月下美人の語り草

月下美人の語り草

その瞳に映るものは・・・ 第7話



騒ぎの後、一同は落ち着いて話ができるよう謁見の間へ場所を移した。
こうして玉座に座るフェンリル王を見ると、それらしく見えるのが不思議である。
まぁ顔には引っかき傷があったりしてボロボロだが。

ラクチェ「はい。私たちの世界にもフェンリル国がありまして・・・私とリエルさんはそこに所属していました。」
リエル「だにゃあ!」
国王「うぅむ・・・。しかし何故人間が猫になったのじゃろうのぅ・・・?」
ラクチェ「あー・・・それは大体予想つくんですけど、説明し難いんで流しましょう。」

パタパタと手を振りながら答えるラクチェ。
『Ragnarok~神々の黄昏~』というゲームの中では継承システムというものがあり、それを行うことで自分の姿を変えることができる。
何故リエルが猫なのかといえば、ゲーム中で『現在の姿が黒猫だから』というのが理由だろう。
ちなみにラクチェの姿も、現在彼女がゲーム中に使用している姿なのだ。
(冗談で男の姿にしている時でなくてよかった・・・。)
心底そう思うラクチェであった。

国王「まぁいい・・・。とにかく二人とも元の世界に戻りたいのじゃな?」
ラクチェ「はい。それで手がかりを集めたいのですが・・・協力していただきたいのです。」
国王「うむ。そうしたいところじゃが・・・知ってるとは思うが、今は隣国のエリュシオンとの決戦を控えておるのでな。それどころではないのが現状じゃ。」
ラクチェ「・・・ダメ、ですか・・・。」

返答に肩を落とすラクチェ。
しかしその様子を見たフェンリル王は『良い案を思いついた』という感じで口を開いた。

国王「おーそれじゃったらエリュシオンとの戦いに協力してくれんか?そうすればこちらも人手が増えるし、できる限りのことは協力できるじゃろうてw」
ラクチェ「え゛ッ!?そ、そんな・・・私たち戦いなんてできませんよっ!!」
国王「何故じゃ?向こうの世界では武将だったのじゃろ?」
ラクチェ「ぅ・・・。いや、そのー・・・武将とはいってもゲームの中の話で・・・。」

問われて『どう説明したらいいものか』としどろもどろになるラクチェ。
ラクチェが返事を渋っているのを見て、フェンリル王は対象を変えた。

国王「リエルとやら。おぬしはどうじゃ?」
リエル「わちしはやってもいいにゃあ!」
ラクチェ「リエルさん!?一体何を・・・!?」

振り向いたラクチェは全てを察した。
そこには様々な肉、魚、果物に囲まれ、御満悦なリエルの姿があった。
(ば・・買収されたか・・・orz)
ガックリとうなだれたラクチェ。

国王「さぁどうするのじゃ?w」

リエルだけを戦場に送るわけにはいかない。
選択の余地がないラクチェだった・・・。


メイド「この部屋をお使い下さい。」

寝泊りできる場所として案内されたのは、質素な印象を受ける6畳ほどの広さの個室だった。
客室の一つなのだろうか、ベッドやタンス等の家具は一式揃っている。
しかも浴室までついている。ちょっとしたビジネスホテルみたいな感じだ。
とりあえずは生活に不自由することはなさそうだ。
ラクチェはベッドに腰掛けて一息ついた。

ラクチェ「はぁ・・・なんか今日は色々あったなぁ・・・。」

つい昨日まで普通に仕事したりゲームしたりの生活だったのだ。
まさかこんな世界に入り込むなんて予想もしなかった。
(・・・いや、考えてはいたか。ファンタジーの世界に行ってみたいっていうのは。。)
しかし実際に来てしまうとは・・・人生とはわからぬものだ。

リエル「そうだにゃぁ・・・。わちしもここ数日大変だったにゃぁ・・・。」

黒猫のリエルも感慨深げに呟いた。
大変だったと言われても説得力に欠けるのだが。

ラクチェ「そっかぁ・・・・・って、え?・・・『ここ数日』?」

違和感に気付いたラクチェ。
そのままリエルは話し続ける。

リエル「そうにゃぁ・・朝目覚めたと思ったら街の公園でどこかの子供に撫でられてたのにゃあ。それからお腹がすいたので食べ物を色んなとこから盗ん・・貰ったりして数日をしのいだのにゃ。それはもう大冒険だったにゃあ!」」
ラクチェ「ツッコミどころはあるんだけど・・・それより!数日をしのいだ・・・って私とこの世界に来た時間がズレてる・・・?私が来たのって今日の昼頃だよ?」
リエル「ほぇ?それはおかしいにゃぁ・・・。」
ラクチェ「あの時ゲーム中でリエルさんと挨拶して、その少し後に雷が落ちてから意識がなくなって・・・気付いたらこの世界にいた。・・・リエルさんは?」
リエル「わちしは挨拶してすぐだったにゃあ!」
ラクチェ「・・・どういうことかしら。」

ラクチェとリエルの現世での時間差は数十分。しかしこの世界での時間差は数日。
この世界に送り込まれた時間に幅があるのも不可解だが、現世とこの世界とのタイムラグも気になるところだ。
(何故この世界に来てしまったのかはわからないけど・・・私たち二人がいるってことは、あの時間にラグナにINしていた人も来てるんじゃ・・・?)
意識を失う寸前に誰がゲーム中にいたのかを思い出そうとしたが、いまいち記憶がハッキリしない。

ラクチェ「ねぇ、リエルさんはあの時誰がINしてたか覚えて・・・」

ふと見ればベッドに丸まって『すぴー』と寝息をたてているリエル。
無邪気さに苦笑する。
(考えてばかりいてもしょうがないか。今日はもう寝よう・・・。)
一人でいたときは不安だったが、仲間がいるとわかったことで少し余裕を取り戻せたようだ。
明日からの戦いがどれ程の悲劇を生むかなど知るはずもなく、ラクチェは深い眠りに落ちていった・・・。

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