟味の日延べ」を要求して時間を稼ぎ、「今夜にも、藩主の御意を得たい」と強請した。
 今度も年寄衆は、それも拒否した。藩と高村は、抜き差しならぬ関係となっていた。
 そしてこの頃、おタカは高村の態度に、以前と違うものを感じていた。夜になると、不気味に嗤うのである。外ではともかく、家にいる高村は、猫に異常な反応を示すようになった。そして何やら恐ろし気な獣の気配がすると言っては怯え、またおタカの背後に猫の影が見えると言っては恐れた。
 高村屋敷では、タマがその縁の下に、居を移していることを、誰も知らなかった。その縁の下でタマは手を舐めて、悠々と毛づくろいをしていた。そして立ち上がると必ずあの松の木の下に行った。
 高村は、その松の木の下にいる、猫に気が付いた。彼は猫を、じっと観察した。
———特にその姿に、変容はない。たかが、普通の猫ではないか。
 そう思った高村の目から、猫の姿が、忽然と消え失せた。
「う・・・。消えた」
 思わず、声になった。その声が、小さく震えていた。






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最終更新日  2007.12.05 07:40:24
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