『福島の歴史物語」

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2007.12.07
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 ある日、頼季は、殿中で旗本・朝倉甚十郎から、老中・水野和泉守の意向として三春表について聞かれ、一通の訴状を示されて請書を差し出すよう命じられた。
 この訴状は、高村処分に連座して隠居を申しつけられた高村の弟・荒木又市の家人・渡辺長右衛門が、「悪事指募侯」との沙汰で三春にて打首となった。そのために長右衛門の妻が不当として、江戸の目安箱に投書したものである。
 このために、三春の騒動が幕府老中・水野和泉守の知るところとなってしまった。
 恐れ入った頼季は、安藤対馬守や御鑓奉行の朽木大和守らとも相談をして請書を提出したが、水野和泉守に「此間の請書見にくく有之」と戻され、書き直して持参したものも「意味不明」として戻された。請書は三度に渡って訂正され、ようやく受理された。
 三春藩の騒動に対する幕閣の対応として、訴状と請書をもとに、両者の言い分を詮議することとなった。
 荒木高村及び荒木又一の兄弟に、召喚命令が発せられた。
 この二人は、老中・水野和泉守のお尋ねとして、大目付・奥津能登守より厳しい尋問を受けた。
 ところが、この目安箱への投書にはじまった事件の詮議は、荒木又一の請書によって、朽木大和守の介入露見という、意外な方向に発展した。その上、亡・輝季夫人から、
「幕府の安藤対馬守に相談をし、その指示に依って処置した」
との発言があったのである。この発言が、安藤対馬守の独断潜行と判断されたのである。
 朽木大和守に対する詮議からはじまったこの事件は、荒木高村の蟄居という単なる三春藩内から秋田氏一族を含み、さらに西丸老中の安藤対馬守の周辺にまで波及する様相を見せていた。
 ある夜、詮議を受けた高村は、『かご』で、三春藩上屋敷、つまり帰宅への途上にあった。いくら詮議を受けた身とはいっても、藩主の実父である。それなりの格式は、要請されていた。しかし、『かご』の中は、退屈な環境でもある。高村は、「ふぁーっ」と大きな欠伸をすると、『かご』の格子窓を少し押し開けた。見るとはなしに見た外の景色の中に、白い猫が追って来るのが見えた。
「ん・・・?」
 思わず、『かご』窓に額を押しつけるようにして、外を見た。高村は、たっ、と窓を閉めると、腕を組んだ。
———まさか、タマが・・・。
 高村は、空(くう)を見つめていた。そしてその目は、虚ろになっていた。恐ろしさに、もう一度外を見る気には、ならなかった。
 屋敷に戻り、『かご』から玄関の前に降りた高村が、門の屋根を見上げた時、そこに小さな白いものを見た。それは、紛れもなく、あの猫であった。
———タマがなぜ江戸に・・・。
 そうは思ったが、黙って身を返すと、片膝をついた供の間を、玄関に向かった。猫の影に怯える高村の、気は重かった。

 頼季は事件の拡大を気に病み、藩邸内に引きこもっていた。
 その頼季のもとに、幕府御老中連署の御切紙が届けられた。それには秋田兵部の他、朽木大和守、朝倉甚十郎ら幕府役人も召喚されていた。そして頼季以下は、御用番老中・松平左近将監乗邑、同水野和泉守忠之、同じく酒井讃岐守忠音の三人が正面に列座し、松平左近将監乗邑の口上で申し渡しが行われた。その内容は、
 一、高村の刀取り上げは、公儀の公裁を受けるべきことで、実父に対して不孝なる処置である。
 二、長右衛門の打ち首は、粗末な策である。
というものであった。頼季は、「上江御苦労ニ相懸 心得違之儀迷惑仕侯所ニ 存知之外軽く被 仰出難在仕合奉存侯」と口上を述べて退座した。








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最終更新日  2007.12.07 08:31:22
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