風とこころ

風とこころ

ドラゴン



ドラゴン





昔々に、ドラゴンがいた。
誰も近づかない深い深い谷の底にひっそりと暮らしていた。
――――――ダレモイナイ。―――――――
――――――ダレモシラナイ。――――――
――――――ココハドコ。――――――――
――――――ボクハ・・・?―――――――

ある日、ドラゴンは人里へ行き。空を見つめていた。

「おや、めずらしいのう。こんなところにドラゴンがいる。」

老人が石に腰掛けながら言った。
――――――アナタハダレ?―――――――

「お主は知らずともよいことじゃ。」

老人は懐から出した木を食べ始めた。
――――――ボクハ・・・?―――――――

「何じゃおぬし、己のことを知らぬのか。」

老人はむしゃむしゃと木を食みながら言った。
――――――・・・・・・。―――――――

「・・・昔、人が居った。だが、愚かなる人は、我らが王が食ろうてしまわれた。」

―――――――オウ?―――――――
老人は木を飲み込み、言った。

「我らが王だ。全ての人を食ろうてしまわれた今では、我らは餓死寸前じゃ。」

老人は笑った。

「愚かなる人でも、腹の足しにはなったのにのう。」

そう言って、老人はまっすぐとドラゴンを見た。

「我らが王は、眠っておられる。」

―――――――?――――――――

「愚かな人を助けようとしたドラゴンが、我らが王を眠りにつかしたのだ。」

―――――――ドラゴン?―――――――

「そうだ、お主と同じ種族のものじゃ。」

―――――――オナジ?―――――――

「まさか、まだ、こんなところに生き残っておったとはのう。」

―――――――???―――――――

「我らが王は眠らされるときにドラゴンを始末したが、それでも怒りが収まらなかったのでドラゴンの一族を・・・」

ちらりとドラゴンを見ていった、

「一族を滅ぼしたはずなのにのう・・・。」

老人の皺の入った手が、みるみるうちに若々しくなっていく・・・

―――――――?―――――――

「わしがこの姿になるのは王が眠られる前だから、2000年ほど前か。」

老人の白髪が漆黒に染まっていき、しゃがれた声が耳に心地よい声となっていく。

―――――――・・・?―――――――

「まさか、またこの姿になることがあろうとは・・・。」

老人の曲がった背筋が伸び、ドラゴンを見下ろしながら言った。

「思わなかったよ。」

言葉が言い終わるか終わらないかのところで、血が飛び散った。

―――――――うっ・・・――――――



                                  つづく。












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