BLOOM SHIFT

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小説置場。



部活帰りの金曜日。玄関を開け、ただいまと一言キッチンにいる母親に告げると
汗まみれになったTシャツを脱ぐため俺は自室のある二階へと足を急いだ。
「朋也。これ!」
半分まで階段を上った所で母親に呼び止められ、なにー?と返事だけを返す。
「着替えてからでいいから富坂さん家までこれ届けてちょーだい」
可愛らしい猫のキャラクターが描かれたハンカチに包まれた弁当箱を
階段に置かれ、草壁朋也は嫌そうな顔をすると
キッチンの奥から聞こえた母親の冷める前に早く!!という
若干怒り気味の声に背中を押され、朋也は渋々家を後にした。

ピンポーン
「ヨーコーお土産ー」
クラスは違えども幼稚園から高校まで一緒。俺と富坂陽子は幼馴染ってやつだった。
クラスじゃ付き合ってるとか噂をする奴も多いけど
小学校からそういう風に馬鹿にされ続けてきた自分にとっては慣れたもので
今では、はいはいと軽くそんなクラスメイトの冗談を流せるようになっている。
(まぁ……あいつも少しは女の子らしくなってきたんだろうけどねぇ)

中からの返事を待ち、そんなことを考えながら玄関先で待つ朋也に
いつまでたっても陽子の返事は帰ってこない。
ピンポーン
2回目のチャイム。

留守か?

まぁ留守なら留守で玄関に弁当箱置いていけばいいや。
玄関を開け、中の様子を窺う。リビングからテレビの光が漏れていた。
(どうせまたテレビでも見ながら居眠りしてんだろ)

「ヨーコ、入るぞ~?」
靴を脱ぎ、廊下を抜け、光の洩れるリビングへと足を急ぐ。
「これ、母さんがこないだのお礼だってさ。冷める前に食えって。」

ギッ!?

突如、世界が止まった気がした。
鉄が擦れるような音が聞こえ、目の前にソレはいた。
金属で出来た顔に目も鼻も口もないマネキンのような機械がこちらを
じっと見つめてくる。

なんだこれ……?

朋也は目の前の「未知」へと恐怖した。

「トモちゃん助け」
聞きなれた幼馴染の声がぐしゃという生々しい音と共に遮られる。
あるべきものがそこにはなかった。

その光景を目の当たりにした朋哉は
胸の奥から競り上がってくる吐瀉物を床へとぶちまけた。


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