『福島の歴史物語」

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2015.02.26
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カテゴリ: いわれなき三春狐


 2015年1月25日、私は三春町歴史民俗資料館学芸員の藤井典子さんから、次の資料を入手しました。その文面をそのまま転載します。

『平成13年に斎行された北野天満宮萬燈祭の際、約260燈の吊燈籠の修理を仰せつかり、整理の為個々の燈籠を調査いたしました。その際見つかった燈籠の一つです。奥州三春藩(勤王派 現 福島県田村郡三春町)の秋田廣記藤原實昆が奉納した燈籠です。
大政奉還後、全国の藩主に上京招集の令が下されました。しかし、当時の三春藩藩主秋田映季は、幼年・病弱の為名代として上京したのが重臣秋田廣記です。様々な活動の中で慶応4年正月2日に勃発した鳥羽・伏見の戦い(後に戊辰戦争に発展)の報告等を行っています。「三春町歴史民俗資料館」によると、彼の日記には同年9月に北野天満宮にて二両のお守りを購入とあります。『武運長久諸願成就 明治紀元戊辰年九月吉日』と書かれたこれが、そのお守りかも知れません。
幕末の混乱期に遠く離れた京都で藩の重責を負い不安であろう日々を過ごした一藩士が居たことを一燈の燈籠がありのままに物語っています。
本物が残っている素晴らしさです。
              大津市田辺町
                 株式会社 社寺錺漆
                  代表取締役 米田滋』

 ここから、いくつかの事実が読み取れると思われます。次のことは、藤井さんとの話し合いです。

 1:北野天満宮=いま北町にある北野神社は、正式には北野天満宮です。
   もともとこの神社は城内にあったことから、(京都市上京区の)北野
   天満宮にお参りをしたのではないでしょうか。

 2:藤原実昆(読み不祥)=これは平泉の藤原を示唆する姓と思われます
   が、願掛けであったため、本姓を明確にするためこの名を付け加えた
   のではないでしょうか。

 3:全国の藩主に上京招集の令が下されました。=私はこのように三春町史
   の文意から想像していましたが、これにより、傍証が得られたと思って
   います。
 4:社寺錺漆の米田滋氏の推測によりますと、会津降伏以前の参拝と考えて
   いるということなので、廣記の禁足が解かれた後から会津降伏以前の間
   と考えられます。

