月下美人の語り草

月下美人の語り草

その瞳に映るものは・・・ 第24話



懺悔するようにうな垂れたまま、ウェイブは全てを独白した。
ラクチェもロゼも親衛隊も、口を閉ざしたままだった。

ウェイブ「・・・だが国にはまだ国民が残っている。指導者がおらねば国は廃れる。」

ウェイブは顔を上げロゼを見る。

ウェイブ「国を導く者が現れるまで・・・俺は玉座を守らねばならなかった。そしてその後は・・・。」
ロゼ「ウェイブ、貴方・・・死ぬつもり?」
ウェイブ「・・・本当はそのつもりでした。ですが俺には信じてついて来た民がいる・・・。その為にも無闇に命を失うわけにもいかない。。」

ラクチェに視線を戻し、大剣をゆらりと持ち上げ構える。
ラクチェは軽くため息をつき、同じように構えを取る。

ラクチェ「・・・退けない理由には十分か。。」
ロゼ「ラクチェっ!?まさか・・・!?」
ラクチェ「下がってて。あの人はけじめをつけようとしているのよ。それを拒否するのは・・・この上なく侮辱だわ。」

ウェイブはその言葉を聞き、ニヤリと笑みを浮かべる。

ウェイブ「今度は本気でいかせてもらうぞ。」
ラクチェ「・・・恐ろしいことサラッと言うわね。。」

苦笑を浮かべるラクチェ。
そして・・・再び二人の戦いが始まった。



城門を突破し城内に入る。
酒姫とリエルは作戦会議の時に見た城内の地図を思い浮かべながら探索していた。

酒姫「・・・何か変だ。。==;」
リエル「何がだにゃあ?」
酒姫「これだけ走り回ってるってのに、一人も敵兵に会わないなんて。。」
リエル「・・・そういえばそうにゃあ。。」

立ち止まり、耳を澄ます。
自分達以外には物音一つしない。
まるで廃墟のように静けさが辺りを支配している。

リエル「きっとラクチェさん達が全滅させたにゃあ!」
酒姫「・・・そうだとしても兵士の死体がないのはおかしい。。逃げ出す理由もない。」
リエル「むむむ・・・。じゃあ神隠しにでもあったにゃあ?」
酒姫「わからない・・・とにかくラクチェさん達を見つけないと・・・ッ!?」

遠くの方で剣のぶつかり合う音が聞こえた。
戦っている者がいる!

酒姫「あっちみたいね・・・。==」
リエル「行くにゃあ!」

二人は急ぎ音が響いてくる方へと走っていった。
長い通路の先に見える大きめの扉。
それを押し開けると眼前に飛び込んできたのは大きな石像。

酒姫「・・・神、か。」

神なら全てを知っているのだろうか。
全ての疑問の答えを。この世界の行く末を。
いずれにせよ、自分たちにできるのは足掻くことだけ・・・。
酒姫は石像から視線を外して先へと続く扉に手を掛けた。


扉を開いて中の様子を見ると斬り結び合う男女と遠巻きで見守る3人の姿。

ラクチェ「うぁッ!?」
酒姫「ラクチェさんッ!?」

大剣に弾かれ壁際にまで吹き飛ばされるラクチェ。
慌てて駆け寄ろうとする酒姫とリエル。
ラクチェは突然現れた二人の姿に驚きつつも、手を伸ばして近づくのを制止した。
困惑しつつも立ち止まる。

リエル「どういうことにゃあ!?」
ロゼ「・・・二人とも、手は出さないで。」
酒姫「理由、話してもらうよ。」

ロゼはコクリと頷き、事の成り行きを話した。
・・・話が終わり、状況を理解した二人はラクチェを見た。
幾つもの外傷が身体に刻まれ、終始ウェイブに押されっぱなしに見える。
呼吸も乱れ、肩で息をしている。

ウェイブ「・・・なんなら交代しても構わんぞ?まだそっちの決着もついていなかったからな。」
酒姫「・・・やめとくわ。今代わったら私がラクチェさんに斬られそうだしね==b」

