月下美人の語り草

月下美人の語り草

らぐなlock 第11話


・・・ふむ。どうやらホブゴブリンと戦っているようだ。
ホブゴブリンは小柄なわりに怪力を持っており、得物のハンマーを自在に操る妖魔の一種だ。
対峙するのは、紫色の髪の・・・青年か?一見、女のようにも見えるが男のようだ。
年の頃はアイラと同じか少し下くらいだろう。
武器はスティレット、身に着けているのは皮のよろい・・・。
ここで戦うには少々心許ない装備である。
まぁアイラはそれ以上に弱い装備なのだが、金がないのでは仕方がない。
彼もひょっとしたら同じような理由なのかもしれない。

紫色の髪の青年「・・・っ!!」

ハンマーの一撃をかわし、スティレットで突きを繰り出す!
カウンターで急所への一撃が決まる!
ホブゴブリンは声もなく絶命していた。
彼は刀身についた血を払い、スティレットを鞘に納めた。

紫色の髪の青年「・・・・ん?」

青年はこちらに気づいたようだ。
にこやかに話し掛けてくる。

紫色の髪の青年「どうもこんにちわ♪」
アイラ「・・・こんにちわ。鮮やかなお手並みね。」
紫色の髪の青年「はは・・ありがとう(笑)まぁ慣れかな?長く戦ってると相手のクセも覚えちゃうからね。」
アイラ「長くねぇ・・。どれだけ戦ってるの?」

確かに先ほどの戦い方を見ていると、相手の行動を読んでいるとしか思えない動きだった。
しかしクセを覚えるなどそう簡単にできるものではない。
よほどの才能をもった者か、彼の言った通り長く戦い続けた者でない限り・・・。

紫色の髪の青年「そうだなぁ。。少なくとも1万戦以上はここで戦ってるかな?」
アイラ「いっ・・いちまんせんん~~!!!??」

これにはアイラも驚いた。
というかそれだけ戦ってて何故上級に行かん!?
アイラも同じ疑問をもったようだ。それを聞くと・・・。

紫色の髪の青年「・・・だって怖いんだもん♪」

だそうだ。よく分からんやつだ。

アイラ「だったら装備を強いのに買い換えればいいじゃないの・・・。」

うむ。その通りだ。
それだけ戦っているのなら金には不自由していないはずだ。
各国で開発し強化された属性付きの装備でさえ買えるだろう。
すると彼は少し頬を赤らめ・・・。

紫色の髪の青年「だって・・・この子に愛着が出てきちゃって(照)」
アイラ「『この子』!?Σ( ̄□ ̄;)」

刀剣マニアか!?Σ( ̄ロ ̄lll) ガビーン
危ない奴と知り合ってしまったな・・・。まさか名前までつけていないだろうな・・・。

紫色の髪の青年「それにしても・・君もそんな装備のままでこの塔に挑むなんて勇気あるね(笑)てかちょっと無謀だよ?(汗)」
アイラ「お金がないのよ。仕方ないでしょう。」
紫色の髪の青年「だったら初級でお金を貯めて装備を買えばいいじゃないか。何も死と隣り合わせに中級で戦う必要はないさ。」
アイラ「・・・早く強くなりたいのよ!初級じゃ物足りない。」

アイラは床を睨みつけながら言い放つ。
青年は怪訝な顔でアイラをしばらく見ていたが、真剣な表情で言った。

紫色の髪の青年「だったらなおさらさ。ココで戦ったってそれほど価値はない。死と隣り合わせの緊張感を経験するのはもちろん大事だけど、常にそれを続けていたらいつか必ず倒れることは目に見えてる。・・・それは自分でもわかってるんじゃないかな?」
アイラ「・・・ッ!」

彼の言うとおりだったのだろう。アイラは息をのみ、言葉を返せなかった。

紫色の髪の青年「国に君臨している強者たちが最初から強かったと思うかい?そんなはずはないさ。彼らだって昔はゴブリンを倒すのにも手間取っただろう。初級からコツコツ訓練を重ね、装備も徐々にいいものを揃え、それで現在がある。」
アイラ「・・・・・。」
紫色の髪の青年「弱いことを気に病む必要はないさ♪これから強くなっていけばいいんだからね(笑)それに・・・」
アイラ「・・・それに?」
紫色の髪の青年「ここに一万戦以上も戦っているのに怖くて上級にいけない奴もいる(汗)」
アイラ「・・・・ぷっ・・。あはははははww」