 5:この願文は燈籠の底に書いてあったので、今まで気付かれることがなかった
   とのこ
   とでした。

              参 考 文 献

   一八八一 謹上諫死奉呈文       永沼運暁  松本登氏所蔵
   一八八五 熊田嘉膳履歴書             松本登氏所蔵
    不 詳 飛田昭規履歴             飛田昭蔭氏所蔵
   一九〇九 三春小学校同窓会報告書 第七号
   一九一一 仙台戊辰史       藤原相之助  荒井活版製造所
   一九二七 二本松藩史       戸城伝七郎 二本松藩史刊行会
   一九三四 二本松藩士人名事典(全)      古今堂書店古典部
     〃 水戸烈公の国防と反射炉         松本登氏所蔵
   一九三八 大島高任行実       松本登氏所蔵
   一九四一 戊辰白河口戦争記    佐久間律堂    堀川古楓堂
   一九五八 田村の小史        影山常次    石橋印刷所
   一九六六 会津若松史       会津若松市     凸版印刷
     〃  磐城百年史        荒川禎三
     〃  幕末の思想家       中沢護人     筑摩書房
   一九六八 戊辰役戦史         大山柏    時事通信社
   一九六九 郡山市史          郡山市    大日本印刷
   一九七〇 福島県史          福島県     小浜印刷
   一九七二 維新変革における在村的諸潮流        三一書房
   一九七三 郡山戦災史  郡山戦災を記録する会     不二印刷
     〃  二本松藩史    二本松藩史刊行会    歴史図書社
   一九七五 いわき市史        いわき市     平活版所
   一九七七 郷土史事典        佐藤次男      昌平社
   一九七八 城下町に生きた人々  二本松市商店街連合会 松屋印刷所
      〃 三春の歴史と文化財   三春町教育委員会
      〃 鳥羽伏見の戦いとその史跡  小林専一
   一九七九 茨城県幕末史年表
               茨城県史編纂幕末維新史部会 理想社印刷所
   一九八〇 会津戦争のすべて       会津史談会
   一九八二 二本松市史        二本松市      明和印刷
     〃  棚倉町史         棚倉町     歴史春秋出版
   一九八三 歴史(みちのく二本松落城) 榊山潤        叢文社
     〃 鏡石町史 鏡石町     第一法規出版
   一九八四 三春町史 三春町      凸版印刷
   一九八五 理由なき奥羽越戦争    渡辺春也     シナノ印刷
     〃  都路村史          都路村     ぎょうせい
   一九八六 秋田県の歴史       今村義孝     山川出版社
     〃  宮城県の歴史       高橋富雄     山川出版社
     〃  船引町史          船引町     山川印刷所
     〃  三百藩主人名事典(一)
               藩主人名事典編纂委員会    大日本印刷
     〃  戊辰落日         綱淵謙錠     文芸春秋社
   一九八七 植田町史         雫石太郎    第二巧版印刷
   一九八八 三百藩家臣人名事典(二)
               家臣人名事典編纂委員会    大日本印刷
     〃  戊辰東北戦争       坂本守正     大日本印刷
     〃  小野町史          小野町    大盛堂印刷所
     〃  藩史大事典                   雄山閣
   一九八九 江戸城総攻め             日本放送出版協会
     〃 ・六月 歴史と旅(徳川三百藩大崩壊)      秋田書店
   一九九〇 幕末維新人名事典    奈良本辰也    新人物往来社
     〃  滝根町史        滝根町      歴史春秋出版
     〃  白虎隊と榎本艦隊           日本放送出版協会
     〃 ・六月 歴史読本(勤王・佐幕、幕末諸藩の運命)
                              新人物往来社
   一九九一 三春城 総合調査報告書        三春町教育委員会
   一九九二 天狗党が往く       光武敏郎      秋田書店
     〃  霊山町史          霊山町    大盛堂印刷所
   一九九五 反射炉           金子功   法政大学出版局
   一九九六 明治維新の再発見      毛利敏彦     吉川弘文館
   一九九七・十一月 天皇の伝説          メデイアワークス
   一九九八 二本松少年隊        星亮一
     〃  三春滝桜        長尾まり子        集賛社
     〃  戊辰戦争全史        菊池明    新人物往来社
                     伊東武郎
     〃 ・十二月 歴史読本(戊辰大戦争)      新人物往来社
   一九九九 浅川町史          浅川町    日進堂印刷所
     〃  近代三春の夜明け  三春歴史民族資料館  平電子印刷所
   二〇〇一 大越町史          大越町    平電子印刷所
     〃  歴史春秋 五四号    会津史談会    編歴史春秋社
     〃  日本の戦争       田原総一朗       小学館
     〃  明治天皇     ドナルド・キーン       新潮社



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最終更新日  2018.11.06 10:05:58
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Re:10 新たな資料(02/26)  
湊耕一郎 さん
御無沙汰しております。お変わりありませんか。
さて、最近三春の幕末関係のことをまとめていましたが、わが先祖湊宗左衛門の京都留守居役中の「道中日記」を読む機会がありました。その中に
慶応4年9月朔日に北野天満宮に参拝し、木像を買ったという記録があります。この時に秋田広記が願文を奉納したのではないかと推測しました。思いがけない事実が分かり感慨ひとしおです。
宗左衛門が買った木造(天神様です)は今もなお我が家の神棚に鎮座しています。
 それからこのブログの戊辰戦争の記事はとても勉強になりました。 (2024.02.16 20:44:50)

Re:10 新たな資料(02/26)  
詳細をありがとうございました。
つい先日、三春資料館に『奥羽史料』4巻を寄贈してきました。何かご参考になるものが記されているかもしれません。 (2024.02.17 11:41:31)

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