「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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月下美人の語り草
らぐなlock 第20話
無防備な身体にまともに喰らった一撃だ。決して浅い傷ではない。
剣から滴り落ちる血。
「ふん・・・油断したな。何も敵は目の前の奴だけではない。」
低くよく通る声。聞き覚えのある声だ。
アイラはその声を聞いてようやく自分がどこも斬られていないことに気づいた。
瞑っていた目を開き様子を窺う。
目の前には利き腕の肩から血を流し苦しんでいるzero。
そして銀の長い髪に鋭い目。魔族のような顔立ちの青年。
どうやら彼が助けてくれたようだ。
アイラ「貴方は・・・ディストピアの・・・。」
ディス「ディスだ。」
アイラ「ディス・・・貴方もこの部隊にいたのね。・・・ありがとう。」
ディス「礼などいらん。この状況では味方は多い方がいい。」
言ってディスは剣を振り上げ、zeroめがけて振り下ろす!
ヒュン!ガッ!!
ディス「・・・・ッ!?」
zeroの姿が消えた!?
剣はzeroを貫かずに地面に突き刺さった。
周囲に目を向けると少し離れたところにその姿はあった。
そしてその前に立ちはだかるように一人の女剣士がいた。
今の一瞬で彼女がzeroを連れて移動したのであろう。
水色の髪。両手には小剣が一振りずつ。
妖艶な目つきに整った顔立ち、ナイスバディな体つきはこの戦場に似つかわしくない気がする。
剣士というよりもむしろ踊り子といっても差し支えない程、女性らしい魅力を振りまいている。
同じ女であるアイラですら思わず見惚れてしまった程だ。
ふと我に返り、自分と見比べる。
・・・・・ため息ひとつ。
身体が震えているように見えるのは気のせいではないだろう。
アイラ「ち、ちちち・・・ちょっとぉ~!!アンタなんなのよっ!一体っ!!」
腹いせというか言いがかりというか・・・。
突如現れた女剣士に逆ギレでくってかかるアイラ。
嫉妬に狂った女は見苦しいぞ。
アイラ「外野うるさいッ!!(°o°(☆◯=(-"-#)。オラッ」
ゲフッ!?
だからナレーターを殴るなと言うに!!
エン「私はエン。ヘルヘイム国の武将。・・・これ以上何か必要かしら?」
アイラ「ぐっ・・・!」
何も言い返せない。全てにおいて負けているな。
負けを認めろ。ディスも呆れているぞ。
ディス「・・・・・・・・・・ふぅ。」
アイラ「あっ!コラ!なにため息ついてんのよっ!!」
ディス「どうでもいいが・・・戦わんのか?」
うむ。正論だ。
アイラ「ぅ・・わ、わかってるわよっ!」
エン「・・・やる気になっているところ悪いが、ここは退かせてもらうわ。」
アイラ「なっ・・逃げる気!?」
zero「ちょッ・・・エンちゃん、そりゃないぜ!!」
これには意外だったのかzeroすら声を上げる。
ディスだけが落ち着き、状況を見定めようと沈黙している。
zeroから抗議の声を受けたエンは冷静に言い放つ。
エン「私たちの軍は連合軍の本隊と先鋒部隊の挟み撃ちにあっている。このままでは全滅するわ。」
zero「なっ・・・!?」
戦いに熱中していて気づかなかったのか、まともに顔色を変えて後方に目を向ける。
まだ遠いが軍の後方から確かに怒声と喧騒が聞こえてくる。
エン「zeroちゃん、ここは退くわよ。体勢を整えてもう一度戦うのよ。」
zero「うはwww冗談じゃねぇ!!俺はまだまだ・・・・・ハゥッ!?」
zeroの言葉は最後まで口にすることはできなかった。
なぜならエンが彼の傷口に蹴りを入れ、あまりの痛みに気絶してしまったからである。
・・・・・なんつー娘だ・・・。
アイラ「・・・・・。」
ディス「・・・・・。」
二人も唖然としている。
エンは『やれやれ・・・』といった感じでzeroを担ぎあげる。
妙にこの男の扱い方が手馴れている気がするが・・・いつもこんな扱いを・・・?
zeroが可哀想に思うのは私だけであろうか。
エン「まったく・・手間掛けさせんじゃないわよ。・・・私たち一旦退くけど、貴方たちもそれでいいわね?」
アイラ「・・・あ・・はい・・。」
ディス「・・・どうぞ・・お気をつけて・・。」
・・・うむ。二人ともあまりのことに思考が完全に停止しているな。
エンは満足気に頷き、全軍に号令をかけて去っていった。
牛「・・・なぁ・・この二人、どうしたんだ・・・?」
兵士「・・・さぁ・・・?」
二人は本隊が合流した後も固まったままだったという・・・。
須佐之男「・・・・・やられたな。」
ヴァルハラの街防衛軍司令部には現在2人の姿があった。
須佐之男とエンである。
どうやらzeroは治療を受けているらしい。
エン「えぇ・・・。私とzeroちゃんの軍は半分壊滅状態。・・・やっぱり一筋縄ではいかないわ。」
須佐之男「・・・・・。」
沈痛な面持ちで考え込む二人。
元からわかっていたことだが、やはり劣勢は否めない。
『戦力が劣る分、策で何とか・・・』と思っていたがそれも封じられた。
残る策は・・・
須佐之男「攻めずに儂とエンで街を死守するしかない・・な。向かってきた者は全て打ち払う。」
エン「・・・それしかないか・・。仕方ないわね・・・w」
須佐之男「・・・すまんな。」
zero「うはwww俺もやるゼィwwwww」
zeroが司令部に姿を現した。
エン「zeroちゃん、傷の具合はもういいの?」
zero「うはwwwエンちゃん心配してくれてんの?光栄だねwwww大丈夫、ギガヒアで一発さwwwww」
須佐之男「ふ・・・よかろう。ならば3人で連合軍を迎え撃つとするか。」
笑い合う3人。
何故こんな状況で笑い合えるのか。武人とは不思議なものだな・・・。
牛「皆の頑張りのお陰でヘルヘイム軍の作戦を潰すことができました。残るはヴァルハラを護る本隊のみ。もはや策は残っていないはずです。しかし相手は必死に抵抗してくるでしょう。こちらも最後まで気を抜かず力を尽くしましょう!」
連合軍「うぉぉぉおおおおおおッッッ!!!!!」
牛の号令で雄叫びを上げる兵たち。
牛の言う通りヴァルハラ攻めもあとわずか。
しかし相手は背水の陣だ。気を抜いては大打撃を被ることだろう。
アイラ「あと少し・・・・。」
ディス「だがこのままあっさりとは終わるまい。特にあのzeroとかいう男は最後まで戦い続ける・・・そんな眼をしていた。」
アイラ「・・・そうね。あのエンという女剣士も只者じゃないし・・・須佐之男って男も気になるしね。」
戦いの勝敗は終わるまでわからない。
しかし次で全てが決するであろうことは誰の目にも明らかだった。
二人はこの後の戦いに全ての力を注ぐべく、決意を新たにヴァルハラへと向かった。
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