駿府マラソン


      第24回 静岡駿府マラソン完走記 

 いつでも1500mを5分で走れること、LSDのトレーニングを積んできたという自負はあるものの、初めてのハーフマラソンへの自信はなかった。スタミナがもつだろうかキロ4分30秒で1時間35分を切ることを目標にしたけれど、キロ5分で、1時間40分でもよしとしようという甘い囁きもあった。
 沼津駅南口で北村さんに会ってからドラマが始まった。元日からランニングダイアリーをつけ始め、距離を稼いで月間走行距離が300キロを超えたことを話す。
「それなら、キロ4分で走れるよ。行けるところまで行こう。」
自信はなかった。しかし、北村さんについていきたい気持ちはあった。
 駿府公園で、智祥さんと会う。駿府公園の緑の中を、15分ほど体調を確かめながらジョグ。可もなし不可もなし。スタート30分前に、北村さんと待機地点の、3列目に並ぶ。10分前に雨が落ちてきた。雨は、苦手だ。愚痴が口をついて出る。
「午前中もってくれると思っていたのに。」
「日本平桜マラソンの時は、初めから土砂降りだったな。伊豆スカイマラソンは、凄まじい雨と風で、テントが全部吹き飛ばされたよ。」
さすが北村さんだ。困難を乗り越えた体験を活かしている。そうだ、三島の駅伝の1区で4位だった時は、雨だった。雨とは、相性がいいんだ。自己暗示をかける。 
 スタート地点に歩いて移動すると、招待選手・陸連登録選手が横から先頭に並んだ。しかし大通りだったので、スタートと同時にキロ4分の走りが出来た。北村さんと肩を並べて走る喜びを力に変えた。5キロのラップ19分22秒、少し速すぎたか。安倍川土手の松並木を楽しむ。上り下りでペースを上げ、走りにメリハリをつける。俺は、登りと下りが得意だと自己暗示をかけながら。
 折り返す選手の走りを見て、勇気をもらう。折り返すと、10キロ地点。19分57秒のラップを確認する。「10キロまで走れれば、後は行けるよ。」北村さんの言葉を思い出し、自信を持つ。智祥さんとエールを交わす。
 トレーニングにより、体が1キロ4分のペースを覚えている。苦しさに耐えられずにペースが落ちる時、離れていく北村さんの背を見ながら、自分に言い聞かせた。「ここで諦めたら後悔するぞ。絶対に、最後まで一緒に走るんだ。」そしてなんとか食らいついて併走状態になると、また体が楽になった。北村さんが遅れることもあった。その時は、驚き、自分が速くなったような気がしてペースを上げたくなった。しかし、追いついた北村さんと併走することで、冷静さを取り戻した。苦しさを乗り越えるのも体の舵を取るのも心であることを実感した。
 15キロ地点のラップは20分22秒。暫く走ると給水所。北村さんは紙コップを取る。少し迷ってそのまま走る。北村さんが来ない。そこから一人旅が始まった。安倍川を渡ってから、陸連の20歳代のランナーを気持ちよく抜き去りながら、自信を深める。残りの距離を、自己表現の場として捉え直して、苦痛を忘れる。20キロ地点のラップも、20分33秒と落ちなかった。雨が心地よかった。
 そして、わき上がる歓喜と共にゴールした。賞とは無縁だが、人生最高の栄誉だった。

  記録 1時間24分38秒
部門順位     44位 (513人)
総合順位    199位(2121人)




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