「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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きっとどこかの物語
ウタ―詩―
無意味な拳
物音がする
玄関のドアをいつもどおり開けて
家の中へ入った
飛んできた新聞
散らかっている雑誌や食べ物
もともと汚かったカーペットが
タバコの灰で薄黒く染まっていた
クソクラエ
いつもどおりの光景に
握り拳を握っても
振り下ろすことなんて怖くてできなかった
怒鳴り散らす罵声
泣き叫ぶ悲鳴
飛び散るコーヒー
天井が茶色に染まった
殴り 蹴る あいつ
殴られ 蹴られる あの人
鼻がつんとして めがしらが熱くなった
だけど 僕は何もできない
怖くて 強く握った拳も無意味なものになる
ゴメンナサイ
僕は 冷たい床へと足を踏み入れた
_____________________________________
一筋のガラス
かろやかに舞う黒いマント
規則正しい音を奏でながら
上がる煙
踊っているかのような黒いマントを着たその人は
笑いながら美しい金属音を奏でる
割れたガラスは、美しく舞った
黒いマントから白い手袋の手を出して
黒い棒の先から煙を噴出す
そしてまた踊るようにかろやかに舞い
向こう側から襲いくる鈍い音の発信源をよける
にぶい音は黒いマントに迫るように
舞う黒いマントに次から次へと襲いくる
黒いマントは黒い帽子に隠れた顔の下で笑った
いち、に、さん、し、ご、
黒いマントは舞う
その場をあとにして
割れたガラスの中に5つの黒い影が落ちた
黒いマントは黒い帽子を取り、
黒いマントは黒いマントを取り、
半そでの白い服で半ズボンのジーパンの姿になった
少年の形をしたそれは 黒い夜空を見上げた
怒りの表情をした少年の頬に
一筋のガラスが落ちた
END
_____________________________________
最期の光景
粉々の町
怪獣がいるわけじゃない
全てヒトがやったんだ
血を吐いて死んでいる人間
目玉がほじくりだされている人間
顔全体焼け爛れている人間
崩壊の町
ぐちゃぐちゃになった建物
ぐちゃぐちゃになった地面
ぐちゃぐちゃになった人間
全てヒトがやったんだ
隣で丸焦げになって
息をしていない妹
目玉だけが白くて
顔の皮膚が焼け爛れてて
右目が地面に落ちてる
僕もそろそろ死ぬ
うつろな意識の中で見た光景は
この世のものとは思えないくらい
おぞましい光景だった
END
_____________________________________
卒業のアイサツは
「何泣いてんだよ」
笑いながら友達が言った。
俺も笑った。
友達も泣いた
「最後じゃないのにおかしいな」
友達が泣いた。
俺が笑った。
友達も笑った。
「嬉しいんだか悲しいんだかわかんねぇわ」
苦笑して俺が言った。
友達も苦笑いした
俺が笑った。
「これからもってこどで。」
友達が手を出してきた。
俺も手を出した。
強く手を揺らした。
「いてえよ」
俺が笑った。
友達も笑った。
俺も笑った。
「よろしく」
皆で言った。
さよならなんかじゃない。
皆が笑った。
_____________________________________
帰ってきて欲しくない人
黒い服を着た人が
家にやってきた
一人だった少女のもとにやってきた
お嬢ちゃん、幸せになりたいかい?
少女は首を振った
今が幸せなの
一人の少女は笑いながら
くまのぬいぐるみを抱えて言った
お母さんがくれたくまなの
寂しくないの
幸せなの
黒い服を着た人は優しく笑ってうないずいた
そして少女の頭をなでて、家を出て行った
少女はドアの前でしゃがんだ
くまをぎゅっと抱いて
くまの体の中で泣いた
くまの首にかかっているペンダント
その中に黒い服の人とエプロンの母
今が幸せなの
少女はもう一度繰り返して
扉を睨んだ
END
_____________________________________
しかける大人 戦う子供
「おかしな世の中になったものだ。」
そのようにした大人たちが口々に言う
「これからどんどんおかしくなるぞ。」
まるで、生まれてきた子供たちが悪いかのように
全身黒いだぼだぼな服を着た子供たちが
騒音を立てて車を走らせる
「そういうならなってやろうじゃねぇか。」
金属で大人を殴り、金を奪う
「お前らが予測した世界だ。」
戦いを申しだした大人は
堂々と戦ってくる子供に怯える
申し出を受けた子供は
叫びながら殴り 大人に訴える
理解しない大人
戦うことをやめない子供
いつからか大人と子供は
戦うようになった
END
_____________________________________
夢の場所を探す少年
誰からも実力を認めてもらえない少年
才能がないなんて思いたくなくて
すごく急な坂道を駆け上った
通りすぎる大人たちは彼を面倒くさそうに睨むだけ
「そんなに勢いよく駆け上がってもたどりつくはずがない」