アイラは大爆笑した。笑い声が塔内をこだまする。
しかし・・刀剣マニアのくせになかなか良いことをいう奴だ。
私が言いたいことを全て言ってくれた。うむ。褒めてやろう。

アイラ「・・・くくく・・そうだねwそれに比べたらまだマシか♪」
紫色の髪の青年「なんか笑い過ぎな気もしなくもないけど・・・まぁいいか(苦笑)」
アイラ「あははwありがと。なんか分かったような気が・・・!?」

ズズズズズズズズズズズズズ・・・・・!!!!

なにやら地響きが・・・!?これは一体・・・?
二人は辺りを見回した。
と、その一角になにやら黒く巨大な影が・・・!
巨大な樹木の幹に洞のような穴。それが顔のように見える。
そして何よりモンスターなどと比較にならない邪悪な波動。
初めて見るが・・・これは、まさか・・・

紫色の髪の青年「は・・破壊神だ・・・。なんでこんなところに・・・。」
アイラ「破壊神・・?」
紫色の髪の青年「逃げよう!今の僕らが勝てる相手じゃない!」
アイラ「・・・う・・うんっ!」

一目散に入口に向かって駆け出す二人!
破壊神は二人を捕らえようと枝を伸ばし地を這わせる。
あと入口まで100m。時間にすれば10数秒。・・・・間に合うか!?
地響きの中バランスを崩しつつ廊下を駆け抜ける。
入口まであと5mという時、忍び寄る破壊神の枝が青年の足をつかもうとした・・・。

アイラ「でぁぁぁああああっっ!!」
紫色の髪の青年「ぐぁはぁっ!!」

それより一瞬先にアイラは青年を蹴り飛ばした。
その勢いで青年は入口の外まで飛んでいき、木の幹に激突した。
アイラはそれを確認する間もなく、そのまま入口の門を駆け抜けた。
振り返ると破壊神の枝は門の結界に弾かれ、灰となった。
どうやら外には出れないようだ。ほっと一息つく。

紫色の髪の青年「・・・ゲホゲホっ・・・ひどい事するなぁ・・・(泣)」
アイラ「アイツに捕まるよりはマシでしょ?」

背中をしこたま強く蹴られたらしい。むせる青年に平然と言い放つアイラ。

紫色の髪の青年「まぁそうだけどね。。だからってもっと優しく・・ブツブツ・・」
アイラ「聞こえないw・・・さて、また戻ったところでアイツが怖いし。今日はもう街に戻ろうっと♪」
紫色の髪の青年「はは・・そうだね。僕もリキュアに行かなくちゃ。」
アイラ「ん?んじゃ私と同じだね。一緒に行きますかぁ。・・・ヤだけど。」
紫色の髪の青年「ヤだけど・・って(泣)・・・君はリュシスの人だったのか。」
アイラ「うん、そーだけど?貴方は違うの?」
紫色の髪の青年「うん。僕はヘルヘイムからきたんだ。ちょっとリュシスの知り合いと会う為にね。約束の時間まで暇つぶしに戦ってたんだけど、こんな目にあうとは思わなかった・・・。」

『こんな目に』というのは破壊神をさしているのか、はたまたアイラの蹴りをさしているのか・・・。
恨みがましい目でアイラを見ているから、おそらく後者であろうが。

アイラ「へぇ・・他国の人を見るのって初めてだわ。ま、いいか。んじゃ行こ行こ♪」

青年の視線の抗議を見事にスルーしたアイラ。表情もかなり柔らかくなっている。
どうやら気が晴れたようだな。彼女らしさが戻ってきた。
アイラもこれで無理はするまい。彼女に代わって青年に感謝しよう。

まだ青年はブツブツつぶやいているがアイラが気にするはずもなく、二人は対照的な様子でリキュアへと戻っていった。

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