その言葉にラクチェは無言のまま笑みで返した。
ウェイブはその笑みが理解できなかった。
劣勢にあり、しかも殺されるかもしれないというのに笑みを浮かべられる。
命が惜しければ助けを求めるのが筋であろうに・・・。
ラクチェ自身もよく解らない。
今までの戦いの中でも力の差は歴然としていた。
隙を誘う為フェイントを何度か仕掛けても、慎重なウェイブには通用しなかった。
なるほど、酒姫が苦戦するわけだ。
あの時彼女は作戦の為に本気で戦ってはいなかったが、彼も同様に様子を見ていたのだろう。
ラクチェが本気で戦って一体どこまで通用するか・・・。
相手の底が知れない戦いに不安と高揚を同時に感じていた。

ラクチェ「(なんだろ、これ・・・。怖いのに。。殺されるのが、殺すのが怖いっていうのに・・・。)」

自分の奥底に眠る獣が目を覚ましたかのように・・・。

ラクチェ「(この人と戦っていると・・・気の昂ぶりが抑えられない!)」

幾度も攻撃を仕掛け、反撃され、倒れた。
しかしその度に立ち上がり、笑みを浮かべる。

リエル「・・・剣が輝いてるにゃあ。。」
酒姫「あの剣は・・・?」
ロゼ「お父様の剣・・・。持ち主の力を増幅する魔力が備わってるらしいの。。」
酒姫「なるほど、属性付与か。。」

皆が見つめる中、一層輝きを増す魔力剣。
タンッ!
軽く地を蹴り、剣を振るう。
決して速くはない。しかしウェイブは危うく受け損ねるところだった。
続いて間髪いれずに連撃を放つ。今度は反撃をする暇もない。

ウェイブ「(先程までの動きと変化は見られない・・・。だが何故こうも動きが読めないのだ!?)」

困惑した表情を浮かべるウェイブ。
笑みを浮かべたままのラクチェ。
ウェイブは長期戦になればなる程不利になる・・・そんな気がしてきた。
攻撃の隙を突き、大剣をラクチェの眼前で空振りさせる。
更に前に出ようとしたラクチェは足を止めざるを得なかった。
しばし睨み合いが続き、ウェイブが口を開く。

ウェイブ「・・・そろそろ終わりにしよう。」
ラクチェ「・・・・・。」

ウェイブが攻撃に移ろうと大剣を振り上げ・・・と、その瞬間ラクチェが動いた!
剣を正眼に構えつつ真っ直ぐウェイブの元へと駆ける。
踏み込みは速いが、ウェイブに攻撃の隙を与えない程ではない。
ウェイブは突っ込んでくるラクチェに向かって大剣を振り下ろす。
ラクチェは大剣に向け剣を振るう。

ウェイブ「受け止められると思っているのか!?」

ウェイブの思惑通り、剣は大剣の勢いに負け弾かれる。
『勝った!』とウェイブは思った。
・・・が、ラクチェはその弾かれる勢いに乗るように身体を一回転。
スレスレで大剣を避け、剣は円の軌跡を描くようにウェイブの脇腹を切り裂いた!
血飛沫が舞い、片膝をつく。

ウェイブ「ぐぁッ・・・!!」

致命傷・・・とまではいかないが、この傷では満足に剣も振れまい。
しかしラクチェは剣を収めぬまま、ウェイブに向き直り問いかけた。

ラクチェ「・・・まだやる?」
ウェイブ「・・・いや・・・・・勝負あった。」

それで初めて肩の力を抜き、剣を収めた。
酒姫とリエルはそれを見てラクチェに駆け寄った。

リエル「すごいにゃあ!よく勝てたにゃあ!」
酒姫「良い戦いだったよ。今度お手合わせ願いたいね==b」
ラクチェ「あは、あははは・・・それはちょっと勘弁、かな。。」

苦笑しつつ歓声に答えるラクチェだったが、実際のところ極度の緊張と疲労でフラフラであった。
その様子を神妙な眼で見ていたウェイブは、ふとすぐ傍に人影がいたことに気付いた。

ロゼ「傷・・・大丈夫?」
ウェイブ「姫・・・全ては私の不徳によるもの。どうか兵には寛大なる処置を・・・。」
ロゼ「何言ってるの。貴方が悪いのではないわ。全ては黒衣の男が元凶だったのよ。。」
ウェイブ「しかし私がもっと・・・。」
ロゼ「もういいの。済んでしまった事は仕方がないわ。あとはあの男を捕らえれば・・・。」
男「できますかな?」