「疲れるだけだ。下るのは楽。下ってしまえ。」
「どうせ皆いつかは落ちていくんだ。いっそのこと、はじめから下に・・・」
大人たちは口々に彼を誘惑した
だけど少年は走りつづける
坂道がどれだけ急になっても
下ってくる大人がどれだけ増えて 邪魔しても
走りつづけた少年の息は荒れ
徐々に体力もなくなっていき
体もところどころ痛んだ
それでも少年は坂を上ることをやめない
決してやめようとしない
夢を叶えるんだ
涙が出てきた
足の裏の皮膚がむけて血が流れた
めまいが少年を襲う
少年は、道の真ん中で倒れた
もう動くこともできないのではないかと思われるような
体の激痛
疲れ果てた脳と体が、休みを求める
傷ついた足は、地面を拒否しているかのようだった
アキラメタクナイ
アキラメタクナイ
カナエタイ
想いが大粒の涙を流させ
地面を濡らす
それでも体は動かない
悔しさの涙で顔がグチャグチャになった
もうこれで終わりなのかと考えた瞬間
大きな怒りが彼を襲った
少年は地面にこぶしを叩きつけて怒鳴った
おわらせない
おわらせはしない
夢の場所を探し出してみせる
きっとこの坂の上にあるはずだ
少年は大声を上げ体を起こし
赤い足を地面につけた
痛い 苦しい つらい
だけどそれ以上に かなえたい夢がある
少年はもう一度
しっかりと前を見つめ
また走り出した
END
_____________________________________
感覚を失った侍
斬って斬って斬って
それでもまだ斬って
大切な物を守るために
誰かの大切な者を奪う侍
どんなにそれが辛くても
どんなにそれが怖くても
守り抜きたい物があるから
侍は敵を斬る
侍の愛すべき里に現れた敵
侍の愛すべき人を斬った
斬って斬って斬って
侍の愛すべき人は
もとの形がわからないほどになった
そこへやってきた侍
その光景を見て
怒り狂った
斬って斬って斬って
斬って斬って斬って
敵を全部斬って斬って斬って
舞う血しぶき
悲鳴をあげる里の者たち
舞う血しぶき
怒り狂った侍
そのうち、誰も叫び声をあげられなくなった
狂いすぎたあまりに 侍は感覚を失い
大切なものまで 斬っていた
_____________________________________
ほんとうの自分
握り締めたカギをポケットにいれて
玄関へと歩みよる
一人暮らしの薄暗い家を出て
ポケットから取り出した鍵でドアを閉める
ゴメンナサイ
ドアを閉じるときにふと見えた人影
切なくて 苦しくて 顔を見る気にはなれなかった
閉じたドアの向こうからは何の音も聞こえない
何かを振り切るように、ドアに背を向けた
ゴメンナサイ
町はいつもより寂れていたような気がした
いつもと同じように、入れ物を着た自分を歩かせていたのに
影だけの自分を捨てただけで
居場所を失った気がした
ゴメンナサイ
もう戻らない。もうドアをあけない。
ほんとうの自分。影の自分を外で歩かせるのは
とても怖いんだ
だから、サヨナラ
ゴメンナサイ
いつも同じ顔を着た自分。
扉の向こうで閉じこまっているだけのほんとうの自分。
出てきちゃだめだよ。
・・・・もうサヨナラだ
ゴメンナサイ
_____________________________________
イタズラ小僧
毎日毎日イタズラ三昧
毎日イタズラで町を騒がせては
イタズラ小僧は
今日もイタズラに笑う
毎日毎日イタズラに笑い
イタズラな笑いで去っていく
だけどイタズラ小僧は
年に一度
町に顔を出さない日があった
その日、イタズラ小僧は何も言わずに家を出て
無言で山を登っていった
途中で花をつんでみたりもした
目の前に大きな灰色の石が見えてくると
イタズラ小僧は石の前につったったまま
大きな瞳に大粒の涙をためた
イタズラ小僧は泣いていた
そこにはイタズラのカケラなんて一つもなかった
親にすがり泣く子供だった
次の日
子供は町に出た
イタズラをして
イタズラに笑って
イタズラな笑いで去っていった
イタズラ小僧は、今日もイタズラに笑う。
END
_____________________________________
悲壮者
目標を描き、夢を追い、それを誇りと思って死んでいく。
叶わなくて、どうにもできなくて、そしてどん底に陥る。
努力あっての悲壮者、何故そこまで耐える必要があるのだ。
自分の目指すべき、叶わすべきものを、必死で見続け、
自分の通るべき、切り開くべき道の上で死に絶える
悲壮あっての努力者、何故そうして絶える必要があるのだ。
拳を強く握り、地面を叩きながら生きている悲壮者よ、
足を強く地面に根付け、辛くともなお生き抜こうとする悲壮者よ、
何故そのように悲壮な生き方しかできないのだ
何があっても負けない。何があっても泣かない。何があっても強く誇る。
何があっても怖気づかない。何があってもめげない。何があっても強く生きる。
一度全てを開放して、一度でいい、本当に一度でいいんだ。
そう、声を張り上げて、弱い思いをぶちまけて、崩れるほど壊れてみろ。
何故、そこまで強く生きようとする?
