月下美人の語り草

月下美人の語り草

らぐなlock 第14話



アイラは耳を疑った。
その一言で眠気もどこへやら、一気に目が覚めた。


ここはリキュアの官邸にあるリュシス国作戦司令室・・・。
アイラは初めて入るが、この部屋には国の運営に欠かせない重要な装置がある。
その最たるものが、部屋の中央に位置する大きな水晶球だ。
これは情報を全国民に伝達するためのもので、この水晶球に魔力を帯びさせると頭に思い描いた者と話をすることができるのだ。
情報の伝達には手紙が主流だが、戦争中など緊急時にはこちらを使用されることが多い。
ただ使用には膨大な魔力を消費するため、ビショップや賢者クラスの魔力を持つ者が情報伝達役として必要だが・・・。
普段はここは閉鎖されており、厳重な警備の元管理されている。
そして今ここにリュシスの兵全員が集められていた。
その理由は・・・。


銀狼「もう一度言います。ヘルヘイムを・・・攻めます。」

あまりに突然の報告に一同は時間が止まった。
いきなり朝早く皆を集めたかと思ったらこれである。
一同の頭には『?』の文字が浮かんでいる。

牛「つい先日、同盟国のディストピア国から連絡がありましてね。ヘルヘイムに侵攻するらしいんです。」

牛が王に代わって説明する。

牛「ディストピアはウチに共闘依頼をしてきましてね。それを受けた、というわけですよ。ウチとしても断る理由もありませんしね。」
銀狼「皆も戦争を体験する良い機会だと思う。日頃の訓練の成果をヘルヘイムにぶつけてやってくれ!」

ようやく事態を飲み込めたようで、一同は思い思いの言葉を口にしている。

「っしゃ!やったろうじゃん!!」
「・・・えぇ?ちょっと怖いなぁ・・。」
「貯金下ろして良い武器買わなきゃ・・・。」
「うはwwwwおkkkkwwwww」

・・・ってちょっと待て!今いるはずのない人がいなかったか!?!Σ( ̄口 ̄;)
一同も慌てて辺りを見回した。しかし姿は見えない・・・。
むぅ・・・神出鬼没だな・・・。

牛「えー・・コホン。開戦の日時は1週間後です。万全の状態で戦いに臨めるよう、それぞれ準備をお願いしますw」

まぁいい。ともかく戦争の準備にとりかからなければな・・・。
一同は各々の準備に取り掛かる為、続々と退室していった。
しかしアイラはただ一人動かない。
・・・どうした?

牛「おや?僕の可愛い子猫ちゃんwどうしたんだい♪」
アイラ「ゴメンね。牛じゃなくてちょっと銀狼さんに聞きたいことがあって・・・。」
銀狼「・・・俺に?」
牛「( ̄□ ̄|||)がーーん!」

アイラにそう言われ、スゴスゴと退室していく牛。
あわれな・・・。頑張れ牛。お前にもきっと明日はあるさ。
その様子を半笑いで見送る銀狼。
退室したのを確認するとアイラに向き直った。


銀狼「それで、どうした?」
アイラ「うん・・。ヘルヘイムと戦うんだよね・・?」
銀狼「あぁ。」
アイラ「・・・空野蜘蛛・・もいるんだよね?」
銀狼「そうだな。」

銀狼は平然としている。
その様子にアイラはカッとなった。

アイラ「・・ッ!!なんでそう冷静でいられるの!?」

アイラは銀狼の胸倉をつかんだ。
しかし銀狼は何を怒っているのかわからないといった風で

銀狼「・・・何を言っている?」
アイラ「何って・・友人なんでしょ!?このままだとあの人と戦うことになるかもしれないんだよ!?」
銀狼「当たり前だ。戦争だからな。」

銀狼の声はまったく澱みがない。
迷いなど何もないようだ。

アイラ「貴方は・・それでいいの?」
銀狼「あぁ。この時代に生まれた運命というやつだ。目の前に立ちふさがる者は剣を交える。それが道を違えた者の宿命だ。」

銀狼はアイラの手を払って司令室を出て行く。
アイラは一人司令室に残された。

アイラ「・・・・・。」

アイラは床を睨みつけ拳を握りしめている。
よほど銀狼の言葉が意外で衝撃を受けたのだろう。
明らかに怒り心頭といった感じだ。
今の彼女に近づくのは得策ではないだろう。


同日、昼過ぎ・・・。
彼女はミッドガルドの森で訓練・・・いや、憂さ晴らしをしていた。
ここに来てから2時間ほど経つが、一向に腹の虫がおさまらないようだ。

アイラ「ああああッッ!!わかんないッ!!」

ゴブリンをボコボコにしながら喚いていた。
関係ないのに必要以上に攻撃を受けるのだからたまったものではない。
アイラには理解できないのだ。
いくら同盟国の要請とはいえ、友を犠牲にする選択をした銀狼の考えが。
アイラは仲間を友を何よりも重要だと考えている。
その為なら己が傷ついても構わないと。

アイラ「あ~もぅッ!!アンタたち、もっと根性出しなさいよ!憂さ晴らしにもなりゃしないッ!!」

そんな彼女もモンスターには容赦無しなのだが。
モンスターたちはお互いに目を合わせ『お前行けよ・・』『やだよ・・お前こそ行けよ』的な雰囲気を漂わせている。
だんだん気の毒になってきたが、自分に危害が及ぶのは嫌なので放っておこう。

アイラ「もういいッ!まとめて相手になってあげるから、かかってらっしゃい!!」

アイラは群集の中に突進した。モンスターは悲鳴をあげながら倒されていく。
彼女のモンスターいぢめは空が暗くなるまで続いた・・・。

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