月下美人の語り草

月下美人の語り草

らぐなlock 第16話


アイラの鉄の剣が閃きpockiの首に迫るッ!
しかし寸前で残像を残しpockiの姿が掻き消える。

アイラ「・・・ッ!?」

一瞬後には冷たく固い感触がアイラの首筋に当てられていた・・・。

pocki「はい、ここまで♪」
アイラ「・・・だぁ~~ッ!!いい線いってると思ったんだけどなぁ~・・・。」

ニコリと言い放つpockiに悔しがるアイラ。
剣をアイラの首から放し鞘に納める。

pocki「いやいや、まだまだですよ♪剣の使い方がまるでダメですねw」
アイラ「・・・にこやかな顔して結構言うことキツイのね。pockiさん・・・。」

ガックリうなだれるアイラ。


ここはリキュアにある官邸の別館。訓練場である。
開戦まで数日。その期間を己の強化期間にすることを決めたアイラは、pockiに頼み込んで稽古をつけてもらっていた。
アイラははっきりいって弱い。素人からは比較できない強さをもっているが、pockiやJupiterに比べれば足元にも及ばないだろう。
ましてや銀狼などトップレベルの者にしてみればなおさらだ。

pocki「見たところ、剣を使うよりも素手での攻撃の方が得意のようですね。そちらに特化してみてはいかがですか?」
アイラ「・・それも考えたんだけどね。私の攻撃は軽くて・・・ダメージを与えにくいのよ・・・。」
pocki「ふむ・・・しかし慣れない剣を使ったとて、相手に当たらなければ意味がありませんよ。」
アイラ「・・・だよね^^;それにこの剣使ってみたら重くって・・・。思うように動けないし。」

アイラはふぅ・・とため息をついた。
なるほど。アイラの動きが鈍く感じたのはそのせいであったか。

pocki「そうですね。重ければ重いほど連続攻撃を出しにくくなってしまいますから。」

アイラの攻撃スタイルの『売り』が封じられるってことだな。それはマズイ。
彼女も悩んでいる・・・。

pocki「・・・以前私が戦場で出会った格闘家は、拳や蹴りに自身の気を乗せて攻撃していました。発勁というんですがね。」
アイラ「・・・発勁?」
pocki「そう・・私たち剣士も一流になれば剣に気を込め、破壊力を増しているのですよ。・・・こんな風に。」

そう言ってpockiは剣を構え意識を集中させる。
みるみるうちに剣が薄く紅い光を帯びてきた。

pocki「ちょっとそこに剣を構えて立ってもらっていいですか?・・・あぁ、気を抜かずに。」

言われた通り剣を構えるアイラ。そしてpockiは軽く一振りする。
そう、軽くである。ただそれだけで・・・アイラは次の瞬間壁まで吹き飛ばされていた。

アイラ「・・・かはっ・・!?」
pocki「あぁ・・すいません。大丈夫ですか・・・?」

アイラは背中を強打したらしい。しばらく咳き込んでいたが、それが収まると抗議の言葉を・・・。
・・・・・ってあれ?彼女は呆然としたまま動かない。

アイラ「・・・・・すごい・・。」

フラフラしながら起き上がるアイラ。しかし彼女の目は輝いている。

アイラ「すごいよ、これ!これなら・・・!」
pocki「ええ。貴女も十分戦力となるでしょうね♪・・・しかしこれは制御が非常に難しいのです。常に気を暴走しないように集中しておく必要がありますからね。かなりの鍛錬が必要でしょう。」
アイラ「・・・でも、やるしかない・・・よねw」

顔を輝かせて言うアイラにpockiは笑顔で返す。


ここは中級者の訓練場、ヨツンヘイムの塔。
まず全身の感覚を研ぎ澄ます・・・。そして周囲から気を吸収し、拳に意識を集中・・・。
そして、一気に・・・!!

アイラ「はぁぁぁああああッッ!!」
ドガッ!!

倒れるレッドデビル。

アイラ「・・・・・あれ?」

拳を見ながら首を傾げるアイラ。
うむ・・・どうやら失敗のようだな。成功すればもっと手応えに表れるはずだ。

アイラ「おっかしいなぁ・・・。」

頭をポリポリ掻いて、一連の動作の流れをもう一度ゆっくりと試してみる。
pockiにやり方を教えてもらってはいるものの、なかなか上手くいかず普通に殴るだけになってしまう。
発勁は一流の強者のみ体得可能という技だ。一朝一夕では身に付けられようはずもない。
しかし体得できれば間違いなく戦力は大幅にアップされる。
同じ剣使いでありながらナイトや暗黒騎士に比べて、イーブルロードやパラディンが別格の強さを誇るのはその為だろう。

アイラ「えぇい!何十回もやってれば感覚も掴めるでしょ!次、かかってきなさぁ~い!!」

モンスターの群集に向かっていくアイラ。
・・・ちょっと前まで初級で同じことをやっていたな。
『中級でも普通に暴れられるようになった』ということは、『彼女自身が強くなった』ということだ。
装備のお陰でもあるだろうが、彼女自身が成長しなければ無理な芸当だ。
・・・彼女本人はそれに気づいていないようだがな。
しかしそれでもまだまだ力不足なのは紛れもない事実。
おそらく敵国にはパラディンクラスの武将が数多くいることだろう。下手すれば勇者も何人かいるかもしれない。
そんな中で経験不足のアイラが戦場で勝つには必要不可欠な能力だ。
彼女もそれは痛いほど分かっているはずだ。
無理かもしれない。勝てないかもしれない。
だが彼女が求めるのは強さなのだ。諦めや逃げなど求めてはいない。
それを手に入れたいと願う、その『想い』その『意思』で彼女は足を前に進ませる・・・ただそれだけである。


その日の訓練は夜まで続いたが、結局体得はできずに宿へと帰還した。
アイラは宿に戻る早々ベッドに倒れこみ、すぐに寝息を立て始めた。
体中傷だらけでボロボロ。打撲もあちこちにみられ内出血で青くなっている。
・・・だが、彼女の表情はいつになく満ち足りた寝顔をしていた。
心から到達したい目標を見つけた者とは、こんな表情をしているのかもしれない・・・。

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