哀れなものだ。
愚かなものだ。
皮肉なものだ。
一度でいい、泣き叫べばいいものを・・・
END
_____________________________________
隠れ泣き
部屋をのぞいた
母がこっそり泣いていた
あまりにも金がない
あまりにも乱暴すぎる父親
母はこっそり泣いていた
自分の部屋に入った
自分がこっそり泣いていた
母があまりにも可哀想で
母があまりにも死にたそうで
自分はこっそり泣いていた
クローゼットのタナに頭を伏せて
何もできないこの手を叩いた
強く叩いた
また叩いた
自分が泣いたって母は泣き止まないのに
母は死ななくならないのに
母に泣きすがりたかった
でも母も泣いていた
部屋をのぞいた
母はこっそり死んでいた
END
_____________________________________
さようならを言いに来た
戦争真っ只中
彼は 戦場で踊るために家から出て行った
今ごろ戦場で 赤い花を咲かせているだろう
そしていつか 彼自身も花になる
涙を流しても
彼はかえってこない
戦場へ行った兵士は
踊らされるだけ踊らされて
ほとんどが花となる
ドアをずっとにらんでいた
彼は帰ってこない
永遠に帰ってこないとわかっていた
ドアをずっとにらんでいた
悲しくてさらに涙がながれた
かえってきて かえってきて
うつむこうと思ったとき
ドアは開かれた
彼はそこにたっていた
そして優しくわらっていた
すぐに彼の向こう側のひかりが部屋の中を照らし
ドアの外の景色を見て 悲しみを悟った
さようなら
光りへ向けられた自分の声は
どこか悲しく
どこか笑っていた
_____________________________________
守り抜く背中
風になびく髪
それでも揺れない背中
美しく、背を向ける小さな少年
後ろからでもよくわかる
握り締めた拳に 痛いほど力を込めていることくらい
何の指図も聞かない我がままな子供にも見えるが
地面に根付いているように思わせる
その力強い姿勢は
風に花を躍らせるたんぽぽのようだった
いつもへらへら笑っている彼が
今 強いまなざしで前を見ている
傷ついた体
血が広がる地面
それでも折れることのないたんぽぽ
小さい彼の背中が
あまりにも硬く
あまりにも大きく見えた
風にゆれる花を傾かせ
こちらを向く
いつもの笑顔で
たんぽぽは笑った
END
_____________________________________
profile
切り裂いて破り捨てた 遠い昔のプロフィール
何故かいらだたせるこの紙を どうしたら
優しい目をして見れるのかな?
確実に歩き続けた このまっすぐな道も
今じゃ複雑に曲がりくねった ラクガキに見える
科学の実験だって失敗したコトなかったのにね。
もう二度と戻れない「過去」という名の記憶が
「現在」の無一文な僕に投げかける
『忘れたのか。あの頃の複雑な・・・』
切り裂いて破り捨てた 遠い昔のプロフィール
その一つの欄には どうしても
叶えたかった夢がかかれていた
格別な味を出していた 幼い頃のラクガキも
今じゃ複雑に意思込めた 夢の設計図
どこの大事な柱を描き間違えたんだろう
もう二度と作れない「人生」という名の建造物
「崩壊」の文字が語る絶望
『パーツなど、なんでもよかったんだろ?』
引きちぎって破り放った 遠い昔のプロフィール
気持ち冷めて諦めた 夢は今も
この紙に本当の「夢」として残っている
切り裂いて破り捨てた 遠い昔のプロフィール
今からでもこの設計図を もう一度
組みなおすことはできないのだろうか
_____________________________________
悲しみのオルゴール
高い優しい金属音
弾かれる、熱をもたないはずの鉄が奏でる
優しい金属音
横で悲しみの舞を舞うバレリーナ
最後まで笑っていた
何も知らずに笑っていた
渡されたオルゴール
「また会える」と笑顔で言っていたね
それでも悲しかったけど泣かなかったよ
最期まで笑っていた
何も知らずに笑っていた
渡された悲しみのオルゴール
「また会える」と笑顔で言っていたね
どうして約束破ったのさ
握り締める手の甲に涙が落ちる
誰もそれをぬぐわない
また一滴 また一滴
どうして約束破ったのさ
また会えるっていったのに
オルゴールの優しい音色はゆっくりと止まり
バレリーナも踊るのをやめた
END
_____________________________________
不思議な螺旋階段
見上げた
先が小さすぎて、どこまで続いているか見えない
明るいこの階段は、天国へ導いているかのようだった
まぶしい光が 見上げた螺旋階段の天井から突き刺さる
痛いほど眩しくて めまいがするほど明るくて
それでも何故か引かれるように上っていく足
手すりにきちんとつかまって
ただ足が動くまま
疲れもせずに上っていく
ただ一本の不思議な螺旋階段
ただ一本のはずなのに
迷路の中で迷ったような感覚
それでも足は動くことをやめない
のぼっていくうちにいくつもの映像が見えた
全てどこかで見たことある光景なのに
どうしてか思い出せない
知っているのに 知らない感じ
どこまで逝けば
最上階につくのだろう
どこまでも続く
不思議な螺旋階段
END
_____________________________________
雨のち
雨ざーざー
また今日も曇った空
くずついた鼻水
また一滴 目から雨が
やまないなぁ
やまないなぁ
ぬれないように
笑顔のかさをさしたんだけど
逆にむなしくなっただけだったよ
ならびしょびしょになっちゃえ
やまないなぁ
やまないなぁ
あやまろっかな
やまないなぁ
あ
やんだじゃん
スッキリしてる
あやまってこよっと
ん?
あ、虹。
_____________________________________
狂い人
狂ったように笑っている人がいる
目の前でその光景を見ている子供がいる
狂ったように笑っている人は
目の前でその光景を見ている子供に殴りかかった
笑いながら何度も殴り
血が出るまで殴ったあと
泣きじゃくった
笑いながら泣きじゃくった
手についた血痕を眺めて
目の前でその光景を見ている子供に笑いかけた
狂ったように笑っている人は
足を狂ったように躍らせて
いきなり倒れた
目の前でその光景を見ている子供がいる
もう狂えない 狂ったように笑っていた人がいる
目の前でその光景を見ている子供はそっと微笑んだ
もう狂えない 狂ったように笑っていた人と同じように
手に血痕をつけ 微笑んだ
赤い水滴が 刃の先からしたたり落ちる
目の前でその光景を見ていた子供は
狂ったように笑いだした
END
_____________________________________
再建の意思
うばわれた
大事なもの全てが 一瞬にして奪われた
木は踊り
地面は踊り
人は踊り
あのとき 全てが黒く染まった
自分だけ助かった
生きていてもしかたなかった
声は震え
頭は狂い
行き場のない想いが 手足を無茶苦茶に動かした
炎は全てを炭にした
国は荒れた
町へ行くと
子供が親を泣きながら殺して
食べ物を奪っていた
親が子供を泣きながら殺して
売るための臓器を奪っていた
一体誰が城を黒く染めたのか
一体誰が国を赤く染めたのか
泣きながら自分にすがってくる老人の手は
赤く震えていた
タスケテクレ
タスケテクレ
コロシテクレ
黒く染まった城の中で
唯一無意味に逝きそびれた自分
生きたいが死にたい人間たち
ドウシタライイ?