突如謁見の間に響いた声。
その声に振り向けば、玉座に座する黒衣の男がいた。

ウェイブ「貴様・・・!!」
黒衣の男「おやおや・・・闘神ともあろう者がたかだか小娘にやられるとはな。・・・落ちたものよ。」
ロゼ「黒衣の男・・・ようやく会えた・・・。お父様の仇・・・ッ!!」
黒衣の男「・・・あぁ、そういえば以前お会いした時には名乗っておりませんでしたな。我が名はブラムセル。以後お見知りおきを・・・。」
ロゼ「あなたの名前なんてどうでもいいッ!!早くそこをどきなさい!その玉座は下賤な者が触れてはならないものよッ!!」
黒衣の男改めブラムセル「やれやれ・・・随分とお怒りのようだ・・・。」

言われて軽くため息をつき、不適な笑みを浮かべながら立ち上がる。

ラクチェ「アンタが・・・この戦いを引き起こした張本人。。」
ブラムセル「ククク・・・我はそこの男が望んだことに手を貸しただけよ。」
ラクチェ「・・・人の心につけこんで国に混乱を呼ぶ。。アンタのやり口、グレイスって奴にそっくりよ・・・!」
ブラムセル「・・・ッ!!?」

眼を見開き、驚愕するブラムセル。
その後スッっと眼を細め、冷たい視線を向ける。

ブラムセル「・・・何故その名を知っている?」
ラクチェ「・・・やっぱりアイツの仲間だったのね。」
ブラムセル「そうか・・・あの方が言っていたのはお前達のことか。。」
酒姫「グレイスが私達のことを・・・?」
リエル「何て言ってたにゃ?」
ブラムセル「フン・・・教える義理はないな。どちらにせよ、お前達はここで死ぬのだ。」
ラクチェ「使い古されたセリフね。どうでもいいけど、たった一人で私達に勝てるとでも思ってるの?」
ブラムセル「クックック・・・そうだな。では人数を増やそうか。」

言って呪を唱える。
すると影が伸びて分裂し、それぞれが術者と同じ姿となって現れた。
驚愕する一同。

ロゼ「な・・・影が・・・ッ!?」
ウェイブ「げ、幻術か!?」
酒姫「・・・五人・・・本体含めて六人か・・・。==;」

驚いている彼女らに分身の一つが手をかざし、黒い炎を放った!
炎は真っ直ぐロゼに向かっている。
慌てて親衛隊の兵が庇い、盾で防ぐ。
その間にもう一人の兵がロゼとウェイブを避難させる。

ウェイブ「分身も術が使えるのか。。」
ラクチェ「くっ・・・この中の本物をやっつければ済むことよ!」
酒姫「・・・ッ!!」

剣を抜き放ち、手分けしてブラムセルに斬りつけるラクチェと酒姫。
しかし6体全てに一撃を加えているというのに、彼らは表情一つ変えることはなかった。

酒姫「・・・やっぱり手応えが・・・==;」
ラクチェ「寸前でかわされた・・・?いや、確実に入ったはず・・・。」
ウェイブ「あの時と同じか・・・。」
ブラムセル「・・・クックック・・・」

その時、ずっと様子を見ていたリエルが声を上げた。

リエル「待つにゃあ!六人とも同じような気配を感じるにゃあ!」
ラクチェ「え・・・?それ、どういうこと!?」

リエルの言葉の意味が解らず、問いかけるラクチェ。
リエルに代わり酒姫が答える。

酒姫「つまり・・・六人どれもが幻・・・。」
ブラムセル「ほう・・・その猫、よほどの術者のようだな。もっとも、それが判ったとて我が術を破ることなどできまいが。」

その通りだった。
目の前にいるのが全て幻。本体はどこにも見当たらない。
そうなればいずれ全滅するのは目に見えていた。
なんとか・・・なんとか打開する方法はないか・・・。
息つく暇もなく攻め立てるブラムセルの攻撃を避けつつ、一同は焦りを隠せずにいた・・・。

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