2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
全1件 (1件中 1-1件目)
1
火事は無事止んだ。村人はセラフを称えたが、一人だけそれを良しとしない人がいた。「おい、セラフの旦那!」家の持ち主、僕を刺そうとしたあの男である。「おらの家どうしてくれるだ!」「しかたないじゃろう、それに例え水をかけたとしてもあんな状態じゃ石壁以外何も残らんじゃろう」セラフの正論に男はたじろいだが、それでも反論を続ようとした。「しかし・・・」「この小僧に聞いたが、この火事はお前の不注意で議論は延々と続く。他の村人が宥めても男は聞かず、ついには村長が動員されるまでの騒ぎになった。しかし、村長と自称した温厚な老婆が二人の男相手に仲裁に入った所で現状はあまり変化しなかった議論は延々と続く。「でもわしの家を燃やしきったのはお前のほのおだべ!」 家の焼け跡に残った一本の巨大なランス。他の家に燃え移らないようにとセラフのとった態度。それがセラフの泣き所となり、二人は村長の示した『セラフと男が協力して家を建てる』という案に辿り着く事になった。二階の一部と三階が客間になっている村役場。僕の寝室は二階の部屋に用意された。部屋には箪笥に鏡、右隅には布団が用意されている。重力に身を任せて、僕は布団に倒れこんだ。記憶の無い自分。抜け殻のような自分。行き場の無い自分。以前の僕はどこに住んでいたのか。以前の僕は何を考えていたのだろうか。迷宮入り寸前の思考をカットする。呟いた声は誰に聞かせるための物ではない、自分だけの物。「こんなのらしくないよな・・・」きっと以前の僕ならこう考えるだろう。根拠の無い結論に満足した僕は、睡魔と手を取り、心地よい怠惰の河川に身を投じた。
2004.10.24
コメント(0)