狂いに狂った自分自身
もうこれ以上狂ってもしかたなくなった
拳に怒りを込め 地面を叩いても
揺れもしない この世界
ドウシタライイ?
・・・・
・・・・
・・・・
再建
奪われたものを取り戻し、
再建
国
城
王子という位
取り戻さなくてはならない
END
_____________________________________
お礼
切ないのに、そんな素振りも見せない
大きく口を横に引いて
強く笑いかけてくる
人のためなら、なんでもしてきた。
それが生きがいみたいな人だった。
それが、なんの利益も求めていないのが
今わかった
彼は強く笑うだけ。
大きく手を振るだけ。
不思議だった。
何故、あそこまで人のために尽くした人が
今、あっさりと去ろうとするのか。
いいように使っていただけなのに、
彼は何も、求めてこない。
彼は強く笑って、背中を向けた。
そのまま、歩いて去っていく。
彼のまわりを舞う花は
彼のとおる道を鮮やかに彩っているようだった。
まるで自分と彼との距離を遠のかせているように。
言わなくちゃいけない気がした。
言わなくちゃいけない。
私は口を開いた。
彼は一瞬驚いて、
また強く笑って、去っていった。
思い出せない夢
優しい感じのする
不思議な感じのする
思い出せない夢
何度もみたのに
目を覚ますと忘れてる
暖かくて
匂いまで伝わってきそうな
優しい夢
もう一度みたい
手が僕の頬をなでて
口が優しく笑いかける
目がどうしても思い出せない
長い髪の女性
女性は僕の名前を呼ぶ
そして、手をひいて
「かえろう」
何故か僕も笑って
暖かい手を握り返す。
「おか・・・・」
END
_____________________________________
忘れた人たち
何が大切なのか、忘れた人たち。
いつのまにか、知らぬまにか、
大切なものを忘れた人たちは
大切なものを壊していた。
狂乱。
錯乱。
忘れた人たちは、愚かな舞を踊り狂う
破壊破壊破壊
破壊破壊破壊
滅亡
それが罪だと知ったとき
それが大切なものだと気づいたとき
もう大切なものはなくなっていた。
忘れた人たちは、
踊りつづける。
END
_____________________________________
目を覚ましてよ。
朝だよ。
隣で眠る人に声をかけた。
隣で眠る人はまだ眠っている。
僕は口だけ笑ってみせて、
その場を離れた。
朝食をとってから、
またベッドへ戻った。
朝だよ。
もう一度優しく声をかけた。
隣で眠る人はまだ眠っている。
おきる気配なんて全然ない
しょうがないから、着替えを済まして
テレビをつけた。
お昼までずっと見た
それでも起きてこないから、
もう一度起こしにいった。
目を覚ましてよ。
隣で眠る人のまくらに
水がしたたる。
目が痛い。
目を覚ましてよ。
隣で眠る人はまだ眠っている。
僕は隣で眠る人の顔を痛いほど強く抱きしめた
目を覚ましてよ。
隣で眠る人は、
苦しそうになどしなかった。
_____________________________________
大切なもの探し。
小さな森の中に、
小さな小屋がありました。
小さな小屋の中に、
小さな子供が住んでいました。
小さな子供は、
朝も昼も夜も、いつも一人でした。
「悲しくはない。」
それが子供の口癖でした。
ある日、ドアを叩く音が。
子供はドアを開けました。
そこには子供と同じ年くらいの子供が。
「あそぼ」
子供と同じ年くらいの子供はいいました。
一人の子供は、どうしていいかわからない顔をしましたが、
すぐに頭を横に振りました。
「どうして?」
子供はきいてきました。
それでも一人の子供は頭を横にふり、
ドアをしめてしまいました。
次の日も、子供は一人の子供のもとへやってきました。
「あそぼ」
一人の子供はまた頭を横にふります。
「どうして?」
子供はきいてきました。
それでも一人の子供を頭を横にふり、
ドアをしめてしまいました。
あくる日、そしてまた翌日、
その次の日、そしてまたその次の日も
子供は一人の子供の小屋へやってきました。
毎日毎日、同じコトが繰り返されます。
一人の子供は、徐々に断ることに慣れていきました。
ある日、大雨が降りました。
トントン。
その日も、小さな小屋のドアを叩く音が。
一人の子供はいつもどおりドアをあけました。
しかし、そこには誰もいません。
ただ、雨がザーザー降っているだけ。
「あれ?」
おかしく思った一人の子供は、
子供を探しにいきました。
かさももたないで、一人の子供は子供を探します。
「どこなの?」
名前も知らない子供の名前を呼ぶわけにはいきませんでした。
一人の子供はビショビショになりながら、
森の中をまわりました。
「どこなの?」
探しても探しても、子供は見当たりません。
と、目の前に大きな家が。
一人の子供は大きな家の前で立ち止まりました。
小さな森の中に、こんな大きな家があることを
一人の子供は知りませんでした。
雨はいつしか、止みました。
空はいつしか、晴れました。
一人の子供が立ち尽くしていると、
大きな家から、あの子供が
ニッコリ笑って、子供はいいました。
「あそぼ」
一人の子供はほっとしました。
そして一人の子供も笑いました。
「うん」
虹はいつしか、空をつないでいました。
一人の子供は、もう一人じゃ、なくなったのです。
END
_____________________________________
言葉を恨む
もしも、この世界に言葉がなければ、
どれだけ楽だったのだろう。
他人との会話を絶ち
独りで生きていける
