月下美人の語り草

月下美人の語り草

らぐなlock 第25話


ただそれだけの動作で連合軍の兵たちは倒れ伏す。
速すぎて反応ができないのだ。一般の兵ごときの力では。
かなりの大軍が押し寄せているにもかかわらず、彼は無傷のまま立っている。
次々と倒れていく仲間たちに恐怖を覚え、逃げ出す兵も出てきそうだ。
代わりにヘルヘイム軍は士気が上がりっぱなしで留まるところを知らない。
彼は意気揚々と敵軍を押し返すヘルヘイム軍を見ながら、辛そうな表情をしている。

空野蜘蛛「そろそろ・・・来るな。。」

彼はわかっている。
この攻勢がいつまでも続かないことを・・・。


ヘルヘイム軍本隊・・・その中にいる国王、空野蜘蛛を見つけ出し銀狼をぶつける。
それがこの作戦の目的だ。
一騎打ちさえ成立すれば、この戦いはおそらく終結するであろう。
銀狼と蜘蛛の力の差はそれほどまでに大きい。
『おそらく』と言ったのは蜘蛛には想いの大きさが、銀狼には躊躇いがある可能性を考えてのことだ。
この戦い、結果はやってみるまで誰にもわからない。故に全力を尽くすのだ。

シュウ「いくぞ!!」
連合軍「うぉぉぉおおおおおおっっっ!!!!」

シュウの号令に全ての兵が怒涛の如く駆け出す!
そして作戦の要、選ばれた6人は風のように敵陣を突き破りつつ中央部隊まで到達する。

Jupiter「犬ちゃん、しっかり働いてね♪」
犬「はいwご主人様の仰せのままに♪」

近所の公園まで散歩に出掛ける一人と一匹・・・違った、二人が突破口を開こうとそれぞれの得物を振りかざして突っ込む!
犬が渾身の力を込めて剣を振り抜く。斬圧により数人の親衛隊の兵が吹っ飛んだ。
犬も作戦のメンバーに加えられた一人。彼もまた十分戦力となる人材であった。

犬「ふふ・・どうですか♪ご主人さ・・・」

犬が嬉々としてJupiterを振り返ろうとした矢先、目の前を何かが通りすぎる。
敵兵であった。Jupiterがドッカンドッカン殴り飛ばしているのだ。
笑顔のまま固まる犬。その様子に気付いたJupiterが怪訝な顔をする。

Jupiter「ん?どうしたの犬ちゃん?」
犬「・・・・・いえ・・なんでもありません・・・。」

笑顔のまま答えて自分の作業に戻る。心なしか背中が寂しそうである。
うむ。まぁ次元が違うってことだ。精進するが良い。


紅禮「pockiさん、アレやってw」
pocki「アレですか・・・やれやれ、結構疲れるんですがねぇ。。」

pockiはいつもの笑い目から一変して鋭い目になり、剣に精神を集中した。
『ハァァッッ!!』と気合と共に剣を一閃すると、その太刀筋の延長線上にいる兵士たち十数名が血飛沫をあげて崩れ去る。
以前アイラに見せた時よりも威力が桁違いだ。
その隙に紅禮は開いた敵陣に突入し、すれ違いざまに数人の兵を切り捨てる。

紅禮「ナイスコンビネーション♪」
pocki「はぁ・・はぁ・・・よ、良かったです・・ねぇ・・・。」

なんかゼェゼェ言ってるが無視の方向で。

pocki「( ̄□ ̄|||)がーーん!」


作戦は成功しつつある。
作戦メンバーが各々の役割をこなしているからこそだ。
銀狼とシュウは敵本隊の真っ只中にいた。
敵軍に囲まれている状況ではあるが、二人はまったく意に介していない。
ヘルヘイム兵は二人に襲い掛かろうとする、が・・・。

空野蜘蛛「待てッッ!!!」

ピタリと動きを止めるヘルヘイム兵たち。
囲みの一部が割れ、道ができる。
奥から出てきたのは、ヘルヘイム王空野蜘蛛。
スティレットに皮の鎧。
あくまで自分のスタンスを貫こうというのか。
銀狼はスッと進み出た。
5mほど離れて対峙する銀狼と蜘蛛。

・・・?チカッと何かが光った。
ふと見ると銀狼に弓で狙いをつけている兵が一人いた。
二人は気が付いていない。
キリリ、と弓を引き絞り矢を放つ!
矢はまっすぐ銀狼の胸を目指し飛んで行く。
そのまま銀狼に突き刺さる・・・かに見えた。
銀狼に届く一瞬前に、矢はいち早く気付いたシュウの手により真っ二つに叩き斬られていた。

シュウ「この二人の闘いに水を差すとは・・・礼儀がなっていないな。」

シュウの視線と言葉で射抜かれ、まともに顔色を変える兵士。

空野蜘蛛「済まない。。」
シュウ「気にするな。どこの国にも王の命令を違える者はいるものだ。」
銀狼「そちらは任せるぞ。」
シュウ「承知した。」

ゆらりと剣を構え、ゆっくりとヘルヘイムの軍勢に向かっていく。
まるで面白い遊びを見つけたかのように不敵な笑みを浮かべている。

シュウ「さぁ・・・死にたい奴だけかかって来い。」

その後、ヘルヘイム軍は一人の修羅の姿を見ることとなる・・・。


銀狼「・・・いくぞ。」
空野蜘蛛「かつての友に一言の言葉もなしかい。。相変わらず容赦ないね(苦笑)」
銀狼「言葉を交わす時はすでに過ぎているはずだ。」
空野蜘蛛「ふふ。。それもそうだね。それじゃあ。。いこうかッ!!」

目にも止まらぬ速さで剣を突き出す蜘蛛。
だが銀狼は見切って僅かに横に移動しただけでかわした。
お返しとばかりに銀狼も剣を横からなぎ払う。
ヴンッ!!
当たれば確実に剣ごと叩き折れそうな音だが、蜘蛛は難なくかわす。
護衛獣の剣装備の銀狼。スティレット装備の蜘蛛。
実力をみると・・力では銀狼、素早さでは蜘蛛といったところだろうか。
先程の一合を見てわかった。二人は本気で闘っている。躊躇いなど一切ない。
二人とも一流の剣士。おそらく一撃でも入ったら勝負はつくだろう。
それはお互いがよく分かっているはずだ。
迂闊に手を出せない緊張感がこの場を包み込んでいた。
しばらく睨み合いが続く・・・。
そして、二人が同時に動いた・・・!!


アイラは走る。
ヘルヘイム要塞まであと少しだ。
途中、倒れているヘルヘイム兵を踏みつけつつ先を急いでここまで来た。
たまに『ぐえっ』だの『むぐっ』という声が聞こえた気がするが彼女は気にしない。するはずもない。
まだ戦いを続ける兵士たちはいるが、あらかた勝負はついているようだ。
要塞の方に目をやると砂煙が舞っているのが見える。戦闘は続いているようだ。

アイラ「間に合ったかな・・・?」

ホッと一息つく。しかし安堵してばかりもいられない。
要塞の前で行われている戦闘の規模が徐々にだが小さくなっていっているのだ。
終わりは近い。
アイラもそれを感じ、急ぎ現地へと向かった・・・。

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