誰にも指図されずに
生きていける
泣くこともないだろう
たまに体につく傷が痛むだけ。
そのときだけ、涙を流せばいいのだから
何故言葉なんてできたのだろう
ただ、醜い言葉を放ち、人を傷つける最大の武器になるだけなのに
どうして、そんなものを作ったのだろう。
言葉がなければ、心を痛めることはないだろう。
誰とも会話せずに
誰も泣かせることはない
誰も僕を泣かすことはできない
誰の怒りもわからない
誰の言葉もうけない
誰とも喋らない
誰とも語り合わない
誰とも笑えない
誰とも泣けない
誰とも、
誰とも、
何故かわからないけれど、
涙が出てきた。
_____________________________________
偉大なる王者
全てのものを飲み込み
「絶」を与える王者
この世界ではそれが必要 それが不可欠
誰もがその存在を恐れ、
そして誰もが、その存在を手に入れようとする。
全てのものを動かし
「生」を与える王者
この世界ではそれが必要 それが不可欠
誰もがその存在を求め
そして誰もが、その存在を手にしている。
偉大なる王者
水は、全てを生かし、
全てを殺せる。
END
_____________________________________
人間のいのち
怒りが
震える拳にかわる
握り締めた手が真っ白になって
血が通ってないのがよくわかる
歯を食いしばり
地面を睨む
でもどうすることもできなくて
取り返しがつかなくて
白と赤の斑点の服を睨みつける
叫びたい衝動と
狂いたい衝動と
それ以上の怒り
地面に広がる行き場のない生ゴミ
中から汁を出して
足元を濡らす
カエシテヨ・・・・
口に出した言葉は 自分でさえ誰に向けたかわからない
ただ、目の前の生ゴミたちを、惜しい目で見つめている
また同じ言葉を叫んで地面に倒れ泣きじゃくった
言葉では言い表せないほど
むちゃくちゃな言葉を言う声
生ゴミたちを抱きしめて同じ言葉を繰り返す
カエシテヨ、カエシテヨ、カエシテヨ、カエシテヨ、
ゴミは、もう動かない。
_____________________________________
帰らないから。
荒れ果てた町を駆け抜ける姿が
舞っている華のようだった
素足で硬い地面を蹴って
それでも尚走りつづけ
手にお金を握り締めて
一つに束ねた髪を揺らして
赤いみすぼらしい服をさらけだし
走り去る
おのずと流れ出す涙に耐え切れず
華は走るのをやめた
縮こまって
しゃくり出る声をおさえようとして
でも止まることなく 声は押し出てくる
前を見ても 荒れ果てた町並みが続くだけ
遠くに誰かが待っているわけでもない
震える肩を抱きしめる者などどこにもいない
華は立ち上がり
涙でぬれた顔を拭き
真っ赤な目で荒れた町を睨む
華はまた駆け出した
END
_____________________________________
ベートーベン
切なく奏でられる音が
あまりにも心の奥底へ入り込んできて
手が震えるほど熱くなる
天才と言われた彼
目が見えなくても
耳が聞こえなくても
それでも尚、ピアノを弾きつづける
ただ感覚という名の神経だけを費やして
大勢の人の前で奏でられる音は
アンバランスだったかもしれない
だけどその光景は
大勢の人の胸を揺るがした
その音全てが
彼の音全てが
観客たちを魅了し
天才と呼ばせさせた
音感などどこにもない
ただ、ピアノを叩くという感覚だけで
彼は音を奏でた
音が聞こえない彼が
音を出す楽器を弾いた
目が見えない彼が
ところどころに散らばる鍵盤を叩いた
人は彼を天才と呼んだ
END
おもちゃのせいれい
取り出した昔のおもちゃ
ところどころ汚れているけれど
懐かしいおもちゃ
確か、この前喧嘩した友達と
ずっと前に遊んでいたんだった
このおもちゃは、そのとき
その友達がくれたもの
友達は大切なものだっていっていたけれど
僕に笑いながらこのおもちゃをくれた
喧嘩しちゃったな
なんか、おもちゃがずっと自分を見ている気がした
ただのエゴなんだろうな、って思ったけど一応言ってみるか
ごめん。
仲直りしたいです。
END
_____________________________________
進め
歩かなくちゃ前に進めなくて
でも休んでなんかいられなくて
止まっていたら、次々と追い越されて
だから休んでなんかいられなくて
どんなに足を怪我しても
この両足で立って歩かなくちゃならない道がある
この世界には乗り物なんてないけれど
それでも先へ先へと進んでいく
目的地がはっきりとしているわけじゃない
ただ、良いと思った方向に進みたい
そして、誰も通ったことのない道を通ってみたい
中傷なんかでは比べ物にならない
貶されても守りたい
そのくらい、この世界の中の道の
「前」はすごいんだと思う
だから進め
転んだって
痛がっているヒマなんかない
どうしても進め
たとえ痛みで涙がこぼれても
涙で前が見えなくても
痛む足がもつれても
はいつくばってだとしても
END
_____________________________________
人工の煙
誰も空をあおがなくても
空は逃げたりはしない
たとえそれが煙の中だって
貫けば空が見える
だけどいつも空が見えるわけじゃない
ふと気づけば空は雲で覆われていて
その先がよく見えない
人はそれでも空を隠す
蒼くて綺麗な空を見て
美しいと思いながら
空を灰色に染めていく
寂れた未来像
映し出される暗黒の世界
光はさえぎられ
見上げても蒼いものはない
永遠に見えなくなる空
それでも破壊しつづけますか?
END
_____________________________________
慰め
寒い中から出てきて
もう一度笑って
じゃないと 俺がダメになる
笑いもしない
喜びもしない
だけど、涙も流さない
手を伸ばしても、
その手が何を示しているかもわからないでじっとしている
お願い。手をとって。
寒い中から出てきて
もう一度笑って
じゃないと 俺がダメになる
手を伸ばして、触ってみたら、とても冷たかった
ごめん。ごめん。
こんなに冷たくしたのは俺自身だ。
本当に、すまない・・・。
冷たくなった自分自身にあやまって
涙を流す
ごめん、ごめん、ごめん
―――イインダヨ―――
今まで黙っていた僕自身が
軽く頭をなでてきた。
_____________________________________
堕落
人を助け
人の笑顔を見て
喜ぶ自分が居た
嬉しかった
笑ってくれた人をみるのが
光の世界にいたから
心の中に余裕があった
いつしか闇の世界に足を踏み入れた
踏み入れたくなかったけれど
踏み入れなくてはならなかった
心の中に余裕がなくなった
人が困り
人の苦悩をみて
喜ぶ自分が居た
嬉しかった
自分のように困っている人をみるのが
闇の世界にきたから
心の中に余裕が消えた
堕落した自分
振りほどきたいけど振りほどけない闇
終わらせたいけど終わらせられない自分
いつしか光の思い出さえ
憎むようになった。
END
_____________________________________
弱い人
少しの言葉で崩れていって
少しの衝撃で消えちゃうような、そんな人
すごく儚くて、すごく弱くて、すごく小さくて。
自分じゃ守ってやれないくらい、弱い人
手首から血が流れるその人を
僕はどうすることも出来ない
僕の飾られた言葉なんかじゃ
どうすることも出来ない
ごめんなさい
ごめんなさい
儚くて、弱くて、小さくて。
でもすごく、美しい人だった。
「ありがとう」のキモチを知っていて、
それに対する涙を知っていて、
そしてそれを知りながらも
人に「ありがとう」を言ってもらえるような
美しい人。
どうか、強く生きてください。
END
_____________________________________
選択肢
薄暗い中だった。
頼りにしたい人も、今じゃ床の中。
手さぐりで歩いても、
そこで得るものは生活に必要なものだけ。
全て失ったわけじゃない。
薄暗いけど、まだ光ならどこかにある。
探そう。
大切な人に嘘をつき、この世界に入ってきた。
何もかもを捨てた者たちの世界。
それでも尚、大切なものを守るために
この薄暗い世界で生き続ける。
まるで、生きている人形のように使われる
人形なんかじゃない。
人間なんだ。
形だけのモノじゃない。
生がある生きモノなんだ。
もう苦しいよ。
もうダメだよ。
次から次へと押し寄せる黒い並
暗黒へと引きずり込まれる自分自身
選択肢は、一つ。
人形になればいい。
(最後死にました(まて))
_____________________________________
永別
ありがとう
まだ笑っていられる
君たちでよかった
ありがとう
手を降っても、振りかえしてはくれないだろう
わかってる
裏切ったのだから
だけど僕は最後に
最後に笑顔を送ろう
ありがとう
まだ笑っていられる
君たちでよかった
ありがとう
前がよく見えない
目が熱いよ
耳も赤いだろう
ごめんね
ありがとう
さようなら
君たちでよかった
「またあおう」
ごめんね。
ごめん。
さようなら。
_____________________________________
薬売りの少年
いつか報いが来ると信じて
親なし少年は、仕事をしつづける
それが何かも知らないで
少年は売りつづける
手は売り物を入れるバスケットで
豆だらけ
真っ赤な右手を突き出して
買ってくれた人に笑顔でお礼を言う
いつか報いが来ると信じて
親なし少年は、売りつづける
どんなに飢えても
品物には手を出さない
すくない稼いだお金を持って
少年はみかんを買う
おいしいおいしいと言って食べる少年の
その小さな瞳に涙がこぼれる。
震える手に、みかんを乗せて
腫れた手でみかんを口にいれる
涙はとめどなく流れ
食べかけのみかんを濡らしていく
いつしか涙はとまり
みかんは最後のひときれに
だけどそれを食べることはできない
少年の頬に、空から水が。
少年のまわりだけ、水が。
「ありがとう。ありがとう」
大勢の人の声
いつしか少年のまわりは水だらけ
病気の子供
弱い母
死ぬ間際の老人
治らない病を持つ少女
医者
皆が、少年の死をみとった。
皆が、少年に涙を流した。
少年が売っていたのは、
「生」の薬
「幸せ」の薬
「ありがとう。ありがとう」
END
_____________________________________
悲しい風に揺られて、葉は。
悲しい風が吹き荒れて
そこに舞う一つの葉
揺れる
だけど地上にはつけないでいる
いつ地上へ降りられる?
どこまでも吹き飛ばされて
悲しい風に舞わされて
葉は舞い狂う
人間も同じように
周りの並に流され
踊りたくもない足を
むちゃくちゃに回しながら舞う
怖い、怖い、怖い。
風に見放されるのが、怖い。
だから、舞って、舞って、舞って、舞って・・・・
もう一度眼を開いて地上を見るのだけれど
地面ははるか遠く
葉はいつまでも舞う
葉はいつまでも狂い
風が止むまで踊り狂う
そしてやっと眠る
_____________________________________
止痛
地面を叩く手も赤く腫れて
だけどモトになど戻らなくて
手から出る血は止まらないだけ
止めることが出来たのに
止めることが出来なかった
もう帰らない
あの頃のようにはいかない
手から血が 眼から涙が
おびただしい量で地面を濡らす
止めることは出来ない
止められない
止められたはずのものを止められなかったから
叫びあがる声もかすれ
みっともなく枯れていく
違う、違う、違う、
現実逃避
逃げることしか 考えられない
_____________________________________
華麗に咲き、散り、そして、
握りしめた桜の花びら
降りてきた命たちを
掌で掴み取り、握りしめる
最期の時に地面に堕ちて
誰かの足に踏み潰される
優雅に舞う桜の花。
それが花びらの「死」だと、誰が思うだろうか。
この一瞬の間に多くの花が
散り、そして、ふみにいじられた
その怒りとその苦しみをどこに向ければ
全てのものが報われるだろうか
END
_____________________________________
最後の葉
悲しい風が流れてきて 冬の木を小さく揺らす
枝に残った最後の一枚を 風は落としてしまうのか
夢は儚く 命は短く
そんな世界でも
彼は優しく揺れていた
最後の命が落ちるのを 楽しみにしているような風
こんな世界を 彼は愛せるのだろうか
そもそも彼に夢があったのだろうか
いや、ありはしないのだろう
現実に言えばそうなのだが
それを見ている人間にとっては
とてもそうには見えないのだ
いつ落ちるか 落ちてしまうのか
はっとしたとき
葉は落ちた
ドキっとして
残念がって
これでよかったのかもなって思ってしまう
まるで 誰かさんの人生みたいに
=END=
_____________________________________
求める瞳
教えてくれ
ここはどこだ?
夕日が落ちる頃
一人の人間が僕に尋ねた
人間は何もわかっていないようだ
目は挙動不審者のように
辺りの風景をじっくりと見ずに舐めまわし
最後に僕を
震える眼差しで見た
夕暮れだったのに
僕はその人間の顔がよく見えなかった
それは人間の背後に日があったからなのかもしれない
もしかしたら
僕が見ないようにしていただけなのかもしれない
でも確実によく見えるのは
その人間の
澄んだ、悲しい瞳
ここがどこかもわからないのに
その人間は、さも何かを知っているように怯えていた
そして、僕を知っている人のように
じっと見た
僕ははっきり言って
彼を見たこともなかったし
親近感のみじんも感じなかった
だけど人間は、僕は悲しい眼差しで
何を訴えるように見つづけた
それは、ここがどこなのか、という答えを求める目ではない
僕に、何かを知ってほしいという目だった
じっと見つめる人間に
僕はここがどこなのかという答えを教えようとした
だけど
わからなかったのは
僕のほう
ここは
言いかけた僕の口は、開けっ放しのまま止まっていた
どこだっけ?
問い掛けたのは人間のほう
なのに僕が困ってる
本当にわからない
ここはどこなの?
僕は辺りをぐるりと見回した
自分の後ろも見た
黒くなりかけた空しか見えない
そして、もう一度振り返った
そこには、赤く染まる空と
空を赤く染める夕日が落ちていくところが見えた
人間は消えていた
一体、誰だったのだろう
僕はずっとずっと悩んだ
家に帰りたかったけど、今居る場所もわからない。
僕はどうしようもなく立ち尽くした
夕日に助けを求めるように、穴があくほど夕日を見た
だけど答えはどこにもない
ただ一つだけ
わかったことはあった
あの人間は僕だ
今、夕日を見ている僕がそう言っている
あの瞳と同じような、何かを求める瞳をしている
僕は、僕に気付いてほしかったんだ
ここがどこなのかなんて、本当はどこでもいい
僕が、僕に何を求めているのか
それを知ってほしかったんだ
=END=
_____________________________________
道
吐息を吐いている時間がもったいねえ
今を真っ直ぐ生きていけ!
これが俺の 生きる道
これが俺の 人生だ
偉そうに人に語れるほどの 大きな夢なんて持ってねぇけど
偉そうに人に語れるほどの 大きな広い困難な道を歩いてみせるぜ!
遠い彼方に浮かぶ月 どこまで走っても追いかけてくる
そしていつか太陽に変わる どちらもない日はないから
走れ!走れ!どこまでも
急げ!急げ!息を大きく吸って
待っている 空の上
きっと何かが待っている
急げ!急げ!お前の道を
走れ!走れ!追い抜かれるな
たとえ誰か お前を
もっと貶す者が現れても
いつでも 誰かがお前を見てる
いつでも 偉そうに語れる道を
いつでも 単純な道は歩けない
いつでも 空には星が瞬く
いつでも お前を星が見てる
走れ!走れ!どこまでも
走れ!走れ!つまづいてもいい
走れ!走り抜け!ゴールはないけど
いつかこの星の全てが終っても お前の道はどこかできっと漂っている
=END=
_____________________________________
過酷な人間花
一輪の花が咲き誇る
美しいほどに艶やかな素肌は
まるで高いところに存在する桃のような色だった
それでもその中に
同じ種類の花で 咲くことのできない花がいた
美しいツボミが開くことはないのだろう
その茎は、すでに皮だけで繋がっていた
これが現実なのか
まわりの花の中で その一輪だけが咲くことを許されなかった
「花」という「咲く」ものが
「咲く」ことを許されないのだ
もう二度と
その花は泣く事すらままならず
死んでいくのだ
いや もう死んだも同然のその姿
「咲く」ためのものでも
いつかは「枯れる」ように
「咲く」前に「枯れる」のだ
はじめから咲くことが許されない花が この世にはたくさんある
=END=
_____________________________________
孤独の少年
肩を叩いてくれる人なんていなくて
すすり泣く声は惨めに響く
遠くで戯れている子供たちの声は明るく
少年を一層惨めにさせた
たとえ空が満面の笑みで笑っていても 少年はいつも孤独だった
もしも誰かが彼の肩を叩いたとしても 少年は二度と振り向かないだろう
割れた心がガラスに映り少年がそれを見た
誰も彼を見てやらないから
少年の心は盲目になった
もしここに天使が舞い降りても 見ることなんてできないだろう
_____________________________________
友に送る手紙
冬になりかけの秋 部屋の中は少し暗くて
電気をつけないでいると 本当に真っ暗
窓についている露のカーテンが
部屋をもっと暗く冷たくする
そして僕の肌も冷やして
友人への言葉袋にも 思いを詰められないまま
友も手紙を待っているだろう 冷たくなる風もこれを届けてはくれないのだろうか
いつか冷える心を 暖かいうちに友に送ろう
凍りかけの指先 筆を滑らせる手を邪魔して
気が付けば何も読めない字 これでは伝わらないだろう
窓から垂れてくる露のスキーが
太陽のバックライトに照らされ
机の上に手紙の上に映えて
美しい文字を描き 窓からのライトは手を温める
友も手紙を待ちわびているだろう 暖かくなり自由になったこの手で言葉を送ろう
いつか冷える心を 暖かいうちに友に送ろう
=END=
_____________________________________
でこぼこ道
たまに辛いときに 涙を流しても
それはきっと 次のスタートを踏み出す気になる
たまに嬉しいときに 笑顔を見せても
それはきっと エネルギーに代わってくれるはず
辛く考えなくていいんだよ
自分の思いを見つけて生きよう
苦しく思わなくて良い
貴方は貴方であるしかないから
貴方らしく生きて この、でこぼこ道を歩いて。
たまに辛かったり 嬉しかったり
そのたびに 道の形が変わっていくの
たまにへこんだり つばくんだり
そのたびに こけそうになっちゃうんだ
自分を信じてあげて
信じられなくなっても意地を張って信じてあげて
自分を慰めてあげて
慰めが気ありでも 自分からなら少し心が許せるんじゃない?
辛いこと
楽しいこと
悲しいこと
嬉しいこと
どんな場所にも 平らな道なんてないから
そのでこぼこ道を 歩いていこう
=END=
_____________________________________
あのどこまでも続く空
胸に釘が打たれたような この痛みはいつ消えてくれるのか?
過ぎた時間を眺めていたって どこにも答えはない
夢から覚めたような現実の中 さっぱりともしない瞼が重すぎるだけで
前の景色さえ半分しか映らない そしていつか消えてしまうのか?
語れない過去の話なんて すぐに忘れてしまえと言うけれど
忘れられないのが普通な話 それがたとえ小さなことでも
あぁ、何もかもが消えて 全てを投げ出すなら
僕は心も捨てるのだろうか?
あぁ、いつのまにか足は 前へと駆け出していた
本当の過去を求め
胸につきささった釘が染める その痛みとともに赤く染まる
誰も助けてはくれないと 嘆くことも遅すぎたのだろう
君が待っていると思って 駆け出した足は前へ進むだけ
いつか止まることができるのかと 嫌な期待を走らせている
濡れた頬をなでるモノもなくて 弱さを目の当たりにしたけれど
僕は影が弱い部分なんて 思ったりはもう二度としないだろう
あぁ、君を壊したいと 狂う僕の前に
君はふっと現れて微笑んだ
あぁ、その純粋な瞳 僕にくれるとでも言うの?
君なら僕の影を盗れる
あぁ、抱いた君の体 柔らかく暖かい
影さえ吹き飛ばす光を持っている
あぁ、時には冷たさを 時には暖かさを
あのどこまでも続く空のように
=END=
_____________________________________
暖めて。
いつのまにか檻の中だった そこはきっと監獄だったのさ
僕の手足はその中で縛られ 夢さえ身動き取れなくなる
たまに冷たい風が流れるだけで
そこには僕の他に誰もいない
夢だって凍りつくほどの冷気の中
僕は祈りを捧げて目をつぶる
まるで死んでいるかのよう
肌も冷たくなる
忘れていた鋭さを思い出す
いつも見ていたかのよう
目も虚ろになる
信じていた現実を見れず
いつのまにか氷の中だった それはもっとカチコチに凍るのさ
僕のココロは凍り付いて 息もわずかな慰めのよう
たまの餌付けの時間があるだけで
そこには急速なんてものはない
吹き荒れるほどの風は吹いていないのに
そこはまるで氷の世界で
いつか抜け出してみよう
ココロを縛る場所から
忘れていた希望を思い出す
たとえ慰めでもいい
ココロが暖められて
信じていた夢が生き返る
あぁ、夢があるのならば
暖めて走ろう
監獄の中から抜け出してしまおう
あぁ、冷たい空気の中
走り出せないなら
暖めて全てを買えてしまおう
=